サボりミナル ~The Tachibana's Alternative of Orthogenesis~
どうせ学校に行っても何も良い事は無い。だって、学校側も面倒くさいのか見て見ぬフリするんだもん。あそこに行けば私はただの籠之禽。自由に羽ばたけない空を見るしか出来ない。そして我慢出来なくなってその日、学校をサボる決意をしました。 サボりミナル ~The Tachibana's Alternative of Orthogenesis~ ただ何となく私は朝ご飯を手に北高へと向かいました。私の潜在意識がそうさせたのかは解りません。何故か早く北高に着きたくて歩きで歩いていました。朝ご飯を手にしてるのも食べる暇が惜しいからです。ふと、そんな私の目の前にアレが現れたんです、アレが。「あ、ワンちゃんだ」「グルルル・・・」可愛いチワワが居ました。本当に可愛いのですが何だか殺気立っていて、恐ろしい気配がしました。段々と歩み寄って来て、その速さが段々と早くなってきて・・・。「えっと・・・逃げよう、と・・・・・」私は身を翻して全力で走り出しましたよ。だって怖いもん! 人間だもの!!「はぅ~! やだ~! な、なんで追いかけて・・・ハッ!」後ろを振り向いた時、犬のその煌びやかな視線に気付きました。 ―――そうか・・・朝ご飯を狙ってるんだ! 「ダメー! これは私のなんだからー!!」なんと滑稽な姿だろうと気にする暇さえ無かった。気にしてしまえばそれまで。せっかくの朝ご飯が台無しになってしまいますから。そんな訳でずっと走っていましたよ、もう喉もカラカラになっても頑張って走りました。あまり運動神経が良い方じゃ無いので本当にヘトヘトです。そして、いつの間にか北高の姿が遠くに見えた頃。もう犬もすぐそこまで迫っていました。「はわわわ~!」と、その時。私の視界に人影が映ったんです! 多分救いの神です!!こちらを何事かと言わんばかりの表情で見ているその人に全てを託したいと思いました。「き、キョンさん助けて下さい~!!」しかし、思いっきりスルーされましたよ。正直予想外です。救いの神様なんて思った私が馬鹿みたいです。どうせなら自らの手を噛ませるとか、弁当をあげるとかして欲しかったです。「無視しないで下さい~! 助けて下さい~!!」それでも私は諦めませんよ。朝ご飯は大切ですから。でも・・・。ここまで食べ物に意地を張る女の子も居ないですよね・・・。彼は北高へ向けていた足を止めて、一言。「断る!」「はぅ!?」駄目ですね。さぁ、登校しようと言わんばかりにまた歩き出してます。「酷いですよぉ~!!」いつの間にやらもう私と彼の距離は結構狭まってました。彼は私の後ろに居る犬に目をやると何事も無かったかのように歩き出しました。この距離でもあえて無視ですか・・・ぐすっ。・・・って、「きゃうっ!」足が何かに躓いて体がボンと宙を舞った。そりゃもう派手に飛びましたよ。それで本当に痛かったですよ。ふと朝ご飯に目をやると、「あ~! 私の朝ごはんが~!!」犬に取られてました。ぐすっ・・・。何だか笑われてる気分です、犬に。無情にも食パンと共に立ち去ってしまいました・・・ぐすっ。「なんと哀れ」泣き出す私に彼は笑いながら言ってくれましたよ。もう、頭に来ました・・・物凄くムカ~~~~ッ!って頭にドカーンって怒りが来ました!!「ぐすっ・・・貴方が助けてくれなかったせいですよ!?」「ふざけんな」一喝返されてしまいました。「あぅ・・・学校から随分離れちゃったし、朝ごはんは食べられないし最悪です・・・」・・・学校は元々行く気無かったんですけどね。これで彼が罪悪感を感じてくれれば幸いだと思って。「んな事に知るか」しかし、これですよ。もう・・・何か酷いですッ!「貴方は鬼です! 悪魔ッ!」とにかくむかついたので何か言い返してやろうと思いました。「誘拐犯に言われたくないな」誘拐犯・・・。あぁ、嫌な言葉です・・・。・・・ん? 誘拐。・・・そうですね。そうですよ。私の頬が緩むのが感じる。「・・・あぁ、そうでした」私は彼の腕をガシッと捕まえました。全力で。「え?」上がった彼の顔は本当に目がまんまるとしていました。ふふっ、面白い顔です。とても。「私は深く傷付きました。責任取ってもらいます」「断る」彼はきっぱりと断ってきた。でも、知りません。「断る、は不可です。責任を取らせます」なおも迫ると溜息をついて「・・・何をせよと」と言ってきた。諦めたようですね。「で?」「で、今日は気分が乗らないので学校思いっきり遅れたいのです」「・・・で?」・・・今、一瞬彼の反応が遅れましたね。「なので私が飽きるまで今日は付き合って下さい」「俺が学校遅刻するわボケ」んんっ・・・もう!まだ抵抗する気がありましたか。「知った事じゃ無いです!」そう言って私はズルズル何とか引きずって北高から離れました。彼は何だかよろしく哀愁みたいな顔で北高を眺めてました。あ~子牛は売られるのか~、と憂いに帯びた表情で。「何処に行くつもりだ」しばらくした頃、彼が尋ねてきました。そう言えば考えてませんでしたね。「え? ん~・・・じゃあエスコートして下さい」「じゃあ北高に行くぞ」ここまで来てなおですか。「それは駄目ですよっ!」私はとりあえず学校から離れる為に町に出る事を提案しました。そういうわけで、彼と二人で町を歩いています。何だか・・・デートみたいですね・・・。私だって女の子ですし、憧れちゃいますよ。「どこをどう行けば良いんだか」ふと彼が苦々しく呟く。「えっと普段SOS団は何をしてるんですか?」SOS団思い出巡り、みたいな感じを期待してそう言ったのですが「不思議探索。知ってんだろう」と返されただけでした。「・・・それ以外に何も無いんですか?」「無いな」「無意義に休日使ってますね」私は思わずそう呟いてしまいました。だって本当に無意義に感じてしまったんですから。彼は憂鬱そうに深い溜息を吐き捨ててました。ご愁傷様です。「仕方ない。カラオケ行くか」思いついたように提案された彼の意見に私は同意しました。「それ良いですね。私、一回行ってみたかったんですよ」「学校の友達と言った事無いのか?」ちくりとその言葉が胸に刺さった。学校の友達・・・私には居ないんですよ・・・。でもそんな事も言えなくて、嘘も思いつけなくて私は笑うことしか出来なくて・・・。彼は怪訝そうな顔を浮かべるだけで何も言いませんでした。そんなこんなでカラオケに到着。初めて来たカラオケにさっきまでの憂鬱も何処へやら、ルンルン気分になってました。「えっと・・・これどう操作するんですか?」でも、操作が解らなきゃどうしようもないですよね・・・。「それはタッチパネル式だ」「あっ、本当だ」私は本当に子供のようにはしゃいでしまってました。だってワクワクするんですから!本当に楽しくて、とりあえず適当に歌えそうな曲から入れました。さぁ、カラオケ初体験です。何だか、一人で口ずさむ分には良いんですけど、誰か他の人に歌声聞かせるのは恥ずかしいですね。ふと彼を見ると私の歌をちゃんと聞いてくれているようでした。なんだかんだ優しい人のようです。「はい、次はキョンくんの番です」私はマイクを彼に渡しながらそう言いました。「俺も歌うのか?」「当然です」「仕方ないな・・・」それなりにカラオケに来ているのでしょう。素早い手さばき(?)でリモコンを操作していました。そして画面が切り替わり、「Wake up your dead!」何だか凄い映像と共に、何だか凄い彼の歌声が轟きました。一瞬何事かと思いました。映像はどうやらプロモーションビデオらしいですね。彼の歌声は・・・何ていうのでしょうか。えっと・・・シャウトとか、デスボイスって言うんでしょうか・・・。でも、何だか聞きやすくて、魂を感じました。「Oneday I will fuck your parents!」そして、彼は歌いきりました。「す、凄いです・・・格好良いです・・・」思わず声に出して、拍手してしましました。彼はきょとんとした顔をし、ちょっとだけ顔を赤くしてました。それを誤魔化すように、「何時までやる?」と聞いてきた。「貴方が飽きるまでで構いませんよ?」「学校はどうした」学校。それをここまで気にかけているのは、きっと彼からしたら学校というのは楽しいんだろうと思う。だけど、私には苦痛でしかないんです。だから・・・「・・・構いません」「次は橘だぞ」「は~い」私はふと歌いたい曲が思いついてそれを入力した。静かなイントロが流れてくる。「とても嬉しかったよ~君が笑いかけてた~」フルーツバスケットよりForフルーツバスケット。この曲の歌詞はいつもいじめで荒んだ私の心を癒してくれた。たとえ苦しい今日だとしてもいつか暖かな思い出になる。確かに私は佐々木さんや、九曜さん、藤原さんみたいな友達が初めて出来た。人によって捕らえ方は違うだろうけど、私にとって素晴らしい内容で。「た、橘?」思わず泣き出してしまった。「Let's stay together いつも・・・ぐすっ」「大丈夫か?」「ごめんなさい、見苦しいところを見せてしまって・・・」私は微笑んでみせた。「・・・」だけど彼は何も言わない。「私、本当は学校なんか元々行きたく無かったんです」そこまで言ってちらりと様子を見る。唐突に語り出した私の話を、彼は黙って聞いてくれるようでした。「学校でいじめられてるんです、私」「っていう事は今日は・・・」「はい、元々貴方を巻き込んで学校をさぼる計画でした、学校は辛いので」犬は偶然ですけど。私はそう言って、ちょっとだけ笑って見せた。あんまり人に心配を掛けさせたくなかったから。「理由はどうあれやっぱり計画的か」彼はやや口をへの字にして呟きました。「ごめんなさい・・・学校に行きたいならもう止めません」私がそう言って目を閉じました。彼が動く気配がする。やっぱり怒らせちゃったかな。私って、いつもそうだった。だから学校でもいじめられる。何やってもうまく行かない。なのに、私の耳にピアノの旋律が聴こえた。「え・・・」思わず顔を上げた。ただ呆然としながら。流れてきたメロディに。彼はマイクを持って構えていました。「どうして・・・」彼はふっと優しく微笑んでくれました。駄目・・・このままじゃきっと、泣くだけでは我慢出来なくなってしまう・・・。だけどそれで良いのかもしれない。私はそれを求めて居たのかもしれない。「困ってる奴は助けたい主義だからさ泣きたいなら胸貸すぞ?」気付けば理性が崩れてました。私は彼の言葉に甘えて、胸に顔を埋めて泣いた。「ぐすっ・・・ひぐっ・・・」彼は優しく頭を撫でてくれました。歌い手の無いメロディーだけが流れていく。あぁ、暖かい・・・。優しさが、嬉しかった・・・。・・・。結局、カラオケを出た頃には外は真っ暗になっていました。「ありがとうございます・・・今日は付き合ってもらって」「気にするな」「あの・・・また泣きたい時は胸を借りても良いですか?」「あぁ、勿論」その返答が嬉しくて、「・・・キョンくん」「何だ?」私は笑顔が隠せなくて、気持ちも隠せなくて。でも、慌てて隠したくて。「私、貴女が大好きかもしれないです」ついそんな事を言ってしまいました。「もしかしたら・・・俺も好きかも知れない」人差し指で頬をかきながら帰ってきた答えに、なお笑顔が隠せなくなりました。 後日談ですが私はこっぴどく怒られました。彼にメールしたところ、彼も物凄く怒られたという話です。結局、今日もずる休みの件で苛められましたよ・・・ぐすっ。嫌な気分はもちろんしましたよ。もう本当に嫌な気分です!だから、今からそれを晴らしに行くんです。「また胸を借りにきました」大好きな人でね。「どうぞ」「ありがとうございます」「彼氏なら当然だ」利益としては十分だと思いますよ。これからも彼が居れば。随分と鈍感な彼だけど、優しくて頼れる、大好きな大好きな、潜在意識が求め続ける彼。ねぇ、キョンくん。貴方が居れば、日々私は環境に影響を受けずに定向進化し続けていけます。だから、離さないで下さいね?泣きながら、そう思えました。 The End...?
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