私が死んd(ry
癖とは恐ろしいものだね、と、放課後になる度に脳内で宛ての無い語りかけをかれこれ1年以上も続けている俺は、今日も文芸部室へと重い足を運ばせていた。部室棟への渡り廊下に足を踏み入れたその瞬間、今頃教室で日直日誌にせっせとペンを走らせているであろうハルヒを放置していたことを思い出す。部室へ先に向かってしまった俺が団長から色々な罵倒を浴びせられることを思うと一瞬教室に戻るべきなのかもしれないと考えたが、ここまで来てしまったんだし引き返すのも面倒だということで、俺はそのまま目的地へと足を進めた。
ふと携帯のサブディスプレイに表示される時刻を確認すると、いつもよりもちょっとばかし早くこちらへ辿り着いているような気がした。別に、毎日到着時刻を確認しているわけではないのだが。 となると古泉も朝比奈さんもまだ来ていないだろう、しかし長門はどうだ、あいつが俺より後に文芸部室のドアを開いたことなど今までにあっただろうか・・・そんなことを考えつつ、俺はボロボロになった文芸部室のドアを二回ほど軽くノックし、返事を待つが早くドアノブに手をかけてそれを開いた。
「っぉあぅ・・・」
見慣れた光景が広がっていると予想していた俺は、ドアを開いた途端に何とも間抜けな声を出した。つまり、俺は見慣れない光景を目の当たりにしたというわけだ。いや、それ自体がありえないものではあったのだが、俺がそれを見慣れていないわけではない。慣れという表現がおかしい。俺の思考の隅にいつも居座っている「人物」がそこに居たのだ。 「綾波・・・レイ・・・?」そこには―――・・・宇宙製アンドロイドが定位置としているそこには、彼女と割とよく似た雰囲気の、某人造人間アニメのヒロインが、黙々と読書しているという異様すぎる光景がひろがっていたのだ。 彼女は膝に置いていた本に目をやっていたが、俺の発した声を聞き取ったのか、ゆっくりと白い顔をあげ真紅の瞳でこちらを見つめてくる。「・・・ちょ、ちょっと待ってくれ・・・お前・・・」彼女が首を3ミクロンほど左に傾ける。透き通るような水色をした綺麗な髪の毛がサラサラと流れ、異様に白い頬にかかる。「な・・・がと・・・?いや・・・なが・・・あぁ、あ、あやなみ・・・」「・・・どうしたの」足りない頭をフル回転させて今の状況を理解しようとしていた俺に、彼女が声をかける。その声はいつもその場所に座っているあいつから発せられる声とは違う声だったが、なんだか安心させてくれる、淡々とした声だった。 「あの、ちょ、ちょっと待ってくれ、お前、綾波レイだよな?」その言葉で少し冷静さを取り戻した俺は、こちらを真っ直ぐ見据える赤い瞳に片言だが語りかける。「違う。長門、有希。でも、綾波、レイ。」矛盾めいた言葉を妙に区切って俺に言い聞かせてやがる。俺は震えだしそうな足を懸命に動かし窓際のパイプ椅子まで近づくと、なめ回すかのように上から下まで観察した。コスプレにしては、できすぎている。 こいつは身にまとっている制服から体格、顔まで完璧に綾波レイそのものなんだからな。俺は無意識に喉をゴクリ、と鳴らして唾を飲み込んだ後、真っ赤な瞳に見つめられたまま自身の定位置に着く。とりあえず、一言いいか?
かわいいいいいいいいいいいいいああああああああああああああああああああああああああwwwwwwwwww
あのな、この状況はなんだ、これは誰の仕業だ、長門か、ハルヒか、なーんてそんなの関係ねぇ!あの綾波レイだぞ。三次元に舞い降りた綾波レイが今俺と熱く見つめ合ってるんだぜ。もうね、やばい。今すぐ抱きしめたい。この折れてしまいそうな華奢な体をこう、思い切り。 抱きしめるだけでは足りないね。今まで脳内でしてきたように三次元でこいつを今すぐ意のままにしたい。そうだな、まずは正統派プレイをじっくり楽しんでから・・・ 「私は、長門有希」四次元にイッちまいかけていた俺を引き戻してくれたのは、淡々とした林原ヴォイスだった。「あなたは、昨日私たちに映画の話をしてくれた。覚えていない?」俺は一度真っ赤なちk(ry 失礼、瞳から目を離し、天井を見つめ記憶を辿る。・・・。
・・・。
・・・昨日。そうか、なるほど、そういえば、そうだ。
俺は昨日の放課後ここで、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」を観に行った時のことを熱く語っていたんだ。熱いなんてもんじゃないね。朝比奈さんのキュートなくりくりお目目を長門(通常)並みの冷凍ビームを放つブルーアイズに変貌させたほどだった。その際、俺はこんなことを話していた。長門のキャラクターはどこか綾波レイに似ているところがあると。それだけならまだよかったのかもしれない。俺は長門と綾波レイを色々と比べてしまっていたのだ。・・・まぁ、その、体系とか、色々な。きっとその所為なのだろう。それで長門は自身を情報操作とやらで長門レイに変貌させてしまったのだ。回想、おわり。「あなたは、私と綾波レイという架空の人物を比べ、綾波レイのほうが好みであると判断した。だから、私はこうしたまで」長門レイは長い睫をぱたつかせながら淡々と言葉を発した。「いや・・・でも・・・長門・・・」何と言ったらいいのやら。長門がなぜそこまでするに至ったのかがわからない。だがそれは俺の所為であり、そして俺の理想の女性像である綾波レイが目の前に居るというのは決して不快な光景などではなく・・・ 俺が再び頭を混乱させ始めていると、長門レイの短い呼吸音が耳に届いてきた。「あなたが涼宮ハルヒと閉鎖空間へ行った翌日の放課後、ここであなたに言った言葉を今、訂正する」複雑な予感が胸をよぎった。「・・・あなたは死なないわ、私が守るもの」あぁ、萌え死にそうだぁ~。
続く。
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