ながとぅーみー 第六話「逃げてるぜベイベー★★」
<SIDE KUNIKIDA>「国木田、後ろだ!」生徒会長に言われ僕は後ろに向かって銃を放つ。後ろから遅い掛かろうとしたゾンビの頭が文字通り吹っ飛ぶ。「ありがとうございます、生徒会長」「生徒会は学校の生徒の為に行動するのが義務なのでね」会長がクールな笑顔をにやりと浮かべる。ナクドマルドでの攻防戦。大量に攻め込んでくるゾンビをひたすらに撃ち殺す。弾はまだある。日頃運動して無いから結構つらい作業だ。「由良さん、成崎さん、大丈夫かい?」「うん、大丈夫」「涼宮さんは?」「私がピンチなわけないでしょうが!」本当だ。ほぼ一発で頭撃ち抜いてるから無駄がないや。会長さんは涼宮さん以上の腕、というか映画のワイヤーアクションみたいな動きだけど何か運動してたのかな。それよりも、僕には気に掛かる事があった。あれからもう長い時間が過ぎてるはずなのに、一向に谷口が姿を現さないことだ。「・・・・・」あの爆発。あれが関係してるのだろうか。ふと、その時いきなり閃光が目を覆い―――――――――!!!!爆音が轟いた。「ロケットランチャー導入したぜ!!」声がした方を向くとキョンが構えて古泉くんが弾を装填するという見事な連携プレーがそこにはあった。っていうかどこから拾ってきたんだろう。「装填!」「発射!」次々と発射されるロケットランチャーは瞬く間に視界に映るゾンビを全てを蹴散らす。「これで最後の弾です。装填!」「発射!」二人は弾切れになったロケットランチャーを捨ててすぐに銃を構えた。が、もうあちらこちらに爆風で吹っ飛んだゾンビの中にもう立てる奴は居なかった。「すまん。遅れた」「良かった。無事に来れたんだね」「あぁ」「ねぇ、キョン。谷口は見なかった?」その言葉と同時に、キョンが苦々しく顔をゆがめた。そして、僕にそれを見せた。 <SIDE KYON>「嘘、よね・・・」ハルヒがじわりと涙を浮かべる。「た、谷口が・・・?」国木田も、信じられないという顔でそれを見つめている。谷口の制服。ボロボロになって焦げている谷口の制服。「嘘だぁっ!!」国木田が叫んで、そして泣いた。それはハルヒにも言えた事で叫びはしないが涙をただ呆然と床に落としていた。由良も、成崎もいくつもの染みが出来る床。それは谷口は決して嫌われては居なかったという証であり、何よりもみんなが好きだったという証でもあった。あの笑顔をもう見れない。そう思うと、俺も泣けてきた。「・・・許さない」国木田が呟く。「僕はあの死体を許さない! 刺し違えてでも、殺してやる!!」「落ち着け国木田! まずは作戦を練ってからだ!」「そう」「同意です。いくら銃を持ってるからとは言え、相手の人数は明らかに多い。何も考えずに特攻したら間違いなくこちらが負けます」「・・・ごめん。取り乱してしまったようだね」そう言ってすとん、とその場に座る。その顔は未だに怒りに満ちている。こんな国木田を俺は見たことがない。よっぽど大事な友達だったんだと思う。「・・・で、どうするんだ?」「そうですね・・・」俺達はみんな唸る。ひたすら唸る。唸るまま時が過ぎていく。と、その時。突然近くの壁がぶっ飛んだ。「な、なんだ!?」砂煙の向こうに立つ陰。風が一つ吹き、その幕が開く。「はん・・・ぼー・・・しよ・・・ぜ」言わんでも良いだろう。最強のクチーリャーが現れたのだ。「お、岡部だぁああー!!!」また逃げないといけないのか・・・。そう最強のクリーチャー岡部タイラントから逃げないといけない。インターフェースの超絶な力をもってしても倒せない最強の敵なのだから。その超絶な容姿に、窮屈な少年パンツにもっこりがくっきりはっきり食い込んでる。捕まったら爪よりもそのもっこりで[禁則事項]なんだろうが、あいにくそうなるわけにはいかない。「ハルヒ、また逃げろ。また俺達で食い込め・・・間違えた。食い止める!」「解ったわ。じゃあ、私達はINABAに行ってるから!!」「ホテルの?」「そう!」「解った!」ハルヒ達が走って行ったのを確認して、振り返る。そして、そそくさとヨーンを撃破する際に使ったショットガンを構える俺と古泉。「二人とも、足だぞ」一応注意。「えぇ、解ってます」と、古泉。「解ってる」と、長門。長門と古泉と俺の三人で狙う。そしてこっちに来ると同時に、一斉に発射。だが、俺だけは違う場所を狙っていた。古泉と長門には悪いが、俺にはあのもっこりがうざくて仕方ない。だから、そこを狙って・・・俺は穿つ!!今こそ超越せよ! 銃をおもちゃのように扱いこなせ!狙いを定めよ! 一点に集中せよ!太陽が、大地が、風が、木々が、全てが、俺を、俺の背中を押している!!恐れることはない! さぁ、撃てぇえぇええええ!!「うるぁああああ!!」俺の放った銃弾は見事に、岡部のもっこりに当たった。が、カキーン。心地の良い音が心地の悪いところから跳ね返った。「え、嘘!?」何故か物凄い硬かった。うぜぇ。「クソ・・・なんなんだよ、この岡部は!!」タイラント、確か意味は暴君だったな。なるほど、暴れん坊将軍なわけだな、あれが。これだけのものならベッドの中で相当な武器になる、ってそうじゃねぇだろ!「くそぉおお!!」こうなったら足を木っ端微塵にしてくれようぞ、岡部!!ハンドボールじゃなくてお前がしたいのは[N(*゚ヮ゚)G]なんだろうが、この野郎!!だが、所詮貴様程度は俺の固有結界の前では無意味だ!人は何故人なのか! それは人だからだ! ならば人は人らしく人の行動を取るべきなのだ!!裸になってブンブンなんて行為は猿だ! 全裸は猿なんだよ!!だからやるにしたって着衣義務! だが貴様程度のド低脳猿ではどうせスッポンポンなんだろう!!甘い判断だ! 断じて賢くはない!!この俺にも劣るその知能でこの俺が倒せるものかぁあぁぁああ!!俺の気合の一発!!「「お」」俺の放った弾は見事に岡部の股間諸共足を粉々に吹っ飛ばした。「ぐぉぉおおおぉおお・・・」悲痛な叫び声が聞こえる。そこで俺はハッとした。なんか・・・、途中途中の記憶が飛んでるな。なんかヒートしてたのは覚えてるんだが、その間何を考えてたのかさっぱり・・・。まぁ、良いか。ハルヒたち追いかけよう。<SIDE KUNIKIDA>ホテルINABA。最高級のホテルとして知られるでっかいゴージャスなホテルも人も誰も居ないすっからかん状態。ただ散らばった荷物とか、たまに付いてる血とかが惨劇を物語っていた。ロビーからマスターキーを奪って最上階のスウィートルーム数室に僕たちは入った。ここに居た人全員、どうなったんだろう。逃げ出して外に出て、それからどうしたんだろう。そして、谷口もどうなったんだろう。本当に死んだのかな。キョンは死体は見付かってないと言っていなかったかな。なら可能性はあるだよね。「・・・国木田くん」ふと声が掛かって我に返った。部屋に誰かが入ってきたのに気付かないぐらい考え込んでいたのか、僕は。「由良さんか、どうしたの?」一人でボーッとしているとクラスメイトの由良さんが話しかけてきた。「え? う、ううん。ただ何だか一人だと心細くて・・・ね?」「成崎さんは?」「涼宮さんと阪中さんと話し込んでる」「へぇ・・・」変な組み合わせ。っていうか、「阪中さん居たんだ」全く気付かなかった。「学校脱出の際に喜緑さんが救出したんだって」「そうなんだ」そういや何だか人数が増えてた気がするな、言われてみれば。「・・・ねぇ、国木田くん」ふとそこで由良さんの顔に影が帯びる。「・・・谷口くん、生きてるよね?」それは質問、というよりも自分に言い聞かせようとしているように見える。「あぁ、生きてくれないといじれる人が居なくなってしまうよ」僕はなるべくおどけて、そう言った。「信じてればきっと・・・ね?」希望を持たせる為に。自分に言い聞かせる為に。「うん、信じる者は救われるっていうしね」「あ・・・やっと笑った」「え?」ぱぁっ、と晴れた笑顔。由良さんが嬉しそうに浮かべた。「ずっと暗い表情だったんだもん。ゲンキ出た?」「・・・うん、ありがとう由良さん」「えへへ~どういたしまして。あ、そうだ」ふと由良さんが持ち歩いているカバンからアルトサックスを取り出す。そう言えば吹奏楽部なんだよね、由良さん。「えっと・・・じゃあ、パッヘルベルのカノン吹きます」そして、始まる。優しい音色だった。とても優しくて、心がほっとする。複数の人間が居ないといけないし、サックス用にアレンジされてるから少し違和感があった。でもカノン独特の柔らかい雰囲気があった。しばらく僕はその音色に耳を傾けた。音楽が流れている間だけは、全てを忘れられたから。やがて音色が止んだころ、心は十分なぐらいほぐされていた。「ありがとう」「ううん。私で役に立つならこれぐらいお安い御用だよ」「安くないよ、決してね」「ねぇ、チェシャ猫・・・」「チェシャ猫・・・? ・・・あぁ、そういう事か」学校で誰かがやってたね、劇を。歪みの国のアリスの。確か出てきたね。INABAが、レストランだけどまぁ、良い。こんなにも顔を赤くしてやって居るんだ。僕も乗ってあげよう。先ほどのカノンのお礼に・・・。僕はチェシャ猫だから、「心細いから私の気が済むまでここに居て良いかしら?」「僕らのアリス、君が望むなら」 《!WARNING!》次回予告《!WARNING!》いつの間にか居たという衝撃の事実が判明した阪中。俺達はホテルINABAのスウィートルームで休む事にした。ふとそんな時、バイオハザード世界に一片の奇異が生じる。長門曰く「改変しすぎた故の歪み」との事。岡部と同じ戦闘能力を有するその歪みは混沌となって666の獣で襲い掛かる。次回、ながとぅーみー第七話「メルティーブレッド り・あくと」「さぁ、目覚めよ。食事の時間だ・・・」
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