「LOVE」
「キョン!遅い!罰金!!」ここのところ熱帯夜が延々と続き、暑さのおかげで眠れない日々を送っていたのだが、この団長様はそんな寝不足の俺に休日と言うものを与えるつもりはないらしく、日曜日だというのに俺は朝早くからこうして駅前に出てきている。そしてこうして俺が毎回遅刻―――といっても集合時間の5分前には着いているのだが―――しているのは規定事項だと言わんばかりにお決まりになっていて、今回も俺が奢ることになった。やれやれ。 しかし今日は長門、朝比奈さん、古泉の姿は無く、幸か不幸かハルヒと二人だけなので、いつもよりは財布が軽くならずに済みそうだ。「あれ、今日はお前だけか?」「そう。あたしが三人に今日は不思議探索パトロールは無し、って言って外してもらったの」何故だ?「・・・もうすぐ何の日だか、わかる?」俺はしばらく考えた。はてなんだろうね。敬老の日とか。「このバカキョン!もうすぐ古泉君の誕生日じゃない!!プレゼント買いたいから付き合いなさい!」あぁそうか。ん?それで何で俺なんだ。「アンタわざとやってんじゃないでしょうねぇ。男が欲しがるような物なんてあたしにはわからないから、アンタに一緒に選んで欲しいの」なるほどね。まぁ、彼女からのプレゼントなら何だって嬉しいと思うぞ。特に、古泉の場合はな。「そういうと思ったけど。まぁいいじゃない!二人で出かけるのも久しぶりだし!ね?」そう言って、ハルヒは俺の腕を掴んでリズムよく歩き出した。・・・やれやれ、今日もこいつのペースだな。この様子だと古泉とは上手くやってるようだな。一時期は「古泉君ったら何言っても賛成しかしないの!!あたしのことなんてどうでもいいのよきっと!!」なんて、毎日のように俺に電話で愚痴ってきてたからな。 しかしハルヒが彼氏のプレゼントに頭を悩ませるとは・・・微笑ましいものだね全く。その悩みの種が古泉っていうのがなんだか気に入らない所だがな。
ハルヒと古泉が交際を始めたのは、もう2ヶ月程前になる。ハルヒが俺に古泉への想いを打ち明けてくれた時には、なんだかちょっとだけ嫉妬した。しかし俺には半年以上前から付き合っている佐々木という彼女が居て、俺は佐々木を愛してる。ハルヒに片思いしていたとか、そんなことは断じてないんだ。本当だ。だがな、違うんだよ。ハルヒの携帯の履歴が俺ばかりだということに気づいた古泉が俺のことを睨むのも、こうして今ハルヒと二人で居るということに逸早く気づいた勘の鋭い佐々木が機嫌を悪くするのも、何か間違ってると思うね。ハルヒには恋愛感情的なものを抱いたことは一度も無い。もしハルヒが間違って俺のことを好きになってしまったりしても、俺は責任を取れる気がしない。でも、俺じゃない男にハルヒが染められていくのが、何だか気がかりだったりするのだ。何だろうね、この気持ち?俺自身にもよくわからない。だが、いつも振り回されてばっかりで、疲れちまうこともあるが、俺はこいつと一緒に居るのが楽しくてしょうがないみたいだ。「ちょっと、キョン?聞いてんの?」「あ、ああすまん」「真剣に悩んでるんだから聞いてよね!それで古泉君ったら呆れちゃうのよ!あのね・・・」ハルヒは口を尖がらせながら古泉のことを話し続けた。相変わらずのバカップルっぷり、ご馳走様です。やれやれ。・・・ああ。くだらない愚痴だって何だって、いつでも聞いてやるさ。この気持ちが何だろうと、俺とハルヒには関係無い。俺はいつまでも、こういう関係で居られたらいいと考えている。恋人とか友達とか、団員と団長とか・・・そんなもんじゃないんだよな、俺達は。こういう形の「愛」もいいだろ?「こういう話が唯一できるキョンは、特別なんだからね!」そう言って、ハルヒは100万ワットの輝きを持つ笑顔を作った。―――いつまでも、お前の特別で居させてくれよ。ハルヒ。 イメージソング:Mr.Children/LOVE
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