流星群
俺は今外で一人、夜空を見上げていた。三大流星群の一つのペルセウス座流星群が、今夜ピークを迎えるらしい。今日は丁度新月なので、月の明かりに邪魔をされることもなく流れ星を観測できそうだ。まぁ、お月様がいくら空気を読んでくれたとしても、結局は街の明かりが邪魔をするんだがな。俺が小さい頃はもっと星が見えた気がするな、とそんなことを考えていると、俺の携帯が震えだした。『キョン?起きてる?ちゃんと外に出てるんでしょうね』「ああ。ちゃんと外さ。今は家の外に座ってる」電話をかけてきたのはもちろんハルヒだ。本当は二人で肩を並べて夜空を見よう、なんて結構いいムードになりそうな約束をしていたのだが、その約束は今日の夜になって破棄となった。理由を尋ねると、「前髪を切りすぎてしまって恥ずかしいから」という、なんともハルヒらしくない可愛らしい理由で、俺は思わず笑ってしまった。まぁ一人で見ているのも退屈だということで、こうして今俺はハルヒと電話しながら空を見上げている。
『どのくらい見えるのかしらね、星』「さぁな。もう時間が時間だし終わってたりして」時刻はもう3時45分を廻っていた。もうそろそろ日の出が始まりそうな気配だ。もう少し早く始めていればよかったかもな。『そんなことよりキョン、アンタちゃんと考えてきたの?』何をだよ。『流れ星と言えば願い事でしょ!?』あぁ。うーん、そうだな、俺は・・・『願いごとなんてない、とでも言うんじゃないでしょうね』いや、そういうわけではないのだが・・・そういうお前は何かあるのか?『もちろんよ。』どんな願いだ?まぁ大体検討は着くのだが聞いてやるから言って・・・「あっ!」『あっ!』突然俺達の声が重なった。まぁ、電話越しだったから多少の誤差はあったのだが。俺の視界のど真ん中で白い線が現れ、すぐに消えていった。「見たか!?ハルヒ!」『見たわ!!すごい綺麗だった!』「・・・俺達、同じ方角見てたみたいだな」ハルヒのくすりと笑う声が電話越しに聞こえた。『・・・でも、これだけ早いとお願い事なんてできないわね』「・・・そうだな」『よし、いいわ。キョン、4時ぴったりに二人でお願い事しましょうよ』「なんでまた」『いいの!せっかく考えてきたのに願わず終いなんてあまりにも不憫だわ』何がだよ。
俺達はそれからも、他愛のない事を語り合いながら夜空を見上げていた。もう既に明るくなりかかっていたため、もう流れ星は見えないだろうと思っていたが、ハルヒのために俺は4時まで付き合ってやることにした。『キョン!もうすぐ4時よ?準備はいい?』「ああ、いつでもいいさ。」『ちゃんとぴったりにお願いするんだからね。・・・もうすぐよ』俺達は自然と無言になる。4時まであと5秒、4、3、2、1・・・『・・・ふう』「ちゃんとお願い事したのか?」『当たり前よ。アンタもしたんでしょうね。』「もちろんだ。じゃあ、そろそろ聞かせてもらおうか?」『な、何をよ・・・』「願い事に決まっているだろう」『・・・絶対言わないんだからね!!おやすみ!!』乱暴に電話が切られた。やれやれ。ハルヒの願い事があまり現実離れしすぎていないことを祈るよ。ハルヒならそれを叶えかねないからな。・・・そうそう、4時ぴったりに願い事をした、ということなのだが、俺は確かに4時ぴったりに夜空を駆ける星をこの目で見たんだ。もちろん、願い事をしている最中にね。こんな運のいいことがあっていいのだろうか?と最初は思ったが、きっとハルヒが4時ぴったりに流れ星が流れることを望んだのだろう。まぁ当のハルヒは見て居なかったようだけどな。ハルヒらしいな。ん?俺の願い事は何かって?聞くまでもないだろう。ハルヒとずっと一緒に居れますように、だ。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。