Lolita's love complex 第3話「遊園地でつかまえて 後編」
第三話「遊園地で捕まえて 後編」 ・前回までのあらすじ。世間的にはダメダメ。 さて、今回来た遊園地というのは他でもない、あのディズニーランドだ。知っての通り、東京という冠を背負っているが実際にあるのは・・・まぁ、その話はよそう。とにかくここに来たわけだ。「わぁー・・・」年相応に目を輝かせて周りを見渡して喜ぶミヨキチ。やっぱり幼いのだと自覚させられる。見てるこっちまで嬉しくなる。うん、本当に嬉しい限りだ。こういうのを幸せな気分、というのだろうか。人ごみの中でその姿を離さないように肩に腕を回したまま俺は歩く。ミヨキチはそんな俺の腰に腕を回して歩く。他から見たらきっと仲の良い兄妹に見えるんだろうな。でも、俺達はそう・・・恋人、なんだ。 世 間 一 般 的 に ヤ バ イ 小 学 生 と 高 校 生 で す が 何 か ? まぁ、良い。世間体とか関係ないさ。俺はもう覚悟出来てるんだから。これだけの短期間で覚悟も何もあったものじゃない。けど、覚悟は覚悟だ。何があっても、ミヨキチが望まない限り、俺はミヨキチを離さない。「さて・・・じゃあ、どれに行きたい?」おおよそディズニーランドの中央部。そこで俺達は一回立ち止まった。「えっと・・・じゃあ、キャッスルカルーセルに乗ってみたいです・・・王子様」「ん?王子・・・?ふふっ。了解した、お姫様」俺達はそう会話をして歩き出す。あー、バカップルだな。若いな俺達。青いな俺達。青春謳歌してるな。蒼い春だ。・・・いや、普通に夏だけどな?「キャッスルカルーセルってだいたい空いてるらしいんですよ、他に比べて。ほら」指差された先にはメリーゴーランドがあった。言われてた通り確かにあのメリーゴーランドは他のアトラクションに比べて空いている。そんなに人気がないのだろうか。まぁ、今時の子供がませているのが原因だろうけど。「これなら少し待てば乗れそうだな」面白い奴を時間掛けて乗るよりも時間内でどれだけ乗れるかが案外楽しいか楽しくないかの境目なんだよな。と、なるとあれか。某黄色いクマのアトラクションは難しいか。さて、どう回るか・・・多少は時間を掛けてでも定番にも乗った方が良いんだろうしな・・・。映画見て昼飯見てここに来た訳だから残り時間は少ない。んー・・・。「お兄さん、順番来ましたよ」「え?あ、そうか」ミヨキチに引っ張られるがままに俺は白馬に跨った。その後ろからミヨキチが抱き付いてくる。・・・え? ち ょ っ と 待 て 。 こ れ は や ば い よ や ば い よ 。 っ て 出 川 か よ ! ! ミヨキチの吐息が衣類越しに背中をくすぐる。「背中、大きいですね・・・」ミヨキチが前半面を俺の背中にぴったりくっ付けるのを感じた。よりくっ付いてきたおかげで吐息がもっと感じるようになった。まだ小さいながら形を俺に感じさせるぐらいにはある胸が当たってドキッとした。心臓がバクバクと巨大な音を立てているのが解る。ミヨキチに気付かれるのではないだろうか。そこでふと自分の鼓動とは別の鼓動が背中から伝わるのを感じた。「お兄さん、心臓凄いですよ・・・」「お前もな、ミヨキチ・・・」そんな極度の緊張状態のまま俺達は回り始めた。「・・・・・・・・」「・・・・・・・・」ただ俺達はその動きに合わせていた。ぎゅっ、とミヨキチが俺に抱きついている手の力を強くした。両手をメリーゴーランドから離すのは危ない。だから俺は片手だけ離してその手に重ねる。そして、俺達は終わるまでずっとそうしていた。「えっと・・・次、どこに行きましょうか?」「ん?そうだなぁ・・・コーヒーカップなんてどうだ?」「アリスのティーパーティーですか?解りました」再び俺はミヨキチの肩に腕を回して抱き寄せるとそのまま歩き出した。コーヒーカップも定番の癖になんだか微妙に空いている。順番は予想通りあっさり回ってきた。対面、ではなく隣同士で俺達は座る。なるべくくっ付いて。「どうする?回しちゃうか?」「えっと・・・お兄さんのお好きなように」「思いっきり回しても大丈夫か?」「えっと・・・多分・・・?」「じゃあ、途中で無理だと思ったら言ってくれ」「はい」一抹の不安が残る中、コーヒーカップが動き始めた。それと同時に俺はハンドルを思いっきり回し始める。日頃SOS団で無理矢理鍛えられた二の腕はすぐにその速度を急なものにした。「ミヨキチ大丈夫か?」「は、はい・・・!」物凄い必死の様子で俺にしがみつくミヨキチ。その様子が可愛らしくて、もっとしがみついて欲しくて、苛めたくなった。だから、更にハンドルを回した。「あぅあぅー・・・みゅぅー・・・あうあうあー・・・!!」ミヨキチの口から変な声が漏れる。流石に心配になって回転速度を落とそうと思った時、ガクンッ。コーヒーカップの回転が急に止まって変な遠心力が発生した。「きゃ・・・・・・・」「おっと・・・・・・・」俺の方向にのめり込むようにきたミヨキチを抱きとめる。「あ、ありがとうございます・・・」「気にするな。立てるか?」「はい。・・・あ」ふらり。ミヨキチの体が傾く。俺はそれをそっと受け止める。「回しすぎたな。すまん」「いえ・・・大丈夫です」あくまでも笑顔。そんな様子にいたいけさを見出して俺は「よいしょ、と」「お、お兄さん・・・!?」何故かミヨキチを抱っこした。しかも、お姫様抱っこな。「は、恥ずかしいですよ」「良いじゃないか、俺達はその・・・恋人なんだからさ」「・・・はい」あぁ、くそ。顔赤くしての上目遣いは反則だ。 俺達は、そんな風にして色々なアトラクションに乗った。途中でパレードに見入った。そして、もう太陽も沈んだ夜。まだなおディズニーランドは人がごった返していた。ふと、そこで俺はある事に気付いた。 「やべぇ。ミヨキチの両親に何て言おう・・・」いくらなんでもこれは遅い。閉館時間もそろそろ近い。そんな時間だ。そんな俺に対してミヨキチはにっこりと微笑んだ。「大丈夫です。今日は、妹ちゃんに泊めてもらうって嘘言ってきましたから。 ですけど、妹ちゃんにはまだ何も言ってないんです。だから、家に泊めてもらえませんか?」「え・・・ふふっ。あはは、なかなかの策士。おぬし、なかなかやりおるのぉ~」俺はミヨキチの頭を撫でた。なるほど。友達のお兄さんに泊めてもらうと言わずに妹を使ったか。まぁ、そう言えば親も安心だろうな。あぁ、そうだ。高校生の男の家なんて言語道断だろう。「さて、最後はホーンテッドマンションで締めようか」「はい!」そして、ラストになったホーンテッドマンションへと向かう。もちろん抱き寄せたままな、お互いに。ホーンテッドマンションはディズニーランド唯一のオバケ屋敷、ってな感じのアトラクションだがさほど怖くは無い。コメディなホラーという感じだろう。あぁ、そんな感じだ。伸びる壁ってか、エレベーターの所でも。ほら、幼稚園児もニコニコ顔で笑っていらっしゃ―――「おぎゃー!!」・・・泣いておられるお方も居るようだ。「うぅ・・・」見ればミヨキチも震えている。見た目ほど、どうやら大人ではないらしい。そりゃそうだ。まだ、小学生なんだからな。「大丈夫だ。俺が居るぞ、ミヨキチ」「・・・はい」ミヨキチがぎゅっと俺にしがみついた。くぅ、可愛い・・・。って、べ、別にロリコンってわけじゃないんだからね!単純にミヨキチが好きなだけなんだからね!!そして、俺達は乗り物に乗る。オバケたちのパーティー。明るい雰囲気は怖さをやわらげてくれる。「ひっ!あぅー!?」・・・ミヨキチは非常に怖がっているようだが。先程から俺に抱きついて全く離れない。凄いガクガク震えている。か細く悲鳴を上げながら、目を閉じては目を開けて閉じる。そんな事の繰り返しだった。宙に浮いている蝋燭の場面等、完全にミヨキチはびくんと跳ね上がっていた。そして、鏡の所。そこでついに「ぐすっ・・・うぅ・・・」完全に泣き出した。これは予想外です。いくないよ。グリーンじゃないよ。「大丈夫か、ミヨキチ?」アトラクションを終えて外に出た俺達。「ぐすっ・・・怖かった、です・・・怖くない、って聞いたのに・・・ぐすっ・・・・・」そりゃ怖くないのが普通なんだぞ。などとは言えない。俺は黙ってミヨキチをそっと抱きしめてあやすことしか出来ない。ミヨキチも俺を抱きしめてひたすらに泣きじゃくる。そのまましばらくずっとそうしていた。「ぐすっ・・・そろそろ、帰りましょうか」「あぁ、そうだな。早く帰ろう」「えっと・・・今夜は、一緒に寝てくれますか?怖くて・・・怖くて・・・」「もちろん。ミヨキチが望むなら。俺は叶える者だからね」俺達はそんなこんなで帰路に付いた。 そんでミヨキチが家に宿泊する事になって、色々ごちゃごちゃうるさい事になるわけだが。それはまぁ、どうでも良い。今はな。
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