キョン1/2 長門編
あれから長門の携帯に連絡すると、「待ってる」という返事を戴いた。春先とは言え風呂上りに外出すると風邪をこじらせるかもしれないが、未来のことより今は目の前の異常事態を解決しなけりゃならん。纏わりついてくる妹を追っ払うと、俺はパーカーを羽織って玄関のドアを開けた。
長門が住むマンションに着き、インターホンを押す。無言の応対に俺だという事を告げると、玄関が開いた。もうこのやり取りは何回目だろうね。馴れた操作で708室をノックすると、制服のままの長門が出迎えてくれた。 「事態は把握している」流石長門。話が早いな。どうすれば元に戻る? 「しかし私ではどうすることもできない」なんですとー!?じゃあ俺は変化するへんてこりんな体のままってことなのか。 「そう。あなたの体の異変は昼に読んでいた本が原因と思われる。 涼宮ハルヒの力が元凶である以上、情報統合思念体でも対処は困難。 しかし」そこで一旦言葉を区切ると、長門はお茶を一口含んだ。 「現状のままでも観測に影響はないと考えられる。 大丈夫、あなたは私が守る」その心遣いは非常にありがたいが、俺はちっとも嬉しくないぞ。何回も長門に助けられているとはいえ、俺だって男なんだから意地というものがある。今は時々女になるけどな。 「1つ確認したいことがある。きて」そういうと長門は立ち上がって、俺を奥へと手招きした。確認したいこと? はて、一体何だろうな。 「入って」長門が招き入れたのはなんと浴槽だった。ちょっと待て。俺がお湯を被ると女になって、水を被ると男になるのは知ってるだろ?しかも服のままって濡れるじゃねーか。 「その心配はいらない。しゃがんで、頭を下げて」どうやら逆らうことは無理のようだ。コピ研との対戦した時のように有無を言わせない迫力がある。俺は観念して長門が言われた通りに座り込んで頭を垂れた。 「これでいいか?」 「いい」俺の視界はタイルの床しかないので状況がよくわからないが、恐らくシャワーを手に取った長門が蛇口を捻った。間髪置かず温かい雨が俺の頭に勢いよく降り注ぐ。肩と顔に髪の毛がかかり、また俺は女になったことを知る。そう言えば、この髪の毛はどれくらい長いんだろうな。鏡を見る勇気がないからわからん。 「まったく、何がしたいんだ長門って・・・おい!」長門はすぐに蛇口を捻ってシャワーを止めたかと思えば、俺の目の前に座り込むと突然俺の胸を掴んだではないか。待て待て待て! いったい何の冗談だ、長門。 「確認」 「は? ちょ、揉むんじゃない!」無言で胸を揉み始める長門。髪から垂れる水で服が濡れても気にしない。落ち着け長門! 今は女の体をしているが俺は男だぞ。お前までハルヒの手癖がついたんじゃないだろうな。このままだとマジやばいって! 「・・・・大きい」 「へ?」突然言われた形容詞にまぬけな返事をする俺。だが、長門の声は真剣というより怒りが混じっているような――。 「私より、大きい」そう言えば、長門の胸より大きい気がするが・・・って確認したい事ってこれなのか! 「そう、私はあなたの胸部に失望している」 「俺が望んだわけじゃねーぞ。ってだから揉むなぁ!」また無言で俺の胸を揉み始める長門。だから恨めしそうに俺を見るんじゃありません!
はぁ、いったい俺はいつになったら戻れるんだろうね。
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