暮れの演奏会
長門による我がSOS団の本日活動時間終了のお知らせだ。最近は太陽も日に日に長く顔を見せるようになり、今日はまだ顔を出している。俺はさりげなく部室を最後に出て、少し経った後、踵を返しまた部室に戻った。 ロッカーに隠しておいたアコギが和音を奏でる。 最近の俺がこうして部室に戻り、密かに弾き語っているのは決して歌が下手だとか、ハルヒに見られたらまた厄介事を生んでしまう、とかではなくちょっとした曲のためである。 まぁこの北高初学年は色々と面倒があったが楽しかったのは確かだしな、何もしてない俺からの礼の一つといきたい所だが、如何せん恥ずかしい。そこで一曲、俺なりの感謝の意をこめて歌でもって訳だ。曲は団長作のアレンジだがな。 なに、クサいだと!そりゃ俺だってそうは思う。しかしやってみると、面白いんだこれが。すでに完成している曲の発表をいつにしようかと悩みつつ、一人の世界で弾き語り続ける。いいもんだね音楽は。
~妄想が、妄想が、はびこる!ジャッジャッジャジャッ♪っと。
「・・・キョン?」 聞き慣れた声に顔を上げると机の対面に座る我らが団長、ってマズいな、俺はどれだけ自分の世界に入ってたんだ・・・。久々の自己嫌悪で顔を歪めた直後、
「・・・うん、あんたにしちゃ上出来じゃない。ほらもう一回歌いなさいよっ」
皮肉、嘲笑もない上に何故か顔が赤いハルヒを不思議に思うも、まさかのお褒めの言葉を頂いたしな。
ゴホンッ、心をこめて歌います、ハレ晴れユカイ、聞いてください。~♪
後に古泉に聞いた話だが実は俺の営みは皆とうの昔に知っていたらしい。何で言わなかったのか、と尋ねるとニヤケ3割増のスマイルで、
「あなたの歌が始まるといつも涼宮さんが入り口の扉にもたれるのですよ、大層聞き入ってる表情でしたね。それで僕達も黙っていましたが、あの日は扉が半分ほど開いてたのです。 夕日が差すあなたの姿は中々のモノでしたよ。涼宮さんも耐え切れなくなったのでしょう。」と。やれやれ。
それで結局、俺の演奏会は行われなかった。絶対的拘束力を持つであろう団長命令だ。まぁ、たま~に客一名のシークレットライブは行っているがな。 end
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