Black Lily・第三章
翌日――。 登校して、真っ黒な髪の長門由梨を見ると思う。 物事の終わりは、こんなに静かなものなのだろうか? と。「あんた、元気ないけどどうしたの?」 俺が教室に着いてイスに座るより早くハルヒが言った。さて何と答えればいいのだろう。「お前さ、長門が転校するってことになったら、どうする?」 ハルヒは宇宙の広がりを思わせる大きな瞳を一度パシリと瞬きさせてから、「有希が……転校?」 二つ隣の列にいる長門の後ろ姿に目をやった。「どうしてよ。妹が入ってきたばかりで今度は有希がいなくなるの? それっておかしくない?」 だよな。状況をまるっと全て説明されなければそう思うだろうさ。「やっぱりあの二人、仲が悪いとか?」 ハルヒは不思議顔のまま訊いてくる。そうじゃないんだ。むしろそのほうが俺としてはよっぽど分かりやすくてよかったんだがな。 もう遥かな昔にも思える入学したての五月、朝倉vs長門の構図になったことを思い出す。あの時みたいに、露骨に対立してくれればまだしも俺も立ち位置を見失わずに済んだだろう。今回の件が煮え切らないのは、それがどちらかというとドカンと騒動が起こるわけではなく、淡々と事実のみが告げられて収束へ向かおうとしているからなのだ。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。