古泉一樹の消失~もしキョンの立場が古泉だったら~
※この二次創作小説は教科書文通の設定を勝手に引き継いでます。 そして激しく涼宮ハルヒの消失のネタバレを大いに含みます。 ご了承ください
プロローグ
地球をアイスピックでつついたとしたら、ちょうど良い感じにカチ割れるんじゃないかというくらいに冷え切った朝でした。いっそのこと、むしろ率先してカチ割りたいほどです。 とはいえ寒いのも当然で、それは今が冬だからである。一ヶ月少し前の文化祭までやたら暑いと思ったら十二月になったとたん、急激に冷え込んで、今年の日本には秋がなかったことを改めて実感します。 地球の公転周期が狂ってるんじゃないかと僕が地球のことを心配しながら歩いていると「よっ、古泉」 追いついてきた軽薄な男が水素並みに軽い調子で僕の肩をたたいきます。 立ち止まるのはおっくうなので振り返るだけにしました。「おはようございます。山田君。」 と僕は返事をしてまた前を向いて歩き出す。
こんな長い坂道を毎日のように上っているんですから、体育の授業なんて少しぐらい削ってくれてもいいんじゃないですか?先生方は車で来ているんですし。「何をジジ寒いことを言ってるんだ、お前は?早足で歩けばいい運動になるぞー。ほら、体があったまってくるだろう?俺なんか、見てみろ。セーターも着てねぇ。夏場は最悪だが、この季節にはちょうどいいぐらいだ」 やたら元気なのはいいことなんですが、その素となるものは何です?僕にも少し分けてくれませんかね? 山田君はしまらない口元をにやりとゆがめ、
「ほら、期末テストも終わっただろう?おかげで今年中に学ぶことなんか何もないしな。それよりもすばらしいイベントがもうすぐやってくるじゃねぇか!」
期末テストなら全校生徒に平等にふりかかって平等に終わりました。
不公平なのは返ってくる答案用紙に書かれた数字ぐらいのものでしょう。
来年、二年生になれば、クラス分けは志望校に沿って行われる。文系か理系か。
さあ、どうしましょうかね。
「そんなことは後で考えればいいじゃねぇか。」
山田君は笑い飛ばした。
「もっと別に考えることがあるだろう?今日が何月何日か知ってるか?」
「十二月十七日、ですね」
と僕。
「それがどうしたんです?」
「どうしたもこうしたもないな。一週間後に胸が躍るよおな日がやってくるのを、お前は知らんのか?」
「ああ、解かりました。」
僕は正解を思いつく。
「始業式ですね。確かに冬休みを心待ちにするには足りるイベントですね」
しかし、山田君は、山火事に出くわした小動物のような一瞥をみまい、
「違うだろう!一週間後の日付をよーく思い出してみろ。自ずと回答にたどり着くだろーが」
はぁ。
僕はわざとらしく音をたててため息をもらす。
十二月二十四日。
解ってました。解ってましたよ?
来週に誰かさんがでっち上げたイベントがあるということぐらい。
誰かさんが見逃したとしても、僕が見逃せるはずがない。
僕の所属しているSOS団にこの手のイベントを絶対に見逃さない少女がいるのでね。
先月ハロウィンを見過ごしてしまったことを残念がっていましたし。
何かやるつもりなのは間違いまりません。
いや、実は何をやるのかも知っています。
昨日、部室で、涼宮さんは確かにこう発言しました。
「クリスマスイブに予定のある人はいる?」
扉を閉めるなり鞄を投げ出した涼宮さんは、オリオンの三連星のような輝きを瞳に浮かべながら僕達にこう宣言しました。
その口調には、「予定なんかないわよね、あんたたちももうちゃんと解っているでしょう?」
みたいな言外のニュアンスが込められているようで、YESとでも答えようのならたちどころにブリザードを呼び寄せかねない勢いでした。
そのとき僕は彼とTRPGをやっているところで、朝比奈さんはもはや普段着となりつつあるメイド服で電気ストーブに手をかざし、長門さんはSFの新刊ハードカバーを指と目だけを動かして読んでいた。
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