第1章-5 unknown encounter
「……あんたおもしろいわね」いつの間にか、涼宮はしかめっつらから不適な笑みを浮かべたかと思うと、しばらく考えて「いいわ、仮入団ってことにしてあげる。キョンにも、雑用係として手伝ってくれる人がいたほうがいいでしょ?」「ああ、そうだな」キョンが同意して、めでたく入団?ってことになってしまった。 俺は、文芸部とは名ばかりではないかとうすうす感づいていたので、とりあえず黙って様子を見ることにした……が、結局わけがわからなかった。 長門は文芸部らしく、あいかわらず本を読んでいたのだが、キョンと古泉はどういうルールかわからないゲームをしていたし、朝比奈さんはなぜかメイド服に着替えてお茶をくみ、涼宮は窓際の席に座ってパソコンで遊んでいた。 俺はというと、部室の中をうろうろしてみたり、キョンと古泉のゲームを見たりして時間を潰した。さっきの話の続きをしようとも思ったのだが、そんな空気ではないというのが読めたので、黙っていた。 どれくらい時間が経っただろう、長門が本を閉じたと思ったら涼宮が椅子から立ち上がり、
「解散!」
と叫んで、出て行った。嵐のような女だ……。
「さっきの話の続きをしよう。長門、どうしてこんなことになったんだ?」 キョンが、長門に向かって言った。基本的に長門はしゃべらない体質らしいが、キョンが話しかければ、なんとか口を開くようだ。長門は、俺がどこからともなくやってきた存在ってのを一番最初に気づいたので、理由を知っているのではないかと思ったのだが「涼宮ハルヒが原因。だけど詳しくはわからない調査中」冷たく言い放っただけだった。んっ、待てよ。「涼宮ハルヒが原因」ってのはどういうことだ?「僕が説明しましょう」古泉が一通り説明してくれた。俺にとって、信じがたい、痛い話を。 涼宮ハルヒは願望を叶える特殊能力の持ち主である。 笑ってくれ、そんなことが信じられるか?おまけに古泉は超能力者、長門は宇宙人、朝比奈さんは未来人らしい。キョンだけまともな人間ときたもんだ。そんな特殊な奴らを涼宮が集めてSOS団とかいう生徒会非公認組織を作ってしまい、俺は事情も知らず、いつの間にかSOS団に仮入団したと。 SOS団は、学校でどんな扱いを受けているんだろう。きっと変人ばかり集まっているということで煙たがられているはずだ。俺は知らず知らずのうちに、とんでも団に入ってしまったのではないだろうか? それはさておき、昨日までの俺はこいつらの話を信じなかっただろう。ガキの頃は宇宙人や未来人、地底人なんて存在を信じることもできたのだろうが、今は高校2年で、少しは現実ってのものをわかっているつもりだ。 だが今日の俺は、こいつらが言っていることを笑えず、信じるしかなかった。もう目をそらすことはできない。実を言うとだ……、昼休みに図書館に行って地図を見たんだが、俺が昨日まで住んでいた街が存在していなかった。
俺にとって、都合の悪いことばかり。今の立場を否定できる要素は一つもない。わかってる。信じるしかないさ。別の世界にやってきたってことを。
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