夏祭りはキョンをかえるようです
そんなこんなで(どんなこんなでなのかは全く謎だが)今日は8月15日、世間で言う盆休みだ。同時に終戦記念日でもあるわけだが、平和な平成を生きる現代人にはどうでもいいことなんだろう。現在午後六時半、俺は駅前の公園でSOS団の面々を待っていた。なぜこんな素敵な休みの日に皆で待ち合わせをしているかと言うと、今日は近くの河川敷で花火大会があるのだ。当然あのハルヒがそんな一大イベントを見逃すはずもなくこうして呼ばれたわけだ。しかし、まさか俺が一番最初につくとは思わなかった。ハルヒや古泉、朝比奈さんならともかく長門まで俺より遅いとはな。ぼーっとしながら待っていると、気付けば30分もたっていた。そこでようやくハルヒがやってきた。「いやーお待たせお待たせ。着付けに時間かかっちゃってさ」「遅いぞハル…ヒ…」普段時間前に来ているにも関わらず奢らされているもんだから、ここぞとばかりに文句を言ってやろうと思ったが…言えなかった。それはハルヒの浴衣姿に言葉を失いただ見ることしかできなかったからだ。「ふふん、どうよ」活発なハルヒには赤地の浴衣が似合うと思うだろうが、青地に白い花を散りばめたその姿は、いつものハルヒとはまた違う…大人の魅力を感じさせた。「ちょっとキョン…いつまでもジロジロ見てないでさっさと感想を言いなさいよ」「あっああ…まぁ、いいんじゃないか?」いきなりの質問に戸惑ってそんなことしか言えなかった自分が不甲斐ない。でもしょうがないだろ?それくらい俺はハルヒに魅力されてたんだ。「何よその曖昧な言い方、素直に綺麗って言いなさいよ」しかし我が団長様は今の感想じゃ不満らしい、やれやれ。「はいはい、綺麗だよ。正直似合いすぎだ」「ふふーん、よろしい」とりあえず団長様のご機嫌はとれたようだ。ご機嫌に太陽のような笑顔を俺に向けてくる。「それはそうと他の奴らはどうしたんだ?やけに遅いな」「あっ…」なぜかハルヒがバツの悪そうな顔をした。「なんか知ってるのか?」「っ!そっそうそう、三人とも用事で来れないそうよ」なるほどな、三人ともなら多分ハルヒ絡みなんだろう。俺を呼ばないってことは、三人だけで大丈夫と思ってもいいんだよな。「んじゃ俺たち二人だけか」「べっ別にいやなら帰ったっt」「んじゃさっさといくか、もう祭りは始まってるしな」ハルヒが何か言おうとしたが俺はそれを遮った。「…いいの?」「今更帰るのも勿体無いだろうしな。それに…ハルヒの浴衣姿がみれたしな」今日の俺はちょっとおかしいみたいだな、こんな臭いことが言えちまうとは。「なっ…臭いわよキョン」でも今日ぐらいは構わないだろ?ハルヒの照れた顔なんて珍しいもんみれたしさ。それに、なんだかんだハルヒも嬉しそうだろ?それからは二人でSOS団のことや昨日のドラマのことなど適当に話しながら河川敷へ向かう。河川敷につくと、こんなときだけ盛り上がる奴らで溢れかえっていた。こりゃ下手したらはぐれちまうな。「ハルヒ、手繋ぐぞ」「えっ?あっ…」ハルヒの許可をとらずに手を繋ぐ。今日の俺は本当におかしいらしい。怒られないかとチラリと後ろをみると、ハルヒは嫌がるどころか小さく照れ笑いを浮かべていた。そんなハルヒにドキリとしてしまい俺の足は速まっていく。おい、なんでこんなに心臓がどくどくいってんだ。ハルヒに聞かれてないだろうな。手が湿ってないかをひたすら気にしながら歩き続けた。しばらくハルヒを連れて歩いていると、ちょうど出店のあたりからは死角になってわかりにくい穴場を見つけた。ここからなら花火もよくみえるだろう。「ハルヒ、ここで待ってろ。適当に食い物買ってくるから」「えっ、あたしもいくわよ」「いいって、なれない服装だから疲れてるだろ。すぐ帰ってくるから」そう言ってハルヒを置いて俺は出店に向かった。「あいつ沢山食うからな…いろいろ買わないと」それに俺も結構腹が減っているしな。結果、たこ焼き焼きそばイカ焼きフランクフルトと買い求めハルヒの元に戻る。「おーいハル…」元の場所に戻ると、二人のチャラチャラした男に言い寄られてるハルヒがいた。「いいじゃねえかよ、どうせ一人なんだろ?」「だから、連れがいるって言ってるでしょ!どっか行ってよ!」「あっひでぇなぁー。どうせそんな男より俺達の方がいいってー」男の一人がハルヒにふれようとしたとき、俺の我慢がぶちぎれた。「おいっ!」「あっ?」ハルヒと男達が振り返る。ちょっと待ってろハルヒ。「ああ、あんたか。ちょっと今俺達この子に」「俺の連れに何のようだ」ナメた態度で言い寄ってくる男の言葉を遮りドスをきかせた声で話す。「きょっキョン…?」ハルヒが戸惑っているようだが、今はこいつらをなんとかしないとな。近づいて俺の胸ぐらを掴もうとしてきた野郎の胸ぐらを逆に掴んで奴の額を俺の額にぶつかるよう引き寄せた。お前を掴もうとしたせいでイカ焼きとフランクフルトが落ちたじゃねえかこの野郎「がっ…」痛がるそいつを睨みつけ、もう一度言う。「俺の連れに何のようだって聞いてんだ。あっ?」俺は喧嘩が結構強い。そんなこと全く自慢にならないが、好きな女一人守るくらいの強さは必要だろ?…ちょっと待て、好きな女…俺に好きな女なんて…ああ、そうか。やっとわかった、俺はハルヒが…。「おっおい、もういこうぜ」後ろにいたもう一人がそういったのでつかんでたやつを突き飛ばすと、逃げるようにどこかへ行った。「大丈夫かハル…っ!?」俺はハルヒの姿をみて絶句した、なんとハルヒが…泣いていたのだ。「ヒッ…ク…ヒッ…ク…」「はっハルヒ!?どうした!あいつらになんかされたのか!?」やっぱり数発殴っとくべき…って発想がそこらのヤンキーだなこれじゃあ。 「違う、違うの…キョンが…」えっ…俺が?俺がハルヒを泣かせたのか?「さっきのキョンが…まるで知らない人みたいで…怖かった…ヒッ…」…久しぶりにこんな後悔した。ハルヒを守ろうとして結果はやつらがやるようなことと一緒のことをしてたってわけか。「…すまんハルヒ。お前が絡まれてると思うと我慢出来なくてついカっとなっちまった」「…許さないんだから、罰ゲームよ」うっ…やっぱりダメか…一体どんな罰ゲームが…。「…あたしを抱きしめなさい」…やれやれ、全然罰ゲームになってないな。数秒間をおいてから優しくハルヒを抱きしめる。 「…あんたを待ってる間、寂しかったんだから」「すまん」「助けてくれてありがと」「ああ………ハルヒ」「うん?」「…好きだ」「…うん」綺麗な花火が、俺達を祝福するように輝いていた。 fin
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