Jast Be Friends
このSSはニコニコ動画のボーカロイドオリジナル曲「Jast Be Frends」を勝手にハルヒSS化したものです。そういうのが嫌いな方やニコニコ動画が嫌いな方は読まない方がいいです。
知らなかったんだ…どれだけ好きでも、どうしようもない時があるなんて。知らなかったんだ…どれだけ両想いでも、心が全く違ってしまうなんて。知らなかったんだ…好き合っている人と別れなきゃいけない時が来るなんて。知らなかったんだ…それがこんなにもつらいことだなんて。それでも…それでも俺がハルヒを好きなことだけは変わらない。 -Jast Be Friends- 俺とハルヒは付き合っている、もう四年になるだろうか。高校三年の夏、一世一代の決意を決め告白したところ、なんとハルヒも俺を好きだと言ってくれた。二人は両想いだったってわけだ。それから俺は猛勉強した。少しでもハルヒに釣り合う男になろうと寝る間を惜しんで参考書を開いた。結果そこそこ賢い大学にいくことができた。ハルヒは当然国立大だ。学校が違っても俺達は愛し合っていた、暇を見つけては二人でデートをした。そう、俺達は幸せだった…あの大学四期生になったあの日までは。 今日は一週間ぶりのデートだ、いつもの喫茶店で待ち合わせをしている。最低でも一週間に一回はあってると言うのに、早くあいたくて仕方がない。こりゃベタぼれだな。喫茶店につくともうハルヒが席に座っていた。「ハルヒー」「…キョン」しかし今日のハルヒは何故だか少し元気がなかった。「どうしたハルヒ?具合でも悪いのか?じゃあデートは中止してハルヒの家にでm」「認められたの」俺の言葉を遮ってハルヒが言った。認められた?「あたしが時間と空間の関係について研究してるのは知ってるでしょ?その研究が認められたの」俺と付き合い始めたのを機にハルヒの能力は消えた。 でもハルヒはそれからも不思議探しを止めることはなく、今も不思議を探して日夜研究に励んでいた。「すごいじゃないか、よかったなハルヒ」「うん…それでね………」「ん?まだなんかあんのか?」この時、何故だかとても嫌な予感がした。これからハルヒが言うことは聞いちゃいけない…そんな気がしたんだ。しかしもう遅かった。「留学してアメリカの研究チームに参加しないかって言われたの」ハルヒの言った意味が一瞬よくわからなかった。アメリカ?…アメリカってのはUSAでつまり日本から14時間離れてて北アメリカ大陸にあって…アメリカ!?「まっまじかよ…」「うん…それでね、あたし」 その先は聞きたくなかった。何を言うかは今のハルヒの表情から容易に想像がついた。だから言われる前に抑えつける。「いくなよ…嫌だからな。俺は離れるなんて嫌だからな」「………」「嫌だからな!」「……うん」 その後のデートは全然楽しくなかった。ただひたすら街の中をぶらつき続けていたら夜がきてハルヒと別れた。家に戻ると家族にただいまも言わず部屋に入りベッドに寝転がる。「アメリカかぁ…遠すぎだろ」ハルヒはきっと行きたいだろう。アメリカにいけばあいつの夢にどっと近づく。でも同時に、迷っているのかもしれない。俺を置いていくのも怖くて…なら、俺が言わなくちゃいけないんだろうな。考えることに疲れて、目を瞑った。 そう決めてからもう1ヶ月がたった。俺は未だに切り出せないままだった。頭の中でそう決めてもいざ切り出そうとすると心が拒んだ。やれやれ、あきれかえる自己愛精神だ。ハルヒの将来も考えず自分ばかりをまもる。最低だな俺。ハルヒもそんな俺の気持ちに反応してるのか、ずっとギクシャクしたままだった。会っては棘だらけの言葉で傷つけあい、その後適当に見繕った言葉で仲直り…そんなのが何日も続いた。なんでだろうなハルヒ…こんな風になっちまって余計に理解した。俺はこんなにもハルヒを愛している、離れたくない。でも、俺から言わなくちゃいけない…でないと、お互いどこにも進めないままだろう ある日、ハルヒにいつもの喫茶店に呼び出された。喫茶店にいくと、ハルヒは笑っていた。「やっぱりね、あたし行かないことにしたわ。だってキョンと離れたくないもの」「ハルヒ…」そう言って笑うハルヒの姿は、あまりに痛々しすぎて涙がこぼれそうだった。ここで言えなかったら、ハルヒはずっと後悔したまま一生を過ごすことになるだろう…それだけは嫌だ。(ハルヒ…ハルヒ…ハルヒ…)ハルヒの笑顔を頭に思い浮かべる。太陽のように輝く純度100%の笑顔を…胸の中にそっとしまって…俺は切り出した。「ハルヒ…お前…本当は行きたいんだろ?行くべきだ」「えっ…」 二人の間に重い沈黙が続く。正直逃げ出したい気分だ。それでも、大好きなハルヒのためだから。自己満足と言われようと、もう決めたから。「なんで…なんでそんなこと言うのよ!」「ハルヒ…」「あんたはそれでいいって言うの!?あたしと離れても別に構わないって言うの!?」「…嫌だよ。嫌に決まってる。離れたくなんかない」泣きそうになるのをこらえながら、静かに諭すように言う。「だけど、それでも行くべきなんだ。こんなとこで、お前の夢を諦めちゃいけない。俺はお前の夢を諦めさせる存在になんかなりたくない」「そんなっ………」ハルヒはまだ何か言おうとしたが、俺の表情をみて本気だとわかったんだろう。力なく椅子に腰を落とす。 「…わかったわ」小さく、そう言った。人生が仮に道だとしたら、俺とハルヒが歩く道は、いつからか違ってしまっていたんだろう。「あんたに言われたら…行かないわけにいかないじゃない」そう言ったハルヒの瞳から、滴がこぼれ落ちた。「ああ…じゃあな」そう言って俺は歩き出す。「…ひっ…っく…うっ…」振り返るな、前を向いて進め。もう…これでおしまいだから。「…っ!」はは、この頬を伝う涙は誰の涙なんだろうな…ああ…これもきっと…ハルヒの涙なんだろう。俺達がともに歩いた道は…もうここまでだよ。 今俺は、空港の屋上にきている。今から飛ぶあの便に、ハルヒは乗っているんだろう。夢をかなえるために…。「…」頭の中に鮮明ハルヒが蘇ってくる。ハルヒと初めて会ったとき…SOS団を結成したとき…お互い素直になれずに何度も喧嘩した…告白したときの緊張と喜び…初めてのデート。ハルヒの怒った顔…ハルヒの寝顔と寝息…ハルヒの涙………太陽の笑顔。「ハル…っヒ!ハルヒ!ハルヒ!ハルヒ!ハルヒ!ハル…ヒ…」声を枯らして、最愛の人の名を叫び続ける。頬を伝うなにかなんて知ったことじゃない。 …あり得ないだろうけど、もし一度だけ願いが叶うなら。いつかのお前に会いに行くから…だから…さよなら、ハルヒ。 fin
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