朝倉涼子の挑戦
俺は目覚めた。またか・・・と思った。やむことのない雪。雪に埋もれた町。その上に二人に人間がいる。
近くには古泉がおり、笑顔で両手で阿修羅のようなポーズをとっている。「これで何回目でしょう」目元にははっきりとした隈が浮き出ている。「次くらいでいいかげん終わりにして欲しいもんだ」「だとしたら、いよいよクライマックスというわけですね」
「さすがにここでは僕の力も発揮できるとはいえ、こう立て続けになると・・・」俺はここで古泉に死んだらどうなるのかを聞いた「わかりません。ただ、ひとついえるのは死んでからでは遅いということです。だったら死なないようにがんばりましょう」「・・・・」いつの間にか眠りについたようだ。
真っ暗な中で目覚める。どこかで見た現代的なつくり。全国どこにでもある。ここは・・・コンビニエンスストアだ。誰かが近くにいる。ダッフルコートを被っている。そうやってそいつの顔を良く見てみる。どっかで見た顔だ。いや、もっと身近な存在だったような気がする。ああ、こいつは、長門だ。
ロウソクの火だけで照らされた店内。異様な光景だな。外を見てみるが真っ暗でなにも見えない。しばらく動けそうにない。
「あなたは凍傷で足の指を5本失ったがわたしの力によって再生したそのかわり・・・2時間は自由に体が動かせないという後遺症が残った」俺はいつのまにか目を閉じて、眠りについた。
目を覚ます。見えるものは相変わらずだ。俺の精神もやばいな。そろそろ首吊り用ロープを探し出してもおかしくない頃合だ。しかし、長門のほうを見てそれも思いとどまった。長門は俺を助けた。たったそれだけの理由だ。長門もいつの間にか眠っているようだった。まだ・・・なんとかなるかもしれない・・・そうやってよろよろ立ち上がる。
その途端、レジの配線コードにつまづき、派手に転んだ。やる気が一気に幻滅した。怒りに似た感情が沸きあがってくる。「ちっくしょー!!!!」久しぶりに聞いた自分の声。少し目が覚めた。喉が渇いた。俺は麻薬中毒者のような足取りで冷蔵庫の棚を開けて適当なボトルの蓋をポイ捨て、ガブガブと喉に流し込む。うまい。久しぶりに生きてる心地がしてきた。俺は思い出す。SOS団という組織。いや、団体。何もかもが懐かしい。それがなぜこうなった!俺に何か恨みでもあったというのか!?今すぐでてこい。そうしたやつを殺してやる!俺の頭はホットプレートを押し付けられたように熱くなっていた。「ブェア!」さっきからイライラしていたんだ。カルシウム不足かな。外が真っ暗で何もみえなくてイライラするんだ。俺は思いっきり窓ガラスをぶん殴った。痛かった。何がしたいんだろうな。俺は。気づくと長門が俺の腕を取って首を振っていた。一瞬、敵かと思って血だらけになった腕で殴ってしまいそうになったがその0・2秒前に思いとどまった。「精神安定剤を注入する。」そう言って長門は俺の腕に噛み付いた。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は息が苦しくなってその場に倒れた。しかし俺の怒りは収まらなかった。長門が心配そうな顔をしていたが俺にはどうしようもない。「誰に怒っているの」俺をこんな状況に置いたやつに向かって誰か教えろ!なぜ黙っている卑怯者め!!うーと声を出してみる。さきほど大声で叫んだせいで喉がイカレたようだ。俺はここから脱出する。この怒りをそいつにぶつけてやるまで。絶対ここから脱出するんだ・・・そんなにここから出たい?俺の潜在意識に呼びかける。ああ。出たいとも。じゃあ出してあげよっか。ぐぁッ!?
どこだここは・・・また飛ばされたのか・・・目の前には少女・・・俺の生理的に受け付けない女が立っていた。朝倉・・・?俺を2度も殺そうとした朝倉。しかし体が動かない。やつはやっぱりアーミーナイフを握っている。なんだこの空間は。意味の分からない幾何学模様がグルグル回っている。俺は十字架に貼り付けられたみたいな恰好をしてやがる。そいつはゆっくりと俺に歩み寄った。
「種明かしをしてあげる。わたしはあのとき、長門さんによって情報連結解除された。その意識は情報統合思念体に帰するはずだった。でも、それを思念体のえらい人は許さなかった。わたしはあのときの判断が正しかったと思ったんだけど、わたしはつらい罰を受けることになった。本当に辛かったわ。最上級の刑になったのよ。」朝倉は上目遣いで俺の顔を下から覗き込む。「わたしには涼宮さんの力がそこまで利用価値のあるものとは思わなかったのよ。だからなおさら納得がいかなかった。世界が終わるなら終わってしまえばいい。わたしもはやく消えてしまえばいい。でもできないという地獄のような罰。この苦しみをあなた達にもわかってもらいたいな。」また怒りが沸いてくる。しかしこの俺の立場は不利だ。どうしようもない。確かに辛いな。こいつに突進していって最期の抵抗をしてから死んでしまいたいのに俺は動くことができないんだ。「っざけんじゃねえよ!!!!!!」俺の声は土管の中のように反響する。そいつは俺の最大級の声にもビクともしないで逆に笑みを浮かべて、「これでわかったでしょ。でもわたしの正体を知ってしまったからにはもう終わり。あなたはここで死ぬのよ」そうモデルのような歩き方でさらに歩み寄ってくる。「刺される場所はどこがいいかしら?でも、ナイフって飽きちゃったのよね。長門さんみたいに情報連結解除をしてもいいわね。足元から自分が消えて逝く恐怖。たまらないでしょう?」せめてもの抵抗をしてから死にたい。こんなのは・・・キン!金属音。朝倉の手のナイフが消えている。一瞬何が起きたのかわからなかった。最後に見たのは朝倉の唖然とした表情。空間が消える。白。完全なホワイトアウト。しかし足がプラプラしているあたり、空中にいるようだ。自分が落ちているのか、上昇しているのか、留まっているのか。それすらもわからない。ストン。軽い衝撃だった。視界は変わらないので何が起きたのかわからない。幾度と感じるデジャヴ。この景色にはもううんざりだ。俺は朝倉に殺されたんだろうな。そう思った。しかしこうして意識がある。俺は死んでいない。そう思いかけたところでまた俺の意識は途絶えた。
・・・・・
ようやく白い景色におさらばできた。今度は灰色の空間だ。見渡す限り何もない景色ではない。ここは町だ。どっかの町。それも結構な都会。ああ、でもやっぱり元に戻ってないんだな。俺の意識が呼びかける。ハッとして起き上がる。今度は近くにはハルヒがいた。ハルヒももうこの状況には慣れているようだった。「ほんと頭くるわね。いつまであたしは夢から醒めないつもりなのかしら」そう自分の頭をポカポカ叩いている。しかしなぜだ。いつも必ず二人組になるのは。そしていつも俺がひどいめにあう。
違う。二人じゃない。古泉、長門、朝比奈さん、それに新川さんに森さんに多丸さん兄弟までいる!いくらか俺の孤独感を和らげてくれる。「この空間のどこかに核爆弾が仕掛けられました。これは私たちへの挑戦のようです。時間までに解除できなければこれで本当に全てが終わり。閉鎖された空間で核爆発をおこしたらどれほどの威力か想像できますか?これから地下に潜っても間に合わない。生き残る方法はただ一つ。核の起爆装置を停止するのみ」「待て!なんでそんなことが分かる!?」「わかってしまうのですからしょうがないとしか」古泉らしいいいぐさだ。「残念ながらここでは僕達の能力は無効のようです。あなた達の協力が必要です。時間がありません。手短に説明します。これが核のある場所です。と、古泉はノートパソコンに似た小道具を取り出した。そこのディスプレイには町の断面図が3D映像でクルクル回っている。キー操作をするとその一部が拡大される。ひとつの高層ビルの内部に赤い点がある。「これが、核のある場所です。ここからは・・・あれです。観覧車の隣に立っている大きなビル。69階に核がセットされているようですね。」パタンとそれを閉じる。「できれば分散して行動して、一番最初に辿りついた者が核を解除する。」「核の解除なんてわかんねーよ!」「まあ、落ち着いてください。」と、古泉は黒い大きなアタッシュケースから全員にガジェットを配る。「機関の開発した、核解除高性能コンピューターです。つかいかたはいたって簡単・・・核弾頭の半径1メートル以内でこれを解除して・・・トリガーを引いてホールドするだけ。あとはコンピューターが勝手にやってくれます」それから・・・ともうひとつのジュラルミンケースを新川さんから渡され、それを地面に置く。中からは大量の武器が出てきた。モデルガンじゃない。本物だ。いつぞや朝比奈さんがぶっぱなしていたやつまである。さすがは機関だ。「これで戦えと?」「ええ、レーダーでは非人造人間タイプの・・・そうですね。小さな神人とでも言いましょうか。それを大量に感知しています。」「くそったれめ」「やってきたようです」見ると向こう側からワラワラとたくさんの人影が現れた。そいつらはすばやい獣のような動きでやってくる。「こっちだ!」逆の道路に向かって走り出す。機関の人間に継いで長門、俺とハルヒ。最期尾には朝比奈さん。目的地まではまだまだである。見通しの良い道路とはいえ、そこに障害物が蠢いている。トップを走るものの足が止まった。まだ対象から100メートル以上あるのに機関チームは正確な射撃で的確にそいつらを狙い撃つ。そいつらを一掃するとまた走り出す。後ろを振り返るとさきほどの敵がまだ追ってきていた。朝比奈さんが使いなれていない銃をぶっぱなしている。「うあああ!」と、誰かの叫びが聞こえる。振り返ると、多丸圭一氏が一人の敵に腕で体を貫通されていた。すぐさま射殺したものの、圭一氏はその場に力なく倒れた。「くっ・・・!!」新川さんは悲しむ暇もなく目を背け、戦闘に集中した。こんなのって・・・こんなのって酷すぎる・・・誰かを守れば自分が死ぬ。かといって全員で固まっていても核のタイマーが切れて時間切れだ。俺はみんなから外れて違う道を行くことにした。頼れるのは己の銃のみだ。前方に三匹、対象を発見した。そいつらはすばやい動きで全力疾走してくる。そいつら頭をぶち抜く。そしてまた走り出す。それを何度か繰り返す。転んでもすぐに這い上がる、すでに俺の体はボロボロになっていた。ようやく、目的のビルに辿りついた。息が苦しい。だが、休んでいる暇はない。
入り口は自動ドアのようだった。しかし銃でガラスを破壊しながら中に侵入した。エレベーターは電源が落ちていて使えない。やむをえず階段を使う。69階につくころには脚の筋肉がパンパンになっていた。限界だった。俺は階段に下半身を投げ出してそのまま仰向けに倒れこんだ。苦しい。だが、休んでいる暇はない。フラフラと歩く。ここのどこかにあるはずだ・・・みんながどうなったかは分からない。しかしここに辿りついたのは俺が最初だ。俺がやらなければならない。適当にドアを開いて中に入る。核弾頭らしきものは見当らない。くそっ。次だ。ない。ない。こうしている間にも核のタイマーはゼロに近づいている。
警報が鳴り響いた。突如、天井がぶち破られ、多脚のメカが目の前に出現した。明らかな敵意を赤いセンサーライトから感じる。自動小銃のようなものが俺に向いている。くっ!俺は横に反転してかわし、機材の影に隠れる。ガガガガと地面に穴が空き、表面のタイルが剥がれて飛び散る。こっちは駄目だ!俺は逆の方向に逃げる。はやく・・・探し出さないと!
俺は次の部屋に入る。ただの喫煙室のようだ。そして次の部屋。重い扉を開ける。あった・・・銀色の固定台の上に置かれた核弾頭とその起爆装置を。今も確実に時を刻んでいる。その時間を見て俺は身震いする。デジタル表記の数字はあと3分しかない。しかしそれだけあれば十分だ。俺は機関の発明したガジェットを起動しようとした。後ろから射撃音が聞こえる。機関チームも到着したのだろうか。それなら一層心強い。ガガガガガガやけにぶっぱなしている。ここには核がある。誤射してはまずい。「ここに核がある!もう撃たないでくれ!」そう扉の向こうに呼びかけた。扉がふっとんだ。現れたのはハルヒだった。「ハルヒお前・・・」ハルヒは蒼白な顔をして言った。「よくここまで辿りついたわね」「ああ、お前もな」「まさかあんたがここまでやるとは思わなかったわ」「はやく解除しよう」
そのときだった。さっきの殺人マシンが現れたのだ。赤い目のそいつはレーザー標準を俺に合わせる。心臓の部分に赤い光点がある。撃たれた。射撃音。逃げられなかった。目の前を黒い影が通りすぎる。・・・!?それが俺にはスローモーションのように見えた。その姿は・・・多丸裕さん!?裕さんは俺に向かって空中で俺に向かってグッジョブとやってからドサリと床に倒れた。ハルヒの悲鳴が聞こえる。裕さん!俺はハルヒを抱えて鉄製の机の影に飛び込む。銃弾がそれに跳ね返る音がする。機械のウイーンという歩行音がする。こっちにきている。核を撃たれたらおしまいだ。俺は死角にハルヒの手を引いて回り込む。「今だ撃て!」仕留めた。と、俺は思った。ハルヒも銃撃に参加する。そいつの脚が吹っ飛んだ。もう歩けない。
しかしメインセンサーの赤い光はまだ動いている。ウイーンと自動小銃がこちらに反転してくる。「隠れろ!」ピュンピュンと後ろの壁に穴が空く。まだ動けなくても射撃能力は残っているようだ。これでは核に近づけない。核のタイマーはもう1分を切っている。間に合わない。俺は物陰から飛び出した。ハルヒが止めようとしたがその手は宙を切った。そいつに向かって全力で走る。射撃される。一か八かだ。そいつが射撃をはじめるとほぼ同時にジャンプする。銃弾は俺の真下を通り抜ける。そうしてそいつの反対側に着地し、自動小銃がこちらに反転してくる前に両手でガッシリ押さえつける。「ハルヒ!はやくこいつを撃て!」自動小銃の力はもの凄い。腕の筋肉が悲鳴を上げている。「キョ、キョンが死んじゃう!」「いいからはやくしろ!間に合わなくなっても知らんぞ!」前腕の血管が浮き出し、指が紫色に変色している。ギリギリと銃口が俺のほうに迫ってくる。体制を変えれば力が抜けて俺は撃たれてしまう。「自分を信じろ!」「だ、ダメ!!キョンが!」筋繊維プチプチ音を立てて断絶してきた。もうそんなに持たない。銃口は俺の左胸ギリギリまで来ている。くそっ!ここまでか!次の瞬間。俺の左胸は打ち抜かれ・・・全身から力が抜ける。一気に掴んでいた手が軽くなる・・・?マシンの赤いセンサーライトがフェードアウトしていく。その向こうには泣きそうな顔で銃を構えていたハルヒがいた。そのままハルヒはがっくしと地面に手をつく。ハルヒが、最後の覚悟で狙いを定めて射撃したのだ。キュイーンと高い作動音が低くなっていき、その音は消失した。まだ・・・時間があるのか?タイマーはもう既に30秒を切っている。腕が痙攣していうことを聞かない。「ハルヒ!はやく・・・解除を!」ハルヒはガジェットを取り出す。震えた手で核に密着させると「これを解除してトリガーをホールド!」ピピピッとガジェットの作動音が聞こえる。まだタイマーは止まっていない。ハッキングを仕掛ける。・・・まだだ。機関の力はこんなものだったのか!?ついに一桁台に入る。10・9・8・7・7・7・・・・止まった・・・?キュイーンと核のタイマーが2~3秒足らずで10分まで巻き上げられる。どうなっている・・・?成功したのか・・・!?そのまま時間は停止する。また動き出した。ピッ、ピッ、どうなっている!?「そ・・・そんな・・・しっかり手順通り・・やったのに」ハルヒは力なくその場に倒れた。もう俺達の力では手の施しようがない。「・・・くそっ・・・ここまでか・・・」「諦めるのはまだ早いわよ!」扉には森さんが立っていた。森さん・・・!生きていましたか!ケースから工具を出した。まさか・・・分解するつもりじゃ・・・「安心して。核の解体は以前もやった経験があるわ」一体どんな場面だったのだろう。きっとこういった技術もハルヒの能力によって身についたものなのかもしれない。その後ろからは新川さんが。「早速解体作業に移りますよ新川」新川さんは電動ドリルを片手に、チュイーンとタイマーのまわりのネジを次々と吹き飛ばしていった。カバーを外す。いろいろな色の配線コードの奥。森さんはハッとあることに気づいたようだ。「これは・・・これは・・・」「どうしましたか?」「ダミー・・・偽物の核だわ」「・・・この他に本物の核があると?」「そういうことになります」と言いながらも血の気の引いていく森さん。「まさか・・・」「遊びは終わりよ」その声は・・・朝倉。と、同時に古泉が入ってくる。長門、朝比奈さんも。しかし朝倉の実体が見えない。しかし間違いなくこの部屋から声が聞こえる。くそっ・・・どこだ・・・!?「きゃああ!!」目の前のハルヒが俺を指差して悲鳴を上げる。「なん・・・」「うしろ!!!」うしろがどうした・・・て冷たいものが喉に当たる。まさか・・・・全員が口を開けて声にならない声を上げている。「あなた達は今までよく頑張ってきたわ。でも、もう終わり。だから最後に聞いていい?」俺の耳にそいつの息が吹きかかる。「わたしにはどうしてもわからないことがあるの」冷たい声が室内に響き渡る。誰も声を発しようとしない。「どうしてみんなあなたをかばおうとするの?わからない・・・あなたをそこまで心配するほどあなたに存在価値があるとは・・・どうしても思えない・・・」・・・俺に・・・聞いてるのか・・・?今までのできごとがフラッシュバックする。なぜ俺ばかりが酷い目にあったのか・・・そうして心配してくれたり看病してくれたまわりの人間。そうか・・・一緒にいるやつの反応を見るためか。そのために俺を・・・そして二人組にしたのもじっくりその様子を観察するため・・・!「仲間だからさ・・・」「仲間?わたしには有機生命体の仲間の概念が理解できないんだけど」「・・・わたしには・・・わかる」そう口を開いたのは長門だった。「馬鹿言わないで。そんなのは思念体にとって利用価値のないただの無視情報にしか過ぎないんだから」「あなたもわかっているはず」沈黙。今にもナイフが喉を貫きそうだ。「あなたには借りがあるわ。3回も邪魔されたんだもんね。」まさか・・・あのとき朝倉のナイフが消えたと思ったのは長門が阻止したからか・・・?長門は続ける。「わたしにはわかる。あなたの独断専行はあなたの潜在意識が働きかけ、エラーが積み重なった結果と判断している。」「そんなの、あなたの勝手な推測にすぎないと思うんだけど。だってあなたは情報統合思念体に一度は処分の検討がなされたでき損ないのよ?」「あなたが一番良くわかっているはず・・あなたは涼宮ハルヒと同じクラスであった、涼宮ハルヒにも話しかけた。接近を試みた。でも・・・涼宮ハルヒはあなたを選ばなかった・・・」朝倉の虚をつかれたような声が耳元で聞こえる。「そしてあなたは同じクラスの一人の男子生徒に嫉妬した・・・」「あなたは上辺だけの関係を築く能力に・・・」俺の喉からナイフが離れる。驚いて恐る恐る振り返ると、そこには両膝を床につけ、両手に手を当て、泣きじゃくる朝倉の姿があった。「そんなの・・・そんなのわかってた・・・だけど・・・わたしにはそういうふうにプログラムされているから・・・」・・・わたしもあなたたちと同じように仲良く話したりしたかった・・・「あなたはわたしと同じ」朝倉はしばらく泣き続けていた。そして声を絞り出すように「わたしを・・・殺して・・・」一同は押し黙る。時間の流れがひどく遅く感じる。「それができないのなら・・・」と、朝倉は反対側に向き直る。その向こうにはガラス一枚挟んで足場がない。止める暇もなかった。朝倉は頭から思いっきりガラスに突っ込んで・・・69階から飛び降りた。朝比奈さんがキャッと目を両手で覆って顔を背ける。どよめきが聞こえる。それにしても突然の、一瞬のできごとだった。床には、一滴の涙の痕が残っていたのみだった。視界が白くなっていく。みんなが光に包まれていく。なにも見えなくなった。
目が覚める。天井にはカバーで覆われた蛍光灯。久しぶりに見る自分の部屋。両手を動かしてみる。なんともない。今までのことは全て・・・夢・・・?日付を見てみる。しかし俺の時間感覚では一週間は過ぎているはずである。期末テストが終わって一息ついて今日はゆっくり寝るぞと心して床についたのが事の発端だった。今はその次の日の、朝。長い夢だった。夢の中で寝たり醒めたり、わけがわからん。なんだかすごい場面に遭遇したような気がするが、半日も経てばいつもの日常の空気に俺の脳は慣れていく。しかし俺は今でもそのことをちょっと思い出すことがある。もっとはやくこのことに気づいてやれていたら・・・あいつもやり直せたのかもしれない。 と
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