涼宮ハルヒの喪失 ─プロローグ─
暑い、何故こんなに蒸し暑いのだ。まだ6月半ばだというのに、この焼けるように暑い日差し、まだ梅雨独特のまとわりつく湿気。唯一の救いは衣替えが済んでいるという事だけだ。
そんな憂鬱な気分を抱きながらいつものハイキングコースを歩いていると、太陽より暑苦しい奴が側に駆け寄ってきた。
「おはよう、キョン!」
あぁ、おはよう。しかし、なんでこいつはこんなに元気なんだろうね。いつもなら机に突っ伏して、暑いといいながらダウナーな雰囲気をかもちだしつつ、不機嫌な面でいつも後ろの席にいるのに何か良い事でもあったのだろうか。
「なによ、元気ないじゃない。SOS団の一員ならこんな暑さに負けるんじゃないわよ!」
いつも暑さに負けてる奴がいっても説得力はないんだがな。っと心の中でつっこみを入れながら、はいはいと軽く受け流しておこう。まぁ、しかし怒りながら笑うという器用な真似をするこの団長様、傍若無人唯我独尊猪突猛進女の涼宮ハルヒは、いつも悪巧みを思い付いた時の顔でニヤけていた。
「実はね、いいこと思い付いちゃったのよ!」
あぁそうかい。っと軽く流したのが俺の過ちだった。
「なによ!せっかく良いこと思い付いたのに、あんたも少しは喜びなさいよ!」
やれやれ。などと俺のお決まりの常套句が口からこぼれた。こいつは思い付いたが吉、エンジン全開で駆け抜ける。俺はそんなことにいつも振り回されて、結局一番苦労する羽目になるのは、お決まりなんだ。
「うるさい!あんたは雑用なんだから当たり前よ!あ・た・り・ま・え!」
おっと、声に出ていたか。俺は、はぁ…っとわざと大きく溜息をついた。そんなやりとりをしていたら、校門が目前に迫ってきていた。しかし、朝から何だろうね。
ともかく、この頃の俺にはこれから起きる事なんてまったく知るよしもなかった。知ることが出来ても、知りたくないんだが。
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