みくる「キョン君・・・私と付き合ってください」
朝、いつものように教室に入ろうとすると、何故か朝比奈さんが教室の入り口の横でちょこんと、さりげなく、居た。
みくる「キョン君・・・私と付き合ってください」キョン「は・・・?」今なんと?俺は耳を疑った。だって俺は何の変哲もないただの高校生で、でも変なあだ名で呼ばれててそれで-----
みくる「あの・・・聞いてます?」
なんだこれは・・・ドッキリか?ハルヒの差し金か?
ハルヒが朝比奈さんに告白するよう仕込んだのか?
それともハルヒの能力で朝比奈さんの感情をコントロールしたとか?
そんなことしてハルヒは何か得するのか?というかそんなことできるのか?
頭の上のクエスチョンマークが10秒に1個づつ増えていき、そしてそのクエスチョンマークが10個ぐらいになった頃、
朝比奈さんのすごくわざとらしい咳が聞こえてきた。
みくる「ですから、私と付き合ってもらえませんか?」間違いなんかじゃ無い、今、まさに、朝比奈さんに愛の告白をされているのだ
キョン「ほ、本気ですか?」みくる「はい」キョン「でもこの時代の人間と付き合うわけにはいかないって・・・」みくる「はい・・・でもキョン君への気持ちが抑えきれないんです」キョン「・・・」
こんなの、突然すぎて即答できるわけが無い。
キョン「あの、考えさせてください」
俺は考えていた。確かに朝比奈さんは好きだ。大好きだ。それは認めよう。
でもそれはかわいくて憧れの先輩として、という意味だ。恋愛対象としては----どうなのか。
昼休みになって俺は部室に向かった。そこに居たのは長門だけだった。
いつものように分厚いハードカバーを読んでいる。
椅子に座り、なんとなく長門を眺めていた。
長門に相談してみようか、でもこいつは恋愛に疎いどころの話ではないしな・・・キョン「なぁ長門」呼ぶと長門はチラリ、とこちらを向いた。
長門「・・・」
しかし無言である。キョン「俺、どうしたらいいと思う?」
長門「なんのこと」キョン「俺、自分で自分の気持ちがわからない」長門「どういう事」キョン「はは・・・だよな、なんでもない」長門「そう」
長門はそういって本に視線を戻した。
俺は机にうつぶせて考えた。朝比奈さんといると心が安らぐ。もう見てるだけで幸せになれる。しかしハルヒのことを考えると・・・、いや、ハルヒは関係ないだろう。何言ってんだ、俺。
朝比奈さんは俺の事を好きと言ってくれるのだ。だったら----
放課後、部室に行くと長門と古泉がいた。古泉「どうですかチェスでも」キョン「すまんが後にしてくれ」
今はそんな気分じゃないんだ。すると、古泉は残念ですね、と溜息をつき、ひとりでチェスを始めた
ひとりでチェスなんて出来るのか?
その遊びはどう考えても楽しくないだろう。まあ、俺のせいだが。
そこで朝比奈さんが部室に入ってきた。キョン「あっ」みくる「あの・・・返事を聞かせてもらえますか」キョン「・・・はい、俺もあなたが好きです」みくる「えっ・・・、じゃあ」キョン「はい、よろしくお願いします」みくる「うれしい・・・」
朝比奈さんはその場に泣き崩れてしまった。そんな反応されては対応に困るのだが・・・。
長門「・・・」古泉「・・・」古泉が何か言いたげな顔をしていたが、何も言わずにひとりチェスに戻った。
長門は相変わらずである。
こうして俺と朝比奈さんは恋人同士になった。
帰り道、朝比奈さんと下校したかったが鶴屋さんに用事があるようで、先に帰るよう言われてしまった。
一人歩いていると後ろから古泉がやってきた。古泉「少しよろしいですか?」キョン「何だ?あぁさっきチェス出来なかったな」古泉「いえ、その事ではなく」キョン「・・・わかってる。俺と朝比奈さんの事だろう?」
古泉「ええ、この事を涼宮さんが知ったら・・・」キョン「問題あるか?あいつが俺に気がある訳でもあるまい」古泉「・・・、ですが」キョン「それにあいつは人の恋愛に口を出さないと言っていた。問題ないだろ」古泉はちょっと困った様な顔になり、そしていつものにやけた顔になった。しかし----
古泉「・・・わかりました。そこまで言うなら仕方ないですね。では」古泉は去っていった。
----俺にはわかっていた。古泉が全く納得してないことに。次の日の放課後、部室で朝比奈さんと話していた。キョン「そうだ、今度の日曜にデートでもしませんか」みくる「いいですね!行きましょう」そこにハルヒがやってきた。ここ最近は何か用事があったらしく、部室に顔を出すのは久しぶりである。
ハルヒ「何?デート?どういうことよ」そう言いながらハルヒは団長席に座った。キョン「い、いや」みくる「あ、えと・・・」沈黙が続いた。なんとなく言い辛い。ハルヒ「・・・まさか付き合ってるの?」しかしもう限界だった。キョン「あ、ああそうなんだ、そうなんだよ。実は昨日告白されてな、まさかと思ったんだがどうやら本当みたいで」ハルヒ「へ、へぇそうなんだ」
ハルヒ「よかったじゃない。みくるちゃんみたいなかわいい彼女が出来て」キョン「あ、ああ・・・、まさか俺に彼女が出来るなんてな、あはは・・・」また沈黙が続いた。なんて気まずいんだ・・・
別に後ろめたいことなんて無いはずなんだが・・・ハルヒ「あっそうだ用事思い出したわ!ごめんみんな、私先帰るわね」ハルヒはそう言って部室から出て行った。用事を済ませて来たばかりなのだから、用事なんて本当は無いのだろう。その直後、古泉が入ってきた。
古泉「どうやら知られてしまったようですね」キョン「なぜわかるんだ」古泉「すれ違い様に泣いておられました」キョン「なっ」
なぜあいつが泣いて----そこで、古泉の携帯電話が鳴った。古泉は瞬時に----まるで予測していたかの様に----通話ボタンを押した。古泉「・・・はい、わかりました、はい、では」古泉「緊急事態です。たった今閉鎖空間が発生しました」
・・・・・。 ---そうか・・・そう、だったのか古泉「それもかなりのスピードで拡大が進んでいます。僕もすぐ向かわなければ・・・」 ---そんなの、気づくはず、ないじゃないか
古泉「そしてあなたの協力も必要です」
---だって俺は、何の変哲も無い高校生なんだから
古泉「このままだと世界が・・・」 ---わかる訳、ないじゃないか・・・!
キョン「・・・」
キョン「もう・・・嫌だ」
キョン「あいつ中心の世界は、もう、嫌なんだ」
キョン「疲れたんだよ、あいつのご機嫌とりに」キョン「この世界が終わっても朝比奈さんといれればそれでいい」
だけど、あいつ中心の世界だったから、ハルヒがいたから楽しかったのは確かなんだ。
本当に、楽しかったんだ・・・
みくる「キョンくん・・・」
古泉「ふふ、あなたらしい、と言えばらしいですね。
そうですか・・・。この世界が消えてしまうのは残念です・・・、ですがあなたがそれでいいなら仕方ないですね」今度は本当の気持ちみたいだ。
キョン「ありがとな」古泉「いえ、またいつかチェスできるといいですね」
古泉は出ていき朝比奈さんと二人きりになった長門はいつの間にか居なくなっていた。もう、ここには用は無い、ということだろう。
みくる「わ、わたしとんでもないことを・・・」キョン「もういいじゃないですか」みくる「でも・・・」キョン「いいんですよ、こうして二人でいられるんですから」みくる「・・・はい」キョン「もうあまり時間がありませんけどゆっくりしましょう」こうして二人でいられるのもハルヒのお陰なんだ。だから俺たちは笑っていよう。世界の最期まで・・・
ハルヒ「わかったわ!」キョン「何が」ハルヒ「無いんだったら作ればいいのよ!」キョン「何をだ」ハルヒ「部活よ!」ハルヒ「まずはメンバーよねぇ・・・、まずあんたと私でしょ」キョン「なんで俺が・・・」ハルヒ「後は・・・、あんたの彼女も連れて来なさいっ!」Fin
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