妙に長いプロローグ
【プロローグ1】 ───ハルヒ喜び庭駆け回り、シャミセンコタツで丸くなる、と。 今年は冷蔵庫と冷凍庫を間違えて日本列島を放り込んじまったような寒さで、俺たちが住む地方には珍しいほどの積雪が何度かあった。 その度にSOS団プレゼンツ大雪合戦大会が勝手に開催され、主として俺や谷口といった哀れな生徒が一方的に巻き込まれると言う惨事が巻き起こされている。 俺は昨日の雪合戦大会の疲労が残る体を引きずりながら、残雪で何時もの数倍の難易度を持ってして立ちはだかる強制ハイキングコースと、その果てに聳える北高校舎を恨めしく見つめていた。 こんな山道を毎日通ってるんだから、体育の授業なんて免除してもいいんじゃないか? 担任岡部他の体育教師たちは学生たちへの心配りをもっとすべきだ。 そう愚痴りながら苦行のような早朝登山を終え、俺は教室に向かった。 「やあ、おはようキョン。」 ああ、おはよう。 腐れ縁の国木田に挨拶をしてから教室を見回すと、もう予鈴も鳴ろうかと言う時刻なのに、空席がとても目立つ。 雪が降ったくらいで授業ボイコットが多発するほど学級崩壊したクラスではなかったと思うんだが。「何言ってるんだい、キョン。ずっと前からたちの悪い風邪が流行してたじゃないか。 このままだと学級封鎖だよ、春休み削られそうで嫌なんだけどなぁ。」 言われて見れば登校している生徒も何割かがマスクをして咳き込んだりしている、全員の潜伏期間と発症時期が同期するような不思議現象が起きたとしか思えない。 恐るべき事に谷口の席も空席のままだった、バカは風邪引かないって言うが、それは間違いだったんだな、あるいはアホは風邪引くんだろうか。 やっぱり昨日の雪合戦大会で無茶しすぎたからかな?、谷口なんかほとんど雪に埋まるまで雪球ぶつけられてたしな、ハルヒもちょっと調子乗りすぎだっぜ。「雪合戦? みんな風邪でそんな事やる体力みんな無かったよ? あと”ハルヒ”って何とか高校ホスト部ってやつかい? たまに僕と似てるって 言われるけど・・・、僕、少女漫画原作は苦手だからなぁ、よく知らないんだよ。」 俺は靄のかかったような要領を得ない会話を繰り広げながら国木田の顔を眺めた、どうやら演技で俺をからかっているのではなく、本気できょとんとした顔をしている。 おいおいハルヒ、まさか国木田が記憶を無くすほどのトラウマ級の悪戯でもやらかしたんじゃないだろうな? そう思った所で担任の岡部が教室に駆け込んできて、会話はお開きとなった。「やあスマンスマン、じゃあ朝のホームルーム始めるぞー。」 この時点の俺はまだ気が付いていなかった。 しかしその日、世界は確実に異変を起こしていたのだった──・・・ さて授業がひと段落して昼休みの時間だ。 なんと授業が始まってもついに、俺の後ろの席は空席のままだった。 あの無敵の団長サマが細菌やらウィルスに敗北を喫するという事は、アホの谷口が風邪を引いたり、国木田が部分的記憶喪失になっている事以上に信じがたい。 宇宙的、未来的、超能力的な何かの陰謀が関わっていないとも限らない。 SOS団メンツに相談したいのだが、長門は部室だろうし、朝比奈さんの教室は別棟だ、一刻を争う可能性を考慮して一番近くの古泉に相談しに行く事にした。 うー古泉古泉。 まさか俺がニヤケハンサム副団長を探すために廊下を疾走するなんて思ってもみなかった、そして一年の教室の端に来たとき・・・、俺は超スピードとか催眠術とかチャチな物じゃねえ、もっと恐ろしい物の片鱗を味わう事となった。 9組が・・・、ねぇ!? 8組の隣は非常階段に続く踊り場となっていた、一夜にして突貫工事がなされたような痕跡もなければ、表札を書き換えるとかのトリックでもない。 まるで最初から北高の校舎に存在しなかったかのように、1年9組は教室ごと消え失せていた。 いよいよ持ってこれは宇宙的、未来的、超能力的な何かが関わった事件だと俺は痛感する他無かった・・・。
【プロローグ2】
全貌は分からないが、何か重大な事件がおきている事は確かだ。 こういう非常事態で一番頼りになるのは・・・、やはり長門かな。 部室に向かうとするか。しかし往復してたら弁当食う時間がなくなっちまうからな、弁当持ってって向こうで食いながら相談乗ってもらうか。 腹が減っては戦はできぬって言うしな、俺は5組の教室に踵を返した。 すると見知った顔の先輩が5組の女子を集めて何かやっていた。「おまいらモブキャラは身分をわきまえるでしゅ! 先輩を崇めるでしゅ!レギュラーキャラのあたしを称えるでしゅ!!」「は、はい・・・」「返事は『は、はひぃ!』でしゅ!」「は、はひぃ!」みくる「あと今からセリフの横に名前入れるでしゅ!」5組女子一同「は、はひぃ!」みくる「今からおまいらにキアイを入れてやるからありがたく受け取るでしゅ!」
(バチコーン!)高遠「ひぎぃ!」(バチコーン!)日向「ひぐぅ!」(バチコーン!)葉山「いたぁ!」
(バチコーン!)剣持「らめぇぇ!」(バチコーン!)由良「いやぁあ!」みくる「おまいはめがねっ娘ポニーテールとかモブの癖にキャラが立ってて生意気でしゅ!」由良「ヒイィ!堪忍してつかあさい!堪忍してつかあさい!!」みくる「しぇらかしか!口答えは認めなかとでしゅ!!今すぐもっと地味になるでしゅ!!」由良「そ、そんな・・・!、今でもなぜか成崎さんのほうが人気あるのに!!」鶴屋「みくるーっ! あたしが代わりに罰を受けるからその娘を許してあげるっさ!!」みくる「いい根性でしゅ!鶴屋さんも出番少ないくせにあたしより存在感あるからお仕置きでしゅ!」(バチコーン!バチコーン!)鶴屋「アッーにょろ! アッーにょろ! も、もっとぶってっ!!」(ハァハァ)みくる「なんか汁が出てきましゅたよ!ふしぎ!!」キョン「・・・。」 朝比奈さんは何時も通りでお元気ですなあ。(アナルスレ的な意味で) どうせ朝比奈さんに相談しても無駄・・・ゲフン!ゲフン!いやなんでもない。 朝比奈さんは何かお取り込み中でお忙しい様なので、俺は話しかけるのはやめておく事にした。 と言うか俺も何かに罹患したようだ、なんだか頭が痛くなってきたので今日は早退して帰る事にする。
【プロローグ3】
風邪の集団発症や、国木田の部分的記憶喪失はまだ常識的な医学の範疇で可能性のある話だ、しかし9組が漂流教室になっちまったのはどういうこった? これはお医者様でも草津の湯でも治らない、宇宙的、未来的、超能力的、あるいは異世界的な超常パワーが関わったけったいな事件なのは間違いなかろう。 俺は朝とは違い超常的な悩みによって重くなった足取りで、トボトボと強制ハイキングコースを下った。 さて、どうしたもんかな・・・ そして悄然と歩く俺は一筋の光明を見出して走り出した。───後から思えばもっと冷静になっておくべきだったと思う。 溺れる者は藁をも掴むが、藁を掴んだ所で沈むだけだ。 「おい!ハルヒ!それに古泉!」 学ランを従えた黒ブレザーの少女が立ち止まり、 「何よ」 その少女は冷たい視線でねめつけ、ふいっと目線を逸らすと、「誰よあんた?誰に断ってあたしを呼び捨てにするわけ? あたしはストーカーを 募集した覚えは無いわ。 そこどいてよ、邪魔なんだから。」 そう言って関心するほど流麗なフォームでローキックを放ってきた。 足に感じた衝撃と共に、俺の視界は反転、そして暗転し、そこで途切れた。・・・ シャリシャリ。 耳に涼しい音が響いている。 闇の中から浮上する意識のなかでぼんやりと俺は考えていた、”あれ”は本当にハルヒか?制服が違ったし髪も長い。似て非なる存在なんじゃないか? というかさっきまでのは変な夢で、起きたらまた普通の非日常に戻ってるんじゃないか?、と。 そして目を開けた俺の視界には知らない天井が写っていた。「おや、お目覚めですか?」傍らで果物ナイフ片手にリンゴを剥いて不恰好なウサギを作っていた古泉が話しかける。「目を覚ましていただいて助かりました、本当にどうしようかと思っていたのですよ。」「おい古泉、ここはどこだ?一体何が起きている?気絶してる間に俺を掘ってないだろうな?」 矢継ぎ早に繰り出した質問に古泉は肩をすくめて軽く溜息をついてみせる、やれやれ、お前にはまだまだ聞かなきゃいけない事があるんだぜ。「たしかに僕は古泉です、ですがあなたがなぜ、僕の名前をご存知なのですか? 先にそれをお伺いしたいところですね。」 古泉も国木田と同じように記憶喪失なんだろうか?、奴は俺の事を忘れてしまっている。 いつも通りのニヤケスマイルポーカーフェイスを湛えた顔からは、奴が嘘を付いているような雰囲気は微塵も感じられなかった。
「そしてここは近くにあった病院です。 あなたは涼宮さんに蹴られて転倒し、気絶してしまったので僕が運び込んだのですよ、涼宮さんに人を殺す罪を犯させたくはありませんからね。 あなたは医師の診察によるとちょっとした脳震盪だそうです。 意識が戻ったら帰宅してよいそうですよ、診察代は僕が支払っておきました。 そしてこちらのリンゴは僕からのお見舞いです、お受け取りになってください。」「ああ、そうか。」 俺は古泉からリンゴを受け取ると口に運んだ。意外と旨い。「それと誤解しないで頂きたいのですが・・・」「なんだ?」「僕はこう見えても涼宮さんと交際中なのですよ。 確かにあなたはいい男だと思いますがね、浮気したりしない程度のモラルと自制心は持っていますよ。」「という事は、」「安心してください、あなたを掘ってはいません。」 古泉がホモじゃない?、いや、ホモっぽいけど、でもホモじゃない? 俺はいよいよもって事態は深刻だという事を実感していた。 ここはパラレルなんとかとかそういう世界なんだろうか・・・?
・
【プロローグFINAL】
結局、古泉から聞き出せたのは、俺とは面識がないという証言と、俺が気絶してる間にハルヒは古泉にタクシー代を奢らせ早々に帰宅してしまったという事だけだった。 ・・・ハルヒの傍若無人DQNっぷり悪化してんじゃねえかよ、更にスイーツ脳入ってる。 俺の記憶にあるSOS団の話を古泉に小一時間ほど語った後、俺は帰宅した。 一応妹とシャミセンにも少し話を聞いてみたが「だれそれー?」、「にゃあ」と有益な情報は得られなかった。──そして翌日。 いよいよ打つ手が無くなってきた、ミステリー小説にしちゃヒント無し、超常現象ありのデタラメ過ぎる話だっぜ。これはどんなゲームなんだ。それとも俺が狂ってしまったのか? 俺は歩きながら考えた、KOOL(煙草?)だ、KOOLになるんだ俺。
こういう時こそ冷静に、そう冷静にーねー処理してー。「頼むぜ」 呟きを吐いて俺が向かう先はただ一つ、最後の砦である最終絶対防衛ライン、ここが陥落したら一巻の終わり、打ち切り終了だ。 SOS団の部室、そこに長門がいなければ俺に何が出来ると言うのだろう。 俺は早めに登校すると教室よりも先にSOS団の部室へと向かった。「いてくれたか・・・」 そこにはちゃんと長門がいた、こいつがいなけりゃ俺はメインCPUをフリーズさせてこのパラレルなんとかっぽい世界の住人として再起動する他無かっただろう。「長門」 俺はハルヒの事もあり、突込みがちな上半身をなるたけ押さえて長門に話し掛けた。「なに?」
長門は動かずに返事をした。「教えてくれ、お前は俺のことを知っているか?」「あなたが五組の生徒である事は知っている、時折見かけたから。でもそれ以上の事ははわたしは知らない。わたしはここでは初めてあなたと会話する。」 最後の砦は夏の日のガリガリくんのように崩れそうだ。 長門が頼れないとなると俺は親猫に見捨てられた生まれたての仔猫のようなものだ、こいつになんとかして貰わないと俺はこのナントカワールドに移住するしかない。「・・・って事はお前は情報統合ナントカの宇宙的カントカインターフェイスじゃないのか?! 涼宮ハルヒと言う名前に何でもいい、覚えはないか?」 「情報統合…? 宇宙…? ……ごめんなさい、わからない。」「待ってくれ。」「………?」「しゃべる戦艦なんて絶対他にいねえよ! お前は間違いなく対有機生命体コンタクト用バトルシップインターフェイスの長門だろ!?」【~?!失消ノ門長艦軍~ 門長艦軍本日大・続】 -始-
【~門長艦軍本日大~】
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続く
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