涼宮ハルヒのぬいぐるみ
ぬいぐるみを持った女の子が可愛いのは常識だが、SOS団の女子団員にそれをやらせると絵になるどころの騒ぎではない。何の話かというと、俺達はさきほどまでゲームセンターでUFOキャッチャーをやっていたのである。女子団員3人は大きな可愛い白いアザラシのぬいぐるみが入ったUFOキャッチャーにチャレンジしたのだ。長門は言うまでもなく一回目で完璧に獲物をとらえ、朝比奈さんは不器用ながらも5回目で成功し、ハルヒはと言うと、意外にも10回目にやっと成功した。そして今帰り道なのだが、三人ともおそろいのぬいぐるみを抱き締めて談笑している。長門は器用に読書もしているがな。しかしあれだ、微笑ましいとはこのことだ、なぁ古泉?「そうですね、美少女達が可愛らしいぬいぐるみを抱えているというのは実に素晴らしい光景です。特に涼宮さんはいつもとのギャップに心惹かれてしまいます。」うむ。まさにその通りだ。長門や朝比奈さんも可愛いが、ハルヒは特別に可愛い。大きなもこもこしたぬいぐるみに時折顔を埋める姿を見ると抱き締めたくなる。ふと横を見ると古泉がこちらを見てニヤニヤしていた。何だよ気色悪い。「ふふっ、失礼。涼宮さんに見惚れているばかりでは進歩しませんよ?」何が言いたい。「おわかりでしょう。後ろから抱き締めてアイラブユーと囁くのですよ」ったく、またそれか。悪いが俺にそんなことする余裕はないね。「そうですか。では僕がお手伝いしましょう」と言うと古泉はあろうことか前を歩くハルヒを呼び止めた。古泉、おまえは地獄行きだ。「なに?古泉くん」「彼が涼宮さんにお話があるそうです」と言って古泉は俺にウィンクして長門達の方に向かった。まったく、どこまでもキザな野郎だ。「話ってなによキョン」そう言ってハルヒは抱き締めているぬいぐるみの上に顔をのせて小首を傾げて上目遣いで俺を見つめた。すまん、それ反則だ。「いや、そのだな……」言葉がでない。「なによ」「そのぬいぐるみ可愛いな」あー、俺はバカだ。チキンとでも何とでも言うがいいさ。「それだけ?」ハルヒが不満そうに言う。「いや…まだある」「なによ」俺の頭はもはやなぜだかパンク寸前だ。勇気をだせ俺!「その…お、おまえはもっと可愛い」誰か俺を狙撃しろ。真っ赤な顔を血でごまかそうじゃないか。「…………」ハルヒは相変わらずの上目遣いで俺を見つめていた。恥ずかしくて目をそらそうとした時、「キョン」「な、なんだ?」上ずった声を出す俺の情けなさには谷口もびっくりだろう。「あたし、あんたのこと待ってるから」そう言うとハルヒは長門達の方へ走っていった。入れ替わりにこっちに戻ってきた古泉は普段より20%増量のニヤケ面を俺に向けた。「余計なことしてくれたなこの野郎」「ふふっ、で、どうでしたか?」「おまえの言ってたことを実行する日は近いかもな」 そうですか、と古泉は嬉しそうに言った。ハルヒ、ありがとう。俺は決心したさ。もう曖昧になどしない。前を歩くぬいぐるみを抱き締めたハルヒの笑顔は夕日に照らされていた。 待たせるのはもうやめよう……… FIN.
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