しっと団の野望 ~聖夜の復活~ 後編
さて、そんなこんなでセントラルタワーに到着しました。相変わらずカップルがいっぱいです。右を見ても左を見てもイチャイチャイチャイチャ…… 「うわぁ、見事にカップルばかりですねぇ、『トゥモロー』。」「そうですね。みんな死ねばいいのに。」「し、死ぬって……」「僕も同意見だよ『トゥモロー』。 もし僕にデ○ノートと死神の目があったなら、目につく人の名前をかたっぱしから書いてしまいたい衝動にかられている。 自分でもよく自制していると思うよ。」「み、みなさん発想が恐ろしすぎます!!」 でもセントラルタワーと言ってもとても広いですし人も多いです。どうやってあの二人を探しましょうか…… 「それには心配いらないよ。」「どうしてですか?『ソクラテス』。」「僕には今のキョンの場所が手に取るようにわかる。反応しているからさ……僕の中の「キョンレーダー」が!」 キョ……キョンレーダー? 「『ソクラテス』に代わって私が説明するのです!『ソクラテス』はキョン君が近づくことによる心拍数の上昇を数値レベルで感じ取ることが出来るのです! そこから分析して導き出される距離は、mレベル!」「説明ありがとう『ラビット』。そして僕のレーダーによれば、今キョンは3階の100m先にいる!!」 なんだか人間離れした能力です。私なんかよりよっぽど異能者ですよ!まあとにかく、今はそのレーダーを信じて進みましょう! ~~~~ 「30m……20m……15m……」 カウントダウンをしているのは『ソクラテス』です。「キョンレーダー」によりキョン君の位置を測定しながら進んでいます。そしてとうとう…… 「10m……5m……0m!!」「うおっ!!佐々木じゃないか!朝比奈さんに橘まで!どうしたんだ?」 ついに会えました!憎きすけこまし、キョン君! 「あら~キョン君。せっかく恋人である佐々木さんが会いに来たってのにそれは無いんじゃないですかぁ?」 あえて私はイジワルな声色を使います。さて、どんな反応を示しますかね……? 「……はい?」 聞こえてきたのは素っ頓狂な声。あれ?予想とは違いますね。予想では冷や汗たらたらで必死になって否定すると思いましたが…… 「何を言っているんですか朝比奈さん。俺は佐々木と付き合ってなんか……」「おやおや、とぼけるつもりかい?確かに僕は君と付き合うという契約を交わしたはずなんだけどね。」「そうですよ!とぼけるなんて最低なのです!」「いやいや待ってくれ!それは……」 キョン君を問い詰める『ソクラテス』と『ラビット』。……その時でした。 「詳しく聞かせてもらおうじゃないの、その話。」 空気が、変わりました。背後を見ると、とても良い笑顔の涼宮さんが居ました。しかし、その笑顔には邪のオーラが溢れ出しています。あえて漫画的効果音をつけるとしたら「ゴゴゴゴゴ……!」と言った感じでしょうか。ええ、とても怖いです。 「やあ涼宮さん。久しぶりだね。 何を隠そう、数ヶ月前から僕もキョンと恋人という契約を結んでいるんだよ。」「はあ!?どういうことよ!!キョン!!」「いやだから、それは……」「何を弁解する必要があるんだい?僕と君は不倫という関係にあったのは事実じゃないか。 もっとも、その関係も今日で終わり。これからはれっきとした恋人になってもらうよ。」「そうです!涼宮さんには悪いけど、身を引いてもらって……」「冗談じゃないわ!あたしは絶対に譲らないから!」「みなさん静かに!」 やんややんやと収集がつかなくなってきたので、私は叫びました。一気に場が静まり返ります。 「こんなに感情的になっても仕方ないでしょう。とりあえずキョン君も話したいことがあるようだし、 みんなで状況を整理してみましょう。」 ~~~~~ それから約10分間、主にキョン君と佐々木さんによりこうなった経緯をまとめていきました。どうやら事の発端は『ソクラテス』……いや、ここでは分かりやすく佐々木さんとしておきましょう。その佐々木さんが久々にかけた電話だったようです。橘さん経由でキョン君と涼宮さんが付き合っていることを知った佐々木さんは、居てもたってもいられずキョン君の自宅へと電話をしたそうです。以下はその電話の内容です。 『や、やあキョン。久しぶりだね。』『おお佐々木か。久しぶりだな。どうした?』『いや、風の噂で涼宮さんと付き合っていると聞いたんだが、本当なのかい?』『ああ。結構前から付き合っているぞ?』 まあここまでは普通の会話です。しかしここからが問題だったのです。意味合いの解説付きで、どうぞ。 『そ、そうか……残念だな。僕としては君のこともなかなか好きだったのにな。(男性的な意味で、)』『ああ、俺もお前のことは好きだったぞ。(友人的な意味で。)』『え?そ、それは本当なのかい?キョン。じゃあ、これからの付き合い(恋愛的な意味)も……』『ああ。これからも普通に付き合おうぜ(親友的な意味で)。 あ、でもハルヒのことを考えると堂々ってのはマズいかな。あいつ結構独占欲強いし。」『うん、そこらへんは理解しているよ。じゃあ……その……よろしく……(恋人的な意味で)』『ああ、よろしくな(親友的な意味で)』 ……以上です。つまりお互いの意味合いの違いにより勘違いが生じてしまったというわけです。さてみなさんはどう思いました?ええ、きっと私と同じことを考えているでしょう。 「キョン君……最低です。」 私は冷たく言い放ちました。 「みくるちゃんの言う通りよ!いくらなんでも佐々木さんが可哀想すぎるわ!」「そうですよ!この女の敵!フラグクラッシャ-!!」 涼宮さんと『ラビット』も怒り狂っています。そりゃそうですよね。どんだけフラクラなんだっていう話ですよ!もう鈍感ってレベルじゃねーぞ、です!! 「い、いや待ってくれ!だって俺の中じゃ佐々木は親友だし、そんな風に取られるなんて思いもよらず……」「キョン。」 『ソクラテス』が、キョン君の元に歩みよります。その顔は笑顔です。笑顔ですが……先程の涼宮さん同様、邪のオーラが溢れ出ています! 「さ、佐々木……怖いぞ?」「まあ僕にも非がある。勝手に勘違いして浮かれていたわけだからね。 だから、今日はこのぐらいで……許してあげるよっ!」 そう言うと『ソクラテス』は、キョン君に思いっきり頭突きをしました。後ろに思いっきり仰け反ったキョン君はそのまま倒れて……気絶しました。脅威の鈍感力を持つフラグクラッシャー、ここに沈む。生まれ変わったら、もう少しデリカシーというものを学びましょうね? ~~~~~ 結局キョン君の遺体(死んではいない)は、涼宮さんが引き取りました。 「ほんとごめんね佐々木さん!このバカはあたしがキツくお仕置きしておくから!」「いや、構わないよ。僕も君がいると知りながら不健全な関係をしようとしていたからね。どっちもどっちさ。 どうかこれからも彼を引っ張っていってほしい。彼はどうしようもない鈍感だが、根はいいヤツだ。」「佐々木さん……分かったわ。任せて。そして……ありがとう。」 涼宮さんは、キョン君の遺体(死んではいない)を引きずりながら去っていきました。そして残ったのは、私と『ソクラテス』と『ラビット』の3人だけ。よし!それじゃあ3人でやけ酒でも…… 「元気出してください佐々木さん!いつかいい人に出会えますって!」「橘さん……ありがとう。どうだい?これから付き合わないかい?(やけ酒的な意味で)」「え!?つ、付き合うんですか!?(恋人的な意味で)」「ああ。今夜は寝かさないよ(夜通し飲む的な意味で)」「え、そ、そんな!いきなりですか!?(セクロス的な意味で)」「嫌かい?」「い、いえ、私はOKです。よ、よろしくお願いします……!(恋人的な意味で)」 あれ?なんかまた妙な勘違いが生じているような気が……というかもしかしてもしかして!まさかこの二人までカップルになりやがるんですか!? 「朝比奈さんもどうだい?もちろんお代は僕が全額負担するよ。ここまで付き合わせてしまったしね。」 私も誘ってくれました。ありがたいです。しかし……私には出来ません。隣で頬を染めてうっとりしている橘さんを見たら、その中に入ることなんて!! 「わ、私はいいですよぉ。お酒ダメなんです。」「そうかい?残念だな。それじゃあ……今日は本当にありがとう。短い間だったけど、楽しかったよ。」「ええ、お元気で!」 そして二人は去っていきました。 「さあ行きましょう、さ~さきさんっ♪」「ちょ、ちょっと、そんなにくっつかないでくれないかな、恥ずかしいじゃないか。」「もう、照れ屋さんなんですから!私はあなたについていきます!」「大げさだな橘さんは……」 去って……いきました…… 「ちくしょうめ!!」 二人の姿が完全に見えなくなってから、私は叫びました。なんなんですかもう!まさかレズカップルが成立するなんてこちらとしても予想外です!うらやましくなんかないもんね!うらやましくなんかないもんね!!最初の方で、カップルが出来まくる現状をトランプの神経衰弱に例えましたが、訂正します。これはババ抜きです!どんどんペアが出来て抜けていき、最後に残るのはジョーカー一枚……そう、私はジョーカーだったんです!なーるほど!これなら私が1人残っちゃうのも頷けますね!ふざけんな!ふふふ……皆さん覚えておいてくださいね?ジョーカーは確かにペアになりませんが、ゲームの行く手を支配するカード……!ジョーカーをなめてると痛い目を見るんです!せいぜいペア同士仲良くしてればいいです、天下を取るのはこの私ですから!では決意表明の意味を込めて、もはやお馴染みの叫びでこの話を〆たいと思います。お付合いありがとうございました。 「一人身万歳!!」 終わり
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