いつも曜日は九曜日 第四話「九曜、死闘してみました@前編」
「谷口行方不明のままもう5ヶ月か・・・」「そう・・・だね―――」九曜の膝枕に頭を置きつつ俺は消えた親友について考えていた。あいつはとにかくウザくてとにかくうるさい、そんな奴ではあったが心から友達と思える奴だった。居なくなってから学校の教室がびっくりするぐらい静かになった。あぁ、あいつはこんなにもムードメイカーとして貢献していたんだな、と思った。ちょいとアンニュイな気分だな。そんな時は、こうすると良い。「―――・・・ん」九曜の頬をぷにぷにしてやるんだ。これがなかなかの好感触。「くすぐったい―――やめて――ん・・・・・・」「可愛いなぁ、九曜は」あぁ~アンニュイな気分も一転、幸せだな。 第四話「九曜、死闘してみました~THE前編~」 ふと、その時だ。【蟲~喰う~瞳に~見せられ~息~閉じる~♪】外から聞こえてきた大音量のDOZING GREEN。しかも何処かで聞いた事のある声をしている。俺は九曜の膝枕から頭を上げて慌てて九曜家の窓から外を見た。【撫で下ろした心が~ポロリ~♪】「た、谷口!?」何て事だ! 全身タイツの谷口がヘリコプターから逆さ吊りの状態で歌っているじゃないか!!これはあれか? 閣下の成分が入ってるのか? って、そんな事はどうでも良いがな!!問題はそんな事じゃないだろう!「何やってんだアイツ!?」よく見れば股間の部分に何でかタイヤキがくっついている。くそ、こればかりは解らない! 何が目的であんな事をしている!?「――ああ・・・――これが・・・―――変態人・・・間。非常に―――気持ち悪い」九曜が感心したように俺を後ろから抱き締めながら通常の3倍で呟いた。「何はともあれ、このままでは町中がダイパニックになってしまう! 急いであいつを止めなければ!!」何だろう。自分で吐いた言葉なのに何か、うぜぇ。「むしろもう―――パニック。警察も―――動く・・・・・・・でも太刀打ち出来ない―――」解ってる。解ってます。今まで経験からこういう事態はアイツが関係あろうが無かろうがほぼ人類の境地を超えてるんだ。っていうかむしろアレを見て人類を超えてないと言えるのか? 言えないだろう。っていうか、いつの間に軍服に着替えたんだ、谷口。「しかしいったい、何が起きたというんだ・・・」俺は混乱していた。谷口は確かにバカでアホでKYでその上カスでボケでナスでアンポンタンなゴミ人間だった。しかし、こんな事をするような男じゃ無かった筈だ。あぁ、そうだと思わせてくれ。たとえナンパ大好きなチャラチャラした人間として駄目な奴であったとしてもだ。アレは、俺の親友なんだ、ソレは。そう、It is my friend, maybe.「ワシが説明しよう」ここで天蓋領域が出てきた。「―――あ・・・お父さん」「またお前かジジイ」 ―――――――――――――――。 ―――今から数日前。「ふっ・・・ふふふっ・・・ついにやりましたぞ。この天蓋領域、ついにやりましたぞォーッ!!」「・・・俺は・・・?」「谷口殿、お気付きですかな?」「お前は・・・誰だ? 俺は・・・誰だ?」「フフフッ・・・ワシはそうじゃな・・・アドバーグ・エルドルとでも名乗ろうか。お主の名前は谷口じゃ」「谷口・・・それが俺の名前・・・?」「その通りじゃ。谷口殿はワシが人体を改造し、最強のインターフェースと作り変わったのですぞ」「最強の、インターフェース・・・」「その通り。お主はワシの為に働くのだ」「お前は、私のなんだ?」「親であり、親ではない存在。それがこの、アドバーグ・エルドル」「・・・が・・・だ・・・」「なぬ?」「誰が望んだ! 誰が生んでくれと頼んだ!」「ちょ、これじゃミュ●●●の●襲みたくなってまうがな」「うぉぉおおおぉおおおおっっっ!!」「こ、これはマズいですぞ。脱出!!」 ドカァアァアァァァアーァァアアアンッッッ!! 「私は、全ての人間に復讐する・・・!」 ―――――――――――――――。 「って事があったんじゃ」「お前の仕業かァ――――ッ!!」叫ばずにはいられない。マジで何やってんの、この変態こしみの野郎。「こうしちゃいられない。早く谷口を止めるぞ」「へい―――合点承知だぜ・・・・・・・・・・・おやびん――」「・・・・・・・・・・」「―――正直――――すまんかった・・・・・」「いや、可愛かったぞ」俺と九曜が見詰め合う事、数十秒。手をしっかりと繋いで俺達は部屋から出た。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「なんだこの惨状は!?」九曜宅から出てみれば町は酷い事になっていた。あちらこちらで炎上している車。あちらこちらで倒壊している道路標識。鉄骨丸出しのビルに、窓ガラスが粉々に割れた民家。九曜宅のあるマンションとそこに繋がる電線だけが異常に無傷だった。多分、ガス管と水道管もこのマンションに繋がってる分だけまともに動いてるんだろうな。これはどういう事か、なんて事は尋ねないさ。「攻撃手段が――――解らない。これは・・・・・・・・危険――――解析・・・・・する」「それまでは身動きできないか・・・」ふとその時、携帯が鳴った。こういう時に俺の携帯を鳴らす人間なんて限られている。通話ボタンを押して、耳に当てる。「もしもし」『僕です』聞き慣れた超能力者の声だ。「やっぱり古泉か」『貴方も見えてますか、彼の姿が』相当緊迫した声。古泉にしては珍しく焦っている。「あぁ、谷口の姿だな」ここからバッチリ見えるぞ。何故全身タイツからゴスロリに着替えたのかが気になるところだが。しかも何となく一回り小柄になった気がするんだ。何だろう・・・この背筋を流れる冷たい汗は。【清清しい太陽が~雨音~♪】しかも何か声がちょいと高くなった気がする。あれ? 何だろう・・・この胸騒ぎは。くそ・・・あのジジイ、本当に何をしやがったんだ。『なら話は早いですね。急いで逃げてください。彼は目に見えない何かで町を爆破しています』「爆破?」この惨状の原因はそれか。『はい。我々も一度は動いたのですが、重傷者が多々出まして・・・』「駄目なら無駄なプライドを捨てて長門の力を借りるなりしたらどうだ」『えぇ、共同戦線を張っているのですよ。今、長門さんと喜緑さんが町中のインターフェースを召集しています』「はぁ!? ッて言うことは、その二人がかりで止められてないのか!?」『その通りです。集まり次第、擬似閉鎖空間を構成してもらい、我々も再び動くつもりです』これが本当に谷口か? もしかしてアレか? 元々谷口は不死身だったりする?っつか最強だったりする? 天蓋領域の人体改造無しでも元々強かったのか? もしそうなら・・・それを最強のインターフェースとして改造したとすれば・・・・・。・・・いや、解らん。戦闘能力の算出は不可能だ。スカウターでもあれば良いかもしれないが。「解った。とりあえず、頑張れ」『勿論です。しかし、驚きましたね。貴方の口から頑張れという言葉が出るとは』「嫌いか?」『いえ、むしろ嬉しいところですね。ではそろそろ持ち場に戻るので、これで。無事に終わったら、一緒にチェスでも打ちましょう』ピッ。「・・・あれ? 古泉、もしかして死亡フラグ立ててる?」まぁ、あの男に限って大丈夫だろう。むしろ逆に俺が死にそうな悪寒。いや、それはないか。こう言ったら格好悪いが俺の彼女は至上最強の力と可愛さで構成されている。それに守られてるんだぜ? おうよ、長門にも負けないだろうぜ、多分。「いくぞ、九曜!」「―――うん・・・ダーリン」「・・・・・・・・・・」「―――正直――――すまんかった・・・・・」「いや、可愛かったぞ」谷口の所へ行く前にキスしておきます。
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