絶対に…
「ハルヒ信じてくれ!!」 「嫌よ!!信じれる訳ないじゃない!」 え、何やってるかって?わかった、順を追って説明する。 俺は1ヶ月前ハルヒのことを好きだと気付いた。きっかけは些細なものだ。俺が学校を風邪で休んだとき、ハルヒがお見舞いにきた。そのときにあいつは、「キョンがいないとつまんないんだからね。」と言って、微笑んだ。その微笑みは俺がハルヒのことを好きだと気付かせるのに充分な威力を持っていた。 その日以来、そのことを妙に意識してしまい、まともにハルヒの顔を見ることができなかった。そしてある日の放課後のこと、俺とハルヒ以外の奴は用事があるらしく来ていなかった。俺はハルヒと2人きりになったのでソワソワしていた。すると、ハルヒがいきなり口を開いた。 「あんた何か隠してるでしょ。」 大正解。隠してることはな、お前のことが好きなんだよ。 なんてな、こんなこと実際に口には出せない。 「黙ってないで何か答えなさいよ!」 「何も隠してねーよ。ただの気のせいだ。」 「嘘つくんじゃない!どっからどう見ても怪しいわ。」 さあ言いなさい、そう言いながら迫ってくるハルヒに動揺した俺はハルヒを思わず突き飛ばしてしまった。 「痛っ…、何すんのよバカキョン!!いいわ、もうあたし帰るから!」 ハルヒのいなくなった部室でしばらく呆けた後、俺も仕方なく帰ることにした。ああ、俺ってホントにどうしようもねえな。 靴箱を開き自分の靴を取り出そうすると、そこには手紙が置いてあった。また未来からの指令か、今はそんなことやる気にならねぇんだが。俺は重い気分で手紙を見る。――――――――――今日、午後8時に○○公園に来て下さい。大事なお話があります。――――――――――手紙にはきれいな字でそう書かれていた。この字は明らかに朝比奈さん(大)の字じゃない、もちろん今の朝比奈さんの字でもない。靴箱の前でしばらく考えたが、結論が出るはずもない。とりあえず家に帰った後みんなに電話してみるか。 家に帰った俺はしつこく引っ付いてくる妹を無視し部屋に入った。 まず長門に電話するか。 プルルッ ガチャッ ワンコールで出た長門は心なしか不機嫌だった。 「…なに」 「すまんが訊きたいことがあってな。」 俺は手紙のことを説明した。 「―で、お前らの仲間ってことないか?」 「ない、用事が済んだなら電話を切る。」 「おい、なが―」 ブツッ 何か知らんが、怒ってたなあいつ。俺は軽く鬱な気持ちになった。 気を取り直して次は古泉にかけるとでもしよう。 現在、電波の届かないところにあるか― ブツッ 閉鎖空間にでもいるのか、あいつは?まったく、肝心なときに役に立たんやつだ。 朝比奈さんは…、まあいいか。未来的なことだったら大きい方が現れるだろうからな。 どうしようか迷った挙げ句、結局行くことにした。とことんお人好しだな俺も。 今考えると、このときハルヒに謝罪の電話でもしとくべきだったんだろうな。俺は手紙のことに気を取られハルヒのことをすっかり失念していた。 親には適当な理由を伝え、家を出た。今からだと充分時間には間に合うな。 俺が公園に着くと、一人ベンチに座っているのが見えた。髪の長さからして女の子だろう。彼女も俺に気付いたようだ。 「こ、こんばんは!」 「君がこの手紙くれたのか?」 「は、はい!」 ふむ、見たところは普通の女の子のようだ。俺の1つか2つ下だろうか。 「で、今日は何の用だ?」 「せ、せせせせ先輩は今付き合ってる人とかいるんですか?」 「今はいないが…。」 「じゃ、じゃあ私と付き合って下さい!先輩を初めて見たときから好きになりました!」 しばらくの沈黙、そして、 「――すまん。君の気持ちは嬉しいが。」 「そうですか。……いつも一緒にいる涼宮先輩が好きなんですよね?」 「ああ。」 「じゃあ勝てませんね。」 彼女はそう言うと、目を潤めながら俺に抱きついた。いっとくが、俺から抱きしめたりはしてないぞ。 「お、おい!お前―― 「何してんの、あんた。」 声がした方を振り向くと、ハルヒがそこにいた。すっかり忘れてた、この公園はハルヒの家から目と鼻の先の位置にある。だがこんな時間にここにいるなんて―― 「ハ、ハルヒ、どうしてここに!?」 「じゃあ私行きますね。」 既に涙目じゃなかった彼女はペコリと礼をして公園から出て行った。 「彼女に呼ばれたのよ。あたしの後輩だからね。あんたに告白するとか言ってたわ。それの許可をあたしにしてほしいとかなんとかもね。」 「どこから見てたんだ?」 「あの子があんたに抱きついたところかしら。」 最悪だ、一番誤解されやすいとこじゃねえか。 「抱きつかれても嫌がらなかったとこ見ると告白は成功したみたいね。あんたあの子泣かすんじゃないわよ。じゃああたしは帰るから。」 「待ってくれ、誤解だ。」 「何が誤解だって…!?じゃあ何で抱きしめられたとき嫌がらなかったのよ!」 と、ここらへんで冒頭に戻るわけだ。 「どうせ部室でもあの子のこと考えてたんでしょ。よかったわね、思い通りなって。あ、あんたもう部室に来なくていいわよ。彼女とお幸せに。」 ハルヒはそう言い残すと公園から出て行こうとしていた。今日の部室でやったことを繰り返していいのか、俺はそう考えた瞬間ハルヒを追い掛け、後ろから抱きしめた。 「ちょっ…、離しなさいよ!!」 「頼むよ……、話を聞いてくれ…。」 そのまま俺はハルヒに全て説明した。俺のハルヒへの想いだけはまだ言ってないが。 「本当に……信じていいの?」 「ああ、信じてくれ。」 「よかった…、ホントにあんたがぁ…遠ぐに行っちゃうんじゃない゛がって思っでぇ…」 ハルヒは泣きじゃくりながら話していた。そして俺はハルヒへの想いを伝えた。 「俺はハルヒの側から絶対いなくなったりはしない。ずっとお前と一緒にいたいからな。」 「え゛!?それっで…」 俺はハルヒにそっと唇を重ねた。 「好きだ。」 ハルヒは大声を出して泣き始めた。 「遅ずぎんのよぉ、バガァ」 「すまん。」 「ぜっだいに、離れないでよ、ね゛ぇ」 俺は、泣いていてすぐにでも壊れてしまいそうなハルヒを見て、一層強い力で抱きしめ、誓った 絶対に離れるもんか… 次の日、俺とハルヒは一緒に登校した。絶対に離さないって誓ったもんな。 放課後、俺は部室で長門に何で昨日不機嫌だったのか小声で訊いた。 「私と古泉一樹の時間を邪魔した。古泉一樹の携帯も電源を切らせておいた。」 俺は、はぁ、と溜め息をついて一言、……やれやれ…… 終わり 「あれ~、あたしの出番はないんですかぁ。電話くらい掛けてくださいよぉ。」 ほんとに終わり
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