絆創膏
それは美術の時間の事だ。 いって!?よくある事……かどうかは知らんが、俺はどうやら手元が狂ったらしく、カッターナイフで手を切っちまったみたいだ。まぁ幸い薄く皮膚を切って血が出た位だし、舐めてりゃ良いだろと俺はたまに滲んでくる血を舐めながら、作業を続けていたら急に話しかけてくる奴がいた。「キョン?あんたなにしてんの?」そうハルヒだ。今日は珍しく阪中達と同じ場所で作業をしていたようだが……俺が変な動きをしていたから、気になったんだろうな。気にするな、カッターでちょっと切っただけだ。「ったく…不器用ねぇ……いいわ。ほら」ハルヒはやれやれ(マネすんな!)と言う風に溜め息を吐くと手を差し出した。何だその手は?「うるさい!このあたしが手当てしてあげるって言ってんのよ!つべこべ言わずに従いなさい!」とか言って俺の手を引っぱって美術室をでて保健室に向かいだした……まだ授業中だろ……「後で<怪我したから保健室に行ってた>言えばいいでしょ?」はいはい、そうでございますね。 「ふぅん…珍しく誰も居ないわね。」そうだな、大抵サボって寝てる奴らが居るのに…珍らしい事もあるもんだな。「ほら、キョン傷見せなさい。」ハルヒはそう言いながら勝手に棚から消毒液の染み込んだガーゼを取り出し、ピンセットで摘んでいる。「そこまでしなくてもサビオでも貼ってりゃいいだろ?」「何よ?サビオって」バンドエイドの事だ。「あぁ、絆創膏の事ね。バンドエイドは商品名よ。」そりゃ知らなかった。っていうかサビオは通じないのか?妹も母親もばーちゃんもそう言ってたんだがな……「静かにして、集中出来ないでしょ。」俺の手を手当てするハルヒの表情は真剣そのもので…恥ずかしながら少し……悪くないと思ってしまった。しかし絆創膏ってすごい名前だな。「何がよ?」「絆を創る膏……絆を創る薬って事だろ?」「ばっかねぇ…なに子供みたいな事言ってんのよ。」そう言っていつもの勝ち誇った笑みを浮かべながら、仕上げにハルヒは件の絆創膏を貼った。「でも…そうね…これなら誰でも使えるもんね…傷を治したりってある意味絆を創るんだし……」何ブツブツ言ってるんだ?「ふふっ……気付いてみなさいよ鈍キョン。」言葉と違い…ハルヒは何処か照れたような笑みを浮かべていた。 終わり
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