夏合宿 【二日目】
「キョン君、おきてー」うごぉ。妹よ。ここでもやるか。妹のフライングボディアタックをくらいのその上。「いつまで寝てるの、もう朝ご飯出来てるわよ」ハルヒに布団から引きずり出される。ちょっと待ってくれすぐ行くから。朝飯を食ってさっそく俺達は海に向かった。着くや否や、ハルヒに鶴屋さん、妹が朝比奈さんを連れて飛び込んでいた。まだ時間が早いためそう苦労する事もなく広めに場所を取る、ビニールシートを敷きそこにパラソルを立てて終わりだ。四人の水着姿を教えておこう、今回はみんなビキニだ。まず、スリムな鶴屋さんは赤い水着、朝比奈さんはピンクの可愛らしいやつで、長門は濃い蒼のシンプルなもの、最後にハルヒだが白地にヒマワリ柄だ。みんな似合ってる。ちなみに妹は除外だ俺にはそんな趣味はねぇ。しかし、谷口辺りに言わせれば羨ましいって言うだろうな。「そうですね、四人の美人と共にいますからね。僕も妹さんは射程外ですからご安心を」そうかい。ガチホモでもロリコンでもないんだな。なら安心だ。「異世界の僕はどうか分かりませんが、この世界の僕は、特異な趣味はありません。長門さんと良い交際させていただいてますし」異世界の事はしらん。普通ならそれでいい、ところで長門泳がないのか。「あとで」長門はここでもハードかバーに目を落としてる。じゃ俺は元気いい連中に混ざって来るか。波うちぎわてはしゃいでいる四人の方に向かって歩く。ハルヒが俺に気付いたらしく、ビーチボールを投げる。それを叩き返すと、鶴屋さんがひろいハルヒに返す。ここからビーチバレーが始まった。チームはハルヒに俺で、あっちは鶴屋さんに朝比奈さん、妹だ。朝比奈さんはハルヒの返す速球にわたわたしていて、妹は鶴屋さんの周りでハシャいでいる。そのうち古泉がやって来て鶴屋さんチームに加わる。古泉、俺ばっか狙ってないか。「そんな事はありませんよ」ニヤけていうな、後で覚えとけ。散々暴れ回って、腹が減って来たので昼飯タイムにする俺とハルヒで焼きそばを長門と古泉が焼トウモロコシを買って来た。 もっさりした焼きそばを食った後、ハルヒ達はさっそく海に向かった。浮輪を持って行ったのでその辺でプカプカしてるつもりだろう。俺は休憩だ。パラソルの下で体力の回復をはかる。他に残っているのは朝比奈さんだけだ。たまらんね、ハルヒと出会ってなければ惚れてたな。まぁハルヒが居たから朝比奈さんも居るのだが。「みなさん元気ですねぇ。涼宮さんなんか昨日寝れなかったって言っていたのに」寝れなかったって本当ですか。やたらデカい浮輪を膨らませながら聞き返す。「ええ、布団に入ったら思い出して興奮してしまったそうです」へぇあのハルヒが俺の告白でねぇ「涼宮さんも女の子ですよ。でも、キョン君がちゃんと告白して良かったです」しっかり見られてるとは思いませんでしたけどね。古泉の策略ですか。「まぁそうですねぇ、できるだけ二人きりになるようにしようって。でも最初の機会で成功するとは思ってなかったですけど」今までにも散々チャンスをもらってたみたいですけどね。「古泉君より長門さんの方がノリノリで考えてましたよ。今思えば、楽しんでたみたい」まったく人を使って遊ぶとは、いいように遊ばれてた俺も俺だが。「キョン君、涼宮さんが…」朝比奈さんが困った感じで言ったので海の方を見てみ……ありゃナンパですね。「ナンパですね。さっキョン君行ってあげなきゃ」ハルヒなら文句マシンガンで撃墜出来るとおもうが、自分の彼女がナンパされてるのを見て黙ってる奴などいまい。たぶん…それに、ハルヒは結構な美少女だしスタイルだっていい、まぁ中身は別だが。一人で歩いていればナンパされてもおかしくない。じゃ行って来ますね。と言い膨らましたデカ浮輪をもってハルヒの元へ向かった。朝比奈さんを一人残すのは少々不安だが、それどころでは無い。二人組に前をふさがれやたらと何か言われてる。なかなかしつこい奴等だ。俺は二人組の後ろに立つと「キョン」安心した様な声で呟き、それを聞いた二人が後ろの俺を見る。「俺の女に手出さないでくれるか」俺は二人の間を割る様に入りハルヒの手を握ってそのまま海に行く。 残った二人は、あ~谷口みたいだって言えば分かりやすいか。「アイツらったらしつこいの何の。まぁあんたがこなくてももう少しで撃退出来たけどね」そう言うな、少しは俺にカッコつけさせろ。それに周りにこんな可愛い彼女がいますって自慢するためにもだ。「だったら離れないで、側に居なさいよ」そうだな、害虫が寄って来ない様にしないとな。ここでハルヒを浮輪に乗せプカプカ浮かびながらたわいもない話をして過ごす、たまに悪戯とかしてな。気がつくと結構沖に流されてた。これ以上流されると流石にやばいので、ハルヒにムチ打たれながら頑張って陸に向かって泳ぐ。みんな遊び疲れた様でパラソルの下でくつろいでた。そろそろ帰るか。「そうですね時間もいい時間ですし、充分間に合いますね」何に間に合うって、何か企んでるな。「まぁまぁ、楽しみにしてるにょろ~」鶴屋さん、あなたもグルですか。貴方達が楽しそうだと何かありそうで。「そんな大した事じゃないにょろ、めがっさ楽しみにしてるにょろにょろ」そうさせていただきますよ。片付けが終わり着替えて民宿に戻った。民宿に戻ってくつろごうとした時に「みなさん、八時からこの近くで祭がありまして、その祭でイベントをやる様なのですがそれに参加しませんか」一体何のイベントなんだ。地域の人間じゃない俺たちが参加してもいいのか。「それは構わないみたいですよ。観光客でも参加出来ますし、なにせ祭ですから」「祭があるの。じぁ行かなきゃね」「やほーい」ハルヒに鶴屋さん、妹はまだ元気な様だ。朝比奈さんや長門まで楽しみみたいだ。やれやれ、もう一頑張りするか。「では、夕食後に準備が出来次第、玄関に集合でよろしいですね」全員すぐ了承した。まずは飯食ってからだな。夕食後、部屋に戻り古泉を問い質す。まさかこのイベントは機関が仕組んだんじゃないだろうな。「違いますよ。正真正銘この地区の祭です。機関は一切かかわってません。それにこの場所の提供者は鶴屋さんですよ」ああそうだったな、で何があるんだ。「それは行ってからのお楽しみで、さぁ行きましょう遅れますよ」 さて、玄関に集合した俺たちは古泉の案内で祭の会場に向かった。会場は公園で屋台が5、6軒あり、すぐ近くには寺があった。…まさか古泉、イベントって肝試しか。「ええ、流石に分かりましたか」あれだけ分かりやすく準備してるの見れば幼稚園児でも分かるぞ。「では、さっそく受付に行きましょうか」どうやら、基本二人一組みたいだが。「どうする、いつもみたいにクジで分ける」ハルヒがそう言うと「そんな必要はないにょろ、もう分かれてるじゃないか。キョン君にハルにゃんに古泉君に有希っこ、そんであたしとみくるに妹君だっ」そう言うと鶴屋さんと妹は朝比奈さんに抱き着く。「それでいいですね。ではどのグループから行きますか」「あたしらからいくにょろ」鶴屋さんと妹がが朝比奈さんの手を握って行こうとする「ふえぇ、な何も出ないですよねぇ」どうやら朝比奈さんはかなり行きたくないようだ。大丈夫ですよ。本物の幽霊なんて出ませんから。まぁ何か仕掛けはあるのだろうがな。「行って来るにょろ~」そう言った鶴屋さんと妹に引きずられる様に朝比奈さんが連れて行かれた。ここで肝試しについて説明しよう。墓地に三つのポイントがありそこに置いてある色付きのマッチ棒を持って来るといったとても簡単なものだ。他にやった人のを見てれば10分あればまわって来られる様だ。さて、今、まわって居るのは鶴屋・朝比奈・妹組だ。時折朝比奈さんや妹の悲鳴、それと共に鶴屋さんの笑い声が聞こえる。ある意味楽しそうだ。ちょっとして鶴屋組が帰って来た。朝比奈さんはもうくたくたの様ですぐベンチに座り込んでしまった。どうでした、鶴屋さん。「いや~楽しませてもらったよ、みくるで。なかなかこってるよ。何があったかは見て確かめてさっ」そう言って朝比奈さんの隣に座った。ハルヒさっきから静かだが、もしかして怖いのか。「べ、別に怖いわけじゃないわよ。ただ…な、何でもないっ」そう言ってそっぽを向いてしまった。「それでは行って来ますね」古泉が長門をエスコートする様に連れてった。まぁこの二人ならすぐ帰って来るだろ。しかし、この二人が帰って来たのは20分後だった。 随分遅かったな。何かあったのか。この二人が遅く帰って来た事が心配になる。冬合宿の様な事があったとか言わないだろうな。「いえ、最初のチェックポイントのマッチ棒を取り忘れたのですよ。気付いたのが三つ目を取ってからでして、戻ったため遅くなったのですよ」本当か、長門が居るのに…それに少し疲れてるみたいだが。本当に何もないんだな。 「ええ、走りましたから。」長門にも聞くが。「何もない……………たぶん」たぶん…何だか心配になって来るじゃねーか、お前等がそんなんだと。「キョン。何してるの、さっさと行くわよ」へいへい、こいつらの事は後回しだ。さて行きますかね。ってハルヒさん。シャツの裾を掴むつーか、引っ張るのはやめていただきたいのですが。苦しいですけど。「いいじゃないの、べ、別に怖いからじゃないわよ。そっそれにカッコつけたいんでしょ」ならこうした方がいいだろう。シャツからハルヒの手を取り腕を絡める様に手を握った。うむ、俺の顔は真っ赤になってるんだろうな。ハルヒは寄り添って「うん」とだけ言った。ヤケに素直だな、まぁいい行くか。ハルヒに庇護欲をそそられるとは、これはこれでいいな。暗い中懐中電灯の弱い光を頼りに歩く。一つ目のチェックポイントが見えて来た所で「きゃぁっ」うおっ。ハルヒが俺の腕にしがみついて来た。「ビックリしたぁ。何今の」何があったか周りを確認すると冷やしたコンニャクが上に上がって行った…なんてベタな、だが効果は絶大みたいだ。「コンニャクも侮れないわね。次は何が来るのかしら」「さぁな、ベタなもんだと火の玉とか首なしライダーとかじゃないか」「それじゃ怖いって言うよりビックリするだけじゃないの」そんなもんだろ、たぶん朝比奈さんは本気で怖がってと思うが。取りあえずマッチ棒を取り次に進む。ハルヒは腕にしがみついたままなので歩きにくいうえに腕に当たる柔らかい感触が…いかん、落ち着け俺。二個目のチェックポイントまでは難なくすぎた。予想通りの仕込みだったからな。そんなにびびらなかった。だかもうすぐ三つ目という所で事件は起きた。「キョン、あれ…なに…」暗闇から出て来たのは大きな角を持った鹿だった。タダの鹿ならハルヒはこんな反応はしないだろう。 何せ音もなく目の前に現れたうえに、体の一部が所々無いからだ。鹿のゾンビって言えば分かりやすいか。この墓地は砂利道だ。歩けば音がするはずだ。ええい、どうする。ハルヒを抱くようにして後ずさる。鹿ゾンビは目線を逸らすこと無く少しずつ近付いて来る。「セカンドレイド」と聞こえた瞬間、赤い玉が飛んで来る。と同時にハルヒの体から力が抜けてくたっと倒れこむ。倒さないようにハルヒを抱くと。「眠らせた。この状況は悪影響をおよぼし兼ねない」長門がいつの間にか隣りにいた。どうなっている。「この付近に空間断列が出来ている。あれは異次元の情報生命体」そう言っている間に鹿ゾンビが立ち上がり角を振る。「敵意むき出しですね。長引かせるとまずいですからさっさと片付けましょう」「動きを封じる」長門が呪文の詠唱を始めると古泉が赤い玉を投げつける。「ふもっふ」赤い玉は鹿の顔面に直撃してぶっ飛んで倒れる。「情報連結解除を開始する」そう言って手をあげると鹿は砂のように消えて逝った。何だったんだ、一体あの鹿ゾンビは。古泉なぜここで力が使える。「話は後、この空間を通常に戻し、断列を修復する」長門が高速で呪文を詠唱する。空間の断列なんて見えないがな、どこにあるんだ。「詳しい事は帰ってからにしましょう。では先に戻ってますね」古泉と長門はさっさと走って行ってしまった。仕方が無い、ハルヒを背負いゴール地点へ向かう。戻ると朝比奈さんが心配そうな面持ちで「大丈夫?」と言ってくれた。すいません、心配かけたみたいで。鶴屋さんは疲れ果てて眠ってしまった妹を民宿まで運んだ様でこの場にはいなかった。「まずは民宿に戻りましょう。涼宮さんも布団に寝かせてあげましょう」そうだな、いつまでもこのままではいられないしな。俺らの部屋に戻りハルヒを布団に寝かせる。さて、話してもらおうか。「あの場所は情報が溢れていた。異次元空間にちかい状況にあった。そこに涼宮ハルヒの力が加わりその空間における情報量が過大になりパンクした。その結果、空間段列ができ異次元の情報生命体が現れた」 まぁ空間段列ってやつができた理由はだいたい分かった。前のカマドウマみたいな感じか。「それに近い状況」あの時はコンピ研の部長氏の畏怖の対象が具現化されたが今回もそうなのか。「今回は違う。空間段列ができた場所にもっとも近い位置にいた有機生命体の情報を読み取ったため」それが鹿だったのか。なんであんなゾンビみたいだったんだ。「読み取った際にノイズが入ったと思われる」ふむ、じゃぁあそこで古泉が力を使えたのはなんでだ。「簡単ですよ。あの場所は涼宮さんの力が加わった事で異空間化したので僕の力も使えたわけです。そこはカマドウマの時と同じですね」なるほどな。「あの場所はノイズが膨大なために空間段列を感知出来なかった。わたしの不注意」それは仕方が無いだろ、怪我もせず無事帰って来れたんだからな。良しとしようぜ。ところでそのお前が言う情報と言うのは霊とかそういった類いの物なのか。「その解釈でいいと思う。はっきりは解らない。でも情報は溢れている」そうか、これ以上考えるのはやめよう。俺の頭がパンクする。後はハルヒにはどう説明するんだ。起きたら騒ぎだすぞ。「びっくりして突っ込んで来た鹿に襲われたと記憶を改変する。後はあなたに任せる」そう言って長門は部屋を出ようとする。まてハルヒが寝たまま手を離してくれないんだが。「彼女はあと六時間三十二分目を覚まさない。がんばって」がんばってって何をだ。煩悩と戦えって事か。「では、僕も失礼しますね」古泉、お前どこで寝るつもりだ。「どうにでもなりますよ、ではおやすみなさい」「おやすみ」二人とも部屋を出て行ってしまった。ええい、もうどうしようも無いな。寝てしまえ。寝てしまえば余計な事を考えずに済む。俺の布団にねてるハルヒに手を握られて動けないため布団も敷けず、何とか枕を取りよせそのまま床に寝る。畳だからまだいいか。ちなみに古泉の布団には寝る気は無い。そして俺は何事もなかった様にすぐ寝付いた。 三日目につづ…
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