二人きりと匂うは紅茶 「夏のアイスのように」
「不思議探索スペシャル、夏の不思議大操作は終了よ!」「ふぁ~・・・暑いから物凄い疲れたぜ」「谷口はナンパしかしてないよ」「あ~めがっさ面白かったにょろ~」「そう・・・」「さて、では帰りましょうかね」「そうですね」「ルソー、おいでなのね」「由良達は帰り道解るか?」「うん」「ここら辺はよく来てたから」「今日は楽しかったよ。皆さん、またね~」 二人きりと匂うは紅茶 第二話「夏のアイスのように」 「キョンくん、家に寄りませんか?」夏休み中。いつものメンバーに谷口やら阪中やらを加えて大人数となったSOS団の夏の不思議大捜査の終わった後。夕暮れの帰り道で俺は朝比奈さんに誘われた。「え?」珍しい。いつもは俺の家でお茶などをするのに。そんなわけで驚いて声を上げてしまった。 「あ、ハーゲンダッツのバニラを大量に鶴屋さんに頂いたんですよ。それを一緒に食べようと思って」俺の反応に気付いて説明して下さったおかげで納得した。「あぁ、なるほど。喜んでよらせてもらいます」まぁ、マイ・スウィート・エンジェルに対して断る事なんて出来ませんがね。・・・でもなんで大量のバニラ? バニラ限定?ん~どうしてだ。わっけわかめだな~・・・。おっと、わかめと言っても生徒会の人じゃないぞ? ・・・・・・。 「はい、どうぞ」朝比奈さんは冷凍庫からカップアイスを取り出す。いつ見ても小さいな、ハーゲンダッツ。「ありがとうございます」「いえいえ、うふふっ」「いただきます」「まだまだありますからね」朝比奈さんと向かい合って食べるバニラアイスは格別である。夏という季節であるのも格別である理由だと俺は思うね。この冷たさが夏には良い。麦茶は氷入れても限界があるし、カキ氷では冷たくなり過ぎる。「やっぱり夏のアイスは美味しいですね」俺はそう言って高級アイスのバニラを味わった。「夏に限らず冬も美味しいですよ?」ふと朝比奈さんがそう言った。少し冗談かと思ったね。冬にアイス?「冬は寒くないですか?」「いえいえ、美味しいから良いんですよ」そういう問題なんでしょうか。「食べたら凍死しますよ」冗談交じりの口調は俺はそう言った。半分本気だけどな。「むぅ・・・そういう事いう人嫌いです」そう言って、ややむすっとした可愛い膨れっ面でぷいっと向こうを向いてしまった。「ごめんなさい、冗談です。そうですね、冬も美味しいかもしれませんね」そう言うとすぐに俺の大好きな笑顔をにぱ~☆と浮かべて、「というわけでキョンくん、冬も一緒に食べましょうね」と言ってきた。うん、断る理由はない。「そうですね」まぁ、貴女が一緒なら寒い冬も暖かそうですしね。「と、言うよりもずっとこの先一緒にアイス食べましょうね」「えぇ」「約束ですよ? ずっと一緒ですよ?」そう言って細い小指を突き出してくる。だから俺はそこに自分の小指を絡ませる。「勿論です。離れろと言っても離れませんから」さっきまでアイスを持っていたせいで冷えているらしく小指に伝わるのは冷たさ。だけど朝比奈さんのぬくもりがその奥から届いている。だから心が温かくなる。「指切り拳万嘘吐いたら・・・どうします、キョンくん?」「そうですねぇ・・・じゃあ、お詫びのキスで」「約束破りたくなっちゃいますね」朝比奈さんはそう言って笑った。「駄目ですよ、破ったら」「解ってますよ」俺達はそこで笑いあう。「あ、そうだ。キョンくん、目を瞑って下さいませんか?」「え? あぁ」俺はそっと目を閉じた。何だろう。何だろう。ワクワクがとまらないぜ。マイ・スウィート・エンジェルは何をするつも・・・ん?何だろう。口の中が本当にスウィート・・・バニラアイスの味・・・と、何か、蠢くものが・・・。 キュピーン! 頭にそれがひらめいた。これはまさか・・・!!俺は目を開けて状態を確認する。「ん・・・ふぅ・・・」朝比奈さんが俺にバニラアイスを口移ししていたのだ。蠢いていたのは正真正銘朝比奈さんの舌。「あ、朝比奈さん?」「ば、バレンタインデーのお返しです・・・丁度良い機会と思って・・・えっと・・・」とても甘いキスが味わえました。顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに朝比奈さんは言った。全く。俺も顔があっちっちだ。しかし・・・どうしてこんな事をしたんだろうか。やるような人じゃないのに。俺がそう悩んでいると、「ねぇ、キョンくん・・・」ふと顔を伏せて名前を呟いてきた。「どうしましたか?」「・・・ずっと一緒だよね? 約束だよね?」そう言って朝比奈さんは顔を上げた。その顔は不安に満ちていた。何かにひたすら怯えていた。「朝比奈さん?」心配になって大好きな人の名前を呼ぶ。「私は、いつか未来に帰ってしまうけど・・・それでもずっと一緒に居られる?」声が震えている。そういう事か。俺は理解すると同時に簡単に約束などと言った自分を恥じた。「私、私・・・キョンくんが大好きです。だから・・・だから、辛い・・・・・」「・・・・・・」「離れたくないよぉ・・・キョンくん・・・ぐすっ・・・うぇ~ん・・・」「・・・大丈夫ですよ」俺は肩を震わせてなく朝比奈さんをそっと抱きしめた。胸の感触が凄い。まぁ、それはどうでも良い。この華奢な体には大変な責任がある。未来から来たこの女の子には。「キョンくん?」潤んだ瞳で俺を見つめるその顔に、泣き顔は確かに可愛いですが似合いません。「ずっと一緒です。俺はずっと一緒と約束した以上は、死んでも離れるつもりはありません」「・・・!」頭を撫でると指に髪が絡んでさらりと抜けていく。だけど、「だから、朝比奈さんも、俺から死んでも離れないで下さい」貴女だけは抜けないように抱き締めている腕は強く強くその体を抱き締めていた。「ぐすっ・・・はい」「俺のアリス、貴女が望むなら俺はそれを叶えます。だから断言します。ずっと一緒だと。信じてください」「ありがとう・・・キョンくん・・・・・うん、私信じますよ!」お礼なんていらないですよ。俺は貴女のその笑顔が見れるなら何だって出来るのですから。それだけ愛しい人なんですから。
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