ハルシャミ保守 2日目(古泉編)
一人と一匹が寝静まり、俺もうとうとし始めていたその時、携帯電話が着信を知らせた。古泉からの電話だった。『どうも、久方振りです』「昨日あった気がするが、何の用だ?」『涼宮さん(ry)とシャミセン氏(ry)の様子が気掛かりでして』「今のところ特に問題ない」古泉はくくくっと笑った。「なんだ気持ち悪い」『いえ、あなた今日非常に忙しい日を送ったと思ったのですが、杞憂だったのでしょうか?』まぁ…確かに忙しい日ではあったが。『できれば今日の様子を教えて頂きたいのですが』「ああ、今後の事も聞きたいしな。掻い摘まんで話してやる」俺は今日の出来事の要所を話しててやった。『それはそれは。さぞ大変だった事でしょう』「お前に言われなくても分かってる」『ですが、あなたは先程問題ない、と仰いました。なかなか強靱な肉体と精神、ついでに胃袋を持っていると思いまして』「人の揚げ足をとって遊ぶな」『失礼しました。あなたに今日一日の事を聞いたのは、シャミセン氏(ry)…いえ、涼宮さんの心境をお伝えしようと思ったからですよ』「…閉鎖空間でも発生したのか?」『結論から申し上げますと、発生しました。しかも一個や二個というレベルじゃありません。我々が確認できただけで数十個は発生してました。重複して発生したのもあるため、もしかしたら百を超えていたかも知れません』「ひゃ、百だと…。よく対処できたもんだ」『…実はその大部分が自然に崩壊したんです。大量発生して、我々も手の施し用がなく、どうしようもないと感じた矢先、自然消滅してしまう。そんな事が繰り返し起こりました。しかも神人の数、行動についても一貫性がありませんでした。著しく凶暴な神人が出現したと思ったら、唯蹲っているだけの神人、我々に友好的な態度をとる神人、果ては輪になってフォークダンスを踊る神人なんていうのもいました』「…ユニーク」『…長門さんのモノマネですか?正直、全然にてないですよ?』「いや、忘れてくれ!…それで俺とシャミ(ry)の行動を聞いたのか…」『ええ、でもあなたの行動とシャミセン氏(ry)の取った行動を照らし合わせると、ほぼ納得しましたよ』「爪を立てたり引っ込めたりしてたからな。機嫌がコロコロ変わったんだろう」『確かにその通りです。閉鎖空間は、涼宮さんの精神が不安定になった際に発生します。イライラしている場合のみ発生するわけではありません。…最も、今まではそれが大多数でしたが。今日の涼宮さんは喜怒哀楽が著しく変化していました。そのため、法則性のない、突然変異の閉鎖空間や神人が発生したり消滅したのでしょう』「そう言えば今は発生しているのか?」『いいえ。電話を掛ける少し前に全て崩壊しました。心休まる事があったのでしょう。今日はできればそのまま安静に過ごして頂きたいものですね』「もう出かける気は無い。こっちもクタクタだ」『助かります。そしてできれば涼宮さんの我儘を受け入れてください』「できる事とできない事があると思うが、できることだったらやってやる」『ありがとうございます』「今度は俺の番だ。橘がこんなたとえ話をしてたんだがお前には分かるか?」俺は古泉に橘が話していたゴルフの話をしていた。『なるほど。そう言う事ですか』「分かったのか?」『僕もゴルフのルールは一通り知っています。それと今の話を照らし合わせればそれほど難しくはありません』「そうか、それじゃお前ならハルヒのキャディが勤まるわけだな。頼むぞ」『残念ながら、今はまだ無理です。それは橘さんが仰ったとおりですよ』「何故だ?」『あなたの回答が30点だからですよ』「お前もそれか…じゃあ、ヒントを出してくれ」『それに関しても橘さんと同意見です。あなたは少し悩んだ方がいい』「お前らの組織同士はいつから仲良くなったんだ?」『いえ、今回はどちらの組織も絡んでいませんよ。純粋に僕と橘さんの意見が一致しているだけです。 あなたにもいい加減事の重大さに気付いて欲しいのですが』「…なんだそれは。俺が諸悪の根源で、他人に迷惑をかけているとでもいうのか?」『ご名答です。50点にアップしました』適当に言ったつもりなのに正解だったのか?古泉のニヤけ顔が目に浮かぶ。忌々しい。しかし俺はいつからハルヒの如く人様に迷惑をかける様になったんだ?『もう少し点数が上がれば、僕が涼宮さんのキャディになって差し上げますよ』「何となく合点がいかないがまあいい、そのときはよろしく頼む」『畏まりました。それがあなたの意思であるならば』顔は見えないが気持ち悪い視線が飛んできた。止めろ。『もう一度言いますが、本日涼宮さんはかなりお疲れです。できれば刺激を与えず、穏やかにして下さいます様お願いします』「わかった。お前もさっき言った事忘れるなよ」『肝に銘じておきます』そう言って古泉は電話を切った。…俺も疲れているんだが誰が癒してくれるんだ…俺はそんなことを頭の片隅に残しつつ、意識が薄れていった…
…ペロペロん…?…ペロペロペロペロ…!ハっ、ハルヒ(ry)!?ハ「にゃあ」頼むからその姿で舐めるのはよせ。収まりが付かん。耐性は大分ついたがな。しかし今まで舐める事はなかったのに、この姿になってからよく舐める様になったな。俺は頭を撫でてやった。ハ「にゃあ」ハルヒ(ry)は頬擦りをしてきた。ちょ、ちょっとまて!流石にそれは恥ずかしい!止めろ?ハ「にゃあ?」ハルヒ(ry)は俺の言葉に従って、頬擦りを止めてくれた。まさか、シャミセンはわざとやってるんじゃないのだろうか?ってことは、猫にからかわれているのか、俺…?してくれるのは嫌ではないんだが、こんなところをシャミ(ry)に見られt…シ「………」シャミ(ry)はじっと俺を見ていた。まさか今のを見られた!?だがシャミ(ry)はしばらくすると目線を外し、また蹲った。どうやら見てなかった様である。助かった。『今日はシャミセン氏(ry)を労ってくださいね』…そんな古泉の言葉を思い出した。…仕方ない、あいつの望みをかなえてやるか…
飯の時間となった。俺は部屋を出た瞬間、嫌な予感を感じた。今日、よく嗅いだある物の臭いが俺の鼻をくすぐったからである。…そう、今日の晩ご飯はカレーだった。三連続食カレーかよ。いや、明日の朝もカレーだから四連続がほぼ決定だ。いくらカレー好きでもここまで来ると勘弁してほしい。そんな話はさておき、俺は寛大にもシャミ(ry)の分の皿を用意してやった。また俺のおかずを食べられるのは懲り懲りだからな。しかしシャミ(ry)は相変わらず俺の皿からおかずを漁っていた。何がしたいんだろうな、こいつは。しょうがないのでシャミ(ry)の皿のおかずを食べていた。それを見るや否や今度は自分の皿のおかずを食い始めた。なるほどわかった。つまり俺の食事の邪魔がしたいんだろう。何が楽しいんだか知らないが。食事後、部屋でだらだらと本を読んでいたが、風呂の時間と相成った。よし、風呂に行くぞシャミ(ry)シ「に、にゃ!?」シャミ(ry)は少し驚いた様な表情だった。…いやなら行かなくてもいいぞ?シ「……にゃ」シャミ(ry)はそれでもついてきた。よしよし。脱衣所に着き、俺はおもむろに服を脱ぎ出した。シャミ(ry)は脱衣所の隅で縮こまっていた。全く、普通は見られる方が恥ずかしいって言うのにな。顔を隠しているように見えるが、物凄い視線を感じる。見てる。絶対見てる。見るんなら堂々と見ろ。その方が開き直れる。俺は全裸になった後、隅で蹲っていたシャミ(ry)を持ち上げ、風呂場に入った。これだけの至近距離では隠れ見る事はできないだろう。予想通りシャミ(ry)は俺の方を見ようとはしなかった。―ああ、因みに全裸と言っても腰にタオルは巻いている。勘違いする奴がいると困るので、念の為。
…一人と一匹、入浴中…俺はシャミ(ry)にお湯をかけた後、一緒に湯船に浸かった。シャミ(ry)は未だ俺から目線を外している。だがちらちらこちらを見ようとしているのが丸分かりだ。少しからかってやろう。うりゃ!俺は抱えていたシャミ(ry)の向きをかえ、俺と目線を合わせる様に持ち替えた。シ「にゃ!?」シャミ(ry)はじたばた動いていた。まあ落ち着け。シ「にゃあにゃあにゃあ!」…どうやら取り付く島もない。しょうがないな、ほら、静かにしろ。俺はシャミ(ry)を俺の胸に埋めた。シ「に…!」シャミ(ry)の鼓動が聞こえる。俺はシャミ(ry)を優しく撫でてやった。…撫でているうちにシャミ(ry)は大人しくなり、鼓動も穏やかになった。これくらい大人しいとシャミセンと同じくらい楽なんだがな。ここでまた俺の半裸身をみせたらどんなリアクションをするか楽しみだが、また気を沈めるのが大変なんで止めておく。…今日はお疲れだったな。明日もよろしく頼む。でも早く元に戻ってくれよ?風呂から上がって暫く後、俺はベッドに潜り込んだ。もちろんハルヒ(ry)もシャミ(ry)も一緒だ。このまま寝たいが、その前にある事をしないとな。
俺はベッドの上で、考えごとをしていた。―ハルヒは本当に元に戻るのだろうか?ほとぼりが冷めたら戻ると古泉は言ったが、未だ戻ろうとする気配は見られない。ハルヒがシャミセンになった理由、―風呂も寝る時も一緒という憧れです―これも古泉の言葉だ。憧れという意味がよく分からんが、つまり俺を常時観察して弱みを握りたいとか、そんなところだろう。俺はあいつの望んでいることを大概叶えてやった。一緒のベッドで寝てやったし、風呂にも入ってやった。願望を叶えてやった方が早く元に戻ると思ったからだ。だが弱みは大分握られた気がする。忌々しい。―だから閉鎖空間が冬眠中のダンゴ虫よろしく大量発生していると聞いた時は少しビビった。元に戻るどころか世界を変えてしまう可能性があったからな。だが今はかなり落ち着いている。家に帰って以降は閉鎖空間も発生してないだろう。あとはハルヒが元に戻るよう望むのを待つまでだ。…もう一度現状の確認をした方がいいな。俺は一人と一匹が寝静まったのを確認してある人物に電話を掛けた。『今晩は。どうされましたか?』「あぁ、聞きたい事があってな。あの電話以降、閉鎖空間は発生したのか?」『…また何かしでかしたんですか?余り犬も食わない事は止めて下さいね』「どうゆう意味だ。いや、それはいい。お前の今の口調からすると発生しなかった様だな」
『いえ、残念ながら発生しました』「何?俺はさっきまであいつを怒らせる様なことはしてない。むしろハルヒの願望を叶えさせてやったんだ。そしてお前に言われたとおり労ってやったんだぞ?どうして発生した?」『確かに、イライラを触発させる事は無かったと思っています。僕との約束を遵守して頂いて嬉しい限りです』「それなら何で発生したんだ?」『以前の状況に似ています。イライラから来るストレスではなく、モヤモヤから来るストレスが閉鎖空間を発生させたようです』「まだ何やら悩んでいると言うのか?」『そのようです。最も、昼頃に比べれば甚だ落ち着いています。あの時は緊急事態でしたから』「…あのまま労わなかったら、別世界を創造したって訳だな」『いえ、その可能性は低いと思います。確かに昼の閉鎖空間はイライラから発生したのも多数発生しました。ですが、大多数が自然消滅しました。ということは、そのイライラを瓦解する方法があったからです。別世界を創造する必要性はないと感じたのでしょう。ただ、自分の今の状況に対して何もできない歯痒さもあるようです。その他の閉鎖空間の発生原因がそれです。つまり、イライラの原因は把握しており、その解決法も分かるのですが、今はどうにもならない、と言う心境です』「今は、ってことは今後は自力解決できるというわけか?」『さあて、それは貴方次第ですね。ともかく、あまりストレスを与えないで下さいね。僕の自由時間がなくなります』「もしかして、労いをしてほしいといったのはお前が楽したいからか?」『正直、それもありますが、涼宮さんのためですよ。あなたも早く元に戻って欲しいのではないのですか?』「…ああ、確かにな」『では、その気持ちをきちんと涼宮さんに伝えた方がいいですよ。それが彼女を元に戻す一番の方法です』「…努力はしてみる」『期待しています』古泉との電話は終わった。しかし、どうやって気持ちを伝えればいいんだ?そんなことを考えながら、俺はいつの間にか眠りに陥った…※ハルシャミ保守 3日目(ハルヒ&キョン編)につづく
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