1 結末は空港で
高校ニ年の春、朝比奈さんの卒業を間近に控えたあの日を境に、ハルヒの能力は消失した。三人のSOS団の仲間と共に。三人の仲間が俺達の前からいなくなった後、現実の世界も俺が持っている記憶とは若干異なっていた。長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹といった学生はもともと北高には在籍していなかった。6月の野球大会では俺とハルヒが北高の運動部員から有志を集って参加し、優勝したことになっていたし、文化祭では映画の上映などはしておらず、そのかわりにコンピ研を相手にハルヒがゲームのイカサマを暴いたことになっていた。ハルヒのライブはあったようだが、傍らに長門の姿は無く、ENOZのメンバーが代わりにギターを担当したようだ。もちろん、夏や冬の合宿などというものは、まったく片鱗すら存在しておらず、一年の年度末にはハルヒが文科系の弱小部を集めて、部の統廃合を強引に進めようとした生徒会に存続の要求を突きつけて勝利したというエピソードまであった。こういった現実を目の前に突きつけられると、SOS団の一員として2年間を過ごしてきた俺でさえ、あの2年間が夢や幻のように思えてしまう。唯一、SOS団のあったあの部屋の片隅で見つけた笹の葉に吊るされていた短冊だけが、俺の持つ記憶が真実であることを物語っていた。あの後、無事三年に進級し、受験戦争の真っ只中に放り出されることになった俺は、ハルヒが家庭教師をしてくれたこともあり、めきめきと学力を向上させ、年末にはハルヒと並び学年でトップクラスに入る程になっていた。そして、努力の甲斐あって、俺はハルヒと同じ地元の国立大学に合格することができた。しかし、学業に専念したのは、いまから思うと、あの日のことから逃げようとしていたのかもしれない。学業に一心不乱に打ち込むことによって、あの日のことを考えないようにしていたのかもしれない。ともかく、俺の高校生活はそんな感じで幕を下ろした。大学に入学し、ハルヒとの仲が進展するに連れて、俺は自分でも気づかなかった一面を自覚するに至った。まず、第一に俺は意外に嫉妬深いということだ。ハルヒが大学の他の男子学生と話したりしていると、かつて俺の中学校の同級生だった中河が長門に告白してきたときのように、胸にモヤモヤとした感情が湧き出てくるのが自覚できた。これがハルヒに対する嫉妬だということに気付くのにそう時間はかからなかった。最初の頃はそんな心の狭い自分を認めようとせず、ハルヒと口論になったりして、その後よく自己嫌悪に陥ったものだ。第二に俺は案外寂しがり屋だということだ。大学生活の四年間を、俺達はずっと付き合い始めた頃のままで過ごしてきたわけではない。時には、意見の違いからけんかをすることもあったし、そうやってけんか別れになった後はとても不安を覚える自分がいることに気付く。このままハルヒとの関係が終わってしまうんじゃないのかと。まあ、谷口や国木田あたりに言わせれば、俺達のけんかは恋人同士の他愛ない痴話げんかに見えるようだが、当人である俺にとっては、とてもそんな風に考える余裕は無かったことを覚えている。お互い素直じゃないため、なかなか仲直りすることができず、不安な日々を過ごしたが、最終的に俺から謝ったことのほうが圧倒的に多かった記憶がある。そんな感じで俺とハルヒは一定の距離をくっついたり離れたりしながら、四年間を過ごした。他にも四年の間に色々なことがあったが、そのことは別の機会に話すとしよう。まあ、そんなこんなで俺達の大学生活は終わりを告げた。俺は大学を卒業した後、地元の市役所に就職し、ハルヒは大学に残って研究を続ける道を選んだ。だが以前、俺はハルヒに大学を卒業した後の進路について尋ねたことがある。そのときハルヒは迷わず「あたしは卒業したら結婚して専業主婦になるわ」と、言っていたのを覚えている。俺はハルヒのこの回答がとても意外だったので、率直に聞き返した。「ふーん、お前にしては意外な答えだな。なにか大きな仕事をしたいと言うと思ったのに」俺がそう言うと、ハルヒは100ワットの笑顔を俺に向けて自分の考えを語りだした。「ふふん、キョン、あんた何にもわかってないのね。子供を育てるということは、他のあらゆる仕事と比較しても、遜色の無い偉業のひとつなのよ。それに就職なんかしたら会社の利益追求のためにあたしの貴重な時間を割かなきゃならないのよ。そんな馬鹿馬鹿しい事はできないわ」そう言った後、俺を上目遣いに見て「まあ、未来の旦那様との時間を仕事に追われて奪われたくないというのもあるけどね」と、付け加えた。どれがハルヒの本心なのかは想像にお任せしよう。とにかくここで問題なのは、専業主婦を目指していたハルヒがいまだに大学で研究員のようなことをやっているということだ。理由はわかっている。ハルヒは俺がプロポーズするのを待っているのだ。だが、俺は未だに踏ん切りが付かないでいる。その原因はやはりあの日の出来事だ。ハルヒが大人に成長するために避けることのできない運命のようなものであったとしても、三人の仲間を犠牲にして俺達だけが幸せになってもよいのだろうか。もちろん、あの三人が俺とハルヒの幸せを心から望んで、この世界から消えていったことは十分理解しているつもりだ。しかし、例え理屈ではわかっていたとしても、感情の部分で引っかかるものがある。あの当時は無視できるほど小さな感傷であったものが、時を経るごとに大きくなっていく感じがして、大学を卒業する頃になると、無視できないほど俺の心を占めていることに気が付いた。そして、この心の迷いがハルヒへのプロポーズを躊躇させているのだ。こんな情けない俺を三人が見たらどう思うだろうか。長門は冷たい視線でじっと俺のほうを睨んできそうな気がする。朝比奈さんは泣きそうな悲しい顔をして、俺のことを怒るだろうなあ。古泉は………思いっきりぶん殴られるかもしれない。そんなことを日々考えながら時間だけが過ぎていき、気がつくと大学を卒業してから一年が過ぎようとしていた。春、奇しくもSOS団の三人と別れた季節。俺はいま空港でハルヒの帰りを待っていた。研究室内でのハルヒの評価は、流石と言うべきか、かなり高く、海外にまで論文を発表しに行くのだそうだ。なるほど、単位を取るのに精一杯だった俺とは大違いだ。俺は懐から携帯を取り出して時間を確認する。まだハルヒが到着するまでには30分程余裕がある。学生時代のSOS団の癖で、集合時間よりも早く待ち合わせ場所に来てしまうようになってしまった。これもハルヒの俺に対する教育のひとつなのかもしれない。さて、ハルヒが到着するまでどうやって時間を潰そうか。そんなことを考えながら、空港の窓から空を見上げると、どんよりとした雲が空一面を覆っていた。まるでいまの俺の心を映し出しているかのように。ガタンいきなり衝撃が俺の身体を襲った。どうやら余所見をしていてぶつかったようだ。我に返り周囲を見回すと、俺がぶつかった鞄から荷物が散乱している。「す、すみませ―――」俺はぶつかった相手の顔を見て、一瞬時が止まったような錯覚を覚えた。ぶつかった相手は、俺が知っている姿からは若干成長し、大人になっているものの、長門有希そのひとだった。「な、長門?」俺がそう声をかけると、長門は不思議そうにこちらに顔を向けた。ふたりの男女が長門のもとに駆け寄って来る。そのふたりの顔を見て、さらに俺は驚愕を覚える。古泉一樹と大人バージョンの朝比奈さんだった。俺が唖然として目の前の光景を眺めていると、古泉が俺のほうに近寄って来て、心配そうに声をかけてきた。「すみません、大丈夫ですか。有希がご迷惑をおかけしたようで」いつも部室で見せていたニヤケ面ではないものの、とても懐かしいような感情が込み上げてくる。いま、ここにあのときのSOS団のメンバーが揃っているのだ。古泉が訝しげな表情で俺に尋ねてきた。「もしかして有希の知り合いですか。さきほど有希の名前を呼んでいたようですが………」「いや」俺は咄嗟に否定して、顔を背けた。あの日以来、ずっと会いたいと思っていたメンバーが目の前にいるのに、なぜ俺は……「そうですか」そう言うと、古泉はいったん間を置いて、三人の紹介を始めた。「僕は古泉一樹といいます。彼女は長門有希。いえ、いまはもう結婚して古泉有希になってますがね。僕達この間結婚したんですよ。もうひとりの女性は長門みくるさん。僕の義理の姉にあたります。いまはもうご結婚されて朝比奈みくるさんですがね。僕は仕事の関係で海外に転勤することになったのですが、新婚早々単身赴任というのも嫌なので家族全員で移住することに決めたのです。で、今日がその出発の日なのです。結構大きなプロジェクトのようなので、もう二度と日本には帰って来れないかもしれません」解説好きだった古泉の解説を久しぶりに聞いて、走馬灯のようにSOS団での活動が俺の頭の中を流れた。あのころは正直うんざりしたこともあったが、それも含めて、いまではとても貴重なもののように思える。そんな自分の心とは裏腹に、俺は古泉を睨みつけて尋ねた。「どうして初対面の俺にそんなことを話すんだ」古泉は俺の質問を予想していたかのように答える。「僕もあなたとはどこかでお会いしたような気がするのですよ。有希と同じようにね。しかし、どれほど記憶を探ってみても、あなたと会った記憶は見つからないのです。どうでしょう、あなたは僕のことをご存知ではないでしょうか」古泉の問い掛けは俺の想像の範疇を超えていた。なんと答えよう。このまま正直に話をするべきだろうか。それともとぼけるべきだろうか。心の準備ができていなかった俺の口から咄嗟に出た言葉は「いや、知らん。俺もお前達とは初対面だ」古泉は俺の言葉を聞くと、ふふふと笑みを浮かべて、予想外のことを言った。「それでいいのです。僕達とあなたは偶然この空港ですれ違っただけの関係。そう、ただそれだけの関係です」俺は古泉のこの言葉を聞いて、心臓が止まりそうなくらいびっくりした。「おい、それはいったいどういう意味だ」古泉に問いただそうと声をかけようとしたとき、俺と古泉の間に朝比奈さんが割り込んできた。朝比奈さんは丁寧にペコリと頭を下げて俺に謝罪の言葉を口にした。「申し訳ありません、妹がご迷惑をおかけしたようで」「い、いえ、俺の方こそうっかりしていて」朝比奈さんはつぶらな瞳で俺の方を見つめて名前を尋ねてきた。「あのう、初対面で大変失礼ですけど、お名前はなんとおっしゃいますか」俺が自分の名前を告げると、朝比奈さんはほんの少し考える素振りをしてから尋ねてきた。「すみません、わたしとどこかでお会いしたことはありませんか」この言葉を聞いて、二回目の選択の機会が来たことを知った。そしておそらくこれが最後の選択になるであろうことも、俺にはわかっていた。どう答えるべきか。これが最後のチャンスである。ここを逃せばもう次の機会はない。もし、正直に話せば長門や朝比奈さん、古泉ともう一度、かつてあったような友人関係を築くことができるかもしれない。そうすれば、あの日以来、心の片隅にある、このわだかまりを消すことができるだろう。しかし、なんとなく確信めいたものを感じる。その代償を必ず支払わなければならないと。その代償とはおそらく、いまの俺とハルヒの関係。もしかしたらここでSOS団のことやあの日の出来事を三人に話せば、ハルヒは戻ってこないかもしれない。もちろんそんなことは常識的には在り得ない。だが、虫の知らせともいうべき直感が俺にそう告げる。それにもし仮にハルヒが帰ってきたとしても、俺達はいままでどおりでいられるだろうか。ハルヒは長門や朝比奈さんが俺のことを好きだったということを知っている。たとえ、目の前にいる三人があの三人とはまったくの別人であったとしても、ハルヒは彼らを見てどう思うだろうか。そう考えると、あの屋上での惨事が俺の脳裏をかすめる。いまの俺にとってもっとも優先するべき一番大切なこととはいったいなんだ。ハルヒかそれとも………俺はこの十秒にも満たない時間の間に、二十余年の人生でこれほど悩んだことは無いというくらい悩みに悩みぬいて、決断を下した。その言葉を口にしようとしたが、それよりも早く朝比奈さんが俺の背後に視線を向けて言った。「あら、待ち人が来たようですよ」俺が振り向くとハルヒの姿が遠くに見えた。後ろから朝比奈さんの声が聞こえる。「うふふ、可愛らしい彼女ですね。お幸せに」しかしハルヒはまだ俺には気付いていなかった。古泉も朝比奈さんも俺とは初対面だと言った。なのになぜハルヒが俺の待ち人だと知っているのか。それにあの古泉の奇妙な言動。やはり彼らは………そう思い、俺が三人の方を向くと、三人は人ごみの中に消えようとしていた。「おい、待ってくれ」声をかけても、朝比奈さんも古泉も振り返りはしなかった。ただ、長門だけが俺のほうを振り返り、いつも無表情だった長門が、いままで見たことも無いようなやさしい表情で微笑んでくれた。長門の微笑は俺達ふたりの将来を祝福しているかのように思えた。俺は声をかけることも、追いかけることもできず、その場に呆然と立ち尽くしていた。そうだ、どうして気がつかなかったのだろう。俺は長門や朝比奈さん、古泉はハルヒの創造した世界の人間で、あの日を境に消えてしまったと思い込んでいた。もちろんそう思ったのは、長門や朝比奈さんや古泉があの部室で説明してくれたからである。しかし、実際はそうではない。彼らはもともとこの世界に存在していたのだ。そしてハルヒによってそれぞれの役割を与えられて、北高に呼ばれたのだ。俺やハルヒと共に高校生活を過ごすために。あの日、役割を果たした彼らは消えたのではない。帰ったのだ。彼らが本来在るべき場所に。彼ら自身の幸せを見つけるために。もちろん、俺のこの考えが正しいことを証明することなどできないし、俺の解釈では長門や古泉の説明とは食い違うことになる。俺があのふたりを出し抜けるとは思っていないが、それでも俺は自分の考えが正しいと確信している。なぜかって、古泉の言葉を借りれば「わかってしまうのだから仕方がない」というやつだ。それに俺の考えが正しいことを証明する方法がないように、長門や古泉の考えが正しいことも証明できない。結局、どちらが真実かなどということは誰にもわかりはしないのだ。だが、俺はそれでいいと思う。人間原理などという大層な事を言うつもりはないが、それぞれの見方や考え方により、世界は、真実は違って見えるものだ。あたかも世界が改変されたかのように。だから俺は自分の考えを信じることにする。バシッ!と背中を叩かれて、俺は我に返った。「キョン! なにボケッとしてるのよ。声ぐらいかけなさいって、あんたなんで泣いてるの」ハルヒの言葉を聞いて頬を触ると、確かに俺は涙を流していた。ハルヒに指摘されるまで、俺は自分が涙を流していることにすら気がつかなかった。ハルヒは俺の顔を覗き込み心配そうに尋ねてくる。「キョン、何かあったの」俺は咄嗟にハルヒから顔を背けて否定する。「いや、なにもない」ハルヒはじっと俺の顔を見つめてから、ため息をついた。「言いたくないのね。いいわ、じゃあ聞かない。でも覚えておきなさい。なんでも自分ひとりで抱え込まないようにすること。あんたにはあたしがいるんだからなんでも相談してくれていいのよ。あたしだってあんたに頼ったりすることもあるだろうしさ。でも、何にも言わずにあたしの前からいなくなることだけは絶っ対に許さないからね」「ハルヒ………」「さあ、帰るわよ」そう言うと、ハルヒは俺の手をとって歩き出した。あの日の部室でのやりとりがいま目の前にあることのように思い出される。あの時ハルヒの言ったセリフが俺の頭の中をこだまする。『わかったわ。じゃあ、みんなとはもうお別れね』『これがどうしても避けられない選択なのなら、あたしはあんたを選ぶ』あの時、俺はどんな気持ちだったのだろうか。何を考えていたのだろうか。安易に仲間を切り捨てる選択をしたと、もしかしたら心のどこかでハルヒを非難していたのではないのだろうか。しかし、俺はいまさらになってようやく心から理解できた。あの時のハルヒの気持ちを、ハルヒが苦渋の決断をしたことを。ハルヒは決して安易に決断を下したわけではない。悩みに悩みぬいて決断を下したのだ。俺はそのことをわかっていたつもりだったが、心の底から理解できていなかったのかもしれない。だが、自分が決断を迫られる立場になって、初めてあの時のハルヒの苦しみを本当の意味で理解することができた。実際、俺は最後の最後に決断を下すことができなかったではないか。なのに、苦しみぬいた末に俺を選択してくれたハルヒに対して、俺はいまでもまだプロポーズできないでいる。そのことを考えると、自分がいかに卑小で、卑怯な人間であるかということを思い知らされた。すまないハルヒ。長い間待たせてしまって。俺はいま決断を下す。そしてどんな結果になろうともその全てを受け入れる。俺の手を引いて歩いていたハルヒの手を掴んで立ち止まった。「どうしたの」ハルヒが振り返り、怪訝そうに俺に問い掛ける。俺は無言のまま、ハルヒの腕を引っ張り、身体を引き寄せると、強く抱きしめた。「キョ、キョン?」ハルヒは驚いた表情で俺の顔を見上げている。「ハルヒ、俺はお前のことが好きだ。必ず、必ずお前を幸せにする。だから、だから俺と結婚してくれ」ようやく、ようやく俺はここまでたどり着くことができた。ハルヒの立っている場所まで。そしてこの言葉を伝えることができた。後は、ハルヒの審判を待つ。ただそれだけだ。ハルヒがあの日あの部室で感じていたであろう不安が俺を襲う。ハルヒは最初、何が起こったかわからないといった表情で俺の顔を眺めていたが、俺の胸に顔をうずめて一言つぶやいた。「バカ」「ハ、ハルヒ」「あたしがその言葉をどれだけ待ってたと思ってるのよ。あたしをこんなに待たせるなんて万死に値する重罪だわ」そう言うとハルヒは顔をあげ、涙で潤んだ目で、俺の目をじっと見つめた。「だから、一生あたしの傍で、あたしを幸せにしなきゃ許さないんだから」「ハルヒ、それじゃあ………」俺が聞くと、少し照れたように頬を赤く染めて、答えた。「OKに決まってるじゃない」ハルヒのこの言葉を聞いて、俺の心に立ち込めていた暗雲が取り払われた感じがした。そして、いままで俺が心に抱いていたモヤモヤとした感情がとてもくだらないもののように思えた。どうして俺はあんなくだらないことにこだわって、一年もハルヒを待たせてしまったのだろうと。すまないと思うと同時に、そんな情けない俺を、ハルヒがずっと待ちつづけてくれたことがなによりも嬉しかった。俺達はそのまましばらく見つめあった後、どちらからともなくその場で目を閉じ、唇をあわせた。いままで何度かハルヒとキスをしたことはあったが、この時のキスは一生忘れることはないだろう。長い時間が過ぎ、唇を離して目を開けると、映画のワンシーンのように、春の日差しが俺とハルヒを包み込んでいた。空港の窓から空を見上げると、どんよりとした雲の切れ間から日の光が差し込み、俺たちを祝福していた。これから晴れ渡っていくであろうこの空は、まるでいまの俺の心のように思えた。
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