嫉み
私は朝比奈みくるを憎んでいたのだろう。彼を独占していた朝比奈みくるを。朝比奈みくるがいる限り彼は私を見てはくれない。だから朝比奈みくるが未来に帰るとわかったときは仲間として。"悲しい"とゆう感情より"嬉しい"とゆう感情のほうが強かった。「ありがとう」朝比奈みくるを見送る場でのこの言葉は本心。――彼から離れてくれてありがとう。あとは私が別れ際に抱き合いキスをする二人を見て黒い感情がうかんできたがそれも今日が最後。最後になるはずだった。 朝比奈みくるが未来に帰還してから彼はまるで性格が変わったかのように塞ぎ込み、ついには学校にも来なくなった。しかし涼宮ハルヒは彼が学校を、SOS団を欠席することを許さない。無理矢理家へと押し掛けることとなった。涼宮ハルヒ、古泉一樹と順に彼に励ましの言葉をかけていく。「悲しいのはわかるわ。でもね、いつまでもそんなんでみくるちゃんが喜ぶとでも思ってんの?きっと天国で泣いてるわよ。シャキッとしなさい! シャキッと!」 涼宮ハルヒには朝比奈みくるは死亡したと伝えられている。「涼宮さんの言うとおりです。あなたは朝比奈さんの笑顔が好きだった。あなたが彼女から笑顔を奪っていいのですか?」「ハルヒ…古泉…」「朝比奈みくるは今のようなあなたを望んではいない」朝比奈みくるなら例え彼が他の人間を好きになっても「幸せになってください」とでも言うだろう。偽善。彼が自分の未来にいないにも関わらず「幸せに」など偽りでしかない。本心であるはずがない。「ありがとな、長門。まさかおまえにまで励まされるとはな」彼の顔に笑顔が戻った。 それからしばらくは幸せだった。あなたが私を見てくれる。あなたが私を気にかけてくれる。あなたが私に微笑んでくれる。幸せだった。………………………… 休日の図書館からの帰り道。明日はバレンタインデー。彼に私の気持ちを伝えよう。朝比奈みくるが帰還してから半年もたった。もう時期はいいだろう。チョコを渡すときに話せばいい。これで彼に愛されることができる。朝比奈みくるに邪魔されてきた私の夢が叶う。 薄暗い道路の一角に明かりが見えた。自動販売機の小さな光。つられて目をやるとそこには見覚えにある人影が二つ。よくよく見ると二人の手が繋がっているように見える。なぜ? どうして?思考が働かない。どうしてあの二人が?すると次の瞬間には二人の唇は合わさっていた。 「じゃあな、ハルヒ。明日のチョコ楽しみにしてるぞ」「ま、期待してなさい」 許さない。彼は私のもの。なのにどうして? どうして私と彼の邪魔をするの?朝比奈みくるがいなくなったのに今度は涼宮ハルヒが邪魔をする。許さない……許さない……翌日。放課後の屋上。空には暗く曇っている。風も強まってきた。直に雨が降る。「有希に呼び出されるなんてめずらしいわね」涼宮ハルヒがきた。「話って何? あ、もしかして今日の資金集めのイベントのこと?」まさか知られているとは思ってないのだろう。「彼は私のもの」 涼宮ハルヒはわかりやすすぎるぐらいに顔に動揺の色をうかべた。涼宮ハルヒならこれだけでもう理解できる。「……彼って?」わかっているはず。今更隠そうとしても無駄。 「えっ?」避けられた。ナイフで首を狙ったはずが腕を擦っただけ。「何……? どうしたのよ、有希? ねぇ!?」次は外さない。ゆっくりと壁に追い詰めていく。「あああぁぁぁぁ」またずれた。今度は肩にささってしまった。「痛い…有希助けて…」「彼を奪ったあなたが悪い。あなたが動かなければすぐに終わる」腕と肩から出血はしているもののまだ致命傷はない。もう涼宮ハルヒは動く気はないらしく縮こまっている。長門「とゆう夢を見た」みくる「………」ハルヒ「………」キョン「………」いっちゃん「ねぇ、僕とキョンたんの絡みは?」
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