ひぐらしの憂鬱 第三章
ミーンミーンと地面から出てくるタイミングを一ヶ月ほど早とちりしたセミたちが合唱をしている。忘れようとしても消えないその言葉が俺を締め付ける。『雛見沢ダムリンチバラバラ殺人事件』この言葉はもはや脳に染みついてしまった。だから俺は心を落ち着けるべく、目をつぶり深呼吸しようとしt「だ~れだ!」いきなり目を押さえつけられた。しかしそれが誰だかはすぐにわかった。俺の背中に押しつけられたこの感触、豊かな胸、それは・・・「朝比奈さんですよね?」「えへっ、わかっちゃいましたか?」「そりゃあ、もう」あなたの天使の聖歌のようなお声と、シルクのような手、そして誰にも劣らないその胸!!この三種の神器を備えたお方はあなたしかおりませんからね、なんてことは言ってないぞ。「どうしたんですか?ここ1年生の教室ですよ?」「キョン君、もう放課後ですよ?放課後はここにいつも集合でしょ?」いつのまにかすでに一日の大半は終了し、放課後の時間になっていた。「うふふ、変なキョン君♪」なんてことを言って朝比奈さんはいすに座った。気を取り直してSOS団のほうに考えを移そう。少しでも嫌なことを忘れるために、、、。時刻は放課後、SOS団の活動が開始される時刻である。しかし一人足りない。「あれ長門は?」気づいた俺が言う。「長門さんは先ほど職員室に呼ばれて行かれましたよ」「職員室?あいつなんかやったのか?」「バカねぇ、あんたと違って有希がそんなことするはずないでしょ!」「長門さんは、綿流しのお祭りの実行委員なんですよ。ほら、長門さんって神社の巫女さんだから」「あぁそういうことか、ところでさ綿流しって何やるんだ?名前の通り綿を流すのか?」「具体的に説明しますと、傷んで使えなくなった布団やどてらに感謝するお祭りなんですよ。その綿を川に流して、感謝とともに供養をする、というわけです」俺の頭の中では古泉の説明を図案化していた。えーっと、川に布団を流す、次から次へと・・・あっ布団が川の流れをせき止めた!?なんて馬鹿な妄想を繰り広げていると、「またバカなこと考えてんでしょ?まったくこれだからキョンは!」読まれてた・・・「でもそれ以外は普通のお祭りと同じですから、普通に楽しめばいいと思いますよ?」朝比奈さんが人差し指をピョンと立てながら俺に言ってきた。チクショー祭の日が楽しみになってきやがった!!「あら、有希!?いつのまに入ってきたのよ!?」そこにはいつからいたのか長門がちょこんといすに座っていた。「・・・・・今」「よし!そんじゃ5人そろったことだし、活動始めるわよっ!」「ハルヒ、今日は何をやるんだ?」「そうね、、、やっぱり王道のトランプかしらね!」俺の脳裏にこの前の出来事が浮かび上がる。「ぅおーーいっ!!またあの傷モノトランプを使うのかよっっ!!」「今日は違うわよ、ちゃーんと新しいのを使うからねっ!古泉君!?」「こちらですよ」とトランプを見せる古泉。「本当だろうなぁ?一応確かめさせてもらうぞ」「疑り深い方ですね、どうぞ」うん、見た感じは普通のトランプだ。傷もないし、どこにでも売られているような代物だ。「まぁいいだろう」「それでは今日は何のゲームをいたしますか?」「今日は大貧民をやるわよっ!」大貧民、、、奥が深いゲームだ。こりゃあ心してかからないといけないな。実は俺はそんなにこのゲームは不得意ではない。もしかしたら勝てるかもしれないっ!!「あのぅ・・・やっぱり罰ゲームもあるんですよねぇ??」怯えるうさぎの様におずおずと尋ねる朝比奈さん。「ふっふっふ、、当ったり前でしょ、みくるちゃん。罰ゲームがなきゃ意味がないでしょ?罰ゲームあってのSOS団なんじゃない」こりゃまた素敵な笑顔で朝比奈さんを怯えさせている。罰ゲーム、、恐ろしい響きだぜっ!「今日の罰ゲームなんだけど一人一人が紙に自分が考えた罰ゲームを書くの!そしてその紙を箱に入れて、最下位の人がそこから一枚取り出すの!いいアイデアでしょ!!?」なるほどおもしろそうだ。しかしこのメンバーならそんなに難しい罰ゲームは書かないだろう。それなら少し安心できるかもしれんな。「そんじゃみんな書いて!」それぞれが紙に書き出す。ハルヒはうれしそうに、古泉はいつも通りニコニコと、朝比奈さんはちょっと困ったようにうーんとうなりながら、長門は何を考えてんだかよくわからんが紙にさらさらっと書いた。俺は・・・これだっ!朝比奈さんが書き終え、箱に全員分の紙が収められた。「それじゃあみんなトランプが渡ったわね?それじゃっ、スタートっ!!」・・・・初戦はまずまずの滑り出しである。悪くない手札だ。最初はみんなの様子を見るか、、、ハルヒは最初からとばしてくる。こりゃあ自滅するな・・・朝比奈さんは慎重にカードを出してくる。遠慮がちなとこを見るとあんまり勝てそうなタイプではないな・・・古泉は、、論外だ、こいつは勝ちを狙ってくるタイプではないからな、しかも狙ってきてもこいつのゲームのセンスでは勝てまい・・・長門はまさしくポーカーフェイスである。焦りも油断も感じさせない、こいつ・・できる!?「よし、8切り!4あがりだ!」「・・・あがり」「すいません、12のダブルで僕もあがりです」ここまでで3人があがった。残るは、2人。「なっ・・!?なんであたしとみくるちゃんだけなのよ!!?」「ふぇぇ!?すすいませ~ん??」この勝負おそらくもうついているであろう。序盤からとばしてきたハルヒ、対するは堅実にカードを出してきた朝比奈さん。俺の予想ではもうハルヒの手札はそれほど良いものはないだろう。こいつの戦法はまさにこいつの生き方と同じだな。そして、「すすいません涼宮さん・・・あ、あがりです」不機嫌そうに睨みつけるハルヒ。「ひっ!?すいません・・・」なんと最初の敗者はハルヒだ。アヒルみたいに唇を突き出すハルヒに俺は言ってやった。「ハルヒ、負けを認めろ。お前の負けだよ。おとなしくくじを引くんだ。」若干俺は勝ち誇った気分だった。若干だからな?大喜びなんか決してしてないぞ?まさか心の中でハルヒの罰ゲーム姿が見られる!なんて思ったりはしてないからな!ここ重要だぞ!!!「うぅ~」なんてらしくない声をだし、渋々くじを引いたハルヒは、「はぁ!?何よこれっ!」奇声を上げるハルヒの持つ紙を見ると『妹言葉でしゃべる』「意味がわかんないわよっ!ちょっとキョン!!あんたでしょ!?こんなくだらないこと書いたの!?」「お、俺じゃねぇよ!」俺だった。なぜかなんてそんな無粋なこと聞かないでくれ。別に妹属性があるわけではない。、、、、、、、、、実は俺にも妹がいるのだが俺のことを『キョン君』なんて言いやがんだ!だから『お兄ちゃん』なんて呼ばれたことはここ数年ないんだっ!!だから・・・だから、せめて誰かにそんな風に呼ばれたかったんだっ、、、(泣)うっうぅっうっ。なぁわかってくれるよな!!?全国の兄貴たちよっっ!!!!!!!!なんて考えは決して悟られてはならない。そう誓った俺だった。「とにかく罰ゲームなんだろ?ちゃんとやれよ?しかも団長がやらないでどうするんだ?そんなんじゃ団員に示しがつかないぜ?」「くぅ~・・・わかったわよ、やればいいんでしょ!やれば!!クッ・・・・・・お兄ちゃん・・・」ズバンッと何かが俺の胸に刺さった瞬間だった。ストライクでバッターアウトだったさ。想像をしてみろよ。あのハルヒがだぞ?あの自分勝手でわがままで傍若無人で(以下省略)な、あのハルヒが恥ずかしそうに言ってきたんだ。そういうのもいいかもしれない、、、おっと危ない危ない変な道に走るところだったぜ。「涼宮さんとってもかわいいですよ♪わたし妹っていないからすごい新鮮な感じですぅ」「うるさいわよ!、みk・・お、お姉ちゃん、、、」朝比奈さんが珍しくハルヒをからかっていた。そりゃそうだろ、あのハルヒを見たら誰だってからかいたくなるさ。「まぁまぁ、とりあえず次のゲームに移りましょうか」妹化したハルヒを置いて古泉がゲームを進行し始めた。「もう負けらんないわっ!」くやしそうに言うハルヒ。「次は誰が負けるのでしょうか、フフ」楽しそうな古泉である、まさかこいつそっち属性か!?「・・・」第二試合ハルヒが戦法を変えてきた。やはりそれなりに考えているのか。なんだか場の雰囲気も変わってきた。みんな自分に罰ゲームがこないように必死だ。かくいう俺もだが。・・・・「7,8,9,10階段よ!」「・・・・・」「ふぅ~あぶないとこだったぜ」「すいませんが、あがらせていただきます」「ふえぇ~」今回の敗者は朝比奈さんだった。「それじゃお姉ちゃん?引いてくれるわよね??」嫌みたっぷりに言うハルヒ。「え~っと、、、え~っと、これです!」恐る恐る紙を広げてみると『メイド服を着てメイド口調』おいおい、俺がこんなん引いてしまった頃には登校拒否するぞ。「メイド服ってそんなもんここにないのにどうすんだよ?」「安心しなさいよ、メイド服ならちゃ~んとここにあるんだから!!」ガサゴソとロッカーの中からメイド服を取り出すハルヒ。あえてなぜここにそんなものがあるかは聞かないことにしよう。なぜなら俺は朝比奈さんのメイド姿がとても見たいからだ!「はぁ~いそれじゃあお着替えしましょうね~、お姉ちゃん?」「ふえぇ~~」教室を出て行くハルヒと朝比奈さん。「あれ書いたのハルヒだな」「おや、なぜそのように思われるのですか?」「ハルヒのロッカーにメイド服が入ってるなんてあいつしか知らないだろ!」「おやおやそんなに、あなたは怒っているのですか?それとも、興奮していらっしゃるのですか?」クククと笑う古泉、俺は答えられずに黙ってしまう。「おっ待ったせ~、みくるちゃ~んいいわよ~~」もはや罰ゲーム無視のハルヒ。妹口調はどうした!!?「す、涼宮さ~ん、や、やっぱり恥ずかしいですよ~こんなのぉ」「何言ってんのよ!!あたしがみくるちゃんのために特注したもんなんだからね!!」「ふえ~ん、、、」半ば強引に連れてこられた朝比奈さんのお姿は・・・・おぉ、、、この世界にこんなにも神々しいものがあったなんて、、、俺は人生を今まで半分、いや九割は損をしていたに違いない。間違いなくそう言える!!お前らにも見せてやりたいくらいだ!目の前に立つ女神と目が合うと「、、あ、あんまり見ないでください、、キョンくぅん、、、」「みくるちゃん!メイド口調でしょ!!!」「は、はい、、、あんまりこちらを見ないでくださいませ、、ご、ご主人様」ダメだ、もう俺は・・・死んでも良い・・・なんでかって?女神が、女神が俺の目の前で目をウルウルとさせながらご主人様って言ったんだぜ?もうどうにでもなっちまえ・・・「さーて三回戦行こうかしら?」本当はいつまでもこの余韻に浸っていたいのだが、、、「すいません、今日はちょっとバイトが入ってまして、僕は次で抜けなければなりません。本当に申し訳ないんですが・・・」「あら、そうなの?でも4人でやってもつまらないからこれで最後にしましょ!」最後のゲーム、これは負けられないぜ!なんだかだんだん俺の中の闘志が燃え始めてきたぜ!俺をここまで熱くさせたのはこいつらが始めてかもしれん。だから俺は答えてやるのさ!ゲームを通してな!!・・・・よしいける!!!「5が4枚で革命だっ!!」「ふえぇぇっ」「・・・」「(ニヤニヤ)」思った通り誰も出せn「ふっふっふ、、甘いわねキョン!!それで通ったつもり!?」「なにっ!?」「まさか誰も出せないだろうなんて考えてるんじゃないでしょうねぇ?」「まっ、、まさか?」「そのまさかよっっ!!見なさい!3が4枚!革命返しよ!」バーンッ!!!!!!!!「うごぉっっ!!!あり得ない、俺の革命が返されただと!?」「油断してたんじゃない?あらどうしたのキョン?もしかしてもう手がないの?」「そんなわけねぇだろ・・続けられるよ、俺はまだ・・・」「あぁらそう、まっとりあえずあたしは先にあがらせてもらうわよ♪あっがり!」・・・「・・・」「おや長門さんは6のトリプルですか、僕は出せそうにありませんからパスです。」「あたしもパスで~す」「くそっ・・パスだよ」「・・・」・・「ふうっ、罰ゲームは免れましたね。それではお二人ともがんばってください」・「あ、朝比奈さんは俺に罰ゲームをさせたいんですか・・・?」「申し訳ございません、ご主人様、団則第2条でございます」女神が言った、そうか『そのためにはあらゆる努力をすることが義務づけられている』・・か。「俺の・・負けだよ・・・」腹を、決めるか。「俺の負けだよ!くじを引けばいいんだろ!」「そうそう潔くするのが一番よ。さぁさっさと引きなさい!」ガサゴソと箱の中をかき回す。俺の手の中に吸い込まれるように紙が入ってきた。!!これだぁっっ!!カサッ「う、嘘だ、、、ありえない、こんなの人間の出来る技じゃない・・・」「なぁーに、早く見せなさいよ!ホラッ!」『岡部の前でハンドボールの悪口を言う』「「!!!!!!」」ハルヒと朝比奈さんは驚きを隠せないようだった。おそらく俺は30分、いや10分後にはこの世から姿を消しているだろう。遺書でも書いておくか、、、。「罰ゲームとはいえ、これはえげつないわね、、、」ハルヒがそう言うのだ。俺は、死ぬ。ちなみに岡部とは俺たちのクラスの担任だ。この世の何よりもハンドボールを愛する、ハンドボールの鬼、いや魔王である。その岡部の前で悪口!?しかも本人ではなくハンドボールの!?ここで逃げたら俺は男じゃなくなるだろう。だから俺は行くのだ、戦場、地獄へと。俺は教室のドアで立ち止まりみんなに敬礼をした。みんなは俺を見ていた。哀れむように、、、もう一度ここに帰ってこれるかなぁ・・・ゆっくりと勇ましく俺は廊下を歩いていた。着いた、職員室である。いまやここが魔王の城に見える。スゥーハァー、息を整え取っ手に手をやる。ガラッ「先生!」「おお、どうした?質問か?ハンドボールの?」「!?ッ、く・・・あ、あの、先生、、」言え!言うんだ俺!男を見せろっ!見せるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!「・・・ハンドボールの●●●!!あんなもん×××でピーーだ!!!」あぁ俺の人生よ、グッバイ、、、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・校舎が揺れる、何!?こいつの力か!?どこにそんな力が!?ヤバイッ戦闘力がどんどん上昇していくッッ!10万、20万、40,50・・・パリンッ!なにっ!?スカウターが壊れただとぅ!!!!俺の目の前には、カカロットなんか太刀打ちできないようなバケモンがいた。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・カッ「キョーーーーーーーン!!!!!!」ピッピッピッピッピ・・・・電子音が聞こえる、俺はどこにいるんだ?「・・・ン君!、キョン君!!涼宮さんキョン君がっ!!」「キョン!?あんた無事なの?」オレハイキテイルノカ?「・・こ、ここは?」・・・・あの後地獄と化した職員室では数人の教師が岡部を押さえつけ、ハルヒたちがやっとのことで俺をこの保健室まで運んできてくれたらしい。保険の先生の話では俺は特に外傷はなく、奇跡的にも無事で済んだらしく、あとはうちに帰っても良いとのことだった。その後精神剤を投与された岡部が担架で運ばれてきたことは後から人づてに聞いた。こうして今日も一日が終わる。こんなところにいては退屈などしそうにない。布団に入った俺は昨日、一昨日のことが夢だったんじゃないか、なんて考えながらいつのまにか寝ていた。外はもうすっかり闇に染まり、静寂を伴っていた・・・
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