絡まった糸、繋がっている想い 第三章
*7* もう半分の理由…?ハルヒは語りだした。おれたちの知らない2ヶ月を… 「…あたしはみんなが怖かったの」「怖かった?」「そう…もっといえばみんなに嫌われていることをしるのが怖かった…」ハルヒは顔を少しだけ上げて続けた。 「自分が傷つくのがいやだった。あたしって弱いわね…」鼻で笑いながらいう。「あたしこと嫌いなんでしょ?いつもやりたい放題やってみんな振り回して…本当のことをいえばそうなんでしょ?」おれはひとつ言いたいことができたが我慢した。最後までハルヒの話を聞くことにしよう。「有希もみくるちゃんも古泉くんも…あたしのこと嫌いに決まってる…」「有希だって急に来たあたしに無理やり部室奪われていろんなもの置いて…休日まで呼び出して連れまわして…みくるちゃんもそう…着たくもない服無理やり着せて、勝手にお茶くみさせて…ほんとは嫌なはずなのに…古泉くんなんて、学校に来たばっかりで入りたい部活もあったかも知れないのに…」ハルヒは強くいった。「たとえ、あたしがこのことをみんなに聞いて、みんなが当たってるっていえば、そうなんだって信じるし、違うっていえば、あたしを気遣って嘘ついてると思うし…」 初めて見せたハルヒ内面だった。いつも笑ってたハルヒがこんなに考えていたなんて知らなかった…どうして気付いてやれなかったんだ!くそ! 「部室で言ったことは言い過ぎたけど、あながち間違いじゃない…不思議探しなんかしても何も見つからないし、ただみんなに迷惑掛けてるだけ…特にキョン。あんたにね」 迷惑してない…といえば嘘になる。ただ… 「それでも止める気はなかった…何より弱みを見せたくなかったっていうのもあるし、みんな半強制で入れておいて自分が嫌になったから辞めるなんて責任感のない行動はできなかった。 せめて最後までやり通すのがメンバーに対しての筋だと思ってたし。投げ出すだなんてプライドが許さなかった」確かにハルヒはプライドが高い。負けず嫌いがそれをよく表している。 「あたしのなかには二人の自分がいた…『現実』の自分と『夢』の自分とが」おれはどういうことなのかわからなかった。 「『現実』の自分は宇宙人や未来人なんているわけない、居たとしてもみつかりっこない…っていう考え、『夢』の自分は絶対にいるんだ、そしてそれを必ずみつけてやるんだっていう考え…反する考えが二つあった」 いわゆるポジティブとネガティブか。 「二つは常に戦っていて、二つは同じくらいだった。でもいまは『現実』の自分しかいない。『夢』の自分は、いまのあたしみたいに隅でちっちゃくなってるの…」 「そんな時にきたのがあの2人だった」「あの2人って一緒に帰ってる2人か?」「やっぱり知ってたのね…」ハルヒはまた話し出す。 「その時はさっきいった不安を感じていた時で…もろん最初は断るつもりだったの…あたしは団長で責任があったから…だけど…」そういってハルヒは言葉に詰まっていた。 「不安があったままじゃメンバーのところにいってもいつも通りに接することができないと思ったのよ…だから少しでも気晴らしになるかと思ったから…帰ってみた…」 『あの日』のことだ…おれが長門から伝言を聞いた日…すべての始まりの日だ。 「最初はお互いにぎこちない感じで…向こうのいったことにあたしが答えるって形だった」そこはハルヒらしい。やっぱり慣れないことには弱いらしい。 「初めの日はそういう感じで過ぎて…最後に携帯の番号を交換して帰った…あたしはなんというか複雑な気分だった。悪い気分ではなかったけどね…」 ハルヒが話し出してから結構時間が経っていた。ハルヒは一旦、息をつけてからまた話し出す。 「次の日は部室に行った…でもやっぱり思った通りだった…普通に接することができなかった…」ああ、お前がおかしかったのは気付いていたよ。お前のことはだいたい解るから… 「最後だけは締めようと思ってなんといつも通りにできたの…」さらにいう。 「で、あたしに『現実』の自分だけになったのはあの土曜日からよ…キョン…」顔を少しだけ上げておれをみていた。 「あたしはあの日、不思議探索をやるつもりだった。それでなんとかこの思いを拭い去ろうと思った…そしたら、あの子たちから電話が来たの」 「あの2人はあたしが活動しているのは知ってたらしいけど、まさか休日までやってるのは知らなかったみたい…あたしは迷った…断ろうと思った瞬間に『現実』の自分が囁いたの… 『みんなと一緒に行っても、どうせ何もみつからず、迷惑かけるだけだ』ってね…その瞬間にもう戻れなくなった…」 ハルヒはまた俯いてしまった。 「来なくなったのの直接な理由はこれ…あたしはみんなを裏切った…そんなこと知らないみんなはいつもの笑顔を見せてくれる…それが辛くなると思って…もう行かないことにした…」ハルヒの声に力がない…そんなことがあったのか…だがおれは…いや、おれたちは… 「2人に聞いてみたの…『どうしてあたしに話し掛けたの?』って。そしたら… 『ハルヒちゃんは色々おかしな行動おこすけど悪い人に見えないから…話してみたいと思った』だって。あたしはすごく嬉しかった…そんな風に言われたのは初めてだったから…」 「これが全部… ごめんね…裏切って…本当にごめんね…」ハルヒがまた声をあげて泣き出した。 「ハルヒ…」おれはハルヒを抱きしめる。おれは聞いたことのそのままの感情をハルヒにいった。 「ハルヒ…いつおれたちがお前を『拒否』したんだ?」「え…」ハルヒは顔をあげておれをみる。 「いつ長門がお前に迷惑だっていったんだ?いつ朝比奈さんがお前に本気で嫌がった?いつ古泉が部活が嫌だなんていった?誰もそんなことはいってないだろ?」 ハルヒは潤んだ瞳でおれをみる。おれはハルヒの肩に手を乗せ、話す。 「ハルヒ、おれたちはお前のことを嫌がってなんかいないんだ!」ハルヒは驚いたような顔でいう。 「嘘…」「嘘じゃない」おれはハルヒにいった。ハルヒの知らないおれたちの2ヶ月を… 「ハルヒ、おれたちはな、お前が来ない間ずっと部室に集まってお前を待っていたんだぞ」「え…」ハルヒがさらに驚いた顔をする。別に驚くことはない。おれたちにとってお前はそういう存在なんだ。なくてはならないんだ。 「もし嫌いだったらみんな集まらないだろ?朝比奈さんも長門も古泉もちゃんと来てたんだ」ハルヒは黙って聞いている。さっきとは逆の立場だ。 「朝比奈さんは『自分が何か嫌われることしたんじゃないか』っていった心配してたし、古泉はお前が来ない理由を熱心に考えて、お前と話しをするための方法を色々考えてくれてたんだぞ?長門だって本を読んでるときもつまらなそうな心配そうな感じがしてた…みんながお前のことを考えてくれてた」 「本当…? 本当なの?」ハルヒは涙を拭いながらいう。「本当のことだ… ハルヒ…お前はみんなにきらわてなんかいない…」「でも…あたしはみんなを裏切った…」「みんなに今いったことを言おう。おれもいってやるから」「みんな許してくれる…?」「みんなを信じろ。団長だろ?」 うん、うん、ハルヒは頷いている。おれは2ヶ月感じていた『モヤモヤ』の正体がわかった… 「ありがとう…キョン」そうだ… おれはハルヒが… ハルヒを強く抱きしめてからおれは『モヤモヤ』の正体を言おうとハルヒの眼をしっかり見ていった… 「ハルヒ、おれは…」その瞬間だった。 「許すも何も我々全員、怒ってなどいませんよ」人の言葉を遮る奴はおれの知る限り1人しかいない…古泉だ。 後ろを振り返ると1番まえに古泉。遅れて左隣りに朝比奈さん。右の最後に来るのが長門だった。 「話しは全部聞かせてもらいましたよ。キョンくん。涼宮さん。」ちょっと待て。もしかして最初からいたのか?古泉はおれの方を向き、ウィンクする。やめろ、気色悪い。 「涼宮さん、次は我々の『想い』をいわせてもらいますよ」3人は自分たちの気持ちを話し出した。
*8*古泉、朝比奈さん、長門はそれぞれの想いを話し始めた。「涼宮さん、僕は彼のいった通りの気持ちです。あなたもSOS団も嫌いじゃありません。実をいうと嬉しかったんですよ」古泉はそういうとハルヒの前に来てしゃがみ込む。「転校して来たばかりで友達もなく不安だった僕をSOS団に誘ってくれたのがすごく嬉しかったんです。学校での僕の居場所、そしてかけがえのない友達が4人もできました。涼宮さんには感謝していますし、僕は自分の意志でSOS団にいるんです」古泉のいっていることが嘘には思えなかった。機関のために転校とはいえ知らない地へ来るのだから当然、不安はあっただろう。もしも長門も朝比奈さんもいなく、古泉1人だったら古泉は不安なままだったかもしれない。かけがえのない友達ね… 古泉、ありがとうな。古泉はおれの方を見て微笑んだ。古泉は何もいわなかったが何をいいたいのかわかっていた。古泉は立ち上がると次に朝比奈さんが来た。朝比奈さんはハルヒの近くに来ると優しい顔でハルヒを抱きしめた。その姿はまるで怖い夢を見た子供をあやす母親のようだった。「涼宮さん…私も涼宮さんのことを嫌いじゃないですし、SOS団も嫌いじゃないですよ。最初はもちろん、メイド服も着るのは嫌でしたし、バニーの格好したときは学校来たくなくなりました」そりゃそうだ、とおれは思った。朝比奈さんは続る。「でも…一緒にいるうちに涼宮さんの良さがわかるようになってきました。本当は優しくて…責任感がある人なんだなー…ってことがわかったんです」ハルヒを頭を撫でながら朝比奈さんはいう。「笑ってください。涼宮さんには笑顔が一番ですから」やっぱり朝比奈さんは年上だ。そんなことを思っていると長門が話し始めた。「涼宮ハルヒ、私も他の意見同様、嫌いではない」長門らしい、要点をまとめた言葉だ。「あなたのいない2ヶ月は私にとってはつまらない日々だった。特に週末は退屈」週末…不思議探しのことだろうか?長門はそれが楽しみなのか?「私はそれだけ…あなたは笑っていたほうがいい」全員が話し終わったのを確認してからハルヒにいう。「ハルヒ…これがみんなの想いだ。これでわかったか?」「うん…みんなありがとう」「本当のことを話してくれてありがとうな。ハルヒ」「礼には及びませんよ、涼宮さん。当然のことをしたまでですから」と古泉。「そうですよ。みんな心配してたんですから。」朝比奈さんもいう。「………」長門は何もいわないが他のメンバーと同じだろう。ハルヒは立ち上がるとお得意のハイテンションボイスを出した。「やっぱりそうよね!」そういう(叫ぶ?)と渡り廊下に向け、逆走し始める。「ハルヒ?どこ行くんだ?」思わずおれは聞く。「全員ついてきなさい!」久しぶりにハルヒらしい台詞を聞いた。ついた先はやっぱり部室だった。ハルヒは入り口付近に落ちていた鞄を拾い、団長席に向かう。ハルヒは鞄の中を漁って『あるもの』を出した。それは、『団長』と書かれた腕章だった。「実はこれ、ずーっと鞄に入れてたのよね!」ハルヒはそういうと腕章をつける。真剣な顔つきになり話し始めた。「離れてみてわかったの…やっぱりあたしにはこれが1番だわ!」ハルヒは強くいうと久しぶりの笑顔を見せた。おれもハルヒの笑顔を見て思わず微笑む。「普通の女子高生の生活もつまらないわけじゃないけど…どこか物足りないのよね」「つまりハルヒ、それは…」「つまりも何もそのままの意味よ。まあ簡単にいえば、SOS団再開ってことよ!ちょっと待って。『復活』の方がいいかしら?どっちだっていいけど」「…すまんがハルヒ、もう一度いってくれ」おれはもう一度今の台詞のリピートを求めた。「だから復活よ。みんな、心配させてたり待たせてごめんね。もう迷わないから」ハルヒの見せる笑顔は怒り狂った鬼ですら鎮めてしまいそうだ。「涼宮さん… 本当に嬉しいです…もう二度とできないかと…」泣きそうな顔で話す朝比奈さんに愛しさを感じてしまう。「涼宮さんあってのSOS団ですから」お決まりのポーズをとって古泉はいう。「…」長門は相変わらず無表情だ。「その言葉はもっと早く聞きたかったな」おれが嫌みを含めていう。もちろん、本気で思っているわけじゃない。ハルヒは満足そうにおれたち全員を見渡した。「それよりみくるちゃんっ」ハルヒは朝比奈さんの方を向きいった。その顔はいつも通り、無邪気なのものだ。「え…ひゃ、はい!」一瞬声が裏返ったが気にしない。朝比奈さんにはよくあることだ。「いつまで制服着てるの?みくるちゃんにはSOS団用の『制服』があるはずでしょ?」「あ…は、はい。今着替えます」「ふっふっふ…今回は久々だからあたしが着替えさせてあげるわ…」ああ、危ない。はたから聞くと危ない会話だ。ハルヒは妙な手つきをしながら朝比奈さんに近寄る。朝比奈さんは後退りしながら震えている。「さあ、着替えなさい!」ハルヒはいうと同時に朝比奈さんに飛びかかる。まるで鳥を狙う猫のようだ。部室には独特の悲鳴を出す朝比奈さんと怪しい声を出すハルヒの騒動の音だけが響いていた。おれたち3人の中で最初に動いたのは長門だった。長門は一度ハルヒの方に目を向け、おれのほうを向き、定位置につき読書を開始した。古泉はおれの肩に手をおいて、例のごとくスマイルを見せると扉を開け部室をでた。おれも続けて出る。ハルヒと朝比奈さんはまだ騒いでいるようだ。部室を出ると古泉が窓の外を見ながらいう。「夕日が綺麗ですね」その言葉に反応し、外を見る。確かに綺麗だ。「涼宮さんのことは…やはりあなたが一番わかってますね」「それは前にも聞いた」「そうですか」苦笑いしながら答える古泉。ああそうさ。ハルヒのことは誰よりも知っているだろう。今回でさらに知ることができたよ。古泉はさらにいう。「今回は長かったですね…最初はまさかこんなに時間がかかるとは思いませんでしたよ」「まったくだ」今回の出来事はまるで一本の『糸』が『絡まった』ような感じだったな。ハルヒの内面に、不意に現れた物好きな女子2人…さらには『時間』も掛かってさらに絡まってもんだから大変だった。もっとも、今日まで掛かったのは半分はおれのせいだが…まったく…いい加減に優柔不断&ヘタレは直さなきゃいかんな。しかし、この『絡まった』のがほどけたのも他ならぬ、仲間がいてくれたお陰だろう。まさしくこの出来事を表すなら『絡まった糸』だっただろう。しかし、絡まっていたとしても元は一本の糸… 繋がっているんだ。おれたちも同じだ。そう、たとえ離れいても、想いは『繋がっている』んだ。そんなことを考えていると部室から声が聞こえてきた。「入っていいわよー」ハルヒの声だ。ああ…これからまたあの日常が始まるのか…ハルヒに振り回される日常が…だが、おれ自身そんな状況が楽しいわけだが。そういえば、ハルヒから『ただいま』を聞いていない。おれたちも『おかえり』といっていない。だが、必要無いだろう。なぜならハルヒにとっては元気でいつも通りにすることがハルヒ流の『ただいま』で、それをいままでと変わらないように接するのがおれたち流の『おかえり』なのだから…古泉がおれを見ているのに気が付いた。相も変わらない笑顔を向けている。「入りましょうか?」「ああ…」扉を開ける。そこにはご無沙汰だったおれの日常があった。この先、また『絡まる』ことはあるだろう。しかし、『切れること』はない。ずっと想いは『繋がっている』のだから…*エピローグ*授業の終わりのチャイムを聞いたおれはいつものように部室へ向かい、自分の席に着いた。目の前には例のごとく古泉がスマイルを見せている。「さて、今日はこれでもやりますか」そういって取り出したのは『黒ヒゲ危機一髪』だった。1本…2本…5本目を古泉が刺すと二等身の無精ヒゲをはやしたオッサンの人形が勢いよく飛び出た。「僕の負けですね」古泉はそういうと人形を拾い、樽に戻す。ああ…なんといつも通りの日常的光景だろうか。そんなことを考えいると気持ちいいくらいデカい音を立てて扉が開かれた。一年近くこれに耐えている扉におれから勤労賞を送りたい。もうわかってると思うが、入ってきたのはハルヒだ。「今日もちゃーんと全員揃ってるわね」相変わらずのハイテンションは健在だ。『この前』の鬱っぷりが嘘のようだ。嘘というよりは、切り替わりが早いだけだろう。あの後、おれたちはハルヒの2人の『友達』に会ってこの前のこと、全員の想いを話すことにした。もちろん、その場にはSOS団のメンバーが全員勢揃いしていたんだが。「お二方に来ていただいたのは他でもありません。我々からあなた方にお話しがあるからです」と最初に古泉がいった。最初にこういう挨拶は必要だ。そして、我らが団長殿は神妙な面もちで話した。おれたちのこと…SOS団こと…2人のこと… ハルヒの選択を…2人の友達も真剣に聞いているようだった。いい人達でよかった。すべてを話し終わったハルヒは付け足していう。「…やっぱりあたしのいるべきなのはSOS団なんだって思う… 2人といるのも楽しかったけど、やっぱりSOS団はあたしが作ったものだし!こいつらもあたしなしじゃだめだっていってるからね!」…始まったな。まあ、予想通りだが。ハルヒは今度は少し心配そうな顔をしてまたいう。「一緒に帰ったりできなくなるけど、あたしと友達でいてくれる…?」野暮なことを聞くもんじゃない。その答えはお前以外のみんなはわかってる。友達の2人は微笑みながらいった。「当たり前じゃん!そのくらいで縁切れたりしないよ」「そうだよ」な、友達ってのはその程度で切れたりしないもんさ。これでわかっただろ。ハルヒは恥ずかしそうに俯いていった。「ありがとう…」声は小さくて聞き取りにくかったが、みんなに聞こえていたようだ。すると、2人のうちのショートカットの子がおれのほうを見ていた。視線に気が付いたので見ると、ガッツリ目があってしまった。「もしかして、君がキョン君?」「そうだけど…」そんなに有名人だったっけ?まあ、最初の方は有名だったが最近は風化したと思ってたが。「いや、君の話はよくハルヒちゃんから聞くよ。話で聞くより優しい人だね~」「おれの話をハルヒがするんですか?」「そりゃあもう。3日に1回は話してるわよ」おいおい、おれの話をあんまり他人に話さないでくれ…「男子の話してるときなんて…」そういい切るか切らないかの辺りにハルヒが遮る。「ちょーっと待ちなさい!」もう少しだけ話を聞きたかったが真っ赤になって話を遮るハルヒが可愛い…もとい面白かったので良しとしよう。「安心してください、涼宮さん。彼もあなたがいない間はあなたのことを一番心配してましたよ」おいこら、超能力者。「え?…そんなに?」ハルヒは驚き顔でおれのほうを見る。「ええ、聞いてるこっちが恥ずかしいくらい」ちょっと待て。そんなに恥ずかしいくらいいったか? いや、おれが気付いてないだけか?「ちょ、ちょっといったいどんなこといったのよ!?」「知らん。恥ずかしいことをいった記憶はない」その後のハルヒとのやりとりを周りがニヤニヤした顔で見ていたのはいうまでもないだろう。しばらく経った後に古泉の仲裁が入り、ハルヒも収まったようだった。納得はしていないようだったが。とまあ… これがあの事件の後日談になる。ちなみに今日はハルヒが戻って一週間経つ。おっと、もう時間だな。帰るとするか。実はあの日以来おれはハルヒと一緒に毎日帰っている。みんなは…まあ、黙認だ。『暗黙のルール』というところか。「ちょっと聞いてんの?」ふいに話しかけられた。まずい、全然聞いてなかった。「ああ… 安倍総理は正直おれも…」「はあ?そんな話してないわよ!」だよな、スマン。聞いてなかった。「バカキョン…」そういえば、まだハルヒに話してないことがある。ずっと感じていた『モヤモヤ』の正体だ。本当は一週間前のあの時に話すつもりだったんだがな…ハルヒも表立って聞いてくる様子もない。忘れてるのか…それとも…「風が寒いわね」「ああ」春一番…というのか?こういう風は。おれはハルヒの方を見る。…なんだ、手袋してないのか。…いいことを思いついた。ただ実行するにはかなり勇気がいることだ。今しかできない。おれは意を決して実行した。「!」ハルヒが超高速でおれを見る。おれの顔は自分でも分かるくらい赤いだろう。「な、何すんのよ!」「嫌なら離してもいいぞ」ハルヒも顔が真っ赤だ。お互い様だがな。そう、わかった奴もいるかと思うがおれは、ハルヒの手を繋いで自分のポケットに入れたのだ。そういう曲がなんかのバンドの曲でなかったか?別にどうでもいいちゃ、どうでもいいんだが。ハルヒは真っ赤な顔のまま歩いている。こりゃ、はたから見ればただのバカップルだな。周りに人が少ないのが幸いだ。愛情表現なんて人それぞれだろ。おれたちはおれたちのペースでやらせてもらうさ。そしたら、いえなかった言葉もいえるだろう…なあ、ハルヒ…fin
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