Black Lily・第二章
「あの……キョンくん? 何かあったんですか?」 帰りの坂道で俺は朝比奈さんに尋ねられた。あとは卒業を残すのみのマイフェアレディは、この半年で時折大人びた雰囲気を見せることがあって、言ってみれば朝比奈さん(中)への移行段階らしい。 だからこそハルヒの持ってくるコスチュームを着るのもそろそろ羞恥極まってくる頃合いかもしれず、それでも気丈に申し出を受けている姿には感涙すらする。SOS団で一番うたれ強いのは朝比奈さんだと確信する次第である。 そんな麗しの女性が発する気遣いの言葉に、俺はようやく彼女に長門妹に関して何も話していなかったことに思い至った。「実はですね……」「長門さんに妹さんが?」 そうなんですよ。それで、もしかしたら長門がいなくなってしまうかもしれない、と。「そんな……」 本気で心配している様子の朝比奈さんだった。心温まるね。当の長門本人は今先頭でハルヒと何やら話しているが、さて何を思っているのだろうか。「何とかできないんですか、キョンくん」 もちろん何とかしたいですよ。今だってそれを考えていましたし。 だが今回は長門本人に関わる問題だ。これまでみたいに誰かと共に事態解決へ奔走したりとか、そういう事で片がつくとは思えないんだ。とりあえず、有希と由梨の両方ともう少し話してみる必要がありそうだが。 「わたしにできることがあったら、何でも言ってくださいねっ!」 はりきりモードの朝比奈さんだった。もちろんです。と言うか、あなたがそう言ってくれただけで、少なくとも俺の動力炉に暖かな火が灯りますよ。
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