【罪と罰】 第1話
掃除で遅くなってしまった俺は、また団長殿にどやされるんだろうななどと思いながら部室の戸を開けた。だが、そこに居たのは…「長門? お前一人だけなのか」 【罪と罰】「………」意外にも部室に居たのは、長門一人だけだった。俺の気配を察してか俺の方をついと見ると、何事も無かったように読んでいた本に目を落とす。「ハルヒ達は?」「今日の活動はなし。涼宮ハルヒに、あなたがきたらそう伝えるよう言われた」長門は本のページを1枚めくりながらそう応える。「何だよ、それなら教室で言やいいのに。で、理由は」「不明」「…だろうな」俺は溜息をつきながら鞄を机の上に置く。…ふと、本を読んでいる長門を見て、自分もたまには読んでみようかと思い立つ。「なあ長門」「なに」「ここにある本、読んでもいいか」「どうぞ」一応ここは文芸部の部室だし、長門は文芸部員なので一応訊いてみたが、まあ答えは予想通り。俺は本棚から適当に本を見繕うと、椅子に腰掛ける。…本と言っても、長門が読んでるようなハードカバーは読む気がしないので、程々の厚さの文庫本だが。俺はとりあえず表紙を開く。開いたはいいが…前書きを読んでる時点で眠くなってきた。普段活字を読んでないとこんなもんなんだろうか。別段じっくりと読むという気もしなかったんで適当に流し読みして、ページをめくっているだけだが…。ちらっと横目で長門を見ると、無表情でハードカバーを読み続けている。…疲れないんだろうか。俺はそんなことを考えるが、こいつは人間じゃないからこの程度のことは何ともないのかもしれないなと思った。あの眼鏡だって、目が悪いからかけていたという訳じゃなかったし。…ふと気付くと、長門が俺の方をじっと見ていた。「なに」どうやら俺はずっと長門の方を見ていたらしい。そう言う長門の顔は、やっぱり無表情だった。「ああ、いや…疲れないのかと思ってさ」「どうして」「ずっと本ばっか見てるからさ」「問題ない。わたしはこの程度のことで疲労を感じるようなことはない」 予想通りの答えが返ってくる。「そっか、まあそりゃそうだろうな」「そう」そこまで言うと、長門はまた視線を本に落とす。俺は…マジで眠くなってきた。何だかよく分からんがとにかく眠い。活字にこんな睡眠誘発作用があったとは。これから夜は活字を読むことにしようか。などと思いつつ、いつの間にか押し寄せる睡魔に対抗する間もなく眠りに落ちていた―――ふと顔を上げると、”彼”はいつの間にか眠っていた。”わたし”は、無意識のうちに本を閉じ椅子から立ち上がっていた。何故―――?わたしは、わたしに問いかける。答えは返ってこない。わたしの中の”無意識”は、わたしの脚を動かす。ゆっくりと彼の方へと近づく。―――エラー。致命的なエラー。自身の行動が制御出来ない。まるで、自分ではない何かに、操られているような感覚。…でも、嫌ではない。不思議な感覚。―――理解不能わたしは、彼の後ろに立つと、羽織っていたカーディガンを脱ぎ彼の背中にかける。―――理解不能再び脚を動かし、彼のすぐ傍の椅子に座り、眠っている彼の姿を見つめる。―――理解不能何故かは分からない。けれど、わたしはそれだけで人間が感じる”幸福感”というものに近いと思われる感情を感じていた。―――理解不能しばらく見つめていると、ふと彼の体が動く。そして、ゆっくりと上半身を起こすと、彼の目はわたしを捉えた。「長門…?」彼がわたしの名を呼ぶ。わたしの中で、何かが疼く。―――理解不能「もしかして、俺が起きるの待っててくれたのか?」そうだ、わたしは何故わざわざ彼が起きるのを待っていた?けれども、わたしの無意識は、こう答えた。「そう」―――理解不能「そっか…何か悪いな。っと…これお前のカーディガンじゃないか、お前がかけてくれたのか?」わたしは、何故そんなことをした?「そう」―――理解不能「すまん、寒くなかったか?」「問題ない」「そうか…。っと、もうこんな時間か」ふと外を見ると、空は夕暮れを通り越して、青みがかっていた。「帰るか、長門」帰る―――つまり、わたしは彼と別れなければならない。わたしの中で、何かが崩れる。わたしは、もっと彼と二人で居たい。―――理解不能明日、彼と二人で居られる確率は、限りなく低い。―――何故こんなことを考える?涼宮ハルヒが居る限り、彼は、彼女の――――――考えてはいけない―――望んではいけない―――そんなことは、情報統合思念体の意思に反する―――わたしは、求めてはいけないはず―――わたしは―――…気が付いた時、わたしは椅子に座ったままの彼に、抱きついていた―――「な、長門!?」そりゃもう驚いた。起き抜けに額に銃を突きつけられていたくらいの衝撃だ。おかげですっきり目が覚めた。いや、こんな表現は長門に失礼だが。「帰るか?」といった途端長門が抱きついてきた。椅子に座っている俺の膝に跨るようにして。意味が分からない。誰かこの状況を俺に分かりやすく説明してくれ。いかんいかん、混乱している。とりあえずは落ち着くんだ俺。こんな時は素数を…数えてどうしようってんだ。…馬鹿なことを考えていたら、少しだけ落ち着いてきた。俺は混乱して飛び回っていた視線を、長門に向ける。…その顔は、俺の左肩あたりに押し付けられていて、表情をうかがうことは出来ない。ただ…長門の体が、少しだけ震えていたような気がした。まるで、何かに怯えるように―――怯える? あの長門が?瞬間、あの時の普通の女子高生「長門有希」の姿がフラッシュバックする。…いや、そんなはずはない。ここに居るのは、間違いなく宇宙人の「長門有希」のはずだ。「…長門?」俺の呼びかけに、長門の体がピクリと反応する。長門が、恐る恐るといった感じで俺の肩から顔を離し、俺の顔を見つめてきた。そこにあったのは、いつもの無表情。だけど、その中に、わずかな怯えや不安といったような感情が含まれていたことを、俺は見逃さなかった。…やっぱり何かおかしい。「長門、どうしたんだ?」俺は問いかける。「………」長門は応えない。ただ、俺の顔を見つめている。…やばい、可愛い。いかん、何を考えてるんだ俺。まずは落ち着け俺。何故こんなことになってるか考えろ俺。ぶっちゃけ、長門は可愛い。谷口がAマイナーの評価をしただけのことはある。いつだったか長門には隠れファンが多いなんてことも言ってたな。…違う。そうじゃないだろ俺。いかん、興奮してきた。鼓動が早くなる。そりゃそうだ。可愛い女子にこんなことされてりゃ誰だって―――そんなことを考えていた俺は、長門の行動を全く予測していなかった。突然、顔を俺の顔に近づけてきたかと思うと―――ぴちゃ…。あれあれ? 何だか少しだけ左頬が濡れて冷たくなった気がしますよ?ぴちゃ…ぴちゃ…。えーと長門さん? あなたは何をしておいでなのでしょうか?ぴちゃ…。………だーーーーーーーーーー!!!何だ!何なんだ!?何で俺は長門にほっぺたを舐められてるんだ!?いいいいかん。舐められてるだけなのに音がめちゃくちゃ卑猥なものに聴こえる。落ち着け俺。はい深呼吸ー。すってーはいてー。ひっひっふー。違う!!!!くそっ、男の悲しいサガってやつか。俺の息子が反応してやがる。とりあえず長門に訳を訊かないと…。はむっ。くぁwせdrftgyふじこ!?今度は耳を甘噛みしてきやがった!!ぞくっときたぞ、ぞくっと!!!ちゅっ…。と思ったら今度は首筋に!!舌を這わすな舌を!!「な、長門? いったい何を…」俺は吹っ飛びそうな理性を総動員して言葉を発する。だが…ぴちゃ…。俺の声が聴こえていないのか、また俺の頬を舐め出す長門。その姿はまるで、懐いた猫のようで…。ぴちゃ…。俺の中で、何か冷め、別の何が熱くなってくる感覚。ぴちゃ…ぴちゃ…。俺の頬を、愛しいもののように舐め続ける長門の、わずかに、だが確かに上気した顔。ぴちゃ…。俺の意識は、もはや長門以外のものを認識していなかった。ぎゅっ…。「っ」長門の動きが止まり、体がわずかに強張る。俺は、長門を抱き締めていた。強く、けれど優しく。壊れ物を扱うように、そっと。「長門」俺の声に、ぴくりと反応する。俺にしか分からない、微かに不安の入り混じった表情。「嫌なら、嫌って言えよ」答えを聞く前に、俺は長門に口付けた―――”わたし”の意識が覚醒する。わたしの体を支配していた無意識が、わたし本来の意識と入れ替わる。気が付いた時、わたしは彼に抱き締められ、わたしの唇は彼の唇によって閉ざされていた。―――心拍数、体温、共に異常上昇。致命的なエラー「…ぁ」彼の唇が離れる。その感覚に、何故か名残惜しさを覚える。―――理解不能「長門」彼の目が、まっすぐわたしの顔を見つめていた。「…なに」やっとのことで、声を出す。こんなに言語機能に障害が発生したのは初めてだった。「どうして…いや、これは俺の言うことじゃ、ないか」彼の言うことが理解できなかった。「…わたしは…なにを、していた?」「長門…? 覚えてないのか?」彼の言葉に、わたしは記憶の検索を始める。わずか数分前の記憶。検索はあっさりと終了する。その記憶はわたしのエラーを増大させる。「…記憶はある。けれど、わたしがしたという『自覚』を確認できない」「何だって?」「…ごめんなさい」気が付くと、わたしは謝っていた。この行動は、何―――?「長門?」「…ごめんなさい」―――この行動は、わたしの意図したものではない「どうして謝るんだ」「ごめんなさい」再び、無意識に支配されていく感覚。「長門」「ごめ」「長門!!」その声に、わたしは思わず体を硬直させる。わたしは、”何”に怯えている―――?わたしが顔を上げると、彼は少し困惑した表情でわたしの頭をそっと撫でた「あ」瞬間、わたしの中を満たしていく幸福感。「すまん、怒鳴ったりして悪かった。というか、謝るのは俺の方だ」彼はわたしの頭を撫でながらそう言う。何故?これは、わたしの暴走が招いた結果―――「その…急にき、キスなんかしたりして、悪かった」彼は顔を赤くして、目線を逸らしながら言う。キス…接吻、一般的に、互いの唇と唇を触れ合わせること。それは、多くの場合、好き合っている者同士で行われる。では、今の彼とわたしは―――?「って、うわ、すまん!」彼は突然わたしの背中に回していた腕を解く。その瞬間、わたしは大きな喪失感を感じた。「っ、長門?」わたしは、強く、彼にしがみついていた。「…いい」「え?」「このままで、いい」わたしは、最大の禁忌を犯した。わたしは、彼を、求めてしまった―――「…わかった」俺は、長門の望みを叶えてやることにする。もう一度背中に片腕を回し、空いた方の手で長門の頭を撫でてやる。「……ぅ………」長門が小さく声を漏らす。俺の背中に感じていた長門の手の力がわずかに強くなる。俺は、自分の腕の中でじっとしている少女に、もはや言葉には出来ないくらいの愛しさを覚えていた。長門有希。涼宮ハルヒの観測者。人間ではない彼女に、『感情』というものは、ほとんど備わっていなかった。それなのに、今、長門は俺を求めてくれている。言葉にしなくても分かる。長門は俺を求めている。そして、俺も―――「長門」俺の腕の中で、長門がぴくりと反応する。俺は、両の手で長門の頬を支え、その顔をじっと見つめる。「…もう一度、いいか?」暫しの沈黙の後、長門の首が、ミリ単位で縦に動いた。「目、閉じてくれ」こういう時は、目を閉じるもんだ。俺の気持ちを察してくれたのか、長門はゆっくりと目を閉じる。俺も目を閉じ、ゆっくりと唇を長門の唇に近づけていく。「…ふ…」長門の声が聞こえる。今は、そんな微かな声ですら愛おしい。もう、止まらない―――「…ん…」わたしを支配する幸福感と安心感。同時に上昇する体温と心拍数。もはや、正常な判断ができない状態だった。わたしは、ただ彼を求めていた。情報統合思念体の意思も、涼宮ハルヒに与える影響も、何も、考えられなくなっていた。わたしは、彼の首に回した腕の力を強める。今はただ、彼と離れたくなかった。「…っ…!?」突然、口内に感じた違和感に、わたしは目を見開く。目の前には彼の顔。でも、目は閉ざされたまま。わたしの口内には、彼の舌が侵入していた。歯をゆっくりと舐め上げたあと、更に奥へと侵入しようとする彼の舌。わたしは、抵抗することなく、わずかに隙間を空けた。同時に、彼の舌がわたしの口内で蠢き、わたしの舌を捕らえ、絡める。「…ふ……ぅ……」…いやでは、なかった。こんな時どうすればいいのか。アーカイブを検索すれば、そんなものはいくらでも探し出せるだろう。けれど、そんな余裕はなかった。わたしは、混乱していた。いや、正確には…思考を停止していた。ただ、彼を感じることができれば、それでよかった。「…ん…ちゅ……ちゅく………」全てを彼に委ね、わたしは、目を閉じる。「ちゅ……ぅ……ん…」時の流れすら忘れ、わたしは行為に没頭していた。「…ぅ……」熱い。何もかもが熱い。「…っは……ぁ……」唇が離れる。わたしは目を開けて彼を見る。その目は、ただまっすぐに、わたしを見つめていた―――息が荒い。俺も、長門も。あの長門が頬を染めて、今や誰でも一目で分かる程に切なげな表情をしていた。やばい。いやもうここまできておいてやばいも何もないんだが。とにかくやばい。谷口め、何がAマイナーだ。AAAを通り越してSSプラスだよ、こいつは。むしろQか。何でQかは知らんが。何故だかわからないが俺は、こんなことを考えられるくらい心に余裕があった。俺だって健康な男子高生だ。ハルヒの奴じゃないが、若い体を持て余すことだってある。…でも、まさかそういう状況になって、こんなに心が落ち着いているとは思わなかった。ぶっちゃけて言うと、したい。すげぇしたい。長門とあんなことやこんなことをしたいのだ。だけど、今はそれよりも―――この、目の前にいる、一人の女の子を、支えてあげたいと思った。「長門…」俺はもう一度長門の華奢な体を抱き締める。長門が「あ」と小さく声を漏らす。その体は軽くて、柔らかくて、そして少し甘い匂いがした。俺は優しく長門の頭を撫でる。長門の手が、そっと俺の背中に回される。弱々しい力。今の長門は、何処にでも居る普通の女の子にしか見えなかった。俺は、その細い体が壊れてしまわぬよう、少しだけ、ほんの少しだけ抱き締める力を強めて、鼻先を長門の髪に近付ける。鼻腔をくすぐる、甘い匂い。甘い、というのは少し違う気がするが、それでもその匂いは、とても甘く、俺の脳を揺さぶる。いかん、早速決意が揺らぎそうだ。長門は動かない。俺の背に手を回したまま、じっとしている。俺は撫でる手を止め、そっと長門の頬に手を添える。長門が俺を見つめてくる。その表情は、眉が下がり、目をわずかに潤ませた、「あの時の」長門有希のそれに、酷似していた。だが、俺には分かる。こいつはあの時の長門じゃなくて、この世界の長門。重なって見えるのは当然だ。あの長門は、確かに長門自身だったんだから。俺は何も言わず、長門の髪を梳き始める。短いけれども、サラサラと指通りの良い、柔らかい髪。長門は、髪を梳かれるのが心地良いのか目を細めていた。ああ神様、そろそろ限界です。情熱、もとい性欲、持て余す。俺は髪を梳きながら長門の顔に自分の顔を近付け、長門の頬にキスをした。「っ」長門の体が、少しだけ強張る。背中に添えられていた手に、制服をぎゅっと掴まれる。でもそれは瞬間的なもので、すぐに長門の体は弛緩する。ぴちゃ…それを見計らって、俺はさっきのお返しとばかりに長門の顔を舐め始めた。「…ぅ…」長門が声を漏らす。だめだ、可愛すぎる。ぴちゃ…「……ぁ……」俺の舌が長門の頬を這う度に、長門は熱い吐息を漏らす。はむっ「っ…ぁ」長門の耳を、唇だけで甘く噛む。舌をわずかに出し、耳を蹂躙する。「…ぃ…」横目でちらりと長門の顔を見る。その顔は、普段の長門からは信じられないくらい赤く、まさに快感に身悶えしているという感じだった。今更だが。ああ、やっぱりこいつも普通の人間と同じで、「感じる」んだなと、訳の分からないことを俺は思った。ちゅっ…「…は…ぁ」首筋にキスを落とし、舌先でつつつと舐め上げる。長門の体がぞくぞくと震える。「可愛いぞ、長門」俺は首筋から唇を離し、長門の顔をじっと見つめて言う。長門はその言葉に、目を大きく見開いた後、ついとそっぽを向いてしまう。ははは、恥ずかしがるな恥ずかしがるな。そんな仕草すら、もはや俺の加速装置にしかならん。ブレーキは何処だろうね。俺のスペック、全て不明。今の俺なら長門をお姫様抱っこしたまま紙コップに注がれた水を溢さずに全力疾走するなんて容易いことだろう。ダウンヒルだかヒルクライムだか知らないが、多分今の俺にテクニックで勝てる奴は居ないね。…童貞の中では。おっと、何か変な妄想が頭の中をよぎったぞ。変なことを考えている場合じゃない、長門に失礼だ。それに、俺には今長門が抱えているものが分かっていた。きっとこれは、長門の言う『エラー』。悪く言えば、俺はそのエラーを利用してるだけなんだ。女の弱みに付け込んで、体を抱くなんて男として最低じゃないか。でも…それでも。俺を求めてくれる長門を避けるなんてことは、俺には出来なかった。据え膳食わぬは男の恥ってか。それはそれでヘタレな気もするが。俺は、それでもいいと思った。きっと、長門も許してくれるだろう。そんな気がした。不思議なことに、それは確信以外の何物でもなかった。だから俺は、もう一度長門の顔をまっすぐ見つめ、今日3度目のキスをした―――「ぅ…」彼の唇が、そっとわたしの唇に触れる。それだけで、身体中に電流が走ったような感覚を覚える。これが、快感というものなのだろうか。一切の思考が停止し、彼が欲しいという動物的本能だけがわたしを動かす。「…?」わたしはふと違和感を覚える。彼は唇を優しく、ただ優しく触れさせるだけで、他には何もしてこない。ああ…。わたしは、理解する。単純なことだ。わたしは、彼の背中に回していた手を、彼の頬に添える。そして、恐る恐る彼の口内に、わたしの舌を侵入させる。侵入したわたしの舌を、即座に彼の舌が絡め取る。唇を触れ合わせただけでは味わえない、凄まじい快感がわたしを襲う。舌を侵入させているのはわたしなのに、わたしは、彼に蹂躙されている。彼に蹂躙されているという感覚が、わたしの暴走を加速させる。彼の舌が蠢く度に、わたしは全身を震わせる。蕩ける程に、熱い。頬に添えていた手を離し、首に腕を回す。力が入らない。彼にしがみつくだけで、やっとだった。体が言うことをきかない。…もう、自制する気すら起きなかった。ぞくぞくと震える体をやっとの思いで支え、彼に身を委ねる。彼は、わたしの腰に回した腕の力を強める。彼に抱き締められる感覚。彼の傍に居るという幸福。わたしの意識が、徐々に溶けていく―――「…ふはっ」唇を離すと長門は大きく呼吸をした。多分苦しかったんだろう。実際俺もけっこう苦しかった。まああまりにもキスが心地良かったもんで、限界が来るまで全然気にならなかったんだがね。長門の方を見ると、その表情はますます切なげなものになり、肩で息をしているような状態だった。あー!たまらん!!たまらんだろ!!?たまらん!!!などと某食用油のCMの真似をしてる場合じゃない。もうこの長門の様子にはグラリときたね。そろそろ人間的理性ともおさらばしたいところだが、それは駄目だ。そんなことになったら、それこそ俺はこの長門の細い体を壊してしまうかもしれない。俺は、こいつを支えてやると決めた。守ってやると決めたんだ。またあの時のように、情報ナントカ体とやらが長門を『処理』しようとするようなことになったら、それこそ俺は穏やかな心を持ったまま激しい怒りによって目覚めちまうね。いかなる光学的手段を用いても観測することは出来ないだか何だか知らんが、そん時は必ず見つけ出してぶっ飛ばしてやるよ。そのくらい、長門は俺にとって大切な存在なんだ。長門が対有機ナントカインターフェースなんだってことは。この際どうでもいいことだ。俺は、長門が長門でありさえすれば、それでいいんだ。俺が好きになったのは、「長門有希」という存在そのものなんだからな。今はもう、こいつは普通の人間と、普通の女の子と変わらない、一人の人間であり、女の子なんだ。好きになったって、バチはあたりゃしないだろう。…いや、あいつが、涼宮ハルヒが居たか。けど、そんなこと知るか。確かにあいつのことは嫌いじゃない。どちらかと言えば好きなんだろう。そういう意味じゃ、ハルヒだけじゃなく、朝比奈さんや古泉のことだって好きと言えるだろう。だけど、それは今俺が長門に感じてる愛しさとは、全くの別物なんだ。この感情は…「長門…」俺は、まだ苦しそうにしている長門に声をかける。すると、長門はゆっくりと俺の顔を見上げる。「…ぁ……っ……」何だろう。何か言いたそうな…そんな表情をしている。「…名前」「え?」「…名前で…呼んで…」わたしは、自分が何を言ったのか一瞬理解できなかった。自分が発した言葉を反芻し理解した後、今度は「何故こんなことを言ったのか」という疑問に到達する。「…わかった」彼が、わたしを見つめる。そして、囁く。「…有希」その瞬間、わたしの中を電流が奔り抜ける。力が抜ける。自重で、彼の体からずり落ちそうになる。わたしは必死で彼の首にすがりつく。「なが…有希?」―――まただ。『有希』という固体名を彼に呼ばれた瞬間、身体中を電流が奔る。体が震え、力が抜け、彼にしがみつくのがやっと。「…有希」蕩ける。そうとしか言い表せない。名前を呼ばれる度に、わたしはぞくぞくと体を震わせ、吐息を漏らす。抑えが、きかなかった。そんなわたしの頭を、彼はそっと撫でてくる。何故だろうか。彼に触れられている、それだけで、わたしは安堵する。わたしは、しがみついたまま彼の頬に自分の頬を摺り寄せる。少しだけ、ざらざらとした感触。けれど、それが心地良い。彼がわたしの頭を撫で、わたしは彼に頬擦りする。ああ、まるで―――猫のようだなと、わたしは思った。わたしが彼の手の感触に感じ入っていると、耳元で再び彼が囁く。「有希」と。溶ける。融解していく。わたしの何かが、わたしの全てが、蕩けるようにして崩れていく。既にわたしの意識の半分は、深く、どこまでも甘美な、闇の中にあった。あらゆる感覚が、彼を感じること、その為だけに、ただ一つのベクトルに、研ぎ澄まされる―――長門……いや、有希は、猫のように俺に頬擦りをしてくる。しっとりと柔らかい肌の感触。ひんやりとした冷たさが心地良い。俺は優しく有希の頭を撫で続ける。出来れば、ずっとこうしてやりたい。やりたいのだが…。正直もう、限界ですとも。悲しい男のSAGAってやつか。落ち着いていた俺の心は有希と密着することで現在進行形で温度上昇中。今だって理性を総動員することで有希に優しくしてやれてる状態だ。本気でやばい。次は、無い。…そういえば、さっきから胸のところに何やら柔らかい感触が。煩悩を振り払う為に有希の頭を撫でることに全神経を集中していたので気が付かなかったが…。ふと思い立って、少しだけ抱き締める強さを強めてみる。胸の辺りにある柔らかい何かが、ふにょっと少しだけ形を変える。そして同時に聴こえる「んっ…」という有希の声。艶を帯びた、嬌声にも似た声。有希の顔を覗き込むと、さっき以上に赤い顔に、下がった眉と潤んだ目これは、まさか、マッガーレふんもっふ!とか思わずそんなようなことを叫びそうになった。長門の胸が、俺の身体に。壮絶に焦る俺。…だが当然といえば当然だ。抱き合ってるんだからな。ああ…やばい、ペタ…スレンダーな体形だと思ってたんだが、やっぱり君も女の子なんだね長門さん。もとい有希ちゃん。感じる柔らかさはわずかなものだが、その柔らかさは最上級のシルクですら敵わないであろう感動と快感を俺に与える。そして再び聴こえる「ぁ」という有希の可愛らしい声。それと同時に、俺の中で何かが吹っ切れた。すまん、有希。やっぱり男は狼だ。狼っつーかただの獣だ。乙女のピンチがSOSだ。俺のジェントルメンタルももはやここまで。こうなったら、俺がお前の狼になってやる。他の誰かにこの役をやらせるなんて気は毛頭無いがね。出来るだけ優しくするから、許してくれ。一世一代の決心と共に、俺は有希に言う。「有希」びくっと震える有希の身体。恐る恐る俺の顔を見上げる。そして、濡れた漆黒の瞳をまっすぐ見つめ、こう告げた。「その、む、胸…触っても、いいか?」この変態め。彼の言葉に、わたしは戸惑いを覚える。驚き、焦り、怯え、不安、そういった負の感情がわたしに襲い掛かる。…いやでは、ない。むしろ、喜びや嬉しさといった正の感情が負の感情を包み込んでいく。だからわたしは、彼の問いに、静かに頷いた。「問題ない」と、少し裏返った声を絞り出しながら。「ごめん、な」彼はそう言って、わたしの胸部にそっと触れてきた。「っ」彼の手が、わたしの乳房を優しく包み込む。「ぅ…ぁ」壊れ物を扱うように、撫でる。「はっ…」服越しの、ほんのわずかな刺激。それだけでわたしは身体を震わせ、悦びを感じる。…わたしは、えもいわれぬ気恥ずかしさを覚え、彼に言う。「…満足?」「え?」彼は手を止めてわたしの言葉に耳を傾ける。「その…あなたは、わたしの胸で、満足?」「え…あー」「わたしの胸が、好き?」「そりゃもう」即答された。…つい俯いてしまう。何なのだろう、この感情は。とても、嬉しい。「でも…わたしの胸は、朝比奈みくるや涼宮ハルヒのように、大きくはない」「…そんなこと気にしてたのか?」彼の表情に驚きが混ざる。…わたしも、自分がこんなことを言い出すとは思わなかった。「あなたはいつも、朝比奈みくるを特に見つめていた。だから、そういったものが好みなのかと」「あー…そうだな。まあ、男だし大きな胸ってのは好きだな」…何だろう。今度は、少し悲しい気持ちになった。「だけどな、有希」彼が続ける。「俺が好きなのは有希なんだ。本当に人を好きになるって気持ちに、胸の大きさなんか関係ないさ」そう言って彼はわたしの頭を撫でる。「つまりだ」彼が更に続ける。「有希の胸なら、どんな大きさだって俺は好きになれるってことだな」…よく分からない。よく分からないけれど、彼がわたしの胸で満足してくれているというのは理解できた。少し、安堵する。「そう」…わたしは、どんな顔をしていたんだろうか。彼はわたしの顔を見て安心したように微笑むと、再びわたしの胸を撫で始める。「ぁ」心地良い。嫌悪など、欠片ほども感じなかった。むしろ、彼に触られているということに幸福を感じる。彼が傍にいて、微笑んでくれるだけで、わたしは自分が背負っている全てから救われたような気がする。「あ…ふ」「…有希…」彼の吐息が、首筋にかかる。名前を呼ばれたこととの相乗効果か、身体に大きな快感が奔る。強い刺激を与えられているわけではない。ただただ優しい刺激を、彼は与えてくる。求められているという感覚。愛されているという感覚。わたしは、彼の想いに応えたいと思う。だから、わたしは彼に言う。「…直接…触っても、いい」マジで死ぬかと思った。有希の言葉の後に訪れた暫しの沈黙。その言葉の意味を理解するのにたっぷり10秒はかかっただろう。5秒くらいした辺りで有希が俺の顔を不安げに見つめてきたけど、俺はその後も5秒間固まってたってことだ。そして計10秒後に「ほっ、あっ、お、おうっ!」という馬鹿みたいな奇声を発することでやっと俺は意識を覚醒させた。…俺が叫ぶと同時にびくっと身体を強張らせる有希。マジですまん。やっとのことで現実に引き戻された俺が一番最初に見たのは、有希の今まで見たこともないような不安げな顔。濡れた瞳で俺のことを見つめてくるその顔に…俺はいいようのない庇護欲にかられる。有希が言った言葉の意味を理解していたのでそりゃもうすぐにでもそうしたかったが、わずかに残ったありったけの理性を総動員して有希を優しく抱き締める。頭に手を添えて優しく撫でてやると「あ」という有希の甘えるような声。よし、よく頑張った俺。ここで頑張らなかったら…俺は、本当に獣になっていたかもしれない。俺は信じられない速度でばくばくとなる鼓動に何とか耐えながら、俺は有希に言う。「…いいのか?」今更といえば、今更のことだったかもしれないが。「…問題ない」有希は、吐息混じりの声で、静かに、けど確かに、そう言った。「それじゃ…するぞ」わたしの顔色を伺いながら彼は言う。わたしはその問いに静かに頷く。彼はわたしのセーラー服を下から持ち上げ、出来た隙間から手をするりと入れてくる。「んっ」腹部にかすれるように彼の手が触れる。それだけで、わたしの身体はぴくりと反応する。やけに時間がゆっくりと感じられる。わたしの知識では、胸部は「女」の性感帯の一つ。先程、服越しに触られていただけでわたしの身体には微小な電流の流れるような快感が奔っていたのだ。…直接触られたら、どうなってしまうのだろう。そんなことを考えているうちに、彼の手がわたしの胸部に到達する。「あ」ブラジャーの上に、優しく添えられる手。服越しの時以上に伝わってくる、彼の感触、彼の体温。鼓動が、早くなる。心拍数の異常上昇。普通ならば、致命的なエラーと判断される身体状況。…わたしは、それをエラーとは判断しなかった。正確に言えば、できなかった。正常な判断をするなど、既に不可能だった。…する必要もないと思った。今はただ、彼を感じられれば、それでよかった。「ぁ…ふ」円を描くように、わたしの胸を撫でる彼の手。呼吸が、うまくできない。「ふぁ…ぁん」彼の手が動く度に、わたしの口から吐息が漏れる。この息苦しさすら、今のわたしには心地良く感じられた。「……」ふと、胸への刺激から解放され、彼の手が背中へと回される。「あ」ぎこちない手つきで、ブラジャーのホックが外される。ブラジャーがずらされ、覆うものの無くなったわたしの胸に、彼の手が置かれた。「…っ!」瞬間、びくりと身体が跳ねる。「だ、大丈夫、か?」彼が心配そうに見つめてくる。ちくりと、胸の奥が痛むような感覚。そんな顔を、してほしくなかった。だからわたしは応える。「…問題…ない」その言葉を聞いて、彼は安心したように微笑んだ。自然と、わたしの顔からも笑みが漏れる。…わたしのその表情に、彼は驚いているようだった。わたしも、少し驚いた。「有希…お前、笑えるようになったんだな」優しい、彼の声。きっとその表情はぎこちないものだったと思うけど。その声に応えたくて、わたしは覚えたての笑みをもう一度浮かべて言う。「あなたの、おかげ」ああ、本当にこいつは、一人の、普通の女の子なんだな。そう思った。有希がこんなに優しい笑みを浮かべるとは思ってなかったから。その表情から、俺に応えたいという有希の想いが伝わってくる。俺は思わず、有希に口付ける。「んぅ…っ」少し驚いたようだったが、俺が舌を差し入れるとおずおずと舌を絡めてくる。「ふ…ぅ、ちゅ、ちゅくっ…」陽の落ちかけた部室に響く水音。その音はたまらなく淫靡で、俺の興奮を高めていく。「ん…ぷ…ふぁ」唇を離すと見えるのは、有希の切なそうな顔。その表情が、瞳が、唇が、何もかもが愛おしい。俺はまたその小さな唇を奪う。「んむっ…」有希の呻く声が聴こえる。舌を挿入し、絡め取る。同時に、胸に添えた手の動きを再開する。俺の舌が蠢く度に、胸を撫でる度に、ぴくん、ぴくん、と小さく跳ねる有希の身体。はやる気持ちを抑えて、ひたすら優しい責めを続ける。自分を求めてくれるこのか弱い女の子を、壊してしまいたくなかったから。「ふ…む…ちゅっ、ちゅく」有希はただ健気に、俺の責めを受け入れてくれいる。その姿に、今度はちょっとした嗜虐心、というか悪戯心が芽生える。「ちゅ…ん…、っむ!」一際大きく跳ねる有希の身体。既に固くなっていた先端を、俺は指で摘んでいた。「むっ、んっ、んぅ」わずかに抵抗を示す有希。俺は唇を離す。「うぁんっ」瞬間、有希の身体がびくんっと反り返る。俺は焦らすように固くなった先端の周りを弄びながら、耳元で囁く。「嫌だった?」顔が赤い。「…は……ぃ」「ん? 何?」答えは何となく分かっていたが、意地悪して聞き返す。「…いやでは、ない」俯き気味に返してくる。「続けて、いいか?」空いた方の手で、髪を撫でながら言う。少しの沈黙の後、予想通りの答えが返ってきた。「…そうして」わたしの言葉を聞くと、彼は笑ってわたしの髪をくしゃくしゃっと撫でてきた。頭部にかかる、優しい圧力。快楽とは違う何か。心地良さに目を細める。しかし、次の瞬間に心地良さと快楽は入れ替わる「…っ!」彼の指が、固くなった先端を摘んで、弾く。身体がびくんと跳ねる。「っあ、ぅ、ふぁ」先端を転がすように弄び、指の腹で軽く押し潰される。局部への刺激が、身体全体へと電流を奔らせる。「ふぁっ、ん」その指が離されたかと思うと、先端の周囲を円を描くように撫ぜられる。焦らされて、耐え切れず彼の顔を見ると、承知したようにまた責めを開始する。その繰り返し。どうにかなってしまいそうだった。…いや、わたしはもう、どうにかなってしまったんだろう。それでも、わたしを襲う負の感情を、彼はいとも簡単に拭い去ってくれた。わたしは、罪を犯した。その罪を彼が理解しているかは分からないけれど、今、彼はわたしを求めてくれる。それだけで…喜びを感じた。「あっ」そんなことを考えていたら、突然セーラー服をたくし上げられた。彼が、わたしの胸に顔を近付けてくる。…その意味は、すぐに理解できた。彼がしてくれたように、わたしは彼の頭を優しく抱いた。「…う」乳房に彼の唇が触れる。彼の舌が、わたしの乳房を這う。不快感はない。むしろ、全てが意識の深層で望んでいたことのように感じられた。「ぁ…ん」彼の舌が、先端に触れる。指先とは違う、ぬるりとした感触。「ぃ…あっ、あん」先端を口に含まれ、舌で転がされる。思わず彼の頭を抱く力が強まる。「ふぁ…ぁ…」声が、抑えられない。唇を噛んで声を抑えようとしても、身体がいうことをきかない。身体中を駆け抜ける電流が、わたしを狂わせる。「っ…ぅんぁ…っ!」突然、強烈な快感がわたしを襲う。彼が、先端を歯で軽く噛んでいた。そのまま舌が蠢き、わたしはぞくぞくと身体を震わせる。「あ、あ、あぅ」「むぐっ」くぐもった声と共に、彼の身体が動いた。…息苦しかったのだろう。わたしはそれに気付いて、腕の力を緩める。ちゅぱっ「ふ」彼が唇を離した音が、いやに大きく聞こえた。彼がゆっくりと頭を上げる。その理由が分からず、わたしは彼の顔を見やる。「んむっ」どうしたの、と言うよりも早く、彼の唇がわたしの唇を塞いだ。「んぅ、ふむ…ぅ」長い、長い口付け。口内を、自分の舌を、彼の舌で蹂躙される。もう、何の抵抗も無い。「ちゅ…ちゅく」今度は、自分から舌を絡める。舌と舌が絡まる音だけが、室内に響く。…どれだけの時間が経っただろうか。彼の手が、わたしの頬に添えられる。「むぐっ…!?」完全に不意打ちだった。突然、わたしの口内に生暖かいものが流れ込んできた。「ふ…む、ちゅぐっ」それが何かは、すぐに分かった。彼の唾液。生暖かい彼の唾液が、わたしの口内を侵していた。「ん…んぐ」少しだけ戸惑ったが、わたしはそれを受け入れる。流れ込んでくる彼の唾液を、少しずつ飲み込む。受け入れ切れなかった唾液が、唇の端を通って零れていく。口から顎、首が濡れる。妙な感覚だったが、嫌ではなかった。少し、苦しかったけれど。「…む…ぷぁ」唇が離される。目を開けると、彼も少し苦しそうな顔をしていた。…ふと、ここまできて、快感を得ているのが自分だけということに気付く。彼にも、気持ちよくなってもらいたい。だからわたしは、彼に告げる。「…不公平」「え?」俺は思わず聞き返した。有希の言った言葉の意味が、いまいち理解出来なかった。「わたしだけは、不公平」「有希…?」そう言うと有希は、俺の顔をじっと見つめたまま俺の膝から降りようとする。しかし、何というか…。自分でやっておいて何だが、あの有希が口元から涎をだらしなく垂らしている画っていうのは、かなりクルものがあるね。「どうしたんだ?」「あなたは、わたしを気持ちよくしてくれた」まっすぐな瞳で俺を見つめたまま、有希は言う。「だから、わたしもあなたを…気持ちよくしてあげたい」あ、駄目だ。やられたね。完全にやられたよ、この言葉には。本当…何処までも健気なんだな、こいつは。「…分かった」何をするかは分からないが、とりあえず俺は有希を解放する。有希は口元の涎を拭うと、乱れた衣服を直しもせずにゆるゆると俺の膝から降り、俺の前に膝をついた。あ、何か次の展開が予測出来るぞ。俺だって健康な一男子高生だ、何処で手に入れたのか忘れたが、知識くらいある。そうこのシチュエーションは…。「……」有希が俺の下半身の一点を見つめて、固まっている。…そりゃそうだ。今まで耐えてきたが、息子の方は正直で、さっきから限界にまで勃起していた。それはもう、ズボン越しにもはっきりと分かるくらいに。…こいつのことだからそのくらいの知識はあるんだろうが、やっぱり実物を目にして戸惑っているんだろうか。そんなことを思っていると、不意に有希が顔を近づけファスナーを口に咥えた。ぐ…ぎぎぎあのー有希さん?何故わざわざ口でファスナーを開ける必要があるんでしょうか?いや、これはこれでそそるけど…。「……」ゆっくりとファスナーを下げ終えると、今度は手でトランクスをいじり、俺の息子を解放した。圧力から解放され自由になったそれは、ぶるんという音でも立てようかという勢いでそそり立つ。…実を言うと、かなり辛かったから助かった。「あ」有希が声を漏らす。心なしか顔が赤い。ぐぁ駄目だ。可愛すぎる。有希は俺のモノを凝視したまま固まっている。やばい、俺まで恥ずかしくなってきた。お願いですからそんなに見つめないでください。「…ふ」小さく溜息を漏らすと、有希は意を決したようにそっと俺の息子に指を触れさせた。「くっ」「…っ」その細くて白い指から伝わる感触と低めの体温に、俺のモノは敏感に反応する。有希も吃驚したんだろう。びくっと手を離して、恐る恐るといった表情で俺の顔と俺のモノを交互に見つめてくる。この仕草がまた…可愛いなあもう。俺は有希を安心させるためにまた頭を撫でてやる。「んぅ」一瞬強張り、また弛緩する有希の身体。何かいいね。こう、初々しい感じが。しばらく撫でていると、有希が顔を上げた。「…あなたに、お願いがある」そんな不安げな顔で言われたら断れるわけないだろ。「何だ?」「わたしは、得ようと思えば、大抵の知識は得ることができる。…こういう時どうすればいいかという知識も。だけど…」「…ああ」「わたしは、あなたの望むようにしたい。だから…どうすればいいのか、あなたが教えて」健気過ぎます。有希さん。「分かった、それじゃあ…」有希の頭を撫でながら、最初のお願いをする。「とりあえず、その手で優しく包み込むようにして…」「……」俺の言うことに、有希は従順に従う。俺のモノに再び触れた時、また身体がびくっと強張ったようだが、今度はおずおずと指で息子を包み込んでくる。やっべ、気持ちいい…。「そのまま…指をゆっくり上下に動かしてくれ」こくん、とミリ単位で縦に動く首。有希は言われたとおりに、優しく指を上下し始める。すげ…女の子の手でされるのって、こんなにいいのか。自分のでするのとは全然違うんだな…。なんてことを考える余裕もないくらい、有希の指は俺に痺れるような快感を与えてくる。「しばらく、そのまま…」「…わかった」有希は何の抵抗も見せずに、息子に指を這わせる。駄目だ…椅子に座ったままでよかった。絶対立ってらんねーよこれは…。そんなことを思いながら、俺は有希の頭に手を置く。有希が俺の息子を撫で、俺が有希の頭を撫でる。それをしばらく続けていたのだが…。急に有希の手が止まる。「有希? どうした―――」ちゅっはぅあ!あなたはまた何をしておいでなのでしょうか!?「…男性は、口でされるのが好きだと」何処で得たんだそんな情報!!「…問題ない」などと言いつつ、今度は舌を使って息子をゆるゆると責め立てる。ちゅるっ…れるっ「くっ、う」思わず両手で有希の頭を押さえる。その動きはぎこちないものだったが…俺を感じさせるには十分だった。小さな手と口を使って奉仕するその姿は、俺の興奮を高めていく。…おい、誰だ今ロリとか言ったのは。俺にそんな趣味は無いし、だいたい有希に失礼だろうが。おっと、また変な妄想が。「…ちゅ…ちゅむっ…」「っ…有希」「…なに」有希が顔を上げる。「…気持ちよく、なかった?」少し不安そうに、首をかしげる。そんな訳あるか、すげぇ気持ちいいぞ。「…そう」安心したように微笑を浮かべると、有希は再び奉仕を開始する。「ん…む、ぴちゃ…」熱く湿った、柔らかい舌が息子を這う感覚。それは、俺のモノを愛おしそうに舐める有希という画と相まって、凄まじい快感を俺にもたらす。「あむ…れる…」焦らされるような、微小な刺激。それだけでも、全身を電流が駆け抜けるような気持ちよさが、俺を襲う。「ぴちゃ…ちゅ、ちゅるっ…」根元から先端へとゆっくりと舐め上げた後、亀頭を舌で円を描くようにちろちろと舐める。「は…ぁ、ゆ、き」集中していないと、今にも爆発してしまいそうだった。「ちゅるっ…はっ、ぁ…あむ」有希は何度も何度も息子にキスを落とし、舌を使って奉仕する。や…べ、力み過ぎたかな…。頭くらくらしてきた…。腰ががくがくと震える。蕩けてしまうんじゃないかと思うほどに、気持ちいい。…ふと、有希は舐めるのをやめる。しかし、次の瞬間、俺は今まで味わったことのないような快感に襲われた。「…むぐっ」「ぐっ、あ!?」有希が、その小さな口で、俺の息子を咥えていた。熱く湿った柔肉に包まれる感触が、俺の理性を、吹き飛ばした。「ふ…んぐっ、うっ、んぅ」わたしは、彼の勃起した性器を咥え、上下運動を開始する。わたしが得た性交に関する情報によると、男性は女性の口で刺激を与えられるということに、強い快感を覚えるという。…だからわたしも、彼に喜んで欲しくてそれを実行してみた。「んぐ、ちゅぐっ、ちゅ…」「うぐっ、あ、あぁ…」ぐちゅぐちゅという音に混じって、彼の声が聞こえる。目線を上げると、彼が呼吸を荒くして何を我慢しているようだった。…彼が、感じてくれている。嬉しい。そう思うと、息苦しさは何ともなかった。「ちゅ…ちゅぐ、じゅるっ」口内で舌を動かしてみる。彼の身体が、びくりと跳ねる。「く…ぁ、有希…ぐっ、う」その表情をもっと見たくて、わたしはいろいろな責め方を試してみた。口に咥えたまま、性器全体を舐めるように舌を動かす。亀頭部分で口を固定し、尿道を執拗にねぶる。口をすぼめ、吸い取るようにして口を上下させる。その全てに、彼は反応してくれた。わたしで、感じてくれている。それだけで、わたしは嬉しかった。…不意に、わたしの頭に置かれていた彼の手の力が強まる。見上げると、彼がすまなそうな顔で、小さく呟いた。「…ごめんな」俺の我慢は、とっくに限界を超えていた。けっこうな時間焦らされたため、もう達したくて仕方が無かった。俺は、有希の頭を押さえて、ピストン運動を開始する。「むぐっ…ふ、ぐっ…んぅぅ」苦悶の表情を浮かべる有希。だが、抵抗はしない。「はっ…く、はあっ、はっ」何かに憑かれたように、腰を振る。痺れるような快感。同時に襲ってくる、自己への嫌悪。…くそ、くそっ!俺は、何をやってるんだ…!俺は有希を守るんじゃなかったのか…!「ふぐっ、ぅ、む、ぢゅ、ちゅぐっ」だがそれも、押し寄せる快感の波によってかき消される。有希の目には、苦しさの為か涙が浮かんでいた。「有希っ…有希っ…!」本能に突き動かされる中で、わずかに残った理性が、有希の名を呼ぶ。…限界は、あっという間にやってきた。「だめ…だ…っ、有希、で、る…っ!!」びゅるっ、びゅくんっ、どくどくっ、どくっ…次の瞬間、俺は信じられない量の精液を、有希の口内に放っていた…。「ふぐっ…ぅ…!!」思わず、目を強く閉じる。熱いものが、口内を蹂躙する感覚。苦しい。「んぐ…ぅ、ぐ、う」「はぁっ…はっ…」それが何なのかは、分かっていた。…だからわたしは、喉を動かしてそれを飲み込んでいく。「ん…ぐ、ごくっ…」「う…ぁ、ゆ…き…」彼が惚けたようにわたしの名を呼ぶ。わたしは、彼の精液を受け入れ続ける。…でも、それは想定外の量で、わたしは口を離してしまう。「ぅ…ぐ、ふ…、うぇっ…、げほっ、けほっ…」飲み切れなかった精液が、口から漏れる。「…っ!」彼の射精は、まだ続いていた。わたしの予測を遥かに逸脱した量の精液が、わたしの髪に、顔に、服に、肌に、容赦なくかかる。あっという間に、わたしの身体は彼の精液に蹂躙される。「っ…はぁっ…!!」目をわずかに開けると、彼は身体を仰け反らせて肩で息をしているようだった。…射精は、収まっていた。「……っ…ぁ…」呼吸が荒いのは、わたしもだった。口を解放されたばかりだったというのもあるが、それ以上に、むせ返るような精液の匂いに、わたしは、興奮していた。しばらく脱力して天井を見つめていた俺は、はっとして有希の方を見る。「…っ、ゆ…き…」俺は、その姿を見て愕然とする。有希は、身体中を白く染めて呆然としていているようだった。一瞬、何が起きたのか分からなかった。…そうだ、これは、俺の…。「っ、有希っ、ごめ…」有希は、いつも以上にゆっくりとした動作で、俺を見上げた。心なしか、目がとろんとしている。俺の姿を確認すると、かすれた声で呟く。「……だいじょう…ぶ」そう言うと有希は、身体についた精液を確認し、指で少しずつ掬い取り口に運んでいく。「ん…ちゅ…、ちゅ、ちゅる…」音を立てて、俺の精液を吸い上げていく有希。その姿は…たまらなく、淫靡だった。「有希…」「…なに」有希は精液を舐め取ることを止めずに応える。「その…ごめん」俺の言葉に、動きが止まる。そして、俺のことを濡れた瞳でまっすぐに見つめて言う。「…問題、ない。…わたしは、嬉しい」「嬉しい?」思わず聞き返す。「あなたは、わたしで感じてくれた。…わたしで、達してくれた。それが、嬉しい」どうして…こいつはこんなにも健気なんだろう。俺は、嬉しさと同時に、情けなさがこみ上げてくる。「だから…謝らないで」その言葉に、俺を支えていた柱が突き崩された。目から、とめどなく涙が溢れてくる。止まらない。俺は、自分の顔を両手で覆って、声を上げて泣いていた。「ごめん…ごめんな…俺…俺、何てことを…」自分のしてしまったことを、俺は今更になって後悔した。こんなに健気な女の子に、俺は何てことをしてしまったのだろう。「有希、ごめん…俺、俺は…」ふと、頬に、暖かいものが触れる。有希の手が、俺の頬にそっと添えられていた。顔を上げると、有希の顔が目の前にあった。その瞳は、まっすぐに、ただまっすぐに俺を見つめていた。「泣かないで」有希が言う。「あなたには…泣いて欲しくない。それに、これはわたしの暴走が招いた結果」どうして…どうして、お前はそんなに優しいんだよ…。「あなたは、わたしが守ると決めたから」それは…俺が言わなくちゃいけないことなのに。「だから、泣かないで」その漆黒の瞳は、強く、そして優しい輝きを放っていた。「…っ、有希…っ!!」抱き締める。離れてしまうのが嫌で、俺は有希を強く抱き締めていた。後頭部にそっと有希の手が添えられる。その手は、まるで泣き止まない子供をあやすように、優しく俺の頭を撫でる。「だいじょうぶ…だいじょうぶ」優しい、声。普段の、あの抑揚のない平坦な声からは信じられないくらい、感情のこもった声。俺は、耐え切れなくなって、そのまましばらく、嗚咽を繰り返していた。彼が泣いている理由は分かる。彼は、自分の行いを悔いている。けれど…彼が自分の行いを悔いる理由はないはずだ。これは、わたしの暴走が招いた結果…。「…だいじょうぶ」…想いを、上手く言語化できない。わたしには、それしか言えなかった。彼がわたしの為に泣いてくれるのは、嬉しい。嬉しいけど…悲しい。彼には、泣いて欲しくなかった。だから、彼が泣き止むまで…わたしはそっと、彼の頭を撫で続けた。「だいじょうぶ、だから…泣かないで…」「…有希…?」気が付くと、彼の目がわたしを見つめていた。その目には…微かに動揺の色が含まれていた。「…だい、じょう…ぶ…」…言語機能に障害が発生している。何故―――?「有希…泣いてるのか?」泣いている? わたしが?泣いているのは、わたしではなく、彼の方…。ふと、頬に冷たいものを感じた。手を頬にやる。…濡れている。これは…涙―――?「…わたし…は…」そっと、わたしの手に、彼の手が添えられた。もう一方の頬に感じる、彼の舌の感触。「…っ」彼の舌が、わたしの涙を掬い取る。「ぁ…」彼の唇が、わたしの唇に重ねられる。「ちゅ…む、んぅ」「…ふぅ」唇を離して、彼は微笑む。「うぇ…変な味だな、精液って」彼は眉間にしわを寄せて呟く。「…くすっ」その様子に、思わず笑みがこぼれた。…そして、自分にそんなことができたということに、少し驚いたりもした。「…やっと、笑ってくれたな。…ありがとな、有希」彼の目は、まだ潤んでいたけれど。そこには、あの優しい微笑みがあった。「…あなたも、やっと、笑ってくれた」わたしも彼に微笑みを返す。笑うことにも、だいぶ慣れた。彼は目を細めてわたしの頭を撫でてくる。それが嬉しくて、わたしも同じように目を細める。…自分の感情の起伏が顕著になっていくことにも、もう戸惑いはなかった。そして…、わたしは、彼とひとつになりたいと思った。有希の頭を撫でていると、甘えるように俺にすり寄ってきた。少し冷たいくらいの体温が、心地良い。しばらくそうしていると、不意に耳元で有希が囁いた。「…あなたに、お願いがある」お願い、ね。断る必要なんか何処にも無い。何だ?「わたしの望みを、叶えて欲しい」よし、何でも言ってみろ。「…わたしは、あなたと…ひとつになりたい」…その言葉の意味は、すぐに理解出来た。だけど、今度は混乱したりはしなかった。有希が、それを望んでくれたこと。それが、俺にとって一番の救いだったから。「…分かった」有希の頭を一撫でした後、もう一度口付ける。「ん」キスの度に漏らす声も可愛らしい。…俺は、有希のスカートにゆっくりと手を伸ばす。そしてそっと、その下の生地に覆われた秘所に触れる。「…んぁっ」びくん、と身体を震わせ、濡れた声をあげる。そのままゆっくりと、布越しに秘所を撫でてみる。「ふぁ…あ、ぁん…」有希は俺の制服をぎゅっと掴んで、必死に声を抑えようとしているようだった。…そこはもう十二分に濡れており、指を離すとわずかに糸を引いた。「ふぁっ」「凄いな…もうぐしょぐしょに濡れてるよ」「んぁ…ぅ」有希は羞恥に耐えているのか、ふるふると小さく首を横に振る。「…ちゃんと、全部人間と一緒なんだな」ふと、そんなことを口にしてみる。「…わたしは…有機生命体とのあらゆるコミュニケーションが可能なように作られている…。だから…」少し間を置いて、言葉を繋ぐ。「性交も、可能」普段なら絶対に恥ずかしがるなんてことをしないようなことで、有希は恥ずかしがっている。…女の子らしさの芽生えってやつだろうか。まあ、何にしても有希が可愛いことには変わりないんだけどな。「ん、そうか」俺はまた有希の頭をくしゃくしゃっと撫でると、再び指を秘所に這わす。「ぁ…ふ」唇を小さく噛んで、声を出すまいとしている。俺はそんな有希の耳元で囁く。「声、出してもいいんだぞ」びくりと強張る身体。俺の方を不安げに見つめてくる。「我慢しなくていいから」その言葉を聞いて、有希は顔を赤らめながらこくんと頷いた。「…脱がしても、いいよな」「…問題、ない」俺はその言葉を聞くと、ゆっくりと有希の下着を脱がしにかかる。体勢が体勢な為に、少し脱がしづらかったが…それでも何とか、脱がすことが出来た。…脱がす時にぬるりと糸を引いてたのが、物凄いエロかったけど。「…とりあえず、指でするから…痛かったら、言ってくれな」俯いたまま、こくんと無言で頷く。俺はそっと、有希の濡れた秘所に指を挿し込んだ。「っ…はっ」彼の指が、つぷつぷと音を立ててわたしの膣内に侵入してくる。わたしを襲う違和感と、それ以上の快感。彼はゆっくりと抽挿を開始する。痛みはさほど感じない。「有希…気持ち、いいか?」「…ふっ…ん」わたしは頷く。身体の震えが止まらない。「指…増やすぞ」そう言って彼は、指を1本から2本に増やす。「うぁっ」先程よりも遥かに上回る快感。抽挿のスピードも、速くなっていく。「は、あっ、うぁんっ」「…有希」「っ!あっ」指を動かしながら、耳を甘く噛まれる。身体が大きく跳ねる。「ちゅ…ちゅるっ」「ぁ…く、うぁ、あっ、ぁん」耳を舐められながら、膣内を指で責められる。途方もない、快感。わたしはただ、その悦楽に身を任せる。「あっ、はっ、っ…ん、はん…む」耳から口が離れ、口付けされる。反射的に、舌を絡ませる。「ふ…んぅう、ちゅ、ちゅく、ちゅる…」力が入らない。されるがままに、わたしは彼の責めを受け入れる。…抵抗する気など、なかったけれど。「ふっ、む、ちゅ、ちゅぐっ」突然、ちゅぽっという音が聞こえる。と思った次の瞬間、わたしを更なる快感が襲う。「っ…んあぁぁっ!」思わず唇を離して身体を仰け反らせる。指が3本に増えていた。ぐちゅぐちゅという音を立てて、抽挿が繰り返される。「うぁっ、あっ、は、あぅっ、ぅんっ」彼の指が動く度に、わたしは身体をびくびくと震わせた。意識が朦朧とする。「はっ、ぁんっ、ん、んぅぅ」「凄いな…そんなに感じてるのか、有希?」「うぁっん」ぐちゅっという音がして、指が引き抜かれる。「凄い濡れてる…」「は…ぁ…あぅ」彼はわたしの愛液で濡れた指を、わたしの目の前にかざす。彼が指を開くと、透明なそれは糸を引いて、夕日に照らされてオレンジ色にきらめく。「ふぁ…ぁ?」何も言わず、その指をわたしの口元まで持ってくる。その意味を理解したわたしは、差し出されたその指を咥えた。「んむ…ちゅ、ちゅる…」舌を動かし、自分の愛液と彼の指の味を味わう。ぬるりとした粘液が、わたしの舌を痺れさせる。「ちゅ…ちゅく……ぷぁ」指が引き抜かれる。と、同時に今度は彼の唇がわたしの唇を塞ぐ。「んぅ…ん!」再び膣内に感じる彼の指。ぐちゅぐちゅと容赦なくわたしを責め立てる。「ふ…ぅ、んっ、んっ、むぅ」意識が、遠のいていく。身体がぞくぞくと震える。「んぅ…っ、ふ、っ…!」彼の指が、一際強くわたしを貫いた。瞬間、わたしの身体に今までで一番強い快感が奔った。「ふっ…あ、ふあああぁぁぁぁぁ……っ……!!」「…はっ…ふぁ…ぁ」有希は、身体を仰け反らせてびくんびくんと数度身体を震わせた後、脱力するように俺にしなだれかかってきた。「はっ…はー…はー…」何とか俺にしがみついて、俺の肩で荒い呼吸を繰り返す。「有希…イっちゃったのか?」その言葉に、有希の身体がぴくっと反応する。…そして、静かに頷いた。「よし…それじゃ、これでおあいこだ」さっきイかされた時は本気で気を失うかと思ったからな。そう言いながら俺は有希の頭を撫でてやる。しばらくそうしていると、だいぶ呼吸も落ち着いてきたようだ。「もう、大丈夫か?」有希は無言でこくん、と頷いた。「…あたっている」…ああ…ずっと出しっぱなしの勃ちっぱなしだったからな。限界まで勃起した息子が、有希の下腹部にあたっていた。「有希」「…なに」頭を撫でながら言う。「正直…もう我慢できん。…入れても、いいか?」「…わたしは、あなたとひとつになりたいと言った。あなたが望むなら…いつでも、いい」ああ、駄目だ…。この健気さには泣けてくるね。「出来るだけ…優しくするから」こくんと有希が頷く。と同時に、ぎゅっと俺にしがみついてきた。…やっぱり、不安なんだろう。俺は頭を一撫でして頬にキスをしてやると、そそり立つ息子を有希の入り口に当てた。「…っ!」くちゅっ、という音がして有希の身体がびくりと跳ねる。俺はそのまま入り口の辺りを息子でくちゅくちゅと撫で付けてみる。「ふ…はっ…ぁ」少し動く度に有希は切なげな吐息を漏らす。その反応が可愛くて、つい焦らすことを続けてしまう。「んぁ…ぅ…ふっ…んぅ」有希が顔を赤らめたまま、恨めしそうに流し目を送ってくる。急かすような、そんな色が滲んでいた。ちょっと焦らしすぎたか…。気が付けば有希は、自分から腰を揺らしていた。「ふぁ…ぁうっ…ぅん」それでも、撫で付けるように腰を揺らすだけで、自分から入れようとはしない。俺がするのを待ってくれてるんだろうか?「悪い…ちょっと焦らしすぎた」片手で有希の腰を抱いたまま、もう一方の手で有希の頭を引き寄せる。肩に有希の熱っぽい吐息を感じる。「有希…いく…ぞ…っ!」「はっ…っ!―――――っ!!」ぐちゅぐちゅっという音がして、俺の息子が半分程有希の中に埋まった。「いっ、あっ、ぁうっ」「うぁっ…き…つ…っ!」有希はきゅっと目をつぶって痛みに耐えている。目の端から涙が零れる。ちぎれてしまうんじゃないかと思えるくらいの、痛い程の快感が俺を襲う。あんなに濡れていたはずなのに、有希の中はギチギチと俺を締め付けてくる。「うぁっ、あ、あ」有希の呼吸が荒い。そりゃそうだ。こいつの感じてる痛みは、俺なんかの比じゃないはずだ。俺はすぐにでも動きたい衝動を抑えて、ゆっくりと息子を引き抜いた。ずちゅっ…「く、ぁ」有希の身体が軽く仰け反る。少しでも落ち着くように、俺は有希の頭を撫でてやる。「…辛そうだな」「は…ぁ」少し間を置いた後、有希が呟く。「…わたしは、だいじょうぶだから…あなたの好きにして、いい」「馬鹿、そんなこと出来るか…」こんな時まで俺のことを優先する有希を、優しく諭す。「お前は、俺の一番大切な女なんだ。お前を苦しませるようなことなんて、もうごめんだ」「…そう」俺がそう言うと、有希は少し複雑そうに、でも嬉しそうに微笑む。「ゆっくりでいいから…辛かったら、すぐに言ってくれ」「…わかった」そう言ってぎゅっと抱きついてくる。「…いくぞ」今度は、出来るだけゆっくり挿入する。「っ…!」唇を噛んで痛みに耐える有希。少しでも痛みを紛らわせるために、俺は有希の身体を愛撫する。「ふ…っ、う、ぅんっ」ぐぬぬぬ…という音を立てる、肉と肉。時間をかけて腰を進めていく。「く…ぅ、うぅ」半分まで入ったところで、俺は一旦腰を止める。「う…ぅ、ふ、んぅむ」有希の唇に自分の唇を押し付ける。反射的に開いた口に舌を挿し込み、有希の舌を絡め取る。「ふぅ…ん、んむ、ちゅ、ちゅく…」我慢しろ…とにかく我慢だ。有希の痛みが引けるまで、俺の理性よ、頑張れ…。…といっても、もはや理性なんかほとんど残っちゃいない。頭がおかしくなりそうな程に興奮してる。本気でどうにかなっちまいそうだ。「ぷぁっ、あ、あぅっ」唇を離し目を開くと、苦痛に歪む有希の顔が見えた。俺の心がズキリと痛む。「っ…、有希…」やめようか? と言いかけた時だった。有希の唇が、俺の唇に押し付けられていた。「ふぅ…む、んぅ」「ん、んんっ」突然のことに俺は目を見開いたままだった。この1時間経ったか経たないかという時間の中で、もう数えるのも馬鹿らしくなるくらい繰り返した行為だというのに。…いや、もしかしたら気付かないうちに数時間くらい経ってたりするのかもしれないが。「ん…ぅ、ちゅ、ちゅくっ…」俺は混乱していた。まさか有希の方から舌を絡ませてくるとは思ってなかった。「ちゅ…ちゅむっ…ん…ふぁっ」有希が唇を離す。…あの無表情宇宙人は何処にも居なかった。そこに居たのは、快感と苦痛の狭間で喘ぐ一人の少女。黒水晶の様な瞳には涙を溜め、口の端からはだらしなく涎を垂らしている。「ふぁ…あ、あふ」熱い吐息を吐き出しながら弱々しく俺の肩に顔を預けてくる。砕け散りそうになった理性を、俺は何とか保った。やばい…やばすぎる。何がやばいって、このギャップだよ。間違いなく人死にが出るぜ。殺人級の破壊力だ。「は…ぁ?」俺が完全に固まってるのに気が付いたのか、有希は不安そうな視線を送ってきた。が、俺がその視線に気が付いた次の瞬間…「っ…、くぅ…ん…!」「ぐっ、あ!?」何を思ったのか、有希が自分から腰を沈めてきた。きゅっと目を閉じて辛そうな声をあげる。「ゆ…き…」「ふぁ…あ、ぁん…」俺が動かないから痺れを切らしたのか…?…いや、違う。有希は、俺の為に動いてるんだ。自分が苦しいのも構わずに・・・。「有希…」そっと、頭に手をやる。「もう、いいんだ」ぴくっと身体を震わせた後、俺の顔を見つめてくる。不安そうな目。多分、咎められたと思ったんだろう。…そうじゃないんだ、有希。俺が言いたいのは…。「もう、何でもかんでも一人で背負い込まなくたっていいんだ」言いながら頭を撫でる。あの夏休みの時、ハルヒの能力の影響を受けないこいつだけは、600年弱もの時間を独りで過ごしてきたんだ。俺達が何も知らずにへらへら笑っていた時も、こいつは…。それだけじゃない、どんな時だってこいつは、孤独だったんだ。あの世界の改変の時、こいつが本当に伝えたかったのは―――?「これからは…俺が居るから」耳元で囁く。「もう、一人じゃない」「っ…あ…あぅ…」嗚咽が止まらない。彼の言葉で、わたしを抑えていたものが崩れ去った。「っ、ふぁ…うあああぁぁぁぁ……っ!」気が付けばわたしは、声を上げて泣いていた。わたしがこんな風に泣くなんて、考えもしなかった。こんな風に感情をあらわにできるなんて、思わなかった。…これも全て、彼のおかげ…。「う、うぅ…あぅ、あぁ…」彼の手が、そっとわたしの頭を撫でる。心地良い。苦痛は、もはや消え去っていた。…どれくらい時間が経っただろうか。わたしはただ泣きじゃくり、彼はただわたしの頭を撫で続けていた。ようやく嗚咽が治まってきた。わたしは顔を上げて、彼の顔を見る。彼はただ、優しく微笑んでいた。彼の背に回した腕の力を強めて、わたしは言う。「…つづき」「え?」と彼が言う。少しの間の後、彼は顔を真っ赤にして「あ、あ、す、すまん」と呟いた。…何だか、可愛い。そう思った。「…つづき、して」もう一度言う。…多分、わたしも顔が赤い。顔面表皮の温度の上昇を、しっかり認識できる。「…いいのか?」彼がわたしを案じるような声色で言う。答えは決まっている。わたしは何も言わず、頷いた。「…我慢しなくて、いいからな」正直俺も我慢できそうにないし。そう言って、彼は少し自嘲気味に笑った。わたしも、笑みを返す。わたしの頭を撫でていた手が、腰にそっとあてがわれる。「いく、ぞ」わたしが頷いたのを確認して、彼はゆっくりとわたしの腰を引き寄せる。「はっ、う」苦痛が再び押し寄せる。身体が強張る。「…有希…」そう聞こえたかと思った次の瞬間、彼がわたしの耳を甘く噛んだ。「ふぁっ」思わず声が漏れる。彼の舌がわたしの耳をなぞる。「ふぁ、あ、あんっ」彼の舌が這う度に身体がぞくぞくと震える。快楽が、わずかに苦痛を上回る。そして、「くぅっ、うぁっ」わたしはびくんと身体を仰け反らせた。見ると、わたしの中に彼の性器が根元まで入っていた。「…っは…はいっ…て…」呼吸が整わない。わたしの中で、彼がびくびくと脈打っている。「っく…有希…平気…か?」「…は…ぁ…へい、き」ふと彼の顔を見ると、彼の表情には困惑が宿っていた。「有希…血が…」彼の目線を追うと、確かに赤い鮮血が見えた。「へいき…この程度の流血は、想定内」「そ、そうか…ってか、血って本当に出るんだな…」彼は戸惑いを隠し切れないようだった。わたしは彼の不安を少しでも和らげようと、彼の耳に囁く。「もうへいき、だから…動いて」有希が優しく微笑む。その表情に、ぎこちなさは感じられなかった。そうか…お前もう、そんな風に感情を出せるようになったんだな。何だか嬉しいよ。「…それじゃ、いくぞ」有希がこくんと頷く。俺は、腰をゆっくりと動かし始めた。「はぁっ…!ぁ、う、ぅん」「っぐ…やっぱ…きつ…」ぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てて、二人の肉が擦れ合う。全身を駆け抜ける快感。でも…こんなのは序の口だった。「んゃ、あ、あぅっ、ふぁ、ぁ」有希の喘ぎに、甘いものが混じり始めてきた。「はっ…はぁっ、…有希…平気、か…?」呼吸を整えてから、有希が口を開く。「まだ…痛みは残っている…けど、…へいき」有希は続ける。「わたしは…あなたに気持ちよくなって欲しい」その言葉に俺が口を開こうとした瞬間、有希が言った。「だから…わたしも、あなたに気持ちよくして欲しい」微笑みながらそんなことを言う有希に、俺の理性は、完膚無きまでに崩壊した。「…有希…!」「っ、あ!?」有希が一際大きな嬌声をあげる。無理もない。俺が本格的に息子の抽挿を開始したのだ。有希の小さな身体を強く抱き締め、ただ快感だけを生み出す為に腰を振りたくる。「ふぁっ、あ、あんっ、あ、あっ…!」俺が腰を打ち付ける度に、有希は身体を震わせて嬌声をあげる。その表情と声が、俺の快感をも増幅させていく。俺はふと思い立って片手の親指を有希の秘所に近付ける。…あった。そこには確かに、控えめに、でも確かに自己主張する突起があった。俺は迷わず親指の腹をそこに押し付けた。「…!ふぁ、ふゃあああああ!!」有希の身体が大きく仰け反る。同時に、有希の膣がきゅっと俺を締め付けてくる。「うっ、く!」思わず腰の動きが止まる。だが、俺はすぐに抽挿を再開する。もちろん、突起をいじることも忘れない。「んゃ、ふゅっ、ぅ、んぅ、うぁ、あ、ぁんっ…!」有希の喘ぎが舌足らずなものになっていく。「有希…有希…!」本能のままにジュプジュプと腰を打ち付けながら、有希の名前を呼ぶ。「ふぁ、あ、あぁう、ふっ、ふぁ…!」限界が近づいてきた。だんだんと意識が薄れてくる。「ゆ…き…!駄目だ、もう…っ!!」全身をありえない程の快感が駆け抜ける。有希がぎゅっと抱きついてくる。そして、喘ぎながら蚊の鳴くような声でこう囁いた。「あ、ぃ…っ、いっしょ…に…!!」その声を聞いた瞬間、俺は目の前が真っ白になるのを感じた。「う…ぁ、有希…っ、イ…ク…!!」「ふぁ…っ!あ、ああああああぁぁぁぁぁ……!!!」ぶびゅっ、どくっ、どくどくどくっ…俺は、有希の膣内に、1度目よりも多いかと思われる量の精液を放っていた…。静まり返った部室の中、二人の呼吸する音だけがいやに大きく聞こえた。「…っは……ゆ…き…」俺は完全に疲労し切っていたが、かろうじて手を有希の頭にやると、優しく撫でる。「…気持ち…よかったか?」呼吸が荒い。有希は俺の胸に顔をうずめたまま、わずかに頷いた。「そっか…」子供をあやすように、頭を軽くぽんぽんと叩いてやる。と、有希が突然顔を上げた。…その表情は、何処か哀しげだった。と、ここで俺は今更自分がしたことに気付く。「あ、ご、ごめん!俺、膣内に…」「…そうじゃ、ない」俺が馬鹿度全開の台詞を言おうとしたところで、有希が呟いた。「…情報操作を、する」「…何?」何を言ってるんだ?情報操作? いったい何を?「あなたの記憶を、修正する」俺の記憶を、修正?ちょっと待て、それは…。…!動けない…!? それに、口も開かない…。「わたしの暴走に、あなたを巻き込んでしまった。…こうすることも、自分勝手なことだというのは分かっている。でも…」そう言う有希の目からは、ぽろぽろと涙が零れていた。「あなたを、失いたくはないから…」そう言って俺の目の前に手をかざす。ちょっと待て有希。お前、何をするつもりなんだよ。俺の記憶を修正してどうしようってんだ!?「…涼宮ハルヒを…」そこまで言って、有希は口をつぐんだ。まるで、これだけは自分の口からは言いたくないとでもいうように。何なんだ。ハルヒが何だってんだよ?くそっ、全然動けねぇ…!意識が薄れていく。視界が、白くなっていく。やめろ、やめてくれ有希!俺は、お前が…!意識が完全に失われる寸前。有希がぽつりと呟くのを、俺は確かに聞いた。『…ありがとう…』「んぁ?」目を覚ますと、そこはSOS団…もとい、文芸部の部室だった。何気なしに肩に手をやると、背中にカーディガンがかけられているのに気付いた。…これは、長門のか。…? 何だ、この違和感…。…何でもないか。ふと横を見ると、長門が黙々と本に目を落としているのが見えた。…長門、待っててくれたのか?俺の声に、長門はゆっくりと顔を上げる。そしてミリ単位で頷くとまた本に視線を落とした。そっか。…ありがとな。「…いい」本に目を落としたまま応える。…うわ、もう外暗くなってくてんじゃん。何時だよ。長門、帰ろうぜ。俺の声に反応するように、長門が本をぱたんと閉じる。俺は椅子から立ち上がってもう一度言った。「よし、帰るか。な…が…」言いかけて、また違和感を感じた。長門はこちらを見つめたまま、俺にしか分からない角度で首をかしげている。…何だ? この違和感…。その時、俺は気付いた。長門の顔に、哀しげな色が宿っていることに。長門…? 何でそんな顔してるんだ…?瞬間、俺の脳裏を何かがかすめた。…そして俺は理解する。…ああ、そうか…これは…。『有希』俺の言葉に、わずかに長門…いや、有希の目が見開かれた。「…どうして」俺は有希に歩み寄りながら言う。…魔法にだって、出来ないことはあるんだ。有希の顔が、驚きと困惑の色に染まる。俺は構わず、有希の細い身体を抱き締めた。「あ」という声を漏らして、有希の顔が緩む。だがしかし、その顔はすぐに哀しげなものに変わる。有希はもう一度言う。「…どうして」「…何でだろうな」俺はふっと笑って有希の髪を撫でる。…とにかく、お前の魔法は失敗したんだ。有希の身体が震えている。まるで、何かに怯えるように…。俺は、その震える身体を強く抱き締める。「安心しろ。これはお前の罪じゃない」俺の言った言葉に、有希がびくりと震える。…俺とお前は同罪だ。共犯者だ。お前があの時言おうとしたこと…「涼宮ハルヒを」の続き。俺には…何となく分かってるよ。「…それじゃあ」でもな。有希の言葉を俺は制す。でもな…俺は、お前を選んだんだ。「あ…ぁ…」有希の目から、涙が零れる。「わたし…わたし、は…」そっと頭を撫でてやる。…ああ、そうだな。今回はちょっと悪戯が過ぎた。悪い子には、罰を与えないとな。有希の身体が強張る。不安げな瞳で俺を見つめる。俺は有希の頬に両手を添えると…息苦しさでどちらからともなく唇を離すまで、今日一番長いキスをした。…今、わたしの横には、彼が安らかな寝息を立てて眠っている。あの後結局、彼はわたしの家に泊まることになった。家に来るまでの途中、ファーストフードに寄って夕食をとった。…わたしの向かいに座っていろいろな話をしてくれる彼を見ていると、それだけでわたしは幸せだった。家に帰ってから…一緒に入浴した。入浴中、わたしは彼に求められた。…無論、わたしも彼を求めた。そして今、わたしのすぐ隣には、彼が眠っている。彼は言った。一緒に罪を背負ってくれると。自分に何が出来るのかは分からないけれど、わたしの支えになってくれると。…嬉しかった。わたしの中に芽生えたこの感情が、世界にとって正しいものかどうかは分からない。…いや、きっと、これは望まれないものなのだろう。でも…彼はわたしの”暴走”を、正当化してくれた。それが…わたしには嬉しかった。「ん…ぅ」彼が寝返りを打つ。わたしの目の前に、彼の顔が現れる。顔面表皮の温度上昇…でも、いやではない。わたしはそっと彼の頬に手を触れる。その寝顔を見て、わたしは…可愛いと思った。思わず笑みが零れる。わたしの、愛する人…わたしを、愛してくれる人。…そろそろわたしも、眠ることにしよう。暴走のせいか、…彼との行為のせいか、わたしの身体は、珍しく休養を求めていた。ゆっくりと目を閉じる。薄れゆく意識の中でいつか読んだ本の一節が頭に浮かんでくる―――磔にしてから私を哀れんでくれ さすれば私は進んで罰を受けに行くだろう―――…わたしの罪は、許されざるもの。きっといつか、”処分”される時が来る。その時きっと…彼は本気でそれを止めようとするだろう。その時わたしは…どうするべきなのだろうか。…わたしはそこで考えるのをやめた。こんなことを考えていたと知ったら、彼はきっと憤慨するだろう。そしてわたしを咎めるだろう。…分かり切ったことを言うな、と。何故かは分からないけれど、そう確信できた。…それは希望でも何でもなく、ただ一つだけ確かなこと。何故かは、分からないけれど―――「ふがっ」彼の寝言に、わたしは思わずびくっと反応する。そして、ふっと笑ってしまった。…自然とそんな反応をしたわたし自身に、少し驚いたりもした。でも、これも全て、わたしの目の前にいるこの人のおかげ。わたしは、そっと呟く。『ありがとう』『…大好き』 【罪と罰】 Ep.1end Tobecontinued..._
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。