「in the middle of nowhere 七章」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<div class="main">
<div>気がつくと俺は真っ白な世界の中心に立っていた。<br>
まるで無機質な砂漠のような世界。<br>
太陽はないが世界は明るく、風はふいていない。<br>
そして、遥か遠くにただ一つだけ建物の影が見える。<br>
もう、なんだかんだで一年以上通っていた俺たちの高校――北高がそこにあった。<br>
</div>
<br>
<div>俺のやるべきことは決まっている。<br>
あそこにいく。確信以上の物がある。必ずそこにハルヒはいる。<br>
行って伝えてやらなきゃいけない。俺の本音を。<br>
ずっと素直になれずにいた、ひねくれ者の俺の本音を。<br>
俺は最初の一歩を踏み出す。<br></div>
<br>
<div>
歩きながら思う。ハルヒと過ごしたこの一年間のことを。<br>
また思う。<br>
俺はいつからハルヒが好きになったのか。<br>
ハルヒはいつから俺を好きになってくれていたのか。<br>
一歩一歩地面を踏むごとにハルヒに近づいているのが分かる。<br>
</div>
<br>
<div>なあ、俺たちは本当に似た者同士だな。<br>
お互い本音を隠して、ずっと過ごして来たんだな。<br>
それもここまでにしよう。<br>
いつもは振り回されてる俺だけど、今度限りは俺から言わせてくれよな、ハルヒ。<br>
</div>
<br>
<div>しばらく進んだ所で俺は休憩した。<br>
結構時間が経った気がするが、腹も減らないしのども乾かない。<br>
ただ、疲労だけは溜まっていく。<br></div>
<br>
<div>
一息ついて立ち上がった俺が見た光景はあり得ない物だった。<br>
北高が遠く離れていた。<br></div>
<br>
<div>それから俺は、<br>
何時間も歩く、休憩、また北高が離れていることに気づく、それを繰り返している。<br>
</div>
<br>
<div>俺は呼んでいた。ただ、ハルヒの名前だけを。<br>
なあ、ハルヒ。聞こえるか?<br>
俺がここで――誰もいない、何もない世界の真ん中で――呼んでいるのが。<br>
いや、聞こえるわけはない。<br>
ここはあいつが嫌なことを全て忘れて、この一年間の、俺たちとの<br>
いい思い出だけを見る場所なんだ。<br>
だったら、俺があいつに直接会って目の前で言わなきゃいけないんだ。<br>
</div>
<br>
<div>
ひとしきり休んだおかげか俺のなけなしの頭が動いて来た。<br>
というか、一番最初に気づくべきだった。<br>
ここは、ハルヒが人と接するのが怖くなって逃げ込んだ世界なんだ。<br>
だったら、休み休み行こうなんて甘い考えのやつは追い出されてしかるべきなんだろう。<br>
それなら、やってやろうじゃないか、ハルヒ。<br>
足がつぶれたら、手で這ってでもお前の所に行ってやるよ。<br>
俺はもう、死んだって止まらねえから。<br>
だから少しだけ、そこで待っていてくれ。<br></div>
<br>
<div>決意も新たに俺は北高へと向かう。<br>
少しずつ、けれども確実に。ただハルヒに会うために。<br>
自分自身のことなんか二の次だ。<br>
そうやって、歩いて、歩いて、歩き続けて。<br>
最後は本当に這いつくばってでも進んだよ。<br>
そしてついた。<br>
俺は、一年五組に向かう。<br>
俺とハルヒが出会った場所。ある意味、全てが始まった場所へ。<br>
教室の前の廊下に立ち、扉に手をかける。<br>
他には人の気配がしないのに、ここだけは人の気配を感じる。<br>
まるで、入学したてのような初々しい雰囲気が扉越しに伝わってくる。<br>
きっと、この扉を開けると――<br></div>
<br>
<div>
「東中出身学出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。<br>
この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」<br>
いつかと全く同じセリフをハルヒが放った。<br>
教室はしーんとなり、『俺』が振り向いた。<br>
ぽかーんとハルヒを見ている。『えらい美人がそこにいた』なんて思ってたかな。<br>
これが、俺とハルヒのファーストコンタクトなわけだ。<br>
突然場面が変わる。<br>
それは俺が初めてハルヒに話しかけた場面だった。<br>
確かけんもほろろに追い返されたんだよな。<br>
うわー、情けない顔してるな『俺』。<br>
次はゴールデンウィーク明けの場面だ。<br>
初めてまともに会話が成立した日だな。<br>
SOS団のきっかけになっちまった俺の話や、<br>
英語の時間中に初めて見たハルヒの笑顔。<br>
おれが、朝倉に殺されかけた日の朝の不機嫌そうな様子。<br>
ツンツンとシャーペンで俺をつついたり……。<br>
延々と『思い出』が繰り返される。<br>
気づくと俺は文芸部室にいた。<br>
ここでも俺とハルヒの関わった『思い出』がリピートされている。<br>
そして気づくとまた教室で入学時の自己紹介を聞いて――<br>
</div>
<br>
<div>
繰り返される『思い出』に俺は胸が痛くなってくる。<br>
俺はここまでハルヒを追い込んでしまったのか。<br>
今までの人生にとらわれて生きるなんて、<br>
もっともハルヒらしからぬ状態にしてしまったのはこの俺か。<br>
去年の閉鎖空間の出来事の後とは別の意味で拳銃が欲しくなる。<br>
――なあ、ハルヒ。こんな所に引っ込んじまうなんてお前らしくないぞ。<br>
これからは絶対にお前を落ち込ませないからさ、外に出ようぜ。<br>
そんでまた、いろいろやろう。<br>
俺の奥から何かがあふれてくる。<br>
やるせなさに、後悔に、<br>
……愛おしさ。<br>
その感情に押されて一人の名前が俺の口から出ていた。<br>
『ハルヒ――』<br></div>
<br>
<br>
<ul>
<li><font color="#666666">八章</font></li>
</ul>
</div>
<div class="main">
<div>気がつくと俺は真っ白な世界の中心に立っていた。<br>
まるで無機質な砂漠のような世界。<br>
太陽はないが世界は明るく、風はふいていない。<br>
そして、遥か遠くにただ一つだけ建物の影が見える。<br>
もう、なんだかんだで一年以上通っていた俺たちの高校――北高がそこにあった。<br>
</div>
<br>
<div>俺のやるべきことは決まっている。<br>
あそこにいく。確信以上の物がある。必ずそこにハルヒはいる。<br>
行って伝えてやらなきゃいけない。俺の本音を。<br>
ずっと素直になれずにいた、ひねくれ者の俺の本音を。<br>
俺は最初の一歩を踏み出す。<br></div>
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<div>
歩きながら思う。ハルヒと過ごしたこの一年間のことを。<br>
また思う。<br>
俺はいつからハルヒが好きになったのか。<br>
ハルヒはいつから俺を好きになってくれていたのか。<br>
一歩一歩地面を踏むごとにハルヒに近づいているのが分かる。<br>
</div>
<br>
<div>なあ、俺たちは本当に似た者同士だな。<br>
お互い本音を隠して、ずっと過ごして来たんだな。<br>
それもここまでにしよう。<br>
いつもは振り回されてる俺だけど、今度限りは俺から言わせてくれよな、ハルヒ。<br>
</div>
<br>
<div>しばらく進んだ所で俺は休憩した。<br>
結構時間が経った気がするが、腹も減らないしのども乾かない。<br>
ただ、疲労だけは溜まっていく。<br></div>
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<div>
一息ついて立ち上がった俺が見た光景はあり得ない物だった。<br>
北高が遠く離れていた。<br></div>
<br>
<div>それから俺は、<br>
何時間も歩く、休憩、また北高が離れていることに気づく、それを繰り返している。<br>
</div>
<br>
<div>俺は呼んでいた。ただ、ハルヒの名前だけを。<br>
なあ、ハルヒ。聞こえるか?<br>
俺がここで――誰もいない、何もない世界の真ん中で――呼んでいるのが。<br>
いや、聞こえるわけはない。<br>
ここはあいつが嫌なことを全て忘れて、この一年間の、俺たちとの<br>
いい思い出だけを見る場所なんだ。<br>
だったら、俺があいつに直接会って目の前で言わなきゃいけないんだ。<br>
</div>
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<div>
ひとしきり休んだおかげか俺のなけなしの頭が動いて来た。<br>
というか、一番最初に気づくべきだった。<br>
ここは、ハルヒが人と接するのが怖くなって逃げ込んだ世界なんだ。<br>
だったら、休み休み行こうなんて甘い考えのやつは追い出されてしかるべきなんだろう。<br>
それなら、やってやろうじゃないか、ハルヒ。<br>
足がつぶれたら、手で這ってでもお前の所に行ってやるよ。<br>
俺はもう、死んだって止まらねえから。<br>
だから少しだけ、そこで待っていてくれ。<br></div>
<br>
<div>決意も新たに俺は北高へと向かう。<br>
少しずつ、けれども確実に。ただハルヒに会うために。<br>
自分自身のことなんか二の次だ。<br>
そうやって、歩いて、歩いて、歩き続けて。<br>
最後は本当に這いつくばってでも進んだよ。<br>
そしてついた。<br>
俺は、一年五組に向かう。<br>
俺とハルヒが出会った場所。ある意味、全てが始まった場所へ。<br>
教室の前の廊下に立ち、扉に手をかける。<br>
他には人の気配がしないのに、ここだけは人の気配を感じる。<br>
まるで、入学したてのような初々しい雰囲気が扉越しに伝わってくる。<br>
きっと、この扉を開けると――<br></div>
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「東中出身学出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。<br>
この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」<br>
いつかと全く同じセリフをハルヒが放った。<br>
教室はしーんとなり、『俺』が振り向いた。<br>
ぽかーんとハルヒを見ている。『えらい美人がそこにいた』なんて思ってたかな。<br>
これが、俺とハルヒのファーストコンタクトなわけだ。<br>
突然場面が変わる。<br>
それは俺が初めてハルヒに話しかけた場面だった。<br>
確かけんもほろろに追い返されたんだよな。<br>
うわー、情けない顔してるな『俺』。<br>
次はゴールデンウィーク明けの場面だ。<br>
初めてまともに会話が成立した日だな。<br>
SOS団のきっかけになっちまった俺の話や、<br>
英語の時間中に初めて見たハルヒの笑顔。<br>
おれが、朝倉に殺されかけた日の朝の不機嫌そうな様子。<br>
ツンツンとシャーペンで俺をつついたり……。<br>
延々と『思い出』が繰り返される。<br>
気づくと俺は文芸部室にいた。<br>
ここでも俺とハルヒの関わった『思い出』がリピートされている。<br>
そして気づくとまた教室で入学時の自己紹介を聞いて――<br>
</div>
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<div>
繰り返される『思い出』に俺は胸が痛くなってくる。<br>
俺はここまでハルヒを追い込んでしまったのか。<br>
今までの人生にとらわれて生きるなんて、<br>
もっともハルヒらしからぬ状態にしてしまったのはこの俺か。<br>
去年の閉鎖空間の出来事の後とは別の意味で拳銃が欲しくなる。<br>
――なあ、ハルヒ。こんな所に引っ込んじまうなんてお前らしくないぞ。<br>
これからは絶対にお前を落ち込ませないからさ、外に出ようぜ。<br>
そんでまた、いろいろやろう。<br>
俺の奥から何かがあふれてくる。<br>
やるせなさに、後悔に、<br>
……愛おしさ。<br>
その感情に押されて一人の名前が俺の口から出ていた。<br>
『ハルヒ――』<br></div>
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<li><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/955.html"><font color=
"#666666">八章</font></a></li>
</ul>
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