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a long wrong way 一章」(2020/03/13 (金) 01:07:17) の最新版変更点

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<div class="main"> <div> あの日俺とハルヒは喧嘩した。理由は本当に些細なことで、<br> 俺が折れちまえばこんなことにならなかっただろう。<br> だけどもう手遅れで、俺の側にはハルヒはいない。<br> ハルヒどころかSOS団のやつは誰一人北高にいない。<br> ……俺を除いて。<br></div> <br> <br> <br> <div>「お前の顔なんか見たくもねえよ!」<br> 気付けば俺は怒鳴っていた。もう、止まれそうにない。<br> いつぞやの文化祭のときよりも俺は怒っていたね。<br> 「あら、奇遇ね。あたしもよ!」<br> 「気があうな!」<br> 「残念ながらね!」<br> 睨み合う俺とハルヒ。<br> いつもよりオロオロしている朝比奈さん。<br> 本を読むのをやめてこっちを見ている長門。<br> それにこいつだ。<br> 「お二人とも、落ち着いて下さい」<br> 俺は落ち着いてる。<br> 「あたしは十分落ち着いてるわよ!」<br> 「……どこがですか?客観的に見てお二人とも、落ち着いていません」<br> 何だか、古泉の口調がかたい。まるで、そう、怒るのを無理やり抑えているような口調だ。<br> 「大体キョンがいけないのよ!」<br> 「俺のどこが悪いんだ?お前の方が悪いだろう!」<br> そんな俺たちに愛想を尽かしたか、<br> 溜め息をつくと部室を出て行く古泉。<br> 「あたしのどこが悪いってのよ?どこにもないわ!」<br> 「それだよ、悪いとこを認めないところだよ!」<br> 「だから、どこが悪いのか言いなさい!」<br> ……ああ、もう完全にきれた。もう、手加減しねえ。<br></div> <br> <div>俺の中で俺の知らない間にたまっていた<br> 不平不満が口を裂いて飛び出さんというとき<br> 「先に謝っておきますよ」<br> そんな前置きと同時にいつの間にか戻って来た古泉が、<br> その手に持ってきたバケツの中身を俺たちにぶちまけた。<br> 「いったん落ち着いてください」<br> そう言うと古泉は俺たちにタオルを差し出した。<br> 古泉はこれで俺たちが落ち着くなんて思っちゃいなかっただろう。<br> ただ、標的を自分に向けさせて事態の沈静化をはかりたかったのだろう。<br> でも、もう完全に手遅れだった。<br> 「何でこいつが悪いのにあたしまで水かけられるわけ?」<br> 「それこっちの台詞だ!もう、知らん。俺は帰る」<br> 「さっさと帰りなさいよ、バカ」<br> ああ、帰ってやるさ。「お前と同じ部屋なんかにいられるか」<br> そんな言葉を残して俺は部室を出た。<br> あの日が全員揃ったSOS団を見る最後の日だなんて<br> 想像もしなかった。<br></div> <br> <div> 家に帰って部屋に引っ込んだ俺は、ベットに体を預けた。<br> 「なんだってんだよ、ちくしょう……」<br> 気怠さをともなった虚無感が俺を襲う。<br> 結局その日は飯も食わずに寝てしまった。<br></div> <br> <div> 次の日の朝はまるで俺の心を写したようにどんよりと曇っていた。<br> いつも以上にこの坂が恨めしい。<br> そんな風になる理由は分かっている。<br> 昨日ハルヒと喧嘩したまま別れちまった。ただそれだけだ。<br> もし、いままでの関係を望むなら、謝ってしまえばいい。<br> 俺が意地を張ってたってことにして、謝って<br> ハルヒがバカね、とか何とか言いながら許してくれる……。<br> 少々癪だが、それが一番良い。<br> ところがそれは許されなかった。<br> 間違った選択をしてしまった俺に引き返すという選択肢を<br> 世界は用意してくれなかった。<br></div> <br> <div>教室に入ってもハルヒはいなかった。<br> 「今日に限って遅いのかよ」<br> そうぼやいてもしょうがない。じっくり待つさ。<br></div> <br> <div> 結局、ホームルームが始まってもハルヒは来なかった。<br> 正確に言えば、いつもの場所にはこなかった。<br> あいつは担任と一緒に教室に入って来た。<br> 「涼宮は、急なことだが、お父さんの仕事の都合で転校するそうだ。<br> たしか……」<br> 「明日、出発です」<br> そう言ったハルヒの声は入学当初の頃のような苛立った声だった。<br> やることは全て終わったといったような顔でハルヒは俺の方へ<br> ――正しくは俺の後ろの机へ――歩いて来た。<br> 「ハル……」<br> 「良かったわね、これでもう、あたしを見なくてすむわよ?」<br> ざわつく教室。<br> おい、なんだその態度は?せっかく謝ろうと決めてたのに、<br> やる気無くすだろう。<br></div> <br> <div> 「あー、そんなわけだから、あと一日楽しく、すごしてくれ」<br> 楽しく、ってところを強調しやがった。<br> ああ、俺だって楽しくすごしたいさ。<br> でもどうやら、涼宮さんが嫌みたいなんでな!<br> どうせこれもハルヒパワーの影響だろうよ。<br> 休み時間に二人ほど話しかけて来た。<br> 言わなくても良いよな?<br> 「ねえ、キョン。喧嘩でもしたの?涼宮さんと」<br> そんなところだ、国木田。<br> 「でも、今日で最後なんだよ?仲直りしなくて良いの?」<br> 朝のあいつの言葉聞いただろ?俺にはその気があるんだが<br> あっちにはないんだよ。<br> 「おい、キョン。涼宮とこんなに長くいたお前なら<br> あいつがどんなやつだか分かってるだろ?」<br> ああ、分かってるさ、谷口。わがままで、自己中心的で……。<br> 「違う!」<br> なんだよ、何そんなマジになってんだよ。<br></div> <br> <div>「あいつは負けず嫌いと言うか何と言うか……。<br> ともかく、お前が何か言ってくるのを待ってるんだよ。<br> でも、そんなところを見せたくないから、あんなこと言ったんだ。<br> 俺にだって分かるんだからお前に分からないはずがないだろ!」<br> それはどうかな?<br> お前はあいつのトンデモパワーを<br> 知らないからそんなことを言えるんだ。<br> 「ともかく、お前らはこのまま別れるべきじゃない。こんな状態で別れたって、御互い傷つく……」<br> 「ちょっと黙ってくれないか、谷口?」<br> いい加減うざい。無性に腹が立つ。<br> 「いいや、黙らないぞ。俺はお前らのためを思ってだな……」<br> 「あんた、何か勘違いしてない?」<br> 突然現れたハルヒ。<br> 「何だよ、涼宮かよ。いいか、キョンにも言ったんだが……」<br> 「あたしとこいつがどんな状態で別れようが勝手でしょう?<br> そもそもこいつなんかどうだっていいのよ」<br> 言い切るハルヒ。分かったろ、谷口?もう黙ってろ。<br> 「いいや、嘘だ。中学からずっと同じクラスだった俺が保証する。<br> お前はキョンとなんかやってるときは本当に楽しそうだ。<br> そんなキョンがどうでもいいやつなわけ無いだろう」<br> 「……うるさいわよ!」<br> そう言うとハルヒは谷口を叩いた。<br></div> <br> <div>「……そうかい、分かったよ。<br> お前らがそう思ってるならいいが、必ず後悔するぞ。<br> これは予想なんかじゃないからな」<br> そう言い捨てると谷口は国木田と共に席へ戻っていった。<br> 国木田は去り際に<br> 「まあ、落ち着いたら?」<br> なんて言いやがった。何度も言うが俺は落ち着いている。<br> </div> <br> <div>結局、放課後まで俺とハルヒがまき散らかす<br> 不機嫌オーラは消えることはなかった。<br> 「涼宮さん、送迎会やろうよ」<br> と阪中が話しかけている。<br> 「やらないわ。あたしはSOS団の『三人』とやるから」<br> そう言いながら阪中をスゴい目でにらむハルヒ。<br> 阪中は完全に腰が引けてる。<br> 「ご、ごめん。あの、元気でね」<br> ふんと鼻をならして返事代わりにするハルヒ。<br> 「精々、新しいところで浮かないようにしろよ」<br> とは俺。<br> 「あんたには関係ないでしょ」<br> おお、そうとも。<br> 全く、関係ないとも。ああ、もうお前に会えないなんて、<br> 何て素敵な人生か。<br> 「お陰様であたしも素敵な人生、送れそうだわ!」<br></div> <br> <div>最後の最後まで俺とハルヒは険悪なままだった。<br> あまりにひどいといえばひどい終わり方だ。<br> だけどもう戻れない。<br> 俺たちの道は別れちまったんだ。<br></div> <br> <br> <ul> <li><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/704.html"><font color= "#666666">二章</font></a></li> </ul> </div> <!-- ad -->
<div class="main"> <div>あの日俺とハルヒは喧嘩した。理由は本当に些細なことで、<br /> 俺が折れちまえばこんなことにならなかっただろう。<br /> だけどもう手遅れで、俺の側にはハルヒはいない。<br /> ハルヒどころかSOS団のやつは誰一人北高にいない。<br /> ……俺を除いて。</div> <br /> <br />   <div>「お前の顔なんか見たくもねえよ!」<br /> 気付けば俺は怒鳴っていた。もう、止まれそうにない。<br /> いつぞやの文化祭のときよりも俺は怒っていたね。<br /> 「あら、奇遇ね。あたしもよ!」<br /> 「気があうな!」<br /> 「残念ながらね!」<br /> 睨み合う俺とハルヒ。<br /> いつもよりオロオロしている朝比奈さん。<br /> 本を読むのをやめてこっちを見ている長門。<br /> それにこいつだ。<br /> 「お二人とも、落ち着いて下さい」<br /> 俺は落ち着いてる。<br /> 「あたしは十分落ち着いてるわよ!」<br /> 「……どこがですか?客観的に見てお二人とも、落ち着いていません」<br /> 何だか、古泉の口調がかたい。まるで、そう、怒るのを無理やり抑えているような口調だ。<br /> 「大体キョンがいけないのよ!」<br /> 「俺のどこが悪いんだ?お前の方が悪いだろう!」<br /> そんな俺たちに愛想を尽かしたか、<br /> 溜め息をつくと部室を出て行く古泉。<br /> 「あたしのどこが悪いってのよ?どこにもないわ!」<br /> 「それだよ、悪いとこを認めないところだよ!」<br /> 「だから、どこが悪いのか言いなさい!」<br /> ……ああ、もう完全にきれた。もう、手加減しねえ。</div>   <div>俺の中で俺の知らない間にたまっていた<br /> 不平不満が口を裂いて飛び出さんというとき<br /> 「先に謝っておきますよ」<br /> そんな前置きと同時にいつの間にか戻って来た古泉が、<br /> その手に持ってきたバケツの中身を俺たちにぶちまけた。<br /> 「いったん落ち着いてください」<br /> そう言うと古泉は俺たちにタオルを差し出した。<br /> 古泉はこれで俺たちが落ち着くなんて思っちゃいなかっただろう。<br /> ただ、標的を自分に向けさせて事態の沈静化をはかりたかったのだろう。<br /> でも、もう完全に手遅れだった。<br /> 「何でこいつが悪いのにあたしまで水かけられるわけ?」<br /> 「それこっちの台詞だ!もう、知らん。俺は帰る」<br /> 「さっさと帰りなさいよ、バカ」<br /> ああ、帰ってやるさ。「お前と同じ部屋なんかにいられるか」<br /> そんな言葉を残して俺は部室を出た。<br /> あの日が全員揃ったSOS団を見る最後の日だなんて<br /> 想像もしなかった。</div>   <div>家に帰って部屋に引っ込んだ俺は、ベットに体を預けた。<br /> 「なんだってんだよ、ちくしょう……」<br /> 気怠さをともなった虚無感が俺を襲う。<br /> 結局その日は飯も食わずに寝てしまった。</div>   <div>次の日の朝はまるで俺の心を写したようにどんよりと曇っていた。<br /> いつも以上にこの坂が恨めしい。<br /> そんな風になる理由は分かっている。<br /> 昨日ハルヒと喧嘩したまま別れちまった。ただそれだけだ。<br /> もし、いままでの関係を望むなら、謝ってしまえばいい。<br /> 俺が意地を張ってたってことにして、謝って<br /> ハルヒがバカね、とか何とか言いながら許してくれる……。<br /> 少々癪だが、それが一番良い。<br /> ところがそれは許されなかった。<br /> 間違った選択をしてしまった俺に引き返すという選択肢を<br /> 世界は用意してくれなかった。</div>   <div>教室に入ってもハルヒはいなかった。<br /> 「今日に限って遅いのかよ」<br /> そうぼやいてもしょうがない。じっくり待つさ。</div>   <div>結局、ホームルームが始まってもハルヒは来なかった。<br /> 正確に言えば、いつもの場所にはこなかった。<br /> あいつは担任と一緒に教室に入って来た。<br /> 「涼宮は、急なことだが、お父さんの仕事の都合で転校するそうだ。<br /> たしか……」<br /> 「明日、出発です」<br /> そう言ったハルヒの声は入学当初の頃のような苛立った声だった。<br /> やることは全て終わったといったような顔でハルヒは俺の方へ<br /> ――正しくは俺の後ろの机へ――歩いて来た。<br /> 「ハル……」<br /> 「良かったわね、これでもう、あたしを見なくてすむわよ?」<br /> ざわつく教室。<br /> おい、なんだその態度は?せっかく謝ろうと決めてたのに、<br /> やる気無くすだろう。</div>   <div>「あー、そんなわけだから、あと一日楽しく、すごしてくれ」<br /> 楽しく、ってところを強調しやがった。<br /> ああ、俺だって楽しくすごしたいさ。<br /> でもどうやら、涼宮さんが嫌みたいなんでな!<br /> どうせこれもハルヒパワーの影響だろうよ。<br /> 休み時間に二人ほど話しかけて来た。<br /> 言わなくても良いよな?<br /> 「ねえ、キョン。喧嘩でもしたの?涼宮さんと」<br /> そんなところだ、国木田。<br /> 「でも、今日で最後なんだよ?仲直りしなくて良いの?」<br /> 朝のあいつの言葉聞いただろ?俺にはその気があるんだが<br /> あっちにはないんだよ。<br /> 「おい、キョン。涼宮とこんなに長くいたお前なら<br /> あいつがどんなやつだか分かってるだろ?」<br /> ああ、分かってるさ、谷口。わがままで、自己中心的で……。<br /> 「違う!」<br /> なんだよ、何そんなマジになってんだよ。</div>   <div>「あいつは負けず嫌いと言うか何と言うか……。<br /> ともかく、お前が何か言ってくるのを待ってるんだよ。<br /> でも、そんなところを見せたくないから、あんなこと言ったんだ。<br /> 俺にだって分かるんだからお前に分からないはずがないだろ!」<br /> それはどうかな?<br /> お前はあいつのトンデモパワーを<br /> 知らないからそんなことを言えるんだ。<br /> 「ともかく、お前らはこのまま別れるべきじゃない。こんな状態で別れたって、御互い傷つく……」<br /> 「ちょっと黙ってくれないか、谷口?」<br /> いい加減うざい。無性に腹が立つ。<br /> 「いいや、黙らないぞ。俺はお前らのためを思ってだな……」<br /> 「あんた、何か勘違いしてない?」<br /> 突然現れたハルヒ。<br /> 「何だよ、涼宮かよ。いいか、キョンにも言ったんだが……」<br /> 「あたしとこいつがどんな状態で別れようが勝手でしょう?<br /> そもそもこいつなんかどうだっていいのよ」<br /> 言い切るハルヒ。分かったろ、谷口?もう黙ってろ。<br /> 「いいや、嘘だ。中学からずっと同じクラスだった俺が保証する。<br /> お前はキョンとなんかやってるときは本当に楽しそうだ。<br /> そんなキョンがどうでもいいやつなわけ無いだろう」<br /> 「……うるさいわよ!」<br /> そう言うとハルヒは谷口を叩いた。</div>   <div>「……そうかい、分かったよ。<br /> お前らがそう思ってるならいいが、必ず後悔するぞ。<br /> これは予想なんかじゃないからな」<br /> そう言い捨てると谷口は国木田と共に席へ戻っていった。<br /> 国木田は去り際に<br /> 「まあ、落ち着いたら?」<br /> なんて言いやがった。何度も言うが俺は落ち着いている。</div>   <div>結局、放課後まで俺とハルヒがまき散らかす<br /> 不機嫌オーラは消えることはなかった。<br /> 「涼宮さん、送迎会やろうよ」<br /> と阪中が話しかけている。<br /> 「やらないわ。あたしはSOS団の『三人』とやるから」<br /> そう言いながら阪中をスゴい目でにらむハルヒ。<br /> 阪中は完全に腰が引けてる。<br /> 「ご、ごめん。あの、元気でね」<br /> ふんと鼻をならして返事代わりにするハルヒ。<br /> 「精々、新しいところで浮かないようにしろよ」<br /> とは俺。<br /> 「あんたには関係ないでしょ」<br /> おお、そうとも。<br /> 全く、関係ないとも。ああ、もうお前に会えないなんて、<br /> 何て素敵な人生か。<br /> 「お陰様であたしも素敵な人生、送れそうだわ!」</div>   <div>最後の最後まで俺とハルヒは険悪なままだった。<br /> あまりにひどいといえばひどい終わり方だ。<br /> だけどもう戻れない。<br /> 俺たちの道は別れちまったんだ。</div>   <ul> <li><a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/704.html"><font color="#666666">二章</font></a></li> </ul> </div>

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