「a long wrong way 一章」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<div class="main">
<div>
あの日俺とハルヒは喧嘩した。理由は本当に些細なことで、<br>
俺が折れちまえばこんなことにならなかっただろう。<br>
だけどもう手遅れで、俺の側にはハルヒはいない。<br>
ハルヒどころかSOS団のやつは誰一人北高にいない。<br>
……俺を除いて。<br></div>
<br>
<br>
<br>
<div>「お前の顔なんか見たくもねえよ!」<br>
気付けば俺は怒鳴っていた。もう、止まれそうにない。<br>
いつぞやの文化祭のときよりも俺は怒っていたね。<br>
「あら、奇遇ね。あたしもよ!」<br>
「気があうな!」<br>
「残念ながらね!」<br>
睨み合う俺とハルヒ。<br>
いつもよりオロオロしている朝比奈さん。<br>
本を読むのをやめてこっちを見ている長門。<br>
それにこいつだ。<br>
「お二人とも、落ち着いて下さい」<br>
俺は落ち着いてる。<br>
「あたしは十分落ち着いてるわよ!」<br>
「……どこがですか?客観的に見てお二人とも、落ち着いていません」<br>
何だか、古泉の口調がかたい。まるで、そう、怒るのを無理やり抑えているような口調だ。<br>
「大体キョンがいけないのよ!」<br>
「俺のどこが悪いんだ?お前の方が悪いだろう!」<br>
そんな俺たちに愛想を尽かしたか、<br>
溜め息をつくと部室を出て行く古泉。<br>
「あたしのどこが悪いってのよ?どこにもないわ!」<br>
「それだよ、悪いとこを認めないところだよ!」<br>
「だから、どこが悪いのか言いなさい!」<br>
……ああ、もう完全にきれた。もう、手加減しねえ。<br></div>
<br>
<div>俺の中で俺の知らない間にたまっていた<br>
不平不満が口を裂いて飛び出さんというとき<br>
「先に謝っておきますよ」<br>
そんな前置きと同時にいつの間にか戻って来た古泉が、<br>
その手に持ってきたバケツの中身を俺たちにぶちまけた。<br>
「いったん落ち着いてください」<br>
そう言うと古泉は俺たちにタオルを差し出した。<br>
古泉はこれで俺たちが落ち着くなんて思っちゃいなかっただろう。<br>
ただ、標的を自分に向けさせて事態の沈静化をはかりたかったのだろう。<br>
でも、もう完全に手遅れだった。<br>
「何でこいつが悪いのにあたしまで水かけられるわけ?」<br>
「それこっちの台詞だ!もう、知らん。俺は帰る」<br>
「さっさと帰りなさいよ、バカ」<br>
ああ、帰ってやるさ。「お前と同じ部屋なんかにいられるか」<br>
そんな言葉を残して俺は部室を出た。<br>
あの日が全員揃ったSOS団を見る最後の日だなんて<br>
想像もしなかった。<br></div>
<br>
<div>
家に帰って部屋に引っ込んだ俺は、ベットに体を預けた。<br>
「なんだってんだよ、ちくしょう……」<br>
気怠さをともなった虚無感が俺を襲う。<br>
結局その日は飯も食わずに寝てしまった。<br></div>
<br>
<div>
次の日の朝はまるで俺の心を写したようにどんよりと曇っていた。<br>
いつも以上にこの坂が恨めしい。<br>
そんな風になる理由は分かっている。<br>
昨日ハルヒと喧嘩したまま別れちまった。ただそれだけだ。<br>
もし、いままでの関係を望むなら、謝ってしまえばいい。<br>
俺が意地を張ってたってことにして、謝って<br>
ハルヒがバカね、とか何とか言いながら許してくれる……。<br>
少々癪だが、それが一番良い。<br>
ところがそれは許されなかった。<br>
間違った選択をしてしまった俺に引き返すという選択肢を<br>
世界は用意してくれなかった。<br></div>
<br>
<div>教室に入ってもハルヒはいなかった。<br>
「今日に限って遅いのかよ」<br>
そうぼやいてもしょうがない。じっくり待つさ。<br></div>
<br>
<div>
結局、ホームルームが始まってもハルヒは来なかった。<br>
正確に言えば、いつもの場所にはこなかった。<br>
あいつは担任と一緒に教室に入って来た。<br>
「涼宮は、急なことだが、お父さんの仕事の都合で転校するそうだ。<br>
たしか……」<br>
「明日、出発です」<br>
そう言ったハルヒの声は入学当初の頃のような苛立った声だった。<br>
やることは全て終わったといったような顔でハルヒは俺の方へ<br>
――正しくは俺の後ろの机へ――歩いて来た。<br>
「ハル……」<br>
「良かったわね、これでもう、あたしを見なくてすむわよ?」<br>
ざわつく教室。<br>
おい、なんだその態度は?せっかく謝ろうと決めてたのに、<br>
やる気無くすだろう。<br></div>
<br>
<div>
「あー、そんなわけだから、あと一日楽しく、すごしてくれ」<br>
楽しく、ってところを強調しやがった。<br>
ああ、俺だって楽しくすごしたいさ。<br>
でもどうやら、涼宮さんが嫌みたいなんでな!<br>
どうせこれもハルヒパワーの影響だろうよ。<br>
休み時間に二人ほど話しかけて来た。<br>
言わなくても良いよな?<br>
「ねえ、キョン。喧嘩でもしたの?涼宮さんと」<br>
そんなところだ、国木田。<br>
「でも、今日で最後なんだよ?仲直りしなくて良いの?」<br>
朝のあいつの言葉聞いただろ?俺にはその気があるんだが<br>
あっちにはないんだよ。<br>
「おい、キョン。涼宮とこんなに長くいたお前なら<br>
あいつがどんなやつだか分かってるだろ?」<br>
ああ、分かってるさ、谷口。わがままで、自己中心的で……。<br>
「違う!」<br>
なんだよ、何そんなマジになってんだよ。<br></div>
<br>
<div>「あいつは負けず嫌いと言うか何と言うか……。<br>
ともかく、お前が何か言ってくるのを待ってるんだよ。<br>
でも、そんなところを見せたくないから、あんなこと言ったんだ。<br>
俺にだって分かるんだからお前に分からないはずがないだろ!」<br>
それはどうかな?<br>
お前はあいつのトンデモパワーを<br>
知らないからそんなことを言えるんだ。<br>
「ともかく、お前らはこのまま別れるべきじゃない。こんな状態で別れたって、御互い傷つく……」<br>
「ちょっと黙ってくれないか、谷口?」<br>
いい加減うざい。無性に腹が立つ。<br>
「いいや、黙らないぞ。俺はお前らのためを思ってだな……」<br>
「あんた、何か勘違いしてない?」<br>
突然現れたハルヒ。<br>
「何だよ、涼宮かよ。いいか、キョンにも言ったんだが……」<br>
「あたしとこいつがどんな状態で別れようが勝手でしょう?<br>
そもそもこいつなんかどうだっていいのよ」<br>
言い切るハルヒ。分かったろ、谷口?もう黙ってろ。<br>
「いいや、嘘だ。中学からずっと同じクラスだった俺が保証する。<br>
お前はキョンとなんかやってるときは本当に楽しそうだ。<br>
そんなキョンがどうでもいいやつなわけ無いだろう」<br>
「……うるさいわよ!」<br>
そう言うとハルヒは谷口を叩いた。<br></div>
<br>
<div>「……そうかい、分かったよ。<br>
お前らがそう思ってるならいいが、必ず後悔するぞ。<br>
これは予想なんかじゃないからな」<br>
そう言い捨てると谷口は国木田と共に席へ戻っていった。<br>
国木田は去り際に<br>
「まあ、落ち着いたら?」<br>
なんて言いやがった。何度も言うが俺は落ち着いている。<br>
</div>
<br>
<div>結局、放課後まで俺とハルヒがまき散らかす<br>
不機嫌オーラは消えることはなかった。<br>
「涼宮さん、送迎会やろうよ」<br>
と阪中が話しかけている。<br>
「やらないわ。あたしはSOS団の『三人』とやるから」<br>
そう言いながら阪中をスゴい目でにらむハルヒ。<br>
阪中は完全に腰が引けてる。<br>
「ご、ごめん。あの、元気でね」<br>
ふんと鼻をならして返事代わりにするハルヒ。<br>
「精々、新しいところで浮かないようにしろよ」<br>
とは俺。<br>
「あんたには関係ないでしょ」<br>
おお、そうとも。<br>
全く、関係ないとも。ああ、もうお前に会えないなんて、<br>
何て素敵な人生か。<br>
「お陰様であたしも素敵な人生、送れそうだわ!」<br></div>
<br>
<div>最後の最後まで俺とハルヒは険悪なままだった。<br>
あまりにひどいといえばひどい終わり方だ。<br>
だけどもう戻れない。<br>
俺たちの道は別れちまったんだ。<br></div>
<br>
<br>
<ul>
<li><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/704.html"><font color=
"#666666">二章</font></a></li>
</ul>
</div>
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<div class="main">
<div>あの日俺とハルヒは喧嘩した。理由は本当に些細なことで、<br />
俺が折れちまえばこんなことにならなかっただろう。<br />
だけどもう手遅れで、俺の側にはハルヒはいない。<br />
ハルヒどころかSOS団のやつは誰一人北高にいない。<br />
……俺を除いて。</div>
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<br />
<div>「お前の顔なんか見たくもねえよ!」<br />
気付けば俺は怒鳴っていた。もう、止まれそうにない。<br />
いつぞやの文化祭のときよりも俺は怒っていたね。<br />
「あら、奇遇ね。あたしもよ!」<br />
「気があうな!」<br />
「残念ながらね!」<br />
睨み合う俺とハルヒ。<br />
いつもよりオロオロしている朝比奈さん。<br />
本を読むのをやめてこっちを見ている長門。<br />
それにこいつだ。<br />
「お二人とも、落ち着いて下さい」<br />
俺は落ち着いてる。<br />
「あたしは十分落ち着いてるわよ!」<br />
「……どこがですか?客観的に見てお二人とも、落ち着いていません」<br />
何だか、古泉の口調がかたい。まるで、そう、怒るのを無理やり抑えているような口調だ。<br />
「大体キョンがいけないのよ!」<br />
「俺のどこが悪いんだ?お前の方が悪いだろう!」<br />
そんな俺たちに愛想を尽かしたか、<br />
溜め息をつくと部室を出て行く古泉。<br />
「あたしのどこが悪いってのよ?どこにもないわ!」<br />
「それだよ、悪いとこを認めないところだよ!」<br />
「だから、どこが悪いのか言いなさい!」<br />
……ああ、もう完全にきれた。もう、手加減しねえ。</div>
<div>俺の中で俺の知らない間にたまっていた<br />
不平不満が口を裂いて飛び出さんというとき<br />
「先に謝っておきますよ」<br />
そんな前置きと同時にいつの間にか戻って来た古泉が、<br />
その手に持ってきたバケツの中身を俺たちにぶちまけた。<br />
「いったん落ち着いてください」<br />
そう言うと古泉は俺たちにタオルを差し出した。<br />
古泉はこれで俺たちが落ち着くなんて思っちゃいなかっただろう。<br />
ただ、標的を自分に向けさせて事態の沈静化をはかりたかったのだろう。<br />
でも、もう完全に手遅れだった。<br />
「何でこいつが悪いのにあたしまで水かけられるわけ?」<br />
「それこっちの台詞だ!もう、知らん。俺は帰る」<br />
「さっさと帰りなさいよ、バカ」<br />
ああ、帰ってやるさ。「お前と同じ部屋なんかにいられるか」<br />
そんな言葉を残して俺は部室を出た。<br />
あの日が全員揃ったSOS団を見る最後の日だなんて<br />
想像もしなかった。</div>
<div>家に帰って部屋に引っ込んだ俺は、ベットに体を預けた。<br />
「なんだってんだよ、ちくしょう……」<br />
気怠さをともなった虚無感が俺を襲う。<br />
結局その日は飯も食わずに寝てしまった。</div>
<div>次の日の朝はまるで俺の心を写したようにどんよりと曇っていた。<br />
いつも以上にこの坂が恨めしい。<br />
そんな風になる理由は分かっている。<br />
昨日ハルヒと喧嘩したまま別れちまった。ただそれだけだ。<br />
もし、いままでの関係を望むなら、謝ってしまえばいい。<br />
俺が意地を張ってたってことにして、謝って<br />
ハルヒがバカね、とか何とか言いながら許してくれる……。<br />
少々癪だが、それが一番良い。<br />
ところがそれは許されなかった。<br />
間違った選択をしてしまった俺に引き返すという選択肢を<br />
世界は用意してくれなかった。</div>
<div>教室に入ってもハルヒはいなかった。<br />
「今日に限って遅いのかよ」<br />
そうぼやいてもしょうがない。じっくり待つさ。</div>
<div>結局、ホームルームが始まってもハルヒは来なかった。<br />
正確に言えば、いつもの場所にはこなかった。<br />
あいつは担任と一緒に教室に入って来た。<br />
「涼宮は、急なことだが、お父さんの仕事の都合で転校するそうだ。<br />
たしか……」<br />
「明日、出発です」<br />
そう言ったハルヒの声は入学当初の頃のような苛立った声だった。<br />
やることは全て終わったといったような顔でハルヒは俺の方へ<br />
――正しくは俺の後ろの机へ――歩いて来た。<br />
「ハル……」<br />
「良かったわね、これでもう、あたしを見なくてすむわよ?」<br />
ざわつく教室。<br />
おい、なんだその態度は?せっかく謝ろうと決めてたのに、<br />
やる気無くすだろう。</div>
<div>「あー、そんなわけだから、あと一日楽しく、すごしてくれ」<br />
楽しく、ってところを強調しやがった。<br />
ああ、俺だって楽しくすごしたいさ。<br />
でもどうやら、涼宮さんが嫌みたいなんでな!<br />
どうせこれもハルヒパワーの影響だろうよ。<br />
休み時間に二人ほど話しかけて来た。<br />
言わなくても良いよな?<br />
「ねえ、キョン。喧嘩でもしたの?涼宮さんと」<br />
そんなところだ、国木田。<br />
「でも、今日で最後なんだよ?仲直りしなくて良いの?」<br />
朝のあいつの言葉聞いただろ?俺にはその気があるんだが<br />
あっちにはないんだよ。<br />
「おい、キョン。涼宮とこんなに長くいたお前なら<br />
あいつがどんなやつだか分かってるだろ?」<br />
ああ、分かってるさ、谷口。わがままで、自己中心的で……。<br />
「違う!」<br />
なんだよ、何そんなマジになってんだよ。</div>
<div>「あいつは負けず嫌いと言うか何と言うか……。<br />
ともかく、お前が何か言ってくるのを待ってるんだよ。<br />
でも、そんなところを見せたくないから、あんなこと言ったんだ。<br />
俺にだって分かるんだからお前に分からないはずがないだろ!」<br />
それはどうかな?<br />
お前はあいつのトンデモパワーを<br />
知らないからそんなことを言えるんだ。<br />
「ともかく、お前らはこのまま別れるべきじゃない。こんな状態で別れたって、御互い傷つく……」<br />
「ちょっと黙ってくれないか、谷口?」<br />
いい加減うざい。無性に腹が立つ。<br />
「いいや、黙らないぞ。俺はお前らのためを思ってだな……」<br />
「あんた、何か勘違いしてない?」<br />
突然現れたハルヒ。<br />
「何だよ、涼宮かよ。いいか、キョンにも言ったんだが……」<br />
「あたしとこいつがどんな状態で別れようが勝手でしょう?<br />
そもそもこいつなんかどうだっていいのよ」<br />
言い切るハルヒ。分かったろ、谷口?もう黙ってろ。<br />
「いいや、嘘だ。中学からずっと同じクラスだった俺が保証する。<br />
お前はキョンとなんかやってるときは本当に楽しそうだ。<br />
そんなキョンがどうでもいいやつなわけ無いだろう」<br />
「……うるさいわよ!」<br />
そう言うとハルヒは谷口を叩いた。</div>
<div>「……そうかい、分かったよ。<br />
お前らがそう思ってるならいいが、必ず後悔するぞ。<br />
これは予想なんかじゃないからな」<br />
そう言い捨てると谷口は国木田と共に席へ戻っていった。<br />
国木田は去り際に<br />
「まあ、落ち着いたら?」<br />
なんて言いやがった。何度も言うが俺は落ち着いている。</div>
<div>結局、放課後まで俺とハルヒがまき散らかす<br />
不機嫌オーラは消えることはなかった。<br />
「涼宮さん、送迎会やろうよ」<br />
と阪中が話しかけている。<br />
「やらないわ。あたしはSOS団の『三人』とやるから」<br />
そう言いながら阪中をスゴい目でにらむハルヒ。<br />
阪中は完全に腰が引けてる。<br />
「ご、ごめん。あの、元気でね」<br />
ふんと鼻をならして返事代わりにするハルヒ。<br />
「精々、新しいところで浮かないようにしろよ」<br />
とは俺。<br />
「あんたには関係ないでしょ」<br />
おお、そうとも。<br />
全く、関係ないとも。ああ、もうお前に会えないなんて、<br />
何て素敵な人生か。<br />
「お陰様であたしも素敵な人生、送れそうだわ!」</div>
<div>最後の最後まで俺とハルヒは険悪なままだった。<br />
あまりにひどいといえばひどい終わり方だ。<br />
だけどもう戻れない。<br />
俺たちの道は別れちまったんだ。</div>
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<li><a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/704.html"><font color="#666666">二章</font></a></li>
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