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「恋の病・恋の熱」(2020/03/12 (木) 16:05:09) の最新版変更点
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<div class="main">
<div>恋の病・恋の熱</div>
<br />
<div>また、あいつと違うグループかぁ……。<br />
今日は土曜日。<br />
毎週お馴染みの探索の日。<br />
あたしは午前はみくるちゃんと二人で、そして今引いた午後の探索は、古泉くんと二人になった。<br />
なんで、こんなに離れちゃうんだろ……。<br />
「…ず……さん?…涼宮さん?」<br />
「あ、え?ど、どしたの?古泉くん。」<br />
「どうしたも何も……涼宮さんがいきなり立ち止まったのでしょう?」<br />
あれ?あたし…いつの間に?<br />
「あ、あはは。ごめんね、ちょっと考えごとしちゃった!さ、行きましょう!!」</div>
<br />
<div>あたしは古泉くんと一緒に北側の探索を始めた。</div>
<br />
<br />
<div>時間は流れて、集合時間まではあと1時間。<br />
あたしは古泉くんが話があると言うから、今、公園のベンチに座っている。<br />
「ウーロン茶でよろしかったでしょうか?」<br />
「あ……ありがと。お金…」<br />
「僕からの話ですからお金は結構ですよ。」<br />
古泉くんが優しい笑顔を見せながら気遣う言葉、あいつもこれくらいの優しさを見せないかしら。<br />
「ふふふ、涼宮さん。よろしかったら先程の《考えごと》とやらの相談に乗りますよ?」<br />
「へっ?い、いや!い~のよ!なんでもない事だから!」<br />
「大丈夫ですよ、僕は涼宮さんの味方ですから。……彼のことでしょう?」<br />
古泉くんは、なんでもわかってるみたい。<br />
……たまには頼っても…いいよね…。<br />
「うん……。最近、キョンと一緒にいない時、なんかこう……胸が締め付けられるの。それで、あいつのこと考えると…胸がドキドキして……切なくなるのよ。」<br />
古泉くんは、少し苦笑して答える。<br />
「なるほど。それで今日も浮かない顔だったんですね。それにしても、こんなに正直に答えてくれるなんて…。」<br />
あんたが言わせたんでしょっ!!……とは言えないわね、相談してる身だし。</div>
<br />
<div>「ほんと、困ってるのよ。なんか……考え出すと止まらないの。」<br />
「……僕が思うに、《恋の病》と言うものでしょう。彼の事を思うと、何にも手につかなくなるという症状ですね。」<br />
え?恋愛って精神病よね?<br />
あたし、キョンのことを……?<br />
ただ、キョンといた方が楽しいだけ、じゃないの?<br />
あたしが考えていると、古泉くんが声をかけて来た。<br />
「あなたも、彼に負けず劣らず鈍いですね。僕はここで待っていますから、《涼宮さんにとっての彼》がどの様な存在か、しっかり考えて下さい。」</div>
<br />
<div>あたしにとってのキョン?<br />
SOS団の団員その1で……一緒に居て楽しい奴。<br />
それだけ?…ほんとに?<br />
わからない。頭が痛い。<br />
あ、ダメだ。クラクラする……。</div>
<br />
<br />
<div>気がつくと、あたしはそのベンチに横たわっていた。<br />
みんなの姿が見える、……キョンもいる。<br />
「ハルヒっ!大丈夫か!?」<br />
キョンが心配してくれる、嬉しい……のかな?<br />
それより、あたしはどうしたんだろう。頭が痛い。<br />
「いきなりぶっ倒れたって聞いて、こっちに来たら…凄い熱だぞ、お前。」<br />
さっきまで、なんともなかったのに…。<br />
今は喋るのも辛い。</div>
<br />
<div>「みんな、ハルヒは俺がチャリで家まで送るから、今日は解散してくれ。それでいいな?ハルヒ。」<br />
あ、今日のキョンはなんかかっこいい。<br />
男っぽくて、頼りになる。<br />
あたしは、キョンに向かって小さく頷き、そのままキョンに体を預けた。</div>
<br />
<br />
<div>あたしは、キョンに連れられて、家の前に来た。<br />
自転車の上では、何もわからずに気がつくと家の前にいた。<br />
キョンがインターホンを鳴らす。<br />
あ、ダメよ。今日は親がいないの。<br />
まだ鳴らし続けるキョンに、あたしは声をかけた。<br />
「きょ………親、いない…の。鍵……カバンにある、から…。」<br />
喉が渇いてるのか、声が上手く出せない。<br />
キョンの前で……恥ずかしい、格好悪い。<br />
「わかった。無理に喋るなよ、部屋まで連れてくから。」<br />
やっぱり、今日のキョンは優しい。<br />
……今日くらい、甘えてもいいよね?<br />
あたしは、キョンに抱かれて家の中、あたしの部屋まで連れて行かれた。<br />
「キョ…ン……水…ちょう、だい。」<br />
たぶん、水さえ飲めば話が出来る。<br />
キョンと話がしたい。<br />
「水だな?わかった、コップは勝手に使うぞ?」<br />
と言うと、キョンはすぐに台所に向かった。<br />
あたしは、キョンが持ってきた水をすぐに飲み干した。</div>
<br />
<div>うん、喋れそう。<br />
「キョン……ありがと。」<br />
ダメ、お礼だけでもドキドキしちゃう。<br />
……あたし、ほんとに惚れたみたい。<br />
「よかった…、声は出せるようになったか。少しは楽になったか?」<br />
「うん、だいぶ楽になったわ。」<br />
「そうか、熱は……っと。」<br />
キョンがあたしの額に手を当ててきた。<br />
そんなに近付いたら、あたしの胸の音、聞こえちゃうかも…。<br />
「うん、熱も少しは引いたみたいだな。」<br />
もう…ダメかも。<br />
二人になるチャンスなんて無いかもしれない。<br />
自分の気持ち、今伝えないと後悔する。<br />
「ねぇ、キョン……。」<br />
ドキドキする。鼓動が早くなるのがわかる。<br />
「どうした?また、水か?」<br />
ふふふ、キョンらしい返事だわ。<br />
「違うの。……今日、熱出した理由、あたしわかっちゃった。」<br />
「は?……大丈夫か?薄着したとかか?」<br />
やっぱり、優しい。あたしが弱ってるとキョンは心配してくれるんだ。<br />
「…あんたのせいよ。あんたが、あたしの頭の中、独占しちゃったせいで考え過ぎて熱が出ちゃったの。」<br />
「……ハルヒ、そんな考えはお前らしくないんじゃないか?そもそも、恋愛は精神病の一種じゃなかったのか?気の迷いだったか?」</div>
<br />
<div>やっぱり、言われると思った。……でも、退けない。<br />
「……しょうがないじゃない、気付いたんだもん。あたしは、あんたが好き。気の迷いでも、なんでもない。……ほんとに好きなの。」<br />
「……………………。」<br />
キョンが、黙る。<br />
怖い、返事を聞くのが怖い。<br />
やっぱり、言わなきゃよかった。今までの日常を無くすのが、怖いよ……。<br />
「あっ……痛い。頭が…。」<br />
「ハルヒ!?大丈夫か?」<br />
ごめん、嘘。<br />
こう言えば、キョンなら近くに来てくれるから。</div>
<br />
<div>チュッ。</div>
<br />
<div>あたしは、キョンにキスをした。もう、心臓が破裂しそう。<br />
「ハ、ハルヒ……?」<br />
ごめん、キョン。ごめん…<br />
「帰って?ごめん、ありがと。だけど……帰って。」<br />
ほんと、あたしはダメな女だ。<br />
「お願い…ごめん……。」<br />
あたしは、気がつくと涙を流していた。<br />
キョンは、何も言わずに部屋を後にしてくれた。…ありがとう。</div>
<br />
<br />
<div>今日で三日も、学校を休んでる。<br />
熱は、とっくに引いてるけど足や、心が学校に行こうとしてくれない。<br />
たぶん、あたしはキョンに会うのが怖いんだ。<br />
キョンに『ごめん』って言われるのが、怖いんだ。</div>
<br />
<div>お母さんは、何も言わずに接してくれてる。迷惑かけてるのに、ありがとう。<br />
今日も何をするでもなく、ベッドに寝たままテレビを見ていると、メールの着信音。<br />
キョンからだ。<br />
『今日、お前ん家に行くからな。』<br />
キョンらしく、余計な物のない文。少し、笑っちゃう。<br />
そういえば、今は昼休みの時間だっけ?<br />
まぁいいわ、どうせ放課後まで時間はあるんだし……少し、眠ろう……。</div>
<br />
<br />
<div>ん……頭、撫でられてる?<br />
誰かな…お母さん?<br />
「いつから俺はお前の母さんになったんだよ。」<br />
「……っ!?キョンっ!?」<br />
びっくりした。なんで、キョンが…?<br />
あ、もう5時半か……。<br />
「ったく、大声出すなよ。体調は…どうだ?」<br />
こんな無防備な姿、見られちゃった。…恥ずかしいよ。<br />
「まあまあ……よ。」<br />
なんとも無いの、わかってるのかな。<br />
「そうか、なんとも無いのか。そりゃよかった。」<br />
……やっぱりわかってた。少し、嬉しいかも。<br />
「……それで、何しに来たのよ。」<br />
返事なら……いらない。キョンが来てくれただけで嬉しいから。<br />
「ハルヒ………ごめん。」<br />
今……『ごめん』って?<br />
やだ、やだ、やだ。その言葉だけは聞きたくなかった。</div>
<br />
<div>キョンに嫌われるくらいなら、いっその事、あんなこと言わなきゃよかった…。<br />
あたしは、気がつくと泣いていた。<br />
涙が止まらない。<br />
「最後まで聞け!!」<br />
キョンが怒鳴る。怖いよ……聞きたくない。<br />
でも、声は聞こえてくる。<br />
「ハルヒ…ごめんな。俺、お前が好きだった。ずっと好きだったけど、誤魔化して、逃げてた。」<br />
……え?今、好きって言ったのかな…耳ふさいでて、聞こえなかった。<br />
「今……ひくっ、今、なんて言ったの?」<br />
「耳塞いでるからだ。…もう一度だけ言うぞ。大好きだ、ハルヒ。」<br />
嬉しい。さっきまでの不安が、どっか行ったみたい。<br />
「ありがと……ありがと、キョン。」<br />
あたしはキョンに抱き付いた。キョンも、あたしを受け止めてくれた。<br />
キョンが優しい間に、あたしが元気を出す前に、最後に甘えよう。<br />
「ね、キョン。……キスして?」<br />
あたしは目を瞑る。キョンがどんな顔をしてるかはわからない。<br />
それでも、キョンはちゃんと口付けてくれた。<br />
ドキドキする。……良い意味で。</div>
<br />
<div>キョンは部室に行ってあたしが元気だったと伝えるらしく、帰り支度をして、部屋を出る。<br />
あたしが玄関まで送って行った時、不意にキョンが口を開いた。<br />
「結局、お前の病気って何だったんだよ。」<br />
何かしら?……ここは古泉くんの言葉を借りとこう。<br />
「ん~……恋の病よ!」<br />
あたしはそう言って、キョンにウインクをした。</div>
<br />
<div>終わり</div>
</div>
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<div class="main">
<div>恋の病・恋の熱</div>
<div>また、あいつと違うグループかぁ……。<br />
今日は土曜日。<br />
毎週お馴染みの探索の日。<br />
あたしは午前はみくるちゃんと二人で、そして今引いた午後の探索は、古泉くんと二人になった。<br />
なんで、こんなに離れちゃうんだろ……。<br />
「…ず……さん?…涼宮さん?」<br />
「あ、え?ど、どしたの?古泉くん。」<br />
「どうしたも何も……涼宮さんがいきなり立ち止まったのでしょう?」<br />
あれ?あたし…いつの間に?<br />
「あ、あはは。ごめんね、ちょっと考えごとしちゃった!さ、行きましょう!!」</div>
<div>あたしは古泉くんと一緒に北側の探索を始めた。</div>
<div>時間は流れて、集合時間まではあと1時間。<br />
あたしは古泉くんが話があると言うから、今、公園のベンチに座っている。<br />
「ウーロン茶でよろしかったでしょうか?」<br />
「あ……ありがと。お金…」<br />
「僕からの話ですからお金は結構ですよ。」<br />
古泉くんが優しい笑顔を見せながら気遣う言葉、あいつもこれくらいの優しさを見せないかしら。<br />
「ふふふ、涼宮さん。よろしかったら先程の《考えごと》とやらの相談に乗りますよ?」<br />
「へっ?い、いや!い~のよ!なんでもない事だから!」<br />
「大丈夫ですよ、僕は涼宮さんの味方ですから。……彼のことでしょう?」<br />
古泉くんは、なんでもわかってるみたい。<br />
……たまには頼っても…いいよね…。<br />
「うん……。最近、キョンと一緒にいない時、なんかこう……胸が締め付けられるの。それで、あいつのこと考えると…胸がドキドキして……切なくなるのよ。」<br />
古泉くんは、少し苦笑して答える。<br />
「なるほど。それで今日も浮かない顔だったんですね。それにしても、こんなに正直に答えてくれるなんて…。」<br />
あんたが言わせたんでしょっ!!……とは言えないわね、相談してる身だし。</div>
<div>「ほんと、困ってるのよ。なんか……考え出すと止まらないの。」<br />
「……僕が思うに、《恋の病》と言うものでしょう。彼の事を思うと、何にも手につかなくなるという症状ですね。」<br />
え?恋愛って精神病よね?<br />
あたし、キョンのことを……?<br />
ただ、キョンといた方が楽しいだけ、じゃないの?<br />
あたしが考えていると、古泉くんが声をかけて来た。<br />
「あなたも、彼に負けず劣らず鈍いですね。僕はここで待っていますから、《涼宮さんにとっての彼》がどの様な存在か、しっかり考えて下さい。」</div>
<div>あたしにとってのキョン?<br />
SOS団の団員その1で……一緒に居て楽しい奴。<br />
それだけ?…ほんとに?<br />
わからない。頭が痛い。<br />
あ、ダメだ。クラクラする……。</div>
<div>気がつくと、あたしはそのベンチに横たわっていた。<br />
みんなの姿が見える、……キョンもいる。<br />
「ハルヒっ!大丈夫か!?」<br />
キョンが心配してくれる、嬉しい……のかな?<br />
それより、あたしはどうしたんだろう。頭が痛い。<br />
「いきなりぶっ倒れたって聞いて、こっちに来たら…凄い熱だぞ、お前。」<br />
さっきまで、なんともなかったのに…。<br />
今は喋るのも辛い。</div>
<div>「みんな、ハルヒは俺がチャリで家まで送るから、今日は解散してくれ。それでいいな?ハルヒ。」<br />
あ、今日のキョンはなんかかっこいい。<br />
男っぽくて、頼りになる。<br />
あたしは、キョンに向かって小さく頷き、そのままキョンに体を預けた。</div>
<div>あたしは、キョンに連れられて、家の前に来た。<br />
自転車の上では、何もわからずに気がつくと家の前にいた。<br />
キョンがインターホンを鳴らす。<br />
あ、ダメよ。今日は親がいないの。<br />
まだ鳴らし続けるキョンに、あたしは声をかけた。<br />
「きょ………親、いない…の。鍵……カバンにある、から…。」<br />
喉が渇いてるのか、声が上手く出せない。<br />
キョンの前で……恥ずかしい、格好悪い。<br />
「わかった。無理に喋るなよ、部屋まで連れてくから。」<br />
やっぱり、今日のキョンは優しい。<br />
……今日くらい、甘えてもいいよね?<br />
あたしは、キョンに抱かれて家の中、あたしの部屋まで連れて行かれた。<br />
「キョ…ン……水…ちょう、だい。」<br />
たぶん、水さえ飲めば話が出来る。<br />
キョンと話がしたい。<br />
「水だな?わかった、コップは勝手に使うぞ?」<br />
と言うと、キョンはすぐに台所に向かった。<br />
あたしは、キョンが持ってきた水をすぐに飲み干した。</div>
<div>うん、喋れそう。<br />
「キョン……ありがと。」<br />
ダメ、お礼だけでもドキドキしちゃう。<br />
……あたし、ほんとに惚れたみたい。<br />
「よかった…、声は出せるようになったか。少しは楽になったか?」<br />
「うん、だいぶ楽になったわ。」<br />
「そうか、熱は……っと。」<br />
キョンがあたしの額に手を当ててきた。<br />
そんなに近付いたら、あたしの胸の音、聞こえちゃうかも…。<br />
「うん、熱も少しは引いたみたいだな。」<br />
もう…ダメかも。<br />
二人になるチャンスなんて無いかもしれない。<br />
自分の気持ち、今伝えないと後悔する。<br />
「ねぇ、キョン……。」<br />
ドキドキする。鼓動が早くなるのがわかる。<br />
「どうした?また、水か?」<br />
ふふふ、キョンらしい返事だわ。<br />
「違うの。……今日、熱出した理由、あたしわかっちゃった。」<br />
「は?……大丈夫か?薄着したとかか?」<br />
やっぱり、優しい。あたしが弱ってるとキョンは心配してくれるんだ。<br />
「…あんたのせいよ。あんたが、あたしの頭の中、独占しちゃったせいで考え過ぎて熱が出ちゃったの。」<br />
「……ハルヒ、そんな考えはお前らしくないんじゃないか?そもそも、恋愛は精神病の一種じゃなかったのか?気の迷いだったか?」</div>
<div>やっぱり、言われると思った。……でも、退けない。<br />
「……しょうがないじゃない、気付いたんだもん。あたしは、あんたが好き。気の迷いでも、なんでもない。……ほんとに好きなの。」<br />
「……………………。」<br />
キョンが、黙る。<br />
怖い、返事を聞くのが怖い。<br />
やっぱり、言わなきゃよかった。今までの日常を無くすのが、怖いよ……。<br />
「あっ……痛い。頭が…。」<br />
「ハルヒ!?大丈夫か?」<br />
ごめん、嘘。<br />
こう言えば、キョンなら近くに来てくれるから。</div>
<div>チュッ。</div>
<div>あたしは、キョンにキスをした。もう、心臓が破裂しそう。<br />
「ハ、ハルヒ……?」<br />
ごめん、キョン。ごめん…<br />
「帰って?ごめん、ありがと。だけど……帰って。」<br />
ほんと、あたしはダメな女だ。<br />
「お願い…ごめん……。」<br />
あたしは、気がつくと涙を流していた。<br />
キョンは、何も言わずに部屋を後にしてくれた。…ありがとう。</div>
<div>今日で三日も、学校を休んでる。<br />
熱は、とっくに引いてるけど足や、心が学校に行こうとしてくれない。<br />
たぶん、あたしはキョンに会うのが怖いんだ。<br />
キョンに『ごめん』って言われるのが、怖いんだ。</div>
<div>お母さんは、何も言わずに接してくれてる。迷惑かけてるのに、ありがとう。<br />
今日も何をするでもなく、ベッドに寝たままテレビを見ていると、メールの着信音。<br />
キョンからだ。<br />
『今日、お前ん家に行くからな。』<br />
キョンらしく、余計な物のない文。少し、笑っちゃう。<br />
そういえば、今は昼休みの時間だっけ?<br />
まぁいいわ、どうせ放課後まで時間はあるんだし……少し、眠ろう……。</div>
<div>ん……頭、撫でられてる?<br />
誰かな…お母さん?<br />
「いつから俺はお前の母さんになったんだよ。」<br />
「……っ!?キョンっ!?」<br />
びっくりした。なんで、キョンが…?<br />
あ、もう5時半か……。<br />
「ったく、大声出すなよ。体調は…どうだ?」<br />
こんな無防備な姿、見られちゃった。…恥ずかしいよ。<br />
「まあまあ……よ。」<br />
なんとも無いの、わかってるのかな。<br />
「そうか、なんとも無いのか。そりゃよかった。」<br />
……やっぱりわかってた。少し、嬉しいかも。<br />
「……それで、何しに来たのよ。」<br />
返事なら……いらない。キョンが来てくれただけで嬉しいから。<br />
「ハルヒ………ごめん。」<br />
今……『ごめん』って?<br />
やだ、やだ、やだ。その言葉だけは聞きたくなかった。</div>
<div>キョンに嫌われるくらいなら、いっその事、あんなこと言わなきゃよかった…。<br />
あたしは、気がつくと泣いていた。<br />
涙が止まらない。<br />
「最後まで聞け!!」<br />
キョンが怒鳴る。怖いよ……聞きたくない。<br />
でも、声は聞こえてくる。<br />
「ハルヒ…ごめんな。俺、お前が好きだった。ずっと好きだったけど、誤魔化して、逃げてた。」<br />
……え?今、好きって言ったのかな…耳ふさいでて、聞こえなかった。<br />
「今……ひくっ、今、なんて言ったの?」<br />
「耳塞いでるからだ。…もう一度だけ言うぞ。大好きだ、ハルヒ。」<br />
嬉しい。さっきまでの不安が、どっか行ったみたい。<br />
「ありがと……ありがと、キョン。」<br />
あたしはキョンに抱き付いた。キョンも、あたしを受け止めてくれた。<br />
キョンが優しい間に、あたしが元気を出す前に、最後に甘えよう。<br />
「ね、キョン。……キスして?」<br />
あたしは目を瞑る。キョンがどんな顔をしてるかはわからない。<br />
それでも、キョンはちゃんと口付けてくれた。<br />
ドキドキする。……良い意味で。</div>
<div>キョンは部室に行ってあたしが元気だったと伝えるらしく、帰り支度をして、部屋を出る。<br />
あたしが玄関まで送って行った時、不意にキョンが口を開いた。<br />
「結局、お前の病気って何だったんだよ。」<br />
何かしら?……ここは古泉くんの言葉を借りとこう。<br />
「ん~……恋の病よ!」<br />
あたしはそう言って、キョンにウインクをした。</div>
<div>終わり</div>
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