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廃戦記念日」(2010/08/16 (月) 19:23:25) の最新版変更点

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<div style="line-height:1.8em;font-family:monospace;"> <p> 八月十五日。</p> <p> 北半球に存在する日本国において、その日は真夏。</p> <p> そしてその国では、全国戦没者追悼式が行われる日でもあります。</p> <p> </p> <p> 二十世紀前半、世界の多くの国や地域を巻き込んだ戦争がありました。</p> <p> 第二次世界大戦。</p> <p> その戦争の最後の交戦国となった日本が降伏を公にした日が、この日なのです。</p> <p> 本当に戦争が終結したのは、もっと後になりますが……</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> 真夏の暑い正午。一分間のサイレンが鳴り響きます。</p> <p> SOS団の根城となっている文芸部の部室で、五人の団員達は黙祷を捧げました。</p> <p> </p> <p> 黙祷を終えて、涼宮ハルヒはぽつりと言いました。</p> <p>「人間の歴史って、戦争の歴史よね」</p> <p> </p> <p>「人間は、戦争を捨てることができるのかしら?」</p> <p> </p> <p> キョンは答えて言いました。</p> <p>「できるさ」</p> <p> </p> <p>「人間が本気でそう願えばな」</p> <p> </p> <p>「……ふうん」</p> <p> ハルヒは、気がなさそうに答えました。</p> <p> </p> <p> その夜ハルヒは願いました。</p> <p>「たった一日くらい、この世から戦争が消えればいいのに……」</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> 翌日、世界のニュースは伝えました。</p> <p><em>『爆弾テロが相次ぐイラクでは今日……』</em></p> <p><em>『イスラエルのガザ地区では……』</em></p> <p><em>『アフガニスタンでは……』</em></p> <p><em>『分離独立問題を抱えるスペインのバスク地方では……』</em></p> <p> </p> <p> 世界各地の紛争地域で。ずっと戦闘が続く戦場で。</p> <p> 銃声が。爆音が。</p> <p> </p> <p><em>『まるで、この世から戦争が消えたかのようです』</em></p> <p> </p> <p> 世界中から、戦闘行為がなくなりました。</p> <p> まるで人々が、戦うことを忘れてしまったかのように。</p> <p> </p> <p> ハルヒは、部室に持ち込んだラジオから流れるニュースを聞いて言いました。</p> <p>「まるで夢でも見てるみたいね。戦争がなくなるなんて」</p> <p> </p> <p>「……どうせ、一日しか持たないんだろうけど」</p> <p> </p> <p> それを聞いた古泉一樹は、少し悲しそうに言いました。</p> <p>「たとえ夢でも、それがとても幸せな夢で、ずっと醒めないなら、それはそれでアリかとも思います」</p> <p> ハルヒは言いました。</p> <p>「あたしは、そんな夢はごめんだわ。いつ醒めやしないかとビクビクしながら過ごすなんてまっぴらよ」</p> <p> </p> <p> その時、じっと話を聞いていた朝比奈みくるが、ハルヒの両手を掴み、真剣な表情で言いました。</p> <p> 「あの、えっと……うまく言えませんけど、その……とにかく! 信じてみてください! 戦争や紛争が、本当になくなる日が来るって! いつか、きっと……人類はそれを成し遂げられるって!!」</p> <p> </p> <p> いつになく真剣な、そして力のこもった彼女の言葉に、みんなはとても驚きました。</p> <p>「ちょ、ちょっと、みくるちゃん! 分かった、分かったから、落ち着いて?」</p> <p>「はっ……!? す、すいません、あたしったら、取り乱して……」</p> <p> ハルヒの両手を掴んでいた手を離し、少し気まずそうにみくるは俯きました。</p> <p> そんな彼女の様子を見ながら、ハルヒはいつもの元気な声で言いました。</p> <p>「まあ、確かに、みくるちゃんの言うことも、もっともね。できると信じなくちゃ、できるものもできなくなるわ」</p> <p> </p> <p>「確かに今日のこの状態は、夢かもしれない。でも、一度はそんな状態を見てるんだから、実現のビジョンは見えたはずよね」</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> その日の部活終了後、キョンとみくるを残して、団員達はそれぞれ帰宅の途に就きました。</p> <p> </p> <p>「お待たせしました、どうぞ」</p> <p> 部室の中から聞こえる声に従い、キョンは部室に再び入りました。</p> <p>「朝比奈さん、何ですか? 俺に話って」</p> <p> 制服に着替えたみくるが、少し真剣な表情で立っていることに、キョンは軽く緊張します。</p> <p> みくるはキョンに告げました。</p> <p>「キョンくんには、どうやら禁則事項に掛からないようなので、お話しますね。昨日、八月十五日はどんな日だか、知ってますか?」</p> <p> </p> <p>「終戦記念日、じゃないですか」</p> <p> キョンの答えに、みくるはこう言いました。</p> <p>「実は未来では違うんです。いつからそうなったのか、なぜそうなったのか。はっきりとは分からなかったんですけど。今日のことで確信しました」</p> <p> </p> <p>「未来では、ある伝説が語り継がれているんです。由来や、いつのことか、事実だったのか、すべては謎だったんですけど」</p> <p> </p> <p> みくるは軽く息を吸い、続けました。</p> <p>「かつて、一日だけ。この世から、戦争や紛争が消えた日があったと」</p> <p> </p> <p>「な、それって……」</p> <p> キョンは息を呑みました。</p> <p>「もしかして、今日のことですか!?」</p> <p> </p> <p> みくるは少し悲しそうに言いました。</p> <p>「それは一日限りの夢。次の日からは、またそれまでのように戦争や紛争が続きました」</p> <p> </p> <p>「でも、いつか、きっと。そんな日がずっと続く時が来てほしい。そんな願いを込めた記念日なんです」</p> <p> </p> <p> みくるの目には、少し涙が溜まっていました。</p> <p>「伝説は本当だったんですね。涼宮さんが見せてくれた夢。戦争や紛争がない、幸せな一日」</p> <p> </p> <p> 「未来に帰れば、あたしもその時代を生きる現代人です。そこからもっと未来に、いつか、きっと。この夢が叶うように、あたしは、あたし達は、努力するべきなのかもしれません」</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> みくる達の未来で、語り継がれている伝説とは、このようなお話です。</p> <p> </p> <p> 『戦争が消えればいいのに』と少女が願ったから八月十五日は廃戦記念日</p> <p> </p> <hr /></div>
<div style="line-height:1.8em;font-family:monospace;"> <p> 八月十五日。</p> <p> 北半球に存在する日本国において、その日は真夏。</p> <p> そしてその国では、全国戦没者追悼式が行われる日でもあります。</p> <p> </p> <p> 二十世紀前半、世界の多くの国や地域を巻き込んだ戦争がありました。</p> <p> 第二次世界大戦。</p> <p> その戦争の最後の交戦国となった日本が降伏を公にした日が、この日なのです。</p> <p> 本当に戦争が終結したのは、もっと後になりますが……</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> 真夏の暑い正午。一分間のサイレンが鳴り響きます。</p> <p> SOS団の根城となっている文芸部の部室で、五人の団員達は黙祷を捧げました。</p> <p> </p> <p> 黙祷を終えて、涼宮ハルヒはぽつりと言いました。</p> <p>「人間の歴史って、戦争の歴史よね」</p> <p> </p> <p>「人間は、戦争を捨てることができるのかしら?」</p> <p> </p> <p> キョンは答えて言いました。</p> <p>「できるさ」</p> <p> </p> <p>「人間が本気でそう願えばな」</p> <p> </p> <p>「……ふうん」</p> <p> ハルヒは、気がなさそうに答えました。</p> <p> </p> <p> その夜ハルヒは願いました。</p> <p>「たった一日くらい、この世から戦争が消えればいいのに……」</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> 翌日、世界のニュースは伝えました。</p> <p><em>『爆弾テロが相次ぐイラクでは今日……』</em></p> <p><em>『イスラエルのガザ地区では……』</em></p> <p><em>『アフガニスタンでは……』</em></p> <p><em>『分離独立問題を抱えるスペインのバスク地方では……』</em></p> <p> </p> <p> 世界各地の紛争地域で。ずっと戦闘が続く戦場で。</p> <p> 銃声が。爆音が。</p> <p> </p> <p><em>『まるで、この世から戦争が消えたかのようです』</em></p> <p> </p> <p> 世界中から、戦闘行為がなくなりました。</p> <p> まるで人々が、戦うことを忘れてしまったかのように。</p> <p> </p> <p> ハルヒは、部室に持ち込んだラジオから流れるニュースを聞いて言いました。</p> <p>「まるで夢でも見てるみたいね。戦争がなくなるなんて」</p> <p> </p> <p>「……どうせ、一日しか持たないんだろうけど」</p> <p> </p> <p> それを聞いた古泉一樹は、少し悲しそうに言いました。</p> <p>「たとえ夢でも、それがとても幸せな夢で、ずっと醒めないなら、それはそれでアリかとも思います」</p> <p> ハルヒは腕組みをして言いました。</p> <p>「あたしは、そんな夢はごめんだわ。いつ醒めやしないかとビクビクしながら過ごすなんてまっぴらよ」</p> <p> </p> <p> その時、じっと話を聞いていた朝比奈みくるが、ハルヒの両手を掴み、真剣な表情で言いました。</p> <p> 「あの、えっと……うまく言えませんけど、その……とにかく! 信じてみてください! 戦争や紛争が、本当になくなる日が来るって! いつか、きっと……人類はそれを成し遂げられるって!!」</p> <p> </p> <p> いつになく真剣な、そして力のこもった彼女の言葉に、みんなはとても驚きました。</p> <p>「ちょ、ちょっと、みくるちゃん! 分かった、分かったから、落ち着いて?」</p> <p>「はっ……!? す、すいません、あたしったら、取り乱して……」</p> <p> ハルヒの両手を掴んでいた手を離し、少し気まずそうにみくるは俯きました。</p> <p> そんな彼女の様子を見ながら、ハルヒはいつもの元気な声で言いました。</p> <p>「まあ、確かに、みくるちゃんの言うことも、もっともね。できると信じなくちゃ、できるものもできなくなるわ」</p> <p> </p> <p>「確かに今日のこの状態は、夢かもしれない。でも、一度はそんな状態を見てるんだから、実現のビジョンは見えたはずよね」</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> その日の部活終了後、キョンとみくるを残して、団員達はそれぞれ帰宅の途に就きました。</p> <p> </p> <p>「お待たせしました、どうぞ」</p> <p> 部室の中から聞こえる声に従い、キョンは再び部室に入りました。</p> <p>「朝比奈さん、何ですか? 俺に話って」</p> <p> 制服に着替えたみくるが、少し真剣な表情で立っていることに、キョンは軽く緊張します。</p> <p> みくるはキョンに告げました。</p> <p>「キョンくんには、どうやら禁則事項に掛からないようなので、お話ししますね。昨日、八月十五日はどんな日だか、知ってますか?」</p> <p> </p> <p>「終戦記念日、じゃないですか」</p> <p> キョンの答えに、みくるはこう言いました。</p> <p>「実は未来では違うんです。いつからそうなったのか、なぜそうなったのか。はっきりとは分からなかったんですけど。今日のことで確信しました」</p> <p> </p> <p>「未来では、ある伝説が語り継がれているんです。由来や、いつのことか、事実だったのか、すべては謎だったんですけど」</p> <p> </p> <p> みくるは軽く息を吸い、続けました。</p> <p>「かつて、一日だけ。この世から、戦争や紛争が消えた日があったと」</p> <p> </p> <p>「な、それって……」</p> <p> キョンは息を呑みました。</p> <p>「もしかして、今日のことですか!?」</p> <p> </p> <p> みくるは少し悲しそうに言いました。</p> <p>「それは一日限りの夢。次の日からは、またそれまでのように戦争や紛争が続きました」</p> <p> </p> <p>「でも、いつか、きっと。そんな日がずっと続く時が来てほしい。そんな願いを込めた記念日なんです」</p> <p> </p> <p> みくるの目には、少し涙が溜まっていました。</p> <p>「伝説は本当だったんですね。涼宮さんが見せてくれた夢。戦争や紛争がない、幸せな一日」</p> <p> </p> <p> 「未来に帰れば、あたしもその時代を生きる現代人です。そこからもっと未来に、いつか、きっと。この夢が叶うように、あたしは、あたし達は、努力するべきなのかもしれません」</p> <p> </p> <hr /><p> </p> <p> みくる達の未来で、語り継がれている伝説とは、このようなお話です。</p> <p> </p> <p> 『戦争が消えればいいのに』と少女が願ったから八月十五日は廃戦記念日</p> <p> </p> <hr /></div>

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