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「七夕シンドローム 第六章」(2020/07/07 (火) 10:33:18) の最新版変更点
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翌日の七月五日。<br />
今日で改変が起きてから三日ほどの日数が経過しており、ここ最近ろくに睡眠をとれていないため折角の休日ぐらいゆっくりと寝ていたかったのだが、今日はいよいよ不思議探索の日だ。惰眠をむさぼっているわけにはいかない。ずっしりと鉛のように重い頭をあげてベッドから降りる。<br />
「キョンくん、あっさだよー!」<br />
ドアが勢い良く開き、泥沼にはまった意識に氷を投げつけるような甲高い声が耳に飛び込んできた。相変わらず元気だなこいつも。そのテンションを多少なりとも俺に分けて欲しい。<br />
「ってあれー? またキョンくん、ちゃんと起きてる。つまんないのー」<br />
そう言って我が妹はとことこと未だ惰眠をむさぼっているシャミセンの所へ向かい、不服そうな鳴き声にも構わず無理やり抱き上げ、何処かへ連行していった。そういえば、シャミセンに話しかけてないな。流石に喋らんとは思うが、不思議探索から帰ったら話しかけてみることにしよう。また変人扱いされたってもう知らん。藁が掴めなかったら水面を滑る枯れ葉だって掴んでやる。<br />
動かない体を叱咤してようやく身支度を終え、いつもの集合場所の五分前に到着するとハルヒがこちらを力強く指差し、「遅刻、罰金!」という懐かしささえ感じる台詞で迎えてくれた。何故か安心してしまったような気がするのは気のせいだと思いたい。<br /><br /><br />
「ってことでキョンの言う異世界の手掛かり探しをするわけだけど、広範囲に探してみたいから今日は組み分けナシね! 異論はあるかしら?」<br />
ハルヒがアイスティーをずずずと音を立てて飲み干し、そう言った。<br />
ちなみにここはSOS団が組み分け等をするためにいつも入っている喫茶店だ。お代は当然俺持ち。後で聞いたところによると、その前はなんと古泉が毎回毎回代金を支払っていたらしい。なんともご苦労なこった。いつも俺の到着する五分前に来ているというのは本当だったのか。<br />
だが、毎回組み分けを行っていたということは、もしや毎週こいつはこの三人の誰かとデートしてたってことになるのか? そう考えるとやはり同情などいらん。不要だ。<br />
「いい、伊勢……?」<br />
古泉は事情把握済みであり、長門も無反応だったので驚いたのは朝比奈さんだけだった。ああ、朝比奈さん、それと一応長門にもあの長い事情説明をしなきゃならんのか。凄く面倒くさい。誰か本にでもまとめて渡してくれないだろうか。<br />
「異世界よみくるちゃん。このキョンはね、別の世界から来た異世界人なの」<br />
ハルヒがそれで十分とでも言うように腕を組んだ。正確には違うんだがな……。<br />
対する朝比奈さんはやはりさっぱりなようで、高速道路の中央分離帯に迷い込んだ小学生でも見るような目で俺を見て首をかしげている。すみません、詳しい説明は後回しでもいいですか。<br />
「しかし涼宮さん、広範囲に探したいというならまとまって行動するよりやはり組み分けした方がよろしいんじゃないでしょうか」<br />
古泉がいつものニコニコ笑顔でそう問うた。こいつは昨日とは一転してあふれる爽やかさを辺りにまき散らしている。なんだかいつもより一層憎らしく思えるのは気のせいだろうか。<br />
「まあ確かにそうなんだけど、今日は電車とかに乗って色んなところを探してみたいのよ。そうするなら、やっぱりみんなで団体行動した方がいいと思ってね」<br />
そしてハルヒは俺の方へくるりと向き直ると、<br />
「で、キョン! あんたの言うヒントってのはどんなやつなの? どっかにあんたの世界へ繋がる時空の裂け目みたいなものがあったり、何処か特定の場所に行けば異世界からの信号が受信できたりするわけ?」<br />
ハルヒの期待してるようなもんは恐らくないが、もしかしたら何処かに宇宙人からのメッセージがあるかもしれないな。<br />
「ああ、あんたの世界では有希が宇宙人なのよね。つまり有希からのメッセージを探せばいいわけ?」<br />
「大体そうなるな。明朝体で書かれた謎のメッセージやらがあれば多分それだ」<br />
「うんうん、なるほどね」<br />
ハルヒは何か企んでるような顔つきで頷いている。本当に分かってんだろうか?<br />
そして腕をぴっと上げて、<br />
「じゃあ、異世界へのヒント探し開始っ!」<br />
そう100ワットの笑顔で宣言した。<br /><br /><br />
喫茶店でのハルヒの宣言の後俺達はぞろぞろと駅へ向かい、ハルヒの先導のもと私鉄に乗ってあっちゃこっちゃ行ったり、バスに乗り込んで滅多に行かないような市内のはずれまで行ってみたりしたわけだが、いちいち説明するのも面倒だ。結論から言おう。<br />
結局何も見つからなかった。<br />
長門の文字で書かれたヒントなんて何処にも無かったし、あちこち探し回る他にもハルヒの思いつきで家具屋にある全身鏡で合わせ鏡に挑戦したり(店員の目が非常に痛かった)、寂れた団地のエレベーターを使って色んな階に行ったり来たりしてみたが結局何も起こらなかった。ハルヒいわく有名な異世界へ行く方法らしいがこれは一体何の意味があるんだろうか。<br />
「…………」<br />
夕暮れの最初に集合した駅前で、ハルヒはいかにも不服ですといった感じで黙りこくっている。というか誰もこの場で明るく話す奴などいない。移動ばかり繰り返したせいで非常に疲労が溜まっているのだ。<br />
駅前はそんな俺達の空気にそぐわない賑やかさを見せていて、特に七夕の祭りらしい祭りがあるわけでもないのに、笹だの妙にひらひらした飾りだのが街灯やら街路樹やらに飾り付けられている。そうか、もう明後日は七夕か。<br />
「誠に残念ですが、そろそろ夕暮れです。今日の所はお開きにして、またヒントを探しに出かけてはいかがでしょうか?」<br />
無駄に重苦しい空気の中、その沈黙を破ったのは古泉だった。流石の古泉にも笑顔の中に疲れが見え隠れしている。ハルヒはじろりと半目で古泉の方を見遣ると、<br />
「……そうね。結局何も見つかんなかったし。これで解散しましょ」<br />
ふう、とハルヒが溜め息をついた。どうやらハルヒにも疲労という概念があったらしい。<br />
「ありがとうなハルヒ、いやみんな。俺なんかのために色々付き合ってくれて」<br />
ハルヒが動けば何か変化があるかとは思ったが、結局何もなかった。この世界では俺はSOS
団のメンバーではないし、ここで引いておくのが賢明だろう。正直、これが駄目で後は何をすべきなのか全く分からない。鍵が見つからないし、そもそもの鍵を集めれば元の世界に戻れるという保障もない。<br />
広がる沈黙。しかしそこで朝比奈さんが手を挙げて、<br />
「あ、あのっ、みんなで七夕にお祈りとかしたらどうですかっ?」<br />
と突然提案した。<br />
今何と言いました? お祈り?<br />
「はい、あの、七夕って短冊にお願い事を書いて織姫と彦星にお祈りするんですよね?」<br />
お祈りとはちょっと違うと思いますが、確かにそうですね。<br />
「それで、みんなで七夕にお願い事しませんか? 笹とか、短冊とか用意して」<br />
なんと朝比奈さんらしい、いじらしい提案だろう。しかし、中国の伝説の登場人物に願い事をしたぐらいでそう簡単に叶うものとは思えないんだが。<br />
「あのね、みくるちゃん。織姫と彦星の元になってるベガとアルタイルって、どのくらい遠くにあるか知ってる?」<br />
「えぇっ? うーんと、えっと」<br />
「二十五光年と十六光年よ? 光の速さで願い事が届いても、折り返しの時間を考えればそれぞれ五十年と三十二年かかるの。そんな時間まであたしは願い事を待ってられないわ」<br />
ああ、その言葉をそのまま一年ほど前のハルヒに言ってあげて欲しい。<br />
ハルヒの言葉を聞いて、朝比奈さんは完全に黙ってしまった。朝比奈さん、そのお気持ちだけで充分です。俺の事はもういいですから。<br />
「僕は朝比奈さんの言うことも一理あると思いますよ」<br />
そう口を開いたのは古泉だ。なんだいきなり。<br />
「確かあなたの世界の話では、中学生の涼宮さんが七夕に落書きをして、それが客観的な時間軸における様々な出来事の始まりだったそうじゃないですか」<br />
「ああ、まあそうだが」<br />
よく覚えてんなお前。<br />
「だったら、一度やってみるのもいいかもしれません。それをきっかけに、何かが起こるかもしれないとは思いませんか?」<br />
ハルヒがぴくりと動いた。こいつ、ハルヒの興味を湧かせるツボを心得てやがる。何があなたの話は涼宮さんにとって理想を体現しすぎている、だ。<br />
「……確かにそうね。織姫と彦星。一度やってみる価値はあるかもしれないわ」<br />
ハルヒの表情がみるみる明るくなった。<br />
「じゃあ、月曜日はみんなで短冊を書きましょう! 必要なものはあたしがあたしが用意するから!<br />
キョン、当然あんたも来るわよね?」<br />
ハルヒがやたら攻撃的な笑顔を俺に向けた。へいへい、どうせ断ったって無理やり部室まで引っ張ってくるんだろ。<br />
「分かったよ、俺も部室に行くって」<br />
その言葉を聞いて、ハルヒがにっと笑った。<br />
「決まりね!」<br />
どうせなら、その笑顔をSOS団の団員として見たかったよ、俺は。<br /><br /><br /><br /><br /><br /><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6271.html">第七章へ</a></p>
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今日で改変が起きてから三日ほどの日数が経過しており、ここ最近ろくに睡眠をとれていないため折角の休日ぐらいゆっくりと寝ていたかったのだが、今日はいよいよ不思議探索の日だ。惰眠をむさぼっているわけにはいかない。ずっしりと鉛のように重い頭をあげてベッドから降りる。<br />
「キョンくん、あっさだよー!」<br />
ドアが勢い良く開き、泥沼にはまった意識に氷を投げつけるような甲高い声が耳に飛び込んできた。相変わらず元気だなこいつも。そのテンションを多少なりとも俺に分けて欲しい。<br />
「ってあれー? またキョンくん、ちゃんと起きてる。つまんないのー」<br />
そう言って我が妹はとことこと未だ惰眠をむさぼっているシャミセンの所へ向かい、不服そうな鳴き声にも構わず無理やり抱き上げ、何処かへ連行していった。そういえば、シャミセンに話しかけてないな。流石に喋らんとは思うが、不思議探索から帰ったら話しかけてみることにしよう。また変人扱いされたってもう知らん。藁が掴めなかったら水面を滑る枯れ葉だって掴んでやる。<br />
動かない体を叱咤してようやく身支度を終え、いつもの集合場所の五分前に到着するとハルヒがこちらを力強く指差し、「遅刻、罰金!」という懐かしささえ感じる台詞で迎えてくれた。何故か安心してしまったような気がするのは気のせいだと思いたい。<br />
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「ってことでキョンの言う異世界の手掛かり探しをするわけだけど、広範囲に探してみたいから今日は組み分けナシね! 異論はあるかしら?」<br />
ハルヒがアイスティーをずずずと音を立てて飲み干し、そう言った。<br />
ちなみにここはSOS団が組み分け等をするためにいつも入っている喫茶店だ。お代は当然俺持ち。後で聞いたところによると、その前はなんと古泉が毎回毎回代金を支払っていたらしい。なんともご苦労なこった。いつも俺の到着する五分前に来ているというのは本当だったのか。<br />
だが、毎回組み分けを行っていたということは、もしや毎週こいつはこの三人の誰かとデートしてたってことになるのか? そう考えるとやはり同情などいらん。不要だ。<br />
「いい、伊勢……?」<br />
古泉は事情把握済みであり、長門も無反応だったので驚いたのは朝比奈さんだけだった。ああ、朝比奈さん、それと一応長門にもあの長い事情説明をしなきゃならんのか。凄く面倒くさい。誰か本にでもまとめて渡してくれないだろうか。<br />
「異世界よみくるちゃん。このキョンはね、別の世界から来た異世界人なの」<br />
ハルヒがそれで十分とでも言うように腕を組んだ。正確には違うんだがな……。<br />
対する朝比奈さんはやはりさっぱりなようで、高速道路の中央分離帯に迷い込んだ小学生でも見るような目で俺を見て首をかしげている。すみません、詳しい説明は後回しでもいいですか。<br />
「しかし涼宮さん、広範囲に探したいというならまとまって行動するよりやはり組み分けした方がよろしいんじゃないでしょうか」<br />
古泉がいつものニコニコ笑顔でそう問うた。こいつは昨日とは一転してあふれる爽やかさを辺りにまき散らしている。なんだかいつもより一層憎らしく思えるのは気のせいだろうか。<br />
「まあ確かにそうなんだけど、今日は電車とかに乗って色んなところを探してみたいのよ。そうするなら、やっぱりみんなで団体行動した方がいいと思ってね」<br />
そしてハルヒは俺の方へくるりと向き直ると、<br />
「で、キョン! あんたの言うヒントってのはどんなやつなの? どっかにあんたの世界へ繋がる時空の裂け目みたいなものがあったり、何処か特定の場所に行けば異世界からの信号が受信できたりするわけ?」<br />
ハルヒの期待してるようなもんは恐らくないが、もしかしたら何処かに宇宙人からのメッセージがあるかもしれないな。<br />
「ああ、あんたの世界では有希が宇宙人なのよね。つまり有希からのメッセージを探せばいいわけ?」<br />
「大体そうなるな。明朝体で書かれた謎のメッセージやらがあれば多分それだ」<br />
「うんうん、なるほどね」<br />
ハルヒは何か企んでるような顔つきで頷いている。本当に分かってんだろうか?<br />
そして腕をぴっと上げて、<br />
「じゃあ、異世界へのヒント探し開始っ!」<br />
そう100ワットの笑顔で宣言した。<br />
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喫茶店でのハルヒの宣言の後俺達はぞろぞろと駅へ向かい、ハルヒの先導のもと私鉄に乗ってあっちゃこっちゃ行ったり、バスに乗り込んで滅多に行かないような市内のはずれまで行ってみたりしたわけだが、いちいち説明するのも面倒だ。結論から言おう。<br />
結局何も見つからなかった。<br />
長門の文字で書かれたヒントなんて何処にも無かったし、あちこち探し回る他にもハルヒの思いつきで家具屋にある全身鏡で合わせ鏡に挑戦したり(店員の目が非常に痛かった)、寂れた団地のエレベーターを使って色んな階に行ったり来たりしてみたが結局何も起こらなかった。ハルヒいわく有名な異世界へ行く方法らしいがこれは一体何の意味があるんだろうか。<br />
「…………」<br />
夕暮れの最初に集合した駅前で、ハルヒはいかにも不服ですといった感じで黙りこくっている。というか誰もこの場で明るく話す奴などいない。移動ばかり繰り返したせいで非常に疲労が溜まっているのだ。<br />
駅前はそんな俺達の空気にそぐわない賑やかさを見せていて、特に七夕の祭りらしい祭りがあるわけでもないのに、笹だの妙にひらひらした飾りだのが街灯やら街路樹やらに飾り付けられている。そうか、もう明後日は七夕か。<br />
「誠に残念ですが、そろそろ夕暮れです。今日の所はお開きにして、またヒントを探しに出かけてはいかがでしょうか?」<br />
無駄に重苦しい空気の中、その沈黙を破ったのは古泉だった。流石の古泉にも笑顔の中に疲れが見え隠れしている。ハルヒはじろりと半目で古泉の方を見遣ると、<br />
「……そうね。結局何も見つかんなかったし。これで解散しましょ」<br />
ふう、とハルヒが溜め息をついた。どうやらハルヒにも疲労という概念があったらしい。<br />
「ありがとうなハルヒ、いやみんな。俺なんかのために色々付き合ってくれて」<br />
ハルヒが動けば何か変化があるかとは思ったが、結局何もなかった。この世界では俺はSOS
団のメンバーではないし、ここで引いておくのが賢明だろう。正直、これが駄目で後は何をすべきなのか全く分からない。鍵が見つからないし、そもそもの鍵を集めれば元の世界に戻れるという保障もない。<br />
広がる沈黙。しかしそこで朝比奈さんが手を挙げて、<br />
「あ、あのっ、みんなで七夕にお祈りとかしたらどうですかっ?」<br />
と突然提案した。<br />
今何と言いました? お祈り?<br />
「はい、あの、七夕って短冊にお願い事を書いて織姫と彦星にお祈りするんですよね?」<br />
お祈りとはちょっと違うと思いますが、確かにそうですね。<br />
「それで、みんなで七夕にお願い事しませんか? 笹とか、短冊とか用意して」<br />
なんと朝比奈さんらしい、いじらしい提案だろう。しかし、中国の伝説の登場人物に願い事をしたぐらいでそう簡単に叶うものとは思えないんだが。<br />
「あのね、みくるちゃん。織姫と彦星の元になってるベガとアルタイルって、どのくらい遠くにあるか知ってる?」<br />
「えぇっ? うーんと、えっと」<br />
「二十五光年と十六光年よ? 光の速さで願い事が届いても、折り返しの時間を考えればそれぞれ五十年と三十二年かかるの。そんな時間まであたしは願い事を待ってられないわ」<br />
ああ、その言葉をそのまま一年ほど前のハルヒに言ってあげて欲しい。<br />
ハルヒの言葉を聞いて、朝比奈さんは完全に黙ってしまった。朝比奈さん、そのお気持ちだけで充分です。俺の事はもういいですから。<br />
「僕は朝比奈さんの言うことも一理あると思いますよ」<br />
そう口を開いたのは古泉だ。なんだいきなり。<br />
「確かあなたの世界の話では、中学生の涼宮さんが七夕に落書きをして、それが客観的な時間軸における様々な出来事の始まりだったそうじゃないですか」<br />
「ああ、まあそうだが」<br />
よく覚えてんなお前。<br />
「だったら、一度やってみるのもいいかもしれません。それをきっかけに、何かが起こるかもしれないとは思いませんか?」<br />
ハルヒがぴくりと動いた。こいつ、ハルヒの興味を湧かせるツボを心得てやがる。何があなたの話は涼宮さんにとって理想を体現しすぎている、だ。<br />
「……確かにそうね。織姫と彦星。一度やってみる価値はあるかもしれないわ」<br />
ハルヒの表情がみるみる明るくなった。<br />
「じゃあ、月曜日はみんなで短冊を書きましょう! 必要なものはあたしがあたしが用意するから!<br />
キョン、当然あんたも来るわよね?」<br />
ハルヒがやたら攻撃的な笑顔を俺に向けた。へいへい、どうせ断ったって無理やり部室まで引っ張ってくるんだろ。<br />
「分かったよ、俺も部室に行くって」<br />
その言葉を聞いて、ハルヒがにっと笑った。<br />
「決まりね!」<br />
どうせなら、その笑顔をSOS団の団員として見たかったよ、俺は。<br />
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