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α-11  光っている物体を手にしている長門は、なにか考えていた。いや考えていたのではない。こいつが今してる表情を何度か見かけたことがある。人間にはわかりえない、宇宙人同士で何かやり取りしているときの表情だ。危険ではないんだよな、長門。しかし数十秒後その物体は発光し終えたらしく、長門は風呂敷を解いた。そしてこう言ったんだ。  「異世界の喜緑江美里との同期を完了」  喜緑江美里ってのはお前の仲間の人だよな?それに異世界ってなんだ?すると長門こう説明し始めた。  「異世界の喜緑江美里によると、あちらの世界にも私たちが存在している。世界を構成する物質はこちらと同じ。ただ異なる事象がいくつか存在する。それらを踏まえ推測すると数日前、今私たちが存在している世界と異世界の喜緑江美里が存在する世界の二つに分裂していると思われる。しかしその原因は不明」  長門が言い終えた瞬間、部室のドアが開いた。そこには・・・忘れるはずも無い憎き存在である藤原と、さっきまで試験を受けていた女子がたっていた。  「まさかそいつがここにあるとはな」  いけ好かない顔をして藤原は言った。その途端、二人は俺に向かって走ってきた。  「危ない!」  古泉の声と朝比奈さんの悲鳴が部室に鳴り響く中、長門も俺を助けるように飛び掛ってきた。だが不運といえよう。藤原の手のほうが若干早く届き、何度か味わった目眩を覚えた。  目を覚ますと、俺は長門の膝に寝ころむように倒れていた。辺りは暗くなっており、蒸し暑さを感じる。蒸し暑いってもんじゃない、かなり暑い。ここはまさか・・・  「ひとまず成功したと言えよう。だが望まぬものも連れてきてしまった」  声の聞こえるほうを見ると、藤原とさっきの少女が立っていた。  「くそったれ、何がしたいんだ」  「お前ならもう気づいているんじゃないのか」  やはり今から四年前の七夕に来ているのか。  「その通り。お前にしてほしいことがある。その前に・・・」  藤原はそう言い、少女を見た。  「こいつがだれか気づいていないのか」  俺もその少女を見る。やはりどこかでみかけているのだが思い出せない。すると少女は髪を手櫛で整え始めた。  「まだ分からんのか」  藤原は言う。少女は整え終えたらしく、俺にこう言った。  「やはり君は鈍感だよ。それが君の長所でもあり短所でもあると言えよう」  なんで急にそんなしゃべり方をするんだ。いや、この口調と声に聴き覚えがあるぞ。  「佐々木、お前か」  「くっくっ、やっと気づいたようだね」  背格好は俺の知っている佐々木よりも小柄ではあるが、間違いなく佐々木だった。  「どうしてお前はこんなところにいるんだ」  「それは、彼に説明してもらおうじゃないか」  佐々木に促され、藤原は説明した。  「この時代で起きた事象はわかるだろう。お前が涼宮というやつの手伝いをし、きしくもそいつに時空改変能力が備わってしまったことだ。今からそいつの邪魔をし、・・・まあそれは俺がやろう。この時代の佐々木を呼び出して涼宮というやつにやったことをそのままそっくりやらせて欲しいのさ」  つまり、ハルヒが力を得る前に、佐々木に宿らせようってことなのか。なぜそんなことをしなくてはならん。  「いやだといったら」  「その権利はお前にはないはずだ」  権利とかは関係ないだろう。  「判断する必要がないといえる。そこにいる宇宙人に何も聞いていないのか。なら俺が説明しよう。お前たちがいた世界が分裂したのは知ってるな」  ああ、さっき長門がなぜかあそこにあったオーパーツを使って知りえたんだ。異世界が存在しているってな。  「ふっ。やはり、そうか。異世界が存在していると言ったな。残念ながらお前たちが認識している世界の方が異世界なんだよ」  こいつは何を言い出すんだ。どっちが正規の世界であるかどうかでは、上書きするかされるかってことじゃないのか?  「やはり下らん考えの持ち主だな。上書きするしないの話でない。お前の認識する世界は仮定の世界なんだよ。ふっ、お前の友人でもある佐々木が消された世界なんだ」  確かに先週の土曜日あってから、一度も見てない。とはいえそんなに頻繁会ってたわけではなく知るすべもないが。  「彼の力のおかげでキョン、今の君がいる世界にこれたんだ。姿かたちは九曜さんに変えてもらったよ。いきなり背がちじんで驚いた。それから私自身を探したよ。どこにもいないんだ。それも九曜さんに教えてもらった」  変貌してしまっている佐々木はそう言葉を足した。しかしなんで消えちまってるんだ?  「相変わらず鈍いやつだな。お前の身近にいつもいるだろう」  促すように藤原が言う。まさか長門、お前じゃないよな。いやそれは違うだろう。いくらこいつが万能でも、世界を変えるなんてことを二度とそんなことはしないはずだ。去年の冬に長門が世界を改変させてしまった後、長門に芽生え始めている感情を見ればするがずがない。こいつはあのときから強い意志をもっているんだ。心情に変化があっても俺だけではない、古泉や朝比奈さんも何か違うって気づくはずさ。万が一に改変したとしても、俺たちに相談なくしてすることはない。  じゃあなんだ、やはりそんなことをしたのは・・・  「気づいたか」  ハルヒか。なんでこんなことをした。さらに藤原はこう説明した。  「あいつの時空改変能力が弱まってきてるんだ。お前も仲間連中から知らされているな。力が弱まっている状態で世界を分裂させたらどうなる。そいつの意思が反映された世界は程なくして消えてしまう。お前たちが認識している世界の方が消されるんだ。もともとありえない世界なんだからな」  こいつの言うことには信用できん。しかしそれまで黙っていた長門は、  「彼の言う通り、私たちが認識していた世界の方が異世界である確立は高い。向こうの喜緑江美里と同期を行った結果、あちらでは佐々木と呼ばれる生命体の存在が確認されていた。しかし昨日、一つの生命体の消失を確認。同時刻我々が認識している世界にて一つの生命体の増加を確認。しかし両世界においてその生命体の特定には至らなかった。原因は恐らく九曜周防と呼称される個体の影響によるものとされる」  長門までそう思っているのか。返して藤原はこう言った。  「おや、そこまで太刀打ちできてたんだな。あの九曜とやらもたいしたこと無いな。理解したなら話を進めよう。正史であるお前たちの知らない世界では、そこにいる宇宙人が九曜によってやられかけているんだよ。命、ふっ、宇宙人に命があるのかどうか知らんがまもなく消滅するはずさ」  何言ってやがる。しかしさっき長門は向こうの喜緑さんと同期したんだよな。なんか言ってくれ。  しかし、長門の表情を見てられない。でも見てしまった。俺に気を使ってその事は黙っていたのか。  「・・・・・・」  無言のまま長門は頷いた。  「ここで取引しようじゃないか。お前にそんなことしたくなかったがな」  なんなんだ、言ってみろ藤原。  「これからさっきもいったように、この時代の佐々木を連れてきてあの模様を書くんだ。そうすれば正規の世界にいる宇宙人は助けてやろう。これは本当だ。俺にとってはそもそも殺す必要が無いんだがな。分かっただろう。お前に選択権は無いんだ」  本物の長門を助けるためにそうしろってか。どうしたらいいんだ。  「待って」  長門が俺に話しかけた。  「あなたが彼の示す行動をすれば・・・朝比奈みくるが存在しない未来になる危険性がある」  それは本当か?そう長門に聞きなおすと、藤原は会話を挟むように言ってきた。  「知っていたのか。それならしょうがないな」  「・・・・・・」  長門はまた無言のまま頷いた。ハルヒが力を失うかのか、佐々木が力を得るかのかだけじゃない。朝比奈さんの未来、つまり朝比奈さん自身の命と本当の世界にいる長門の命が天秤にかけられている。どうしたらいいんだ。しかも何で俺が決めなくちゃいけない?  「キョン、聞いてくれないか」  佐々木が言う。  「僕はここに来る前、元にいた世界のキョンと話してきたんだ。そこの彼や橘さん、九曜さんも交えてね。橘さんはこういってたよ。力は涼宮さんじゃなく僕に移すべきだって。そうした方が世界にとって安全だからって。でも僕は力を望むような性格ではないし、持ったら持ったで萎縮してしましそうだ。間違いなく精神を病む。だけど・・・」  そこまで言うと、今度はためらいがちに、  「涼宮さんが僕を消そうとする世界があるってそこの彼が教えてくれたんだ。よりによって僕とはね。そのときは信じれなかったよ。でも実際君のいる世界に来て、どこをどう探しても自分が出てこない。驚いたよ。本当に自分が消されているんだってね。涼宮さんにはがっかりさせられたよ。・・・そんな涼宮さんよりも僕がその力を持ったほうがいいのかな。いや今は持つべきだと思っている。・・・キョン、君はどう思う?」  いい終えた佐々木は俺に尋ねてきた。  なあ、長門。お前にはいつも助けられてきたよな。お前がいなかったら俺は何十回も死んでるんだろうな。始めあった時は無口で、口を開いたと思えば電波話を始めて。そんなお前は気づいていないだろうが、少しずつ感情を身につけてきてるんだ。それってすごいことだと思わないか?  なあ、朝比奈さん。いつも部室でおいしいお茶を飲ませてくれる可愛らしい先輩。ドジッ子メイドのあなたがこの先どんだけ苦労すればあの大人の朝比奈さんになれるんだろうってくらい、あなたは頑張るんですよ。今も頑張ってるんでしょうね。そして、もっと未来にいる大人びた朝比奈さんにも聞きたい。あなたの言っていた大きな分岐点てこのことなんでしょうか。俺にはつらすぎる。長門と朝比奈さんのどっちを守ればいいんだ・・・  「はっはっ」  今の俺には搾り取るような声しか出ない。高校に入学して一年たつのか。SOS団で色んなことがあったっけなあ・・・あはは、本当に走馬灯って見えるんだな。俺が死ぬわけじゃないのにこんなのが見えるなんて。  仕方ないから、古泉、お前も思い出してやる。なんだかんだで高校入ってから一番話してるのはお前かもしれないな。お前の下らん推理をいつも聞いてるんだ、今日くらい俺にも愚痴らせてくれよ。  なあ、ハルヒ。入団試験させられたけどやっぱり俺には団員の資格は無かったのかもな。まあこいつらがいう本当の世界では入団試験があるのかどうか分からないが。今の自分が情けないよ・・・なあ、ハルヒ・・・    最後になぜか、ハルヒが俺にだけ出した問題を思い出していた。  SOS団内での恋愛はできる?その時の回答がよぎる。そうか、単純なことなのかもしれないな。こんな時にハルヒに力づけられるなんて。俺は佐々木に近寄っていた。  「なあ、佐々木。俺が悪かった。お前の好きなようにしてほしい」  ふっ、という藤原の声が聞こえた。やはりそうきたかって言ってやがる。俺はお前に言ってるんじゃない。おれは言葉を続けた。  「もとはといえばハルヒがやったことなんだからな。だからもしお前が力を持ちたいんだったら、おれもそうできるように行動する。ハルヒのやつがお前を消そうと思ってたなんてな。そりゃびっくりするだろう。俺もお前の立場だったらそう考えるかもしれないな。逆に力を持ちたくないなら俺は何も行動しない」  その代わりだ、佐々木。  「お前がどっちを選ぼうと、残ったSOS団たちが黙っていないぜ。」  佐々木は黙ったままだった。藤原はあきれた顔をして言った。  「下らん。仮に佐々木に力が移ったとしよう。朝比奈とやらの未来は消え、涼宮の力が消える。反対に移らなかったらそこの宇宙人は消え、お前はこの時空に取り残されることになるぞ」  そんなことは分かっている。誰が消えようと、誰が異次元に飛ばされようと、誰かの力がなくなろうと、残ったやつらで反撃するさ。俺がいなくなっても他の四人が何とかしてくれるに違いない。  俺は思い出していた。ハルヒに振り回されて楽しくなかったのか、SOS団があって楽しくなかったのか。俺は佐々木ににこういった。  「俺はハルヒに関わって色んな体験をしてきたんだ。そして何度も考えされられた。ハルヒやそいつ取り巻く人たちと過ごすのが一番楽しいって気づいたんだ。その代わりハルヒがしでかしたことには責任を持ちたいんだ。SOS団員みんなでな」  もちろんハルヒにも責任を取ってもらおうじゃないか。  「だからその前に一度ハルヒ謝らせてやる。佐々木、お前にだ。お前を消そうとしてたことをいってやる。今までのこともすべても話してな」  俺には切り札がある。ハルヒに向かって俺はジョンスミスだって言えばすむことだ。切り札は取ってけっていってたよな。古泉よ。  「僕の負けだよ」  ずっと下を向いていた佐々木が俺を見ながら言った。  「まさかそんな風に考えていたなんてね。涼宮さんをうらやましく思うよ。もちろん長門さんや朝比奈さん、古泉さんも。僕の完敗さ。僕が力を持ってもそこまで考えてくれる人はいないかもね。藤原くん、こんなことはやめにしないか?」  「実にくだらん。佐々木、お前もここに来ている時点で選択権は無いんだ。お前もすでに共犯者なんだよ」  藤原は佐々木に向かって言う。そいつは違うぜ。佐々木は本当はこんなことしたくなかったんだ。俺の状況がうらやましいって言ったんだ。誰かを必要とし、誰かに必要とされる状況を。お前は高校に行ってそんな環境に運悪く出会えなかった。そんな中こいつや橘、九曜に誘われて半強制でやらされているようなもんだ。ましてハルヒがお前を消したがってるって知ったらな。お前は何も悪くないんだ。  藤原は俺に向かって言った。  「いいか、いまさら止めにしようなんて馬鹿馬鹿らしいことだ。お前の頼りにしているそこの宇宙人も、自分が死ぬか他の誰かが死ぬかで判断できていないんだ。お前は俺の指示に従うしかないんだよ」  長門を見ると、長門は今までに無く悲しい表情をしている。そんな表情じゃなくて他の表情を見たかったよ。だが長門、どう世界が転ぼうとお前も助けに行くぞ。SOS団みんなでな。それが終わったら他のいろんな表情を見せてくれないか。  「くそったれ」  藤原に向けて言ってやった。  奇跡は訪れた。その瞬間、俺たちの前に誰かが不意に現れた。壁からひょっこり出てきたとかじゃない。突如として姿が見えたんだ。しかも二人。俺の良く知っている人物さ。  「ふぇ~ん。キョンくん、長門さん大丈夫ですか」  北高に在籍している方の朝比奈さんと、  「あなたの言ってた通り、時間旅行とやらは少し気持ちが悪くなるものですね」  その肩につかまっている古泉だ。  まさかこの二人は九曜を倒してここにこれたって言うのか?そこにいた四人全員驚いていた。あの藤原でさえも。  「あの、わたし、キョンくんと長門さんが消えてから未来と連絡しようとしたんです。そしたら取れなくてぇ。そしたら古泉くんが時間移動はできますかって。・・・禁則でうまく言えないけど、未来と連絡取れないけどやってみようかなあって。こんなことするの初めてだし、きっと禁則に関わることだからいけないことだと思ったんです。でも二人を助けなきゃあって。そしたらできたんです」  あたふたしながら朝比奈さんが話した。  「あなたちが連れ去られてから考えました。そこにいる藤原さんの目的はここに来ることだと。さっき朝比奈さんがおっしゃったように尋ねてみたのです。どうやら九曜という方は、時間移動までは制御できなかったみたいですね。少し遅れてしまいました」  古泉は補足するように話した。格好よくおいしい場面で登場できてうれしそうだな。  さあ藤原、どうする。おれたちには朝比奈さんと古泉が味方に来たんだ。元の時間に戻ってから思う存分たってやる。  七夕の夜に柄にも無く風が吹いている。程なくして藤原はこういった。  「・・・まさかお前が最初にやれた人物とはな。仕方ない。このことは俺にとっての規定事項だったんだろう。ほめてやる、朝比奈とやら」  こんな時にもこいつ呼ばわりしている。お前を殴ってから元の時間に戻ってやろうか。  しかし、そうする暇も無く、藤原は消えていった・・・  「ひとまず戻りましょう。朝比奈さんまたお願いできますよね。あなたは・・・佐々木さんでよろしいですね。さあ皆さん」  古泉、お前が先導するな。やるのは朝比奈さんだろう。ようやっと活躍することが出来たんだ。禁止されていることまでして。しかしよくこいつが佐々木って気づいたな。  「さすがに今の姿を見たら分かりますよ」  俺が分かるまで時間がかかったのに。女性に関してはやっぱりお前の方が一枚上だな。  「みなさん、わたしにつかまってくれますか?」  はい、もちろん朝比奈さん。  「佐々木、お前も早く来い」  佐々木の手をとって朝比奈さんに近づく。よし戻ろうじゃないか。これからやることはたくさんあるだろうしな。  俺たち五人が部室に戻ってきた。やっぱり時間移動は何度やっても慣れないな。無人であるはずの部室には、九曜と橘が待っていた。  「参りました。九曜さんにお願いしてあなたたちの様子を教えてもらったのです」  橘が言う。いきなり参られても困るな。  「藤原さんの手段でダメだったらダメなのです。九曜さんは藤原さんがいなくなったらこれ以上手伝ってくれないと言っているのです」  「おい、向こうの世界にいる長門は平気なんだろうな」  すると、九曜は途切れ途切れに言った。言ったでいいよな?何か聞こえるし。  「―――平気――安心――して――」  本当だろうな?  「既に九曜さんが行ったすべての力を解除してもらっているのです。こちらの世界もあちらの世界もです。もう仕方ないのです。詳しくはあちらの世界に戻ってから佐々木さんに聞いて欲しいです」  「――バイ――バイ――」  そう言うと、橘は九曜と共に部室を出て行った。一年生として北高にやってきた少女、佐々木はいつもの佐々木に戻っていた。その世界とやらにいつ戻れるんだ?長門なら分かるよな。  「今私たちが存在しいている世界は薄れてきている。消えるのはおよそ五分後」  五分か。ギリギリ間に合ったな。そんな時に限ってあいつが登場してきた。もっとも変わった登場の仕方だ。長門、古泉、朝比奈さんの携帯がマナーモードでいっせいに震えだした。  「おや、どうやらあなたの筆記試験の答えが三人に送られてきていますね。これはあなたにだけ出された問題に対する答えでしょうか」  「ひえっ、キョンくん、こんなことを書いたんですかあ~」  「・・・・・・・・・」  長門、沈黙はかえって恥ずかしいぞ。  そこに書いていることはこうだろう。ハルヒが俺の気持ちを再認識させてくれた答えだ。何せ俺が出した回答だから送られてきている内容は分かるが。しかし三人の携帯にはこう映し出していた。  問題「SOS団内での恋愛はできる?」  回答「できる。現に俺はいまそうしてる。SOS団を愛してる。四人を愛している。だからみんなも同じように俺を愛してくれ」   『これさっきキョンが書いたやつだけど、みんなどう思う?あたしは体中に悪寒が走ったわ。気持ち悪いったらありゃしない。こんなこと書くなんて・・・まあ少なくともあたしたちに対する愛情は感じられたわ。明日みんなでこのことについて話しましょ。もちろんキョンを除いて四人で。どうやったら一番馬鹿にできるか考えたら吹き出してしまいそうよ。でもキョンの事も一理あるわ。あたしはみんなのこと大切に思ってるんだから。それじゃあまた明日』  「おやおや、これはこれは。あなたはそんなことも言えるんですね」  「キョンくん、あたしはずかしいです~」  「・・・・・・・・・」  三者三様の感想が述べられる。おいおいなにか変なこと書いてるんじゃないだろうな。  そういや、こっちの世界が偽者だって言ってたな。元に戻ったら今の俺たちの記憶はどうなるんだ?  「・・・・・・」  長門は分かるのか?  「私のの記憶は共有することが出来る。しかしあなたたちは共有できない」  そうなるか。まあそれでいいのかもしれないな。  「但し・・・」  長門は続けた。  「世界が融合する瞬間、この物質に触れていればあなたたちも記憶を共有することが可能。世界を構成する物質は向こうの世界が反映される」  前言撤回。ならそうするさ。こっちの世界で得られたものを簡単に失いたくない。だけど佐々木はどうなるんだ?あっちの世界には今いないんだよな?まさか消えてしまうとかじゃないよな・・・  「私に任せて」  こいつがそういうなら任せていいだろう。九曜の力が取り除かれているんだから今のこいつは万能選手に復活したんだ。佐々木、お前に言いたいことがたくさんあるんだ。  佐々木は、分かったとだけ言葉にした。  「まもなく世界が融合する」  そこにいた五人はみなオーパーツを手にした。ほどなくして、また光り始めた。 β―11  オーパーツから発せられる光が止まった。何が起きたんだ。  「異世界の長門有希との同期を完了」  喜緑さんは、今まで耳にしたことの無い口調で言った。  「どうやら、世界が分裂しているようです。あちらの世界の長門さんが言うには・・・」  夢のような話を説明された。チンプンカンプンだが喜緑さんのいうことを信じるしかない。そのオーパーツは役に立ったのですか?  「これは同じ時間平面なら、あらゆる次元において存在できるものなのです。こちらの世界でこれが動けば他の世界でも動く。私と向こうの長門さんはそれを利用して記憶を共有することができたのです」  この骨董品がそんな代物だったなんて。鶴屋さんが言ってたな。三百年前にはありえない技術で作られているって。それを作ったのは大体想像できるが・・・  俺たちに余裕が無いことをすっかり忘れていた。部室に九曜と橘が入ってきたのだ。  やばい、こんな時にこいつらがやってくるなんて。  「任せてください」  喜緑さんは九曜を見ている。見ているというより、睨んでいるようにも見える。  「―――なぜ――」  九曜はそういって、体を動かせていない。なぜと言うからにはきっと喜緑さんが目に見えない攻撃をしているのだろう。長門が倒れている今、ものすごく頼りになる。この人が味方でよかった。  「どうやら、事が分かったようですね。安心してください。この世界は本物の世界なのです」  橘の言うことに何を安心していいのか分からないが。  「お前たちは何が目的だ」  「このまま時間を過ごして欲しいのです。あなたたちを封じ込めることができると思ったのに。長門さんじゃなくてこのお方を先に封じ込めるべきでしたね。九曜さんがこんなにてこずるなんて思ってなかったです」  ああ、そうだろう。九曜に対してこんなにも対抗できてるんだからな。というか喜緑さん、そんな顔して長門よりも強いんですか?  「私と長門さんとでは状況が違かったの。大体おなじですよ」  見てるとそう思えんが・・・  「あなたは黙っていてください。私はあちらの世界のあなたに興味があるのです」  橘が変なことを言う。何で偽者の世界に興味があるんだ?まさか・・・  「おい、まさかむこうの世界には藤原がいるんじゃないだろうな」  「よく分かりましたね」  分かったもなにも、今ここにはあの野郎がいないじゃないか。  「ちくしょう」  喜緑さんを見る。しかし喜緑さんは九曜と向き合ったまま静止している。これ以上助けを求めることができないのか。せめて古泉を呼ぼうと思い携帯から電話をかけるがつながらない。  「そんなことは無駄なのです。九曜さんにお願いしてあります」  やはり九曜の方が一枚上手って訳か。こいつは何者なんだ?長門たちとは違う宇宙からきてるんだよな。天蓋領域だっけか。  情けなかった。時間にして三分もたってないだろう。そんな短い時間危機に立たされているのに、俺はなにもすることが出来ずにビクビクしているしかできなかった。しかしその時、あのいけ好かないやつ、藤原が部室にやってきた。  「九曜、やめるんだ。橘、もう終わりだ」  なんだ、こいつらの味方じゃなかったのか?  「ふっ、またお前か。まあいい。どうやら失敗したようだ。向こうの世界のそいつに毒されて佐々木が怖気つきやがった。それならまだしも俺の生命に関わることが起きてしまったんだ。残念ながら俺は手を引く。これは俺にとっての規定事項だったみたいだ。だから橘、お前も手を引け。お前は俺がいないと何もできんだろう」  相変わらず口の悪いやつだ。味方に言う言葉か?それにしても、向こうの世界の俺は何をしたんだ?  「分かったのです・・・九曜さん止めて下さい・・・」  「―――了――解――」  するとさっきまでにらみ合っていた二人は目を閉じた。そして喜緑さんが俺に可憐な顔を向ける。終わったのか。  「どうやら無事に済みそうですね」  喜緑さんは言う。  「ふっ、せいぜい生き延びるんだな。俺たちだけではなくほかのやつらが襲ってくるかもしれない。これは忠告だ」  「・・・残念ですが一旦私たちは手を引きます」  「――バイ――バイ――」  そう言い残し三人は去っていった。本当に大丈夫ですか?  「ええ、おそらく」  喜緑さんはそういうと、例のオーパーツを手にした。瞬くや、またしてもそれは光始めた。また同期とやらをしているのですか?  「もうすぐあちらの世界は消滅するようです。あちらの世界もすぐお分かりになられますよ」 →[[「涼宮ハルヒのビックリ」第六章]]へ

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