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涼宮ハルヒの仮入部~ソフトボール部編~」(2020/03/12 (木) 14:08:59) の最新版変更点

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<div class="main">ヒュン・・・ヒュン・・・<br> <br> 先ほどから、あたし達ソフトボール部に入部した人たち、それと仮入部の人は素振りをやっている。<br> <br> ヒュン・・・ヒュン・・・<br> <br> 風を切る音がどこか懐かしい。<br> それよりも先ほどからあたしの隣で、ブンブンバットを振ってる<br> <br> 涼宮ハルヒ<br> <br> 同じ中学出身で、今は同じクラス。<br> そりゃもう、あの奇人っぷりときたらすごかった。<br> なんていうかね、呆れるね。ある意味すごいよ。<br> 何度かあたしも被害者になったけど、この子は忘れてるんだろうなー。<br> それにしても、よくもまあ、あそこまで怒られて、面倒くさいことわざわざやったよ。<br> しかも、高校入っても、入学式早々、すごいこと言ってたし。<br> 誰かこの子に教えてあげて、現実というものを。<br> あたしはもうあきらめた。<br> ただ、荒川のようにバカにするような言い方は逆効果だからそれはダメだよ。<br> <br> ところで涼宮さん、バットは適当に振ってりゃいいってもんじゃないよ。<br> もっとこう、ボールが飛んできたところをイメージして・・・。<br> <br> <dl> <dd>カキーン<br> <br> 先輩方は横でソフトボール部っぽい練習をしている。<br> あたしもやりたいよ。本当に。<br> <br> 「一回通しでやってみる?」<br> 「でも、2チーム作るには2、3年だけじゃ人数足りないよ」<br> 「1年も入れればいいじゃん。中学のときにやってた子とかいるでしょ」<br> <br> なにやら、先輩方が話してらっしゃる。<br> これは、チャンスじゃない?<br> <br> 「ちょっと1年生ストップ!今からあたし達、試合を通しでやりたいんだけど、二人ほど必要なんだ。誰かやりたい人いる?」<br> もちろん、あたしは手を挙げる。<br> ここで、活躍を見せれば評価もアップアップ。<br> でも、挙手率高そう・・・って思ったんだけど、みんな恐れ多いと思ったのか、手を挙げてるのはちょうど二人だけ。<br> あたしと・・・涼宮さん。<br> <br> 「じゃあ二人こっち来て。えっと、一人はピッチャー、一人はライトお願いしたいんだけど」<br> なんと!ピッチャーというものすごくいい位置が余ってますか。<br> しかも、あたしは中学のときのソフトボール部では、ピッチャー。<br> すかさずあたしは、<br> 「あたし、中学のときにソフトボール部でピッチャーやってました」と言う<br> 「そう、ならあなたピッチャーお願い。こっちのあなたは、ライトね」<br> <br> ボールをにぎる。<br> この感触が懐かしい。<br> よし、まずは軽く腕鳴らし。<br> <br> バスッ<br> <br> おっ!どうやら、1年前の感覚をまだ腕は覚えてくれているようだ。<br> 先輩方も一瞬、目の色が変わった。驚きの目だ。<br> よかった。これならなんとか、先輩に認められそう。<br> <br> 「プレイボール」<br> <br> 試合が始まった。<br> あたし達のチームは先に守備。<br> ちなみに、あたしと涼宮さんは別チーム。<br> <br> ボールを投げる。ストライク。<br> もう一度投げる。今度は当たった。<br> だけど、かなーり高い。そのままフライ。アウト。<br> はっきり言って、思ったより中学のときとレベルが変わらない。<br> ちょっと、つまんないかも。<br> <br> そうやって、試合は進んで現在、2回表。<br> 先ほどの1回裏であたし達のチームが3点獲得して現在0-3の圧勝。<br> さらに今は、ツーアウト状態。<br> 今回も0点のまま抑えれそう。<br> <br> ちなみに、次のバッターは涼宮さんである。<br> まあ、あたしは特に気にせず先ほどと同じように投げたんだけど・・・<br> 打たれたのはまだいいとして、これがすっごい飛んだ。<br> レフト方向に高く、遠く。<br> <br> 結局、ボールがあたしの元に戻ってくるのに30秒ほどかかった。<br> もちろん、相手チームは+1点。<br> <br> 知ってはいたけど、やっぱりかなり運動神経がいいみたい。<br> 今度、涼宮さんがバッターになるときは少し投げ方変えてみよ。<br> <br> そして、試合はすすんでいって、現在4回裏に入ろうとしている。<br> 得点は3-7で、まだ勝っている。というよりやっぱり圧勝。<br> ちなみに、残りの2点も取ったのは涼宮さん。<br> 1塁に相手チームがいるときに、またまた涼宮さんがホームランを打ったため。<br> 少し変化球にしたんだけど、それでもダメか。<br> <br> と、ここで部長が、時間かかったので、次の5回裏で終わりにしようと提案してきた。<br> もうちょっとやりたかったけどね。残念。<br> <br> さて、4回裏が始まった。<br> 相手チームのピッチャーがボールを投げる。<br> こちらのチームのバッターが打つ。バッター2塁へ走った!<br> 今回も何点かとれそうだね・・・<br> <br> と思ったんだけど、ここに来て、先ほどまでおとなしかった涼宮さんが動きを見せた。<br> 「あたしにピッチャー替わって」<br> おいおい、それは、失礼に値すると思いますよ。<br> 「だからあんたライトね」<br> と言いながら、ボールを受けとる・・・というより奪い取る。<br> そして、ピッチャーはというと、その姿に圧倒されたのか、そのまま替わることにしたようだ。<br> <br> 「何あの子?先輩にむかって」<br> と言う声が、あたしの近くから聞こえてくるが、あたしは関係ないので、気にしない。<br> ということで、試合再開。<br> <br> 涼宮さんは大きく腕をまわし、ボールを投げた。<br> ・・・ストライク。<br> その次もストライク。<br> そして、その次も。<br> <br> みんな圧倒している。<br> バッターのほうはなぜ当たらないのか分からないような顔をしている。<br> あたしには分かる。<br> 涼宮さんの投げる球は、手元で微妙に変化しているのだ。<br> 上投げならともかく、下投げでどうやったらあんな球投げれるの?<br> 先輩方も苦戦しているよう。あえなくツーアウト。<br> <br> 次のバッターは打てるかな?<br> っていうより、あたしなんだけどね。<br> 9番、高遠。行きます!<br> <br> バシッ。ストライク。<br> バシッ。ツーストライク。<br> やっぱりこの球はクセ球。打てない。<br> <br> あたしは涼宮さんを見る。そしてその手にあるボールを見る。<br> 3回目。打ちたい。というより、打たなきゃならないような気がする。<br> <br> カキーン<br> <br> 何とか打てた。<br> 1塁でストップだけどね。<br> だけど、次の打者でスリーアウト。<br> <br> 5回表<br> 今までの試合の流れを見ても、この試合で終わりそう。<br> あたしもこの試合で終わらせたい。<br> なんか、心の中で変な矛盾がしょうじているような気がするけど、気にしない。<br> <br> あたしはボールを投げる。<br> アウト、そしてツーアウト。<br> 次の打者で終わらしてみせる。<br> 次の打者は・・・<br> <br> 9番涼宮。<br> <br> 今のところ、涼宮さんは2回まわってきて、2回とも打たれた。しかもどちらもホームラン。<br> 今度は・・・打たせない。<br> <br> あたしは涼宮さんの目を見た。彼女も無愛想な顔でこっちを見てくる。<br> でも、どこか真剣な印象を受ける。<br> あたしは、ボールを投げた。<br> <br> パシッ<br> <br> ストライク。涼宮さんは驚いてる様子。<br> あたしは、安堵の息をもらす。<br> 2回目もストライク。涼宮さんはどこか悔しそう。<br> でも、次で終わらしてみせる。<br> <br> 少し風が吹き、運動場の砂がまった。<br> あたしは、今までにない以上の力をこめて腕をまわし、ボールを投げた・・・<br> <br> カキーン<br> <br> 打たれてしまった・・・<br> でも、呆然としている暇はない。ボールを目で追う。<br> 勢いよく投げて、勢いよく打たれたせいか、かなり遠いところまで飛んでいく。<br> まずい、またホームランだ・・・<br> <br> と、思ったんだけど、あまりにも遠くまで飛んでいき、現在球拾いさせられている野球部のもとまで行き、<br> その人がボールを拾い、こっちに投げてきた・・・<br> それを、レフトの人が受け取り、それをあたしのところまでパス回し。<br> 現在、涼宮さんは三塁と本塁の間で走っている。<br> なぜかあたしは悩んだ・・・<br> これを、投げるべきかどうか・・・<br> <br> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・<br> <br> 結局、あたしはその球を本塁に投げて、スリーアウト<br> ついでに、ゲームセットとなり、3-7であたし達のチームが勝った。<br> なぜか、やるせなーい気持ちになる。理由はなんとなく分かるけど。<br> <br> 「じゃあ、あたしやめます」<br> 涼宮さんはそう言って、放課後は更衣室となっている教室まで戻っていく。<br> 先輩には、残念がる人、なんとも思ってない人、安心してる人といろいろいるが、圧倒的に残念がる人のほうが多い。<br> そして、なぜかあたしは、<br> 急いで、涼宮さんをおいかけた。<br> <br> 教室<br> 「何でついてくるの?あんたはもう入部したんでしょ?じゃあ、まだ掃除とかしなきゃなんないんじゃないの?」<br> 涼宮さんは着替えながら、後から入ってきたあたしにそう言ってきた。<br> 「先輩達は、あなたが入部しないことに残念がってるよ。本当にやめちゃうの?」<br> 「こんな普通の部活つまんないのよ。それとも何?あんたあたしに入ってほしいって言うの?」<br> あたしは正直に言った。<br> 「うん」<br> それを聞いた涼宮さんはビックリしているよう。<br> 「あんた東中よね?確か、昔あんたにも『現実を見な』って言われた覚えがあるけど」<br> 「だから、その機会を与えようと・・・」<br> 「うるさい!」<br> 相変わらず、反抗的。<br> でも、あたしは言葉をつづけた。<br> 「あたし、投球には自信あるからさ。あんなに勢いよく打たれて、ちょっと悔しかった」<br> 「なら、あたしがいないほうがいいでしょ」<br> 「でも、楽しかった」<br> 一瞬、涼宮さんの動きが止まる。<br> でも、すぐに涼宮さんは体操服を無造作に鞄に入れ始めた。<br> そして、入れ終わると、あたしがいることになんとも思わないで、出て行こうとする。<br> <br> 「涼宮さんはどうだった?」<br> あたしは、教室から出て行こうとする涼宮さんに尋ねた。<br> 「楽しかった?」<br> 涼宮さんの動きは止まっている。<br> そして、ゆっくりと、あたしのほうを振り向いて、言った。<br> 「少しはね」<br> そう言ってくれると思った。<br> 涼宮さんにその言葉を言わせれたことで、あたしは満足。<br> 「でも、あたしが求めてるのはこの程度の楽しさじゃないの。あんただって分かってるでしょ?」<br> 分かってる。<br> 涼宮さんが求めてるのは宇宙人や未来人や超能力者だということ。<br> 「普通の人間の相手してるヒマはないの」<br> そう言ってから、涼宮さんは教室を出て行った。<br> 昔、どっかの男から聞いた。<br> 涼宮さんに振られたときにそう言われたと。<br> 窓から、校庭を見てみる。<br> どうやら、ソフトボール部は片付けに入ってるらしい。<br> ちょっと怒られるかもね。<br> でも、まあいっか。<br> <br> 一瞬だけど、初めて涼宮さんの笑顔を見て得した気分だし。<br> </dd> </dl> </div> <!-- ad -->
<div class="main">ヒュン・・・ヒュン・・・<br /> <br /> 先ほどから、あたし達ソフトボール部に入部した人たち、それと仮入部の人は素振りをやっている。<br /> <br /> ヒュン・・・ヒュン・・・<br /> <br /> 風を切る音がどこか懐かしい。<br /> それよりも先ほどからあたしの隣で、ブンブンバットを振ってる<br /> <br /> 涼宮ハルヒ<br /> <br /> 同じ中学出身で、今は同じクラス。<br /> そりゃもう、あの奇人っぷりときたらすごかった。<br /> なんていうかね、呆れるね。ある意味すごいよ。<br /> 何度かあたしも被害者になったけど、この子は忘れてるんだろうなー。<br /> それにしても、よくもまあ、あそこまで怒られて、面倒くさいことわざわざやったよ。<br /> しかも、高校入っても、入学式早々、すごいこと言ってたし。<br /> 誰かこの子に教えてあげて、現実というものを。<br /> あたしはもうあきらめた。<br /> ただ、荒川のようにバカにするような言い方は逆効果だからそれはダメだよ。<br /> <br /> ところで涼宮さん、バットは適当に振ってりゃいいってもんじゃないよ。<br /> もっとこう、ボールが飛んできたところをイメージして・・・。<br />   <dl> <dd>カキーン<br /> <br /> 先輩方は横でソフトボール部っぽい練習をしている。<br /> あたしもやりたいよ。本当に。<br /> <br /> 「一回通しでやってみる?」<br /> 「でも、2チーム作るには2、3年だけじゃ人数足りないよ」<br /> 「1年も入れればいいじゃん。中学のときにやってた子とかいるでしょ」<br /> <br /> なにやら、先輩方が話してらっしゃる。<br /> これは、チャンスじゃない?<br /> <br /> 「ちょっと1年生ストップ!今からあたし達、試合を通しでやりたいんだけど、二人ほど必要なんだ。誰かやりたい人いる?」<br /> もちろん、あたしは手を挙げる。<br /> ここで、活躍を見せれば評価もアップアップ。<br /> でも、挙手率高そう・・・って思ったんだけど、みんな恐れ多いと思ったのか、手を挙げてるのはちょうど二人だけ。<br /> あたしと・・・涼宮さん。<br /> <br /> 「じゃあ二人こっち来て。えっと、一人はピッチャー、一人はライトお願いしたいんだけど」<br /> なんと!ピッチャーというものすごくいい位置が余ってますか。<br /> しかも、あたしは中学のときのソフトボール部では、ピッチャー。<br /> すかさずあたしは、<br /> 「あたし、中学のときにソフトボール部でピッチャーやってました」と言う<br /> 「そう、ならあなたピッチャーお願い。こっちのあなたは、ライトね」<br /> <br /> ボールをにぎる。<br /> この感触が懐かしい。<br /> よし、まずは軽く腕鳴らし。<br /> <br /> バスッ<br /> <br /> おっ!どうやら、1年前の感覚をまだ腕は覚えてくれているようだ。<br /> 先輩方も一瞬、目の色が変わった。驚きの目だ。<br /> よかった。これならなんとか、先輩に認められそう。<br /> <br /> 「プレイボール」<br /> <br /> 試合が始まった。<br /> あたし達のチームは先に守備。<br /> ちなみに、あたしと涼宮さんは別チーム。<br /> <br /> ボールを投げる。ストライク。<br /> もう一度投げる。今度は当たった。<br /> だけど、かなーり高い。そのままフライ。アウト。<br /> はっきり言って、思ったより中学のときとレベルが変わらない。<br /> ちょっと、つまんないかも。<br /> <br /> そうやって、試合は進んで現在、2回表。<br /> 先ほどの1回裏であたし達のチームが3点獲得して現在0-3の圧勝。<br /> さらに今は、ツーアウト状態。<br /> 今回も0点のまま抑えれそう。<br /> <br /> ちなみに、次のバッターは涼宮さんである。<br /> まあ、あたしは特に気にせず先ほどと同じように投げたんだけど・・・<br /> 打たれたのはまだいいとして、これがすっごい飛んだ。<br /> レフト方向に高く、遠く。<br /> <br /> 結局、ボールがあたしの元に戻ってくるのに30秒ほどかかった。<br /> もちろん、相手チームは+1点。<br /> <br /> 知ってはいたけど、やっぱりかなり運動神経がいいみたい。<br /> 今度、涼宮さんがバッターになるときは少し投げ方変えてみよ。<br /> <br /> そして、試合はすすんでいって、現在4回裏に入ろうとしている。<br /> 得点は3-7で、まだ勝っている。というよりやっぱり圧勝。<br /> ちなみに、残りの2点も取ったのは涼宮さん。<br /> 1塁に相手チームがいるときに、またまた涼宮さんがホームランを打ったため。<br /> 少し変化球にしたんだけど、それでもダメか。<br /> <br /> と、ここで部長が、時間かかったので、次の5回裏で終わりにしようと提案してきた。<br /> もうちょっとやりたかったけどね。残念。<br /> <br /> さて、4回裏が始まった。<br /> 相手チームのピッチャーがボールを投げる。<br /> こちらのチームのバッターが打つ。バッター2塁へ走った!<br /> 今回も何点かとれそうだね・・・<br /> <br /> と思ったんだけど、ここに来て、先ほどまでおとなしかった涼宮さんが動きを見せた。<br /> 「あたしにピッチャー替わって」<br /> おいおい、それは、失礼に値すると思いますよ。<br /> 「だからあんたライトね」<br /> と言いながら、ボールを受けとる・・・というより奪い取る。<br /> そして、ピッチャーはというと、その姿に圧倒されたのか、そのまま替わることにしたようだ。<br /> <br /> 「何あの子?先輩にむかって」<br /> と言う声が、あたしの近くから聞こえてくるが、あたしは関係ないので、気にしない。<br /> ということで、試合再開。<br /> <br /> 涼宮さんは大きく腕をまわし、ボールを投げた。<br /> ・・・ストライク。<br /> その次もストライク。<br /> そして、その次も。<br /> <br /> みんな圧倒している。<br /> バッターのほうはなぜ当たらないのか分からないような顔をしている。<br /> あたしには分かる。<br /> 涼宮さんの投げる球は、手元で微妙に変化しているのだ。<br /> 上投げならともかく、下投げでどうやったらあんな球投げれるの?<br /> 先輩方も苦戦しているよう。あえなくツーアウト。<br /> <br /> 次のバッターは打てるかな?<br /> っていうより、あたしなんだけどね。<br /> 9番、高遠。行きます!<br /> <br /> バシッ。ストライク。<br /> バシッ。ツーストライク。<br /> やっぱりこの球はクセ球。打てない。<br /> <br /> あたしは涼宮さんを見る。そしてその手にあるボールを見る。<br /> 3回目。打ちたい。というより、打たなきゃならないような気がする。<br /> <br /> カキーン<br /> <br /> 何とか打てた。<br /> 1塁でストップだけどね。<br /> だけど、次の打者でスリーアウト。<br /> <br /> 5回表<br /> 今までの試合の流れを見ても、この試合で終わりそう。<br /> あたしもこの試合で終わらせたい。<br /> なんか、心の中で変な矛盾がしょうじているような気がするけど、気にしない。<br /> <br /> あたしはボールを投げる。<br /> アウト、そしてツーアウト。<br /> 次の打者で終わらしてみせる。<br /> 次の打者は・・・<br /> <br /> 9番涼宮。<br /> <br /> 今のところ、涼宮さんは2回まわってきて、2回とも打たれた。しかもどちらもホームラン。<br /> 今度は・・・打たせない。<br /> <br /> あたしは涼宮さんの目を見た。彼女も無愛想な顔でこっちを見てくる。<br /> でも、どこか真剣な印象を受ける。<br /> あたしは、ボールを投げた。<br /> <br /> パシッ<br /> <br /> ストライク。涼宮さんは驚いてる様子。<br /> あたしは、安堵の息をもらす。<br /> 2回目もストライク。涼宮さんはどこか悔しそう。<br /> でも、次で終わらしてみせる。<br /> <br /> 少し風が吹き、運動場の砂がまった。<br /> あたしは、今までにない以上の力をこめて腕をまわし、ボールを投げた・・・<br /> <br /> カキーン<br /> <br /> 打たれてしまった・・・<br /> でも、呆然としている暇はない。ボールを目で追う。<br /> 勢いよく投げて、勢いよく打たれたせいか、かなり遠いところまで飛んでいく。<br /> まずい、またホームランだ・・・<br /> <br /> と、思ったんだけど、あまりにも遠くまで飛んでいき、現在球拾いさせられている野球部のもとまで行き、<br /> その人がボールを拾い、こっちに投げてきた・・・<br /> それを、レフトの人が受け取り、それをあたしのところまでパス回し。<br /> 現在、涼宮さんは三塁と本塁の間で走っている。<br /> なぜかあたしは悩んだ・・・<br /> これを、投げるべきかどうか・・・<br /> <br /> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・<br /> <br /> 結局、あたしはその球を本塁に投げて、スリーアウト<br /> ついでに、ゲームセットとなり、3-7であたし達のチームが勝った。<br /> なぜか、やるせなーい気持ちになる。理由はなんとなく分かるけど。<br /> <br /> 「じゃあ、あたしやめます」<br /> 涼宮さんはそう言って、放課後は更衣室となっている教室まで戻っていく。<br /> 先輩には、残念がる人、なんとも思ってない人、安心してる人といろいろいるが、圧倒的に残念がる人のほうが多い。<br /> そして、なぜかあたしは、<br /> 急いで、涼宮さんをおいかけた。<br /> <br /> 教室<br /> 「何でついてくるの?あんたはもう入部したんでしょ?じゃあ、まだ掃除とかしなきゃなんないんじゃないの?」<br /> 涼宮さんは着替えながら、後から入ってきたあたしにそう言ってきた。<br /> 「先輩達は、あなたが入部しないことに残念がってるよ。本当にやめちゃうの?」<br /> 「こんな普通の部活つまんないのよ。それとも何?あんたあたしに入ってほしいって言うの?」<br /> あたしは正直に言った。<br /> 「うん」<br /> それを聞いた涼宮さんはビックリしているよう。<br /> 「あんた東中よね?確か、昔あんたにも『現実を見な』って言われた覚えがあるけど」<br /> 「だから、その機会を与えようと・・・」<br /> 「うるさい!」<br /> 相変わらず、反抗的。<br /> でも、あたしは言葉をつづけた。<br /> 「あたし、投球には自信あるからさ。あんなに勢いよく打たれて、ちょっと悔しかった」<br /> 「なら、あたしがいないほうがいいでしょ」<br /> 「でも、楽しかった」<br /> 一瞬、涼宮さんの動きが止まる。<br /> でも、すぐに涼宮さんは体操服を無造作に鞄に入れ始めた。<br /> そして、入れ終わると、あたしがいることになんとも思わないで、出て行こうとする。<br /> <br /> 「涼宮さんはどうだった?」<br /> あたしは、教室から出て行こうとする涼宮さんに尋ねた。<br /> 「楽しかった?」<br /> 涼宮さんの動きは止まっている。<br /> そして、ゆっくりと、あたしのほうを振り向いて、言った。<br /> 「少しはね」<br /> そう言ってくれると思った。<br /> 涼宮さんにその言葉を言わせれたことで、あたしは満足。<br /> 「でも、あたしが求めてるのはこの程度の楽しさじゃないの。あんただって分かってるでしょ?」<br /> 分かってる。<br /> 涼宮さんが求めてるのは宇宙人や未来人や超能力者だということ。<br /> 「普通の人間の相手してるヒマはないの」<br /> そう言ってから、涼宮さんは教室を出て行った。<br /> 昔、どっかの男から聞いた。<br /> 涼宮さんに振られたときにそう言われたと。<br /> 窓から、校庭を見てみる。<br /> どうやら、ソフトボール部は片付けに入ってるらしい。<br /> ちょっと怒られるかもね。<br /> でも、まあいっか。<br /> <br /> 一瞬だけど、初めて涼宮さんの笑顔を見て得した気分だし。</dd> </dl> </div>

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