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「スイング・闇/常識エンド」(2009/11/15 (日) 16:12:25) の最新版変更点
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<p> </p>
<dl><dd>
<div style="text-align:center;">
<p>闇</p>
<p> </p>
<hr /><p> </p>
</div>
<div style="text-align:center;">ハルヒの答え</div>
<br /><div style="text-align:center;">
<p>「あなたのみ、オケから引退しなさい」<br />
ハルヒはクラリネットを佐々木に突きつける。行為と意味が反転する。<br /><br />
「で、予定通りこの場所に残りなさい。</p>
<p>あなた一人のために、オケを壊すわけにはいかない」<br />
この場所…すなわち病院。<br /><br />
「わたしたちには佐々木さんが必要なんです」</p>
</div>
</dd>
<dd style="text-align:center;"><br /></dd>
<dd style="text-align:center;">橘が奇声を上げる。<br />
「ずっとあこがれてたのに、佐々木さんがいてくれる、</dd>
<dd>
<p> </p>
</dd>
<dd style="text-align:center;">やっと一緒に音楽を作ってくれるって思ってたのに」<br /><br />
藤原が狂ったように笑う。<br />
「ふっふっふ、あっはっは、あは、そうだよな、そうなんだよな、神は死んだんだ」<br /></dd>
<dd>
<p> </p>
</dd>
<dd style="text-align:center;"><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">
<p>九曜は無表情にフルートをハルヒに突きつける。</p>
<p>…もう音楽はできない、という意味。<br /><br />
混乱する、佐々木団を作るはずだった面々に、</p>
<p>ハルヒはしっかりとした声で言い放った。 </p>
</div>
</dd>
<dd><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;"><br />
「神なしに、神の前に、神とともに生きなさい」</div>
<hr /><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">レクイエム</div>
<br />
「くっくっ、分かってる。あなたは涼宮さんを選ぶんだよね」<br />
得意の、リスのような鳴き声。<br /><br />
「キョン、ジョンの元々の語源はね。ヘブライ語のヨーハンナーン、『神は慈悲深くあった』という意味なんだよ。
ちなみに、スミスの語源は古典英語のスメイサン、鍛えるとか、鍛錬(たんれん)するとかいう意味なんだ。キミは慈悲深く、僕はずっとがんばってきたけど、もう、終わりさ」<br /><br />
そして、佐々木は胸にかかっていた独立十字をこちらに向ける。※<br /></dd>
<dd><br /></dd>
<dd style="text-align:center;">Mon Dieu, mon Dieu,</dd>
<dd style="text-align:center;">pourquoi m'as-tu abandonne</dd>
<dd><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">(わたしの神、わたしの神よ。何故わたしを見捨てるの)</div>
</dd>
<dd><br />
悲壮な歌を歌いだす。意味は分からない。<br />
ただ、それを聞いた橘は静かに十字を切る。<br /><br />
深く、悲しく。暗い歌声。<br />
病院の廊下に残酷に響く。<br /><br />
「Et toi, Eternel, ne t'eloigne pas.</dd>
<dd> Toi qui es ma force, viens en hate a mon secours…」<br /><br />
そこまで歌うと、クラリネットを取り、歩き出す。<br /><br />
※独立十字 :ロレーヌ十字と呼ばれる十字架。こんな形→(‡)。フランス独立の象徴である。<br /><hr /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">
<p>旧約聖書・詩編22から</p>
<p>(十字架にかけられた断末魔のキリストの絶望)</p>
<p align="left"><br />
わたしの神、わたしの神よ。<br />
なぜわたしをお見捨てになるのか。<br /><br />
なぜわたしを遠く離れ、救おうとせず<br />
呻きも言葉も聞いてくださらないのか。<br /><br />
助けを求めてあなたに叫び、救い出され<br />
あなたに依り頼んで、裏切られたことはない。<br /><br />
…<br /><br />
犬どもがわたしを取り囲み<br />
さいなむ者が群がりわたしを取り囲み<br />
獅子のようにわたしの手足を砕く。<br /><br />
骨が数えられる程になったわたしのからだを<br />
彼らはさらしものにして眺め<br />
わたしの着物を分け、衣を取ろうとしてくじを引く。<br /><br />
神よ、あなただけは<br />
わたしを遠く離れないでください。<br /><br />
わたしの力となる神よ<br />
今すぐにわたしを助けてください。<br /><br />
あなたと遠く離れたままにしないでください。<br />
苦しみは直ぐ近くに、誰も助ける者はない。</p>
<hr /><p>INRI(十字架の罪)</p>
</div>
</dd>
<dd><br />
目の前で未来を取り上げられた佐々木は、笑っていた。<br />
重圧から開放される、という気持ちからだろうか。それでも、笑っていた。<br /><br />
「いや、キョン。それでも、キミさえ近くにいてくれれば、僕は幸せさ」<br />
そういって、病院の奥へ歩いていく。<br /><br />
「そう、闇がなければ、光はない。十字架を背負わなければ、罪は償われない」<br />
黒い棺桶(かんおけ)のような、クラリネットを持って。<br /><br /><p style="text-align:center;">闇・終</p>
<div style="text-align:center;">
<hr /></div>
<p style="text-align:center;">常識</p>
<div style="text-align:center;">
<hr /></div>
<div align="left">
<p> </p>
<p>「え?橘さん、※もう夕方だけどおはよう。フランスどう…え?今日本?辞めた?オケは?<br />
え、もう募集かけたの?公募で?…え?違う?内部募集?コンマス無しで、四月から有希をバンドマスターに?
そこ、ジャズオケじゃないわよね?機関もとうとう急進派が政権を取った?
抗議でジロンドからボルドーワインが無くなっても知らないわよ。じゃあ室内楽団…へ?違うって?え?ねえ、あなたさっきから何言ってるの?」<br /><br />
※プロに近い音楽業界内では挨拶はいつでもグッドモーニングが決まり事。生活が不規則だかららしい。 <br />
</p>
<div style="text-align:center;">
<hr /></div>
</div>
</dd>
</dl><p align="center">SOS団結成<br /><br />
病院。点滴。独立十字。うつろな目。微かに聞こえる、奇妙な残語。<br />
二度とは戻らないかも知れない、その目。<br /><br />
「神は必ず復活します。音楽が残っている限り」<br />
橘さんが、ベッドの横のクラリネットを取る。<br /><br />
「わたしたち、全てを失うかも知れない。でも彼女には賭けるだけの価値があるんです」<br />
あの2人も、しっかりと侍っていた。一人は嫌そうに、一人は無表情で。<br /><br />
「ふん、全く愚かだな。どうせキリストに準(なずら)えなくても復活する。</p>
<p align="center">時期なんて僕にはどうでもいい」<br />
「―――時間が…退屈」<br /><br />
…佐々木さんを迎え入れるため、オケから人連れてジャズバンド結成…</p>
<p align="center">この執念深さにはあきれるところがある。 </p>
<p align="center"> </p>
<p align="center"> </p>
<hr /><p> </p>
<p align="center">まあ、あたしだって、そちらの方がいい。</p>
<p align="center">ずっとあの深い音を聞いていたい。でも。</p>
<p><br />
「でも、それじゃあこの人が苦しむの。そんなの、あたしが許さない」<br /><br />
皆に出会ってから、あたしは変わってしまった。あたしはもう、唯我独尊を押し通せない。<br />
その証拠に、あたしはキョンに負けるようになった。常識的で人間的な、ただの揺れる女の子。<br /><br />
三人の反抗の視線をひし、と感じる。</p>
<p>「わたしたちから、音楽を取り上げるのですか?何回も?」</p>
<hr /><p>「…ハルヒ」<br />
親友兼ね次期バンマスがわたしの肩を叩く。一言。<br /><br />
「あなたが代わり、やったら」<br /><br />
みくるちゃんが言葉を続ける。</p>
<p> </p>
<p><br />
「涼宮さん中心のビッグジャズバンド、とってもたのしそうですよぉ」</p>
<p>にこっと笑って</p>
<p>
「それで、みんなで待てばいいと思いますぅ。涼宮さんは、佐々木さんに認められたんですから、ええと、きっと大丈夫だと思いますぅ…ええと、みなくる~みなくる~」</p>
<p>おそらくジャズソングらしい、とっても下手な歌を歌う。皆が笑い、空気が明るくなる。床に付している神童でさえ、笑んでいるようにみえる。</p>
<p><br />
「やる?」<br />
え?ええと…もちろんやるわよ!</p>
<p align="center"> </p>
<p align="center"> </p>
<p align="center">『今が、幸せ』</p>
<p align="center"> </p>
<p align="left"><br />
あなた、もう満足しちゃったの?本当にバカね。もっともっと、楽しいことしない?<br />
わたしは満足しない。ずっとずっと音で遊んでいこう。だって、そっちのほうが断然面白いじゃないの。<br /><br />
暗闇が無ければ輝きは存在しない。</p>
<p align="left"> </p>
<p align="left">きっと、あなたが復活したら、もっともっとすばらしい音になるはず。<br />
神の復活を、みんなで待つ。そしてそのとき、あたしが、あなたを迎え入れましょう。<br /><br />
じゃあ、あたしは活動内容未定で名称不明のバンド、色々ちゃんとやらなきゃ…?<br />
ええと、何も決まってないけど、名前ぐらい決めたいわね。<br /><br />
「名前ならある」<br />
有無も言わさず、この親友は言葉を続ける。<br /><br />
「『発表会』のもくじに既に書いてある…Suzumiya Orch Session(涼宮のオケセッション)…SOS団」<br /><br />
数人がずっこける。有希らしく、何のひねりもない。 </p>
<p align="center"><font size="1">神なしに、神の前に、神とともに</font></p>
<hr /><p align="center">いつもの風景<br /><br /><strong>曲目:『ブルグミュラー25の練習曲』</strong><br /><br />
オルガンの上に置かれた、先生との面談予定。</p>
<p align="center">進路は理系に決めたらしい。</p>
<p align="center"><br />
こいつは国木田と一緒に猛勉強している。</p>
<p align="center">息抜きにオルガン。新しい、いつもの風景。 </p>
<p align="left"><br />
「こら、だから指揮棒使うな!」<br />
幸せな愛、それは本当に確かなことなのか。</p>
<p align="left">理性的で、肯定的なことなのか。<br /><br />
「べ、別に殴りたくて殴ってるんじゃないんだからねっ!」<br />
この世界が二人だけのものになり、他のものは存在しないのも同然、なんてことは。<br />
とても理性的で、肯定的なこと。<br /><br />
「って、最初ッから殴ってるつもりなのかよ!」<br />
幸せな愛など知らないという人には、幸せな愛などないと言わせておけばいいわ。<br /><br />
「まあ、これもアベックの水の掛け合いよ。練習再開!」<br />
一時の気の迷いなんて言うなら、今のキョンのピアノの腕を見ればいい。一度身に付いた技能は、すぐには消えないはず。<br /><br />
「そこでド叩いて…って、どこ叩いてるのっ!そこはレっ!ちゃんとやりなさいっバカキョン!」</p>
<p align="left"><br />
例え、あたしがキョンの元を去っても、このピアノの腕は、死ぬまでこいつの腕に刻みつけられる。<br /><br />
「ほらここよここ。何やってるのよ!あぁ、もう、いらいらするわね…もっかい!次間違えたら鞭打ちの上死刑なんだからっ!」</p>
<p align="left">あたしの全てを、こいつに注ぎ込む。<br />
刻みつけるのは、永遠の気の迷い。</p>
<p align="center">「♪~」</p>
<p align="center"> </p>
<p align="left"><br />
そして『ジョン・スミス』が、『ブルグミュラー25の練習曲・アラベスク』をノーミスで弾き終わる。<br />
あたしの望むあの、弱っちい、希望の音で。<br /><br />
終止。それを合図に、あたしは後ろから抱きつく。<br />
そして、少し迷惑そうなキョンの、その耳元でささやく。</p>
<p align="left"> </p>
<p align="center"><br />
「おつかれさま、キョン」</p>
<p align="center"> </p>
<p align="center">常識・終</p>
<hr /><p align="center"> </p>
<p align="center"><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5977.html">Fine</a></p>
<p align="center"> </p>
<hr /><p align="center"> </p>
<p> </p>
<dl><dd>
<div style="text-align:center;">
<p>闇</p>
<p> </p>
<hr /><p> </p>
</div>
<div style="text-align:center;">ハルヒの答え</div>
<br /><div style="text-align:center;">
<p>「あなたのみ、オケから引退しなさい」<br />
ハルヒはクラリネットを佐々木に突きつける。行為と意味が反転する。<br /><br />
「で、予定通りこの場所に残りなさい。</p>
<p>あなた一人のために、オケを壊すわけにはいかない」<br />
この場所…すなわち病院。<br /><br />
「わたしたちには佐々木さんが必要なんです」</p>
</div>
</dd>
<dd style="text-align:center;"><br /></dd>
<dd style="text-align:center;">橘が奇声を上げる。<br />
「ずっとあこがれてたのに、佐々木さんがいてくれる、</dd>
<dd>
<p> </p>
</dd>
<dd style="text-align:center;">やっと一緒に音楽を作ってくれるって思ってたのに」<br /><br />
藤原が狂ったように笑う。<br />
「ふっふっふ、あっはっは、あは、そうだよな、そうなんだよな、神は死んだんだ」<br /></dd>
<dd>
<p> </p>
</dd>
<dd style="text-align:center;"><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">
<p>九曜は無表情にフルートをハルヒに突きつける。</p>
<p>…もう音楽はできない、という意味。<br /><br />
混乱する、佐々木団を作るはずだった面々に、</p>
<p>ハルヒはしっかりとした声で言い放った。 </p>
</div>
</dd>
<dd><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;"><br />
「神なしに、神の前に、神とともに生きなさい」</div>
<hr /><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">レクイエム</div>
<br />
「くっくっ、分かってる。あなたは涼宮さんを選ぶんだよね」<br />
得意の、リスのような鳴き声。<br /><br />
「キョン、ジョンの元々の語源はね。ヘブライ語のヨーハンナーン、『神は慈悲深くあった』という意味なんだよ。
ちなみに、スミスの語源は古典英語のスメイサン、鍛えるとか、鍛錬(たんれん)するとかいう意味なんだ。キミは慈悲深く、僕はずっとがんばってきたけど、もう、終わりさ」<br /><br />
そして、佐々木は胸にかかっていた独立十字をこちらに向ける。※<br /></dd>
<dd><br /></dd>
<dd style="text-align:center;">Mon Dieu, mon Dieu,</dd>
<dd style="text-align:center;">pourquoi m'as-tu abandonne</dd>
<dd><br /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">(わたしの神、わたしの神よ。何故わたしを見捨てるの)</div>
</dd>
<dd><br />
悲壮な歌を歌いだす。意味は分からない。<br />
ただ、それを聞いた橘は静かに十字を切る。<br /><br />
深く、悲しく。暗い歌声。<br />
病院の廊下に残酷に響く。<br /><br />
「Et toi, Eternel, ne t'eloigne pas.</dd>
<dd> Toi qui es ma force, viens en hate a mon secours…」<br /><br />
そこまで歌うと、クラリネットを取り、歩き出す。<br /><br />
※独立十字 :ロレーヌ十字と呼ばれる十字架。こんな形→(‡)。フランス独立の象徴である。<br /><hr /></dd>
<dd>
<div style="text-align:center;">
<p>旧約聖書・詩編22から</p>
<p>(十字架にかけられた断末魔のキリストの絶望)</p>
<p align="left"><br />
わたしの神、わたしの神よ。<br />
なぜわたしをお見捨てになるのか。<br /><br />
なぜわたしを遠く離れ、救おうとせず<br />
呻きも言葉も聞いてくださらないのか。<br /><br />
助けを求めてあなたに叫び、救い出され<br />
あなたに依り頼んで、裏切られたことはない。<br /><br />
…<br /><br />
犬どもがわたしを取り囲み<br />
さいなむ者が群がりわたしを取り囲み<br />
獅子のようにわたしの手足を砕く。<br /><br />
骨が数えられる程になったわたしのからだを<br />
彼らはさらしものにして眺め<br />
わたしの着物を分け、衣を取ろうとしてくじを引く。<br /><br />
神よ、あなただけは<br />
わたしを遠く離れないでください。<br /><br />
わたしの力となる神よ<br />
今すぐにわたしを助けてください。<br /><br />
あなたと遠く離れたままにしないでください。<br />
苦しみは直ぐ近くに、誰も助ける者はない。</p>
<hr /><p>INRI(十字架の罪)</p>
</div>
</dd>
<dd><br />
目の前で未来を取り上げられた佐々木は、笑っていた。<br />
重圧から開放される、という気持ちからだろうか。それでも、笑っていた。<br /><br />
「いや、キョン。それでも、キミさえ近くにいてくれれば、僕は幸せさ」<br />
そういって、病院の奥へ歩いていく。<br /><br />
「そう、闇がなければ、光はない。十字架を背負わなければ、罪は償われない」<br />
黒い棺桶(かんおけ)のような、クラリネットを持って。<br /><br /><p style="text-align:center;">闇・終</p>
<div style="text-align:center;">
<hr /></div>
<p style="text-align:center;">常識</p>
<div style="text-align:center;">
<hr /></div>
<div align="left">
<p> </p>
<p>「え?橘さん、※もう夕方だけどおはよう。フランスどう…え?今日本?辞めた?オケは?<br />
え、もう募集かけたの?公募で?…え?違う?内部募集?コンマス無しで、四月から有希をバンドマスターに?
そこ、ジャズオケじゃないわよね?機関もとうとう急進派が政権を取った?
抗議でジロンドからボルドーワインが無くなっても知らないわよ。じゃあ室内楽団…へ?違うって?え?ねえ、あなたさっきから何言ってるの?」<br /><br />
※プロに近い音楽業界内では挨拶はいつでもグッドモーニングが決まり事。生活が不規則だかららしい。 <br />
</p>
<div style="text-align:center;">
<hr /></div>
</div>
</dd>
</dl><p align="center">SOS団結成<br /><br />
病院。点滴。独立十字。うつろな目。微かに聞こえる、奇妙な残語。<br />
二度とは戻らないかも知れない、その目。<br /><br />
「神は必ず復活します。音楽が残っている限り」<br />
橘さんが、ベッドの横のクラリネットを取る。<br /><br />
「わたしたち、全てを失うかも知れない。でも彼女には賭けるだけの価値があるんです」<br />
あの2人も、しっかりと侍っていた。一人は嫌そうに、一人は無表情で。<br /><br />
「ふん、全く愚かだな。どうせキリストに準(なずら)えなくても復活する。</p>
<p align="center">時期なんて僕にはどうでもいい」<br />
「―――時間が…退屈」<br /><br />
…佐々木さんを迎え入れるため、オケから人連れてジャズバンド結成…</p>
<p align="center">この執念深さにはあきれるところがある。 </p>
<p align="center"> </p>
<p align="center"> </p>
<hr /><p> </p>
<p align="center">まあ、あたしだって、そちらの方がいい。</p>
<p align="center">ずっとあの深い音を聞いていたい。でも。</p>
<p><br />
「でも、それじゃあこの人が苦しむの。そんなの、あたしが許さない」<br /><br />
皆に出会ってから、あたしは変わってしまった。あたしはもう、唯我独尊を押し通せない。<br />
その証拠に、あたしはキョンに負けるようになった。常識的で人間的な、ただの揺れる女の子。<br /><br />
三人の反抗の視線をひし、と感じる。</p>
<p>「わたしたちから、音楽を取り上げるのですか?何回も?」</p>
<hr /><p>「…ハルヒ」<br />
親友兼ね次期バンマスがわたしの肩を叩く。一言。<br /><br />
「あなたが代わり、やったら」<br /><br />
みくるちゃんが言葉を続ける。</p>
<p> </p>
<p><br />
「涼宮さん中心のビッグジャズバンド、とってもたのしそうですよぉ」</p>
<p>にこっと笑って</p>
<p>
「それで、みんなで待てばいいと思いますぅ。涼宮さんは、佐々木さんに認められたんですから、ええと、きっと大丈夫だと思いますぅ…ええと、みなくる~みなくる~」</p>
<p>おそらくジャズソングらしい、とっても下手な歌を歌う。皆が笑い、空気が明るくなる。床に付している神童でさえ、笑んでいるようにみえる。</p>
<p><br />
「やる?」<br />
え?ええと…もちろんやるわよ!</p>
<p align="center"> </p>
<p align="center"> </p>
<p align="center">『今が、幸せ』</p>
<p align="center"> </p>
<p align="left"><br />
あなた、もう満足しちゃったの?本当にバカね。もっともっと、楽しいことしない?<br />
わたしは満足しない。ずっとずっと音で遊んでいこう。だって、そっちのほうが断然面白いじゃないの。<br /><br />
暗闇が無ければ輝きは存在しない。</p>
<p align="left"> </p>
<p align="left">きっと、あなたが復活したら、もっともっとすばらしい音になるはず。<br />
神の復活を、みんなで待つ。そしてそのとき、あたしが、あなたを迎え入れましょう。<br /><br />
じゃあ、あたしは活動内容未定で名称不明のバンド、色々ちゃんとやらなきゃ…?<br />
ええと、何も決まってないけど、名前ぐらい決めたいわね。<br /><br />
「名前ならある」<br />
有無も言わさず、この親友は言葉を続ける。<br /><br />
「『発表会』のもくじに既に書いてある…Suzumiya Orch Session(涼宮のオケセッション)…SOS団」<br /><br />
数人がずっこける。有希らしく、何のひねりもない。 </p>
<p align="center"><font size="1">神なしに、神の前に、神とともに</font></p>
<hr /><p align="center">いつもの風景<br /><br /><strong>曲目:『ブルグミュラー25の練習曲』</strong><br /><br />
オルガンの上に置かれた、先生との面談予定。</p>
<p align="center">進路は理系に決めたらしい。</p>
<p align="center"><br />
こいつは国木田と一緒に猛勉強している。</p>
<p align="center">息抜きにオルガン。新しい、いつもの風景。 </p>
<p align="left"><br />
「こら、だから指揮棒使うな!」<br />
幸せな愛、それは本当に確かなことなのか。</p>
<p align="left">理性的で、肯定的なことなのか。<br /><br />
「べ、別に殴りたくて殴ってるんじゃないんだからねっ!」<br />
この世界が二人だけのものになり、他のものは存在しないのも同然、なんてことは。<br />
とても理性的で、肯定的なこと。<br /><br />
「って、最初ッから殴ってるつもりなのかよ!」<br />
幸せな愛など知らないという人には、幸せな愛などないと言わせておけばいいわ。<br /><br />
「まあ、これもアベックの水の掛け合いよ。練習再開!」<br />
一時の気の迷いなんて言うなら、今のキョンのピアノの腕を見ればいい。一度身に付いた技能は、すぐには消えないはず。<br /><br />
「そこでド叩いて…って、どこ叩いてるのっ!そこはレっ!ちゃんとやりなさいっバカキョン!」</p>
<p align="left"><br />
例え、あたしがキョンの元を去っても、このピアノの腕は、死ぬまでこいつの腕に刻みつけられる。<br /><br />
「ほらここよここ。何やってるのよ!あぁ、もう、いらいらするわね…もっかい!次間違えたら鞭打ちの上死刑なんだからっ!」</p>
<p align="left">あたしの全てを、こいつに注ぎ込む。<br />
刻みつけるのは、永遠の気の迷い。</p>
<p align="center">「♪~」</p>
<p align="center"> </p>
<p align="left"><br />
そして『ジョン・スミス』が、『ブルグミュラー25の練習曲・アラベスク』をノーミスで弾き終わる。<br />
あたしの望むあの、弱っちい、希望の音で。<br /><br />
終止。それを合図に、あたしは後ろから抱きつく。<br />
そして、少し迷惑そうなキョンの、その耳元でささやく。</p>
<p align="left"> </p>
<p align="center"><br />
「おつかれさま、キョン」</p>
<p align="center"> </p>
<p align="center">常識・終</p>
<hr /><p align="center"> </p>
<p align="center"><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5978.html">Fine</a></p>
<p align="center"> </p>
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