「失ったもの・得たもの 最終話分岐:失った心、得た強さ」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

失ったもの・得たもの 最終話分岐:失った心、得た強さ」(2020/07/21 (火) 14:01:51) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p><br /> 「…ん…朝だな」<br /> 変わり映えしない部屋で目を覚ます。<br /> 一服をすませてから、部屋を出て洗面所へ向かう。<br />  <br /> 「おはようお兄ちゃん」<br />  <br /> 「ああ、はよ」<br />  <br /> 佐々木を泣かせて早数ヶ月、もう俺に対し文句を言う奴なんていなくなっていた。<br /> それどころか、周囲の俺に対する評価は格段にあがっていた。<br />  <br /> 「おはようキョン、お前またテストでクラス一位だったんだって?凄いなぁ」<br />  <br /> 「そうよ、キョンはこの家の自慢なんだから」<br />  <br /> 真面目に勉強を続けていたらいつの間にか俺はクラス一番の学力を手にしていた。<br /> それを知ったとたん親は俺をひいきするようになった、馬鹿らしい。<br /> テストの点を誉める前にもっと言うことがあるだろうに…くだらない。<br /> 息子がテストでいい点をとる、たったそれだけで笑顔を取り戻したつまらない朝の食卓をさっさと離れ、俺は学校に向かった。<br />  <br /> 「今日もいい朝だな…くだらない」<br />  <br /> 快晴だからなんだって話だ、太陽が照っていようとこの冬の寒さは変わらん。<br /> 気だるい気持ちで通学路を歩いていると、後ろから声をかけられた。<br />  <br /> 「あの…キョン君」<br />  <br /> 振り返ると、隣のクラスの女子だった。<br /> 見れば後ろの方で遠巻きに友人らしき生徒達が見ている。この女生徒が何を言うかは容易に想像がついた。<br />  <br /> 「あの…わっ私と…付き合っ…」<br />  <br /> 「話しかけんな、気色悪い」<br />  <br /> 女生徒の言葉を遮って容赦ない言葉を浴びせる。それだけでそいつは泣き出し、惨めに友達の元に向かっていった。<br />  <br /> 「あんたじゃ振られるに決まってるじゃん、馬鹿じゃないの?」<br />  <br /> 「キョン君はあんたなんかみてるわけないでしょ」<br />  <br /> 慰めもしない、友情も糞もないくだらない連中ばかりだ。そいつらを放って俺はさっさと坂を登っていく。<br /> ここ最近急に俺はモテるようになった、嬉しくともなんともない。どいつもこいつも俺をみようとせず周りの評価だけで勝手に好きになりやがる。<br />  <br /> 更にあいつらは、俺にしていた仕打ちも謝らず、ただ自分の気持ちだけを押しつけてくる。そんなくだらない奴らの言葉を誰が受け止める。<br /> 靴箱に入っていたラブレターをゴミ箱に捨て、上履きを履いて俺は教室に向かった。<br />  <br /> 「あっ…」<br />  <br /> 俺が来たとたん、クラスの連中が揃って俺を見る。<br /> しかしそれは侮蔑や畏怖の眼差しじゃない。尊敬や恋情の眼差しだ。<br /> 気持ち悪い…これなら前の方がまだましだった。<br /> そいつらを無視して俺は席に座り机に突っ伏した。<br />  <br /> 「あの…キョン」<br />  <br /> 誰だ…なんて考える必要もない、俺の前から話しかけてくる奴は一人だ。<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> 「あのね、キョン…今日、部室に来てほしいの」<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> 「来てくれるって…信じてるから」<br />  <br /> それだけいってそいつは話を切った。あれだけやっといて俺の評価が変わった途端これか。最高に馬鹿らしい。<br /> しかし、最近退屈してたところだ。一体なにをやってくれるか…少しだけ興味が湧いた。<br />  <br /> 午前の授業、教師も既に俺に文句は言えなくなっていた。<br />  <br /> 「それじゃここ…誰も答えられないのか?しょうがないな…あの、○○…答えてくれないか?」<br />  <br /> むしろ少し怯えがちな始末だ、教師の威厳はどこへいったのやら。<br />  <br /> 「ーーー」<br />  <br /> 立ち上がりさっさと答え座り直すと、教室が湧き上がった。<br />  <br /> 「うむ、ありがとう○○」<br />  <br /> 「やっぱりすげぇキョン!天才だな!」<br />  <br /> 「当たり前じゃない!キョン君は凄いんだから」<br />  <br /> くだらない…お前らが俺の何を知っているってんだ。馬鹿にしやがって…。<br />  <br /> 「うるさいんだよ、黙れ」<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> その一言でクラスは静まり返る。相変わらずこいつらは馬鹿だ、学習能力は持ってなかったのか?<br />  <br /> 「おい先生、さっさと続けてくれよ」<br />  <br /> 「そっそうだな、すまん…えーつまりだな」<br />  <br /> どいつもこいつも俺の機嫌ばかり疑う、気持ち悪くて吐き気までおこってくる始末だ。<br /> 谷口は悔しそうに拳を握っている、周囲が俺に媚びるようになってもこいつだけは変わらない。相変わらず俺に挑んでくる。<br />  <br /> そんな馬鹿だが、俺は少し気に入っていた。だが、俺の代わりに虐められてるのは…自業自得だよなぁ?<br /> 午前の授業が終わり、昼食の時間になる。<br />  <br /> 「おい国木田、飯食おうぜ」<br />  <br /> 「しゃべりかけないでよ、うざいなぁ」<br />  <br /> いつの間にか、谷口は俺の代わりに虐められるようになった。前はクラスの中心だったのにな、どうでもいいが。<br />  <br /> 「うっ…はっ、ハルヒ…」<br />  <br /> 「下の名前で呼ばないでよ気持ち悪い、もう別れたでしょ」<br />  <br /> 「…っく…」<br />  <br /> 涙をこぼしながら谷口は教室を出て行った。その瞬間クラスに爆笑が巻き起こる。<br />  <br /> 「馬鹿じゃないあいつ?キョン君に喧嘩売るから悪いのよ」<br />  <br /> 「あははwwだって馬鹿じゃないあいつwww」<br />  <br /> …本当にくだらない。虐められて逃げ続ける谷口も、罪悪感も感じず一人を虐められるこいつらも…それをただ傍観する俺も。<br /> 屋上で飯を食べようと弁当を取り出すと、複数の女生徒が話しかけてきた。いつもの奴らだ。<br />  <br /> 「あの、キョン君。一緒にお弁当…」<br />  <br /> 「何回言ったらわかんだ。気持ち悪いんだよ」<br />  <br /> そう言ったらしゅんとへこむ、なんだよ。俺が悪いみたいじゃねえか…。<br /> 溜まり溜まったイライラがついに爆発した。<br />  <br /> 「いい加減わかんねぇか!?お前ら全員気持ち悪いんだよ!<br /> 人虐めといて、今度はそいつに媚びてよ。更に他の奴まで虐め出す始末だ!」<br />  <br /> 「ご…ごめんなさい」<br />  <br /> 「今更謝ってすむと思ってんのか!?いいよなぁ、谷口を虐めるときも、俺に喧嘩を売ったから。俺を虐めてたから。そりゃ罪悪感ねぇよなぁ!俺のせいにしてんだからよ!」<br />  <br /> ぶちまけるだけぶちまけた、教室は静まり返っている…本当、くだらない世界だな。そいつらを放って俺は屋上に向かった。<br /> 屋上につくと、何人かの三年が煙草を吸っていた。<br />  <br /> 「あん?誰…ああ、キョンさんでしたか。すいません今どきますから」<br />  <br /> 俺だとわかった瞬間煙草を捨てて屋上から逃げるように退散していった。<br />  <br /> あいつらは当初俺に喧嘩を売っていた連中だった。しかし一度ボコったらあの有り様、馬鹿らしい。<br /> あいつらが捨てていった吸い殻を携帯灰皿にいれ、俺は弁当を広げる。俺が自分で作ったもんだ。<br /> 一口食べる、うまいな。あんだけ練習したんだから不味いはずがない。<br /> …なんでだろうな、涙が溢れてきやがる。<br />  <br /> 「…うまいなぁ…」<br />  <br /> 誰もいない、ならたまには泣いたっていいだろう。<br />  <br /> 「……煙草吸うか」<br />  <br /> 食いかけの弁当を放り、煙草を取り出して火を付けた。<br /> だんだんと落ち着き涙もひいてくる。本当に久しぶりだ、泣いたのは。<br /> 涙を流した時は決まってあの日を思い出す。佐々木を突き放したあの瞬間を。<br /> だからこそ、どれだけつらくとも俺は顔をふせたりなんかしない。<br /> 佐々木の優しさを無碍にしてまで決意したことだ。<br /> 芯まで煙草を吸いきり、携帯灰皿に入れる。<br />  <br /> 「…さて、いくか」<br />  <br /> そしてなんなく午後の授業も終え、涼宮指定の放課後を迎えた。<br /> 掃除中の俺を涼宮は何か言いたげにみていたがどうでもいい。どうせくだらない発言を連呼するだけなんだからな。<br /> しかし先ほども言ったとおり興味はあった、そのため掃除をさっさとすませて俺は懐かしき場所…できれば二度と来たくはなかったがな、その文芸部室に向かった。<br /> 部室の扉の前についたとき、部室の中は静かだった。一応ノックをして入る。<br />  <br /> 「ごめんなさい」<br />  <br /> 入った途端目に飛び込んできたのは、頭を下げるSOS団員4人の姿だった。<br />  <br /> 「………」<br />  <br /> 「今までごめんなさいキョン、全部謝るわ。気のすむまで殴ってくれてもいい」<br />  <br /> 「ごめんなさいぃ…ごめんなさいぃ…」<br />  <br /> 「私も、あなたを護らなかった…ごめんなさい」<br />  <br /> 「僕も深くお詫び申し上げます」<br />  <br /> …何をやってるんだろうなこいつらは、今までの中で最も馬鹿らしい。<br /> 馬鹿らしすぎて見ていられず、俺は早々に話を進めることにした。<br />  <br /> 「…んでお前らは、俺にどうしろってんだよ」<br />  <br /> 「あなたには…戻ってきて貰いたいのです」<br />  <br /> ふぅーん…なるほどね。まぁ大体予想はついていたが。あまりにも予想通りすぎてがっかりだ。もう少し楽しませてくれよ。<br />  <br /> 「無茶なお願いだってことはわかってる!でもSOS団にはやっぱりあなたが必要なの!それに…やっぱりあたし…あなたが好き…」<br />  <br /> 「キョン君…」<br />  <br /> 「お願い」<br />  <br /> こいつらは本当に…馬鹿だなぁ。見てられん。<br />  <br /> 「…一時はさ、お前らに復讐することばかり考えてたよ」<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> 何も言えないか。だろうな、こいつらはそれだけのことをした。それ相応の罰を受ける必要があるよな、普通なら。<br /> だが生憎俺は普通じゃなかった。<br />  <br /> 「でも…やめたよ」<br />  <br /> 「!」<br />  <br /> 4人の顔が喜びに綻ぶ、おうおう盛大に勘違いしてやがる。<br /> 正直笑いこらえるのに必死だ、そろそろ誤解とくか。<br />  <br /> 「お前らがあまりにもくだらないからな、そんな気失せたよ」<br />  <br /> 「えっ…キョン?」<br />  <br /> 「俺が戻る?何馬鹿なこと言ってんだ。こんなキチガイな団体に戻るわけないだろ」<br />  <br /> 4人とも信じられないという顔をしている、俺にはお前の勘違いが信じられねえよ。都合がよすぎだ。<br />  <br /> 「それは…言い過ぎではないでしょうか」<br />  <br /> 「そうか、じゃあお前らの俺への仕打ちはなんと言えばいい?」<br />  <br /> それを出すだけで全員何も言えなくなる。くだらないにも程がある。<br />  <br /> 「気付いてなかったのか?」<br />  <br /> 「…?」<br />  <br /> 4人とも訝しげな顔でこちらをみる、まぁとどめってやつだ。<br />  <br /> 「お前ら、気持ち悪いんだよ」<br />  <br /> それだけ言って俺は部室を出た。これでもうあいつらと関わらなくて済みそうだ、せいせいする。<br /> その後俺は学校の坂を下っていた。冬のせいか既に日沈みはじめている。<br /> その夕日を見つめながら、俺は呟いた。<br />  <br /> 「本当…くだらない世界だ」<br />  <br /> これからも俺はこのくだらない世界で、一生味方を作らず生きていく…。<br />  <br />  <br /> BadEnd~完~</p>
<p><br /> 「…ん…朝だな」<br /> 変わり映えしない部屋で目を覚ます。<br /> 一服をすませてから、部屋を出て洗面所へ向かう。<br />  <br /> 「おはようお兄ちゃん」<br />  <br /> 「ああ、はよ」<br />  <br /> 佐々木を泣かせて早数ヶ月、もう俺に対し文句を言う奴なんていなくなっていた。<br /> それどころか、周囲の俺に対する評価は格段にあがっていた。<br />  <br /> 「おはようキョン、お前またテストでクラス一位だったんだって?凄いなぁ」<br />  <br /> 「そうよ、キョンはこの家の自慢なんだから」<br />  <br /> 真面目に勉強を続けていたらいつの間にか俺はクラス一番の学力を手にしていた。<br /> それを知ったとたん親は俺をひいきするようになった、馬鹿らしい。<br /> テストの点を誉める前にもっと言うことがあるだろうに…くだらない。<br /> 息子がテストでいい点をとる、たったそれだけで笑顔を取り戻したつまらない朝の食卓をさっさと離れ、俺は学校に向かった。<br />  <br /> 「今日もいい朝だな…くだらない」<br />  <br /> 快晴だからなんだって話だ、太陽が照っていようとこの冬の寒さは変わらん。<br /> 気だるい気持ちで通学路を歩いていると、後ろから声をかけられた。<br />  <br /> 「あの…キョン君」<br />  <br /> 振り返ると、隣のクラスの女子だった。<br /> 見れば後ろの方で遠巻きに友人らしき生徒達が見ている。この女生徒が何を言うかは容易に想像がついた。<br />  <br /> 「あの…わっ私と…付き合っ…」<br />  <br /> 「話しかけんな、気色悪い」<br />  <br /> 女生徒の言葉を遮って容赦ない言葉を浴びせる。それだけでそいつは泣き出し、惨めに友達の元に向かっていった。<br />  <br /> 「あんたじゃ振られるに決まってるじゃん、馬鹿じゃないの?」<br />  <br /> 「キョン君はあんたなんかみてるわけないでしょ」<br />  <br /> 慰めもしない、友情も糞もないくだらない連中ばかりだ。そいつらを放って俺はさっさと坂を登っていく。<br /> ここ最近急に俺はモテるようになった、嬉しくともなんともない。どいつもこいつも俺をみようとせず周りの評価だけで勝手に好きになりやがる。<br />  <br /> 更にあいつらは、俺にしていた仕打ちも謝らず、ただ自分の気持ちだけを押しつけてくる。そんなくだらない奴らの言葉を誰が受け止める。<br /> 靴箱に入っていたラブレターをゴミ箱に捨て、上履きを履いて俺は教室に向かった。<br />  <br /> 「あっ…」<br />  <br /> 俺が来たとたん、クラスの連中が揃って俺を見る。<br /> しかしそれは侮蔑や畏怖の眼差しじゃない。尊敬や恋情の眼差しだ。<br /> 気持ち悪い…これなら前の方がまだましだった。<br /> そいつらを無視して俺は席に座り机に突っ伏した。<br />  <br /> 「あの…キョン」<br />  <br /> 誰だ…なんて考える必要もない、俺の前から話しかけてくる奴は一人だ。<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> 「あのね、キョン…今日、部室に来てほしいの」<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> 「来てくれるって…信じてるから」<br />  <br /> それだけいってそいつは話を切った。あれだけやっといて俺の評価が変わった途端これか。最高に馬鹿らしい。<br /> しかし、最近退屈してたところだ。一体なにをやってくれるか…少しだけ興味が湧いた。<br />  <br /> 午前の授業、教師も既に俺に文句は言えなくなっていた。<br />  <br /> 「それじゃここ…誰も答えられないのか?しょうがないな…あの、○○…答えてくれないか?」<br />  <br /> むしろ少し怯えがちな始末だ、教師の威厳はどこへいったのやら。<br />  <br /> 「ーーー」<br />  <br /> 立ち上がりさっさと答え座り直すと、教室が湧き上がった。<br />  <br /> 「うむ、ありがとう○○」<br />  <br /> 「やっぱりすげぇキョン!天才だな!」<br />  <br /> 「当たり前じゃない!キョン君は凄いんだから」<br />  <br /> くだらない…お前らが俺の何を知っているってんだ。馬鹿にしやがって…。<br />  <br /> 「うるさいんだよ、黙れ」<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> その一言でクラスは静まり返る。相変わらずこいつらは馬鹿だ、学習能力は持ってなかったのか?<br />  <br /> 「おい先生、さっさと続けてくれよ」<br />  <br /> 「そっそうだな、すまん…えーつまりだな」<br />  <br /> どいつもこいつも俺の機嫌ばかり疑う、気持ち悪くて吐き気までおこってくる始末だ。<br /> 谷口は悔しそうに拳を握っている、周囲が俺に媚びるようになってもこいつだけは変わらない。相変わらず俺に挑んでくる。<br />  <br /> そんな馬鹿だが、俺は少し気に入っていた。だが、俺の代わりに虐められてるのは…自業自得だよなぁ?<br /> 午前の授業が終わり、昼食の時間になる。<br />  <br /> 「おい国木田、飯食おうぜ」<br />  <br /> 「しゃべりかけないでよ、うざいなぁ」<br />  <br /> いつの間にか、谷口は俺の代わりに虐められるようになった。前はクラスの中心だったのにな、どうでもいいが。<br />  <br /> 「うっ…はっ、ハルヒ…」<br />  <br /> 「下の名前で呼ばないでよ気持ち悪い、もう別れたでしょ」<br />  <br /> 「…っく…」<br />  <br /> 涙をこぼしながら谷口は教室を出て行った。その瞬間クラスに爆笑が巻き起こる。<br />  <br /> 「馬鹿じゃないあいつ?キョン君に喧嘩売るから悪いのよ」<br />  <br /> 「あははwwだって馬鹿じゃないあいつwww」<br />  <br /> …本当にくだらない。虐められて逃げ続ける谷口も、罪悪感も感じず一人を虐められるこいつらも…それをただ傍観する俺も。<br /> 屋上で飯を食べようと弁当を取り出すと、複数の女生徒が話しかけてきた。いつもの奴らだ。<br />  <br /> 「あの、キョン君。一緒にお弁当…」<br />  <br /> 「何回言ったらわかんだ。気持ち悪いんだよ」<br />  <br /> そう言ったらしゅんとへこむ、なんだよ。俺が悪いみたいじゃねえか…。<br /> 溜まり溜まったイライラがついに爆発した。<br />  <br /> 「いい加減わかんねぇか!?お前ら全員気持ち悪いんだよ!<br /> 人虐めといて、今度はそいつに媚びてよ。更に他の奴まで虐め出す始末だ!」<br />  <br /> 「ご…ごめんなさい」<br />  <br /> 「今更謝ってすむと思ってんのか!?いいよなぁ、谷口を虐めるときも、俺に喧嘩を売ったから。俺を虐めてたから。そりゃ罪悪感ねぇよなぁ!俺のせいにしてんだからよ!」<br />  <br /> ぶちまけるだけぶちまけた、教室は静まり返っている…本当、くだらない世界だな。そいつらを放って俺は屋上に向かった。<br /> 屋上につくと、何人かの三年が煙草を吸っていた。<br />  <br /> 「あん?誰…ああ、キョンさんでしたか。すいません今どきますから」<br />  <br /> 俺だとわかった瞬間煙草を捨てて屋上から逃げるように退散していった。<br />  <br /> あいつらは当初俺に喧嘩を売っていた連中だった。しかし一度ボコったらあの有り様、馬鹿らしい。<br /> あいつらが捨てていった吸い殻を携帯灰皿にいれ、俺は弁当を広げる。俺が自分で作ったもんだ。<br /> 一口食べる、うまいな。あんだけ練習したんだから不味いはずがない。<br /> …なんでだろうな、涙が溢れてきやがる。<br />  <br /> 「…うまいなぁ…」<br />  <br /> 誰もいない、ならたまには泣いたっていいだろう。<br />  <br /> 「……煙草吸うか」<br />  <br /> 食いかけの弁当を放り、煙草を取り出して火を付けた。<br /> だんだんと落ち着き涙もひいてくる。本当に久しぶりだ、泣いたのは。<br /> 涙を流した時は決まってあの日を思い出す。佐々木を突き放したあの瞬間を。<br /> だからこそ、どれだけつらくとも俺は顔をふせたりなんかしない。<br /> 佐々木の優しさを無碍にしてまで決意したことだ。<br /> 芯まで煙草を吸いきり、携帯灰皿に入れる。<br />  <br /> 「…さて、いくか」<br />  <br /> そしてなんなく午後の授業も終え、涼宮指定の放課後を迎えた。<br /> 掃除中の俺を涼宮は何か言いたげにみていたがどうでもいい。どうせくだらない発言を連呼するだけなんだからな。<br /> しかし先ほども言ったとおり興味はあった、そのため掃除をさっさとすませて俺は懐かしき場所…できれば二度と来たくはなかったがな、その文芸部室に向かった。<br /> 部室の扉の前についたとき、部室の中は静かだった。一応ノックをして入る。<br />  <br /> 「ごめんなさい」<br />  <br /> 入った途端目に飛び込んできたのは、頭を下げるSOS団員4人の姿だった。<br />  <br /> 「………」<br />  <br /> 「今までごめんなさいキョン、全部謝るわ。気のすむまで殴ってくれてもいい」<br />  <br /> 「ごめんなさいぃ…ごめんなさいぃ…」<br />  <br /> 「私も、あなたを護らなかった…ごめんなさい」<br />  <br /> 「僕も深くお詫び申し上げます」<br />  <br /> …何をやってるんだろうなこいつらは、今までの中で最も馬鹿らしい。<br /> 馬鹿らしすぎて見ていられず、俺は早々に話を進めることにした。<br />  <br /> 「…んでお前らは、俺にどうしろってんだよ」<br />  <br /> 「あなたには…戻ってきて貰いたいのです」<br />  <br /> ふぅーん…なるほどね。まぁ大体予想はついていたが。あまりにも予想通りすぎてがっかりだ。もう少し楽しませてくれよ。<br />  <br /> 「無茶なお願いだってことはわかってる!でもSOS団にはやっぱりあなたが必要なの!それに…やっぱりあたし…あなたが好き…」<br />  <br /> 「キョン君…」<br />  <br /> 「お願い」<br />  <br /> こいつらは本当に…馬鹿だなぁ。見てられん。<br />  <br /> 「…一時はさ、お前らに復讐することばかり考えてたよ」<br />  <br /> 「…」<br />  <br /> 何も言えないか。だろうな、こいつらはそれだけのことをした。それ相応の罰を受ける必要があるよな、普通なら。<br /> だが生憎俺は普通じゃなかった。<br />  <br /> 「でも…やめたよ」<br />  <br /> 「!」<br />  <br /> 4人の顔が喜びに綻ぶ、おうおう盛大に勘違いしてやがる。<br /> 正直笑いこらえるのに必死だ、そろそろ誤解とくか。<br />  <br /> 「お前らがあまりにもくだらないからな、そんな気失せたよ」<br />  <br /> 「えっ…キョン?」<br />  <br /> 「俺が戻る?何馬鹿なこと言ってんだ。こんなキチガイな団体に戻るわけないだろ」<br />  <br /> 4人とも信じられないという顔をしている、俺にはお前の勘違いが信じられねえよ。都合がよすぎだ。<br />  <br /> 「それは…言い過ぎではないでしょうか」<br />  <br /> 「そうか、じゃあお前らの俺への仕打ちはなんと言えばいい?」<br />  <br /> それを出すだけで全員何も言えなくなる。くだらないにも程がある。<br />  <br /> 「気付いてなかったのか?」<br />  <br /> 「…?」<br />  <br /> 4人とも訝しげな顔でこちらをみる、まぁとどめってやつだ。<br />  <br /> 「お前ら、気持ち悪いんだよ」<br />  <br /> それだけ言って俺は部室を出た。これでもうあいつらと関わらなくて済みそうだ、せいせいする。<br /> その後俺は学校の坂を下っていた。冬のせいか既に日沈みはじめている。<br /> その夕日を見つめながら、俺は呟いた。<br />  <br /> 「本当…くだらない世界だ」<br />  <br /> これからも俺はこのくだらない世界で、一生味方を作らず生きていく…。<br />  <br />  <br /> BadEnd~完~</p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: