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「ひまわりの咲かせかた 第三章」(2009/04/02 (木) 23:02:24) の最新版変更点
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<ul><li><a title="ひまわりの咲かせかた (5m)" href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5482.html">もくじ</a></li>
</ul><p style="list-style-type:none;"><br /></p>
<ul><li><a title="もくじ (2h)" href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5360.html">もくじ</a></li>
</ul><p> </p>
<p>これはこれは、珍しい所で珍しい人にあったものだ。<br />
<br />
「涼宮さんもこの大学に入学していたのかい?」<br />
「えぇ、久しぶりね」<br />
<br />
高二の春、初めて会った時に見せた険しいものではなく、晴れやかな笑顔で答える涼宮さん。<br />
橘さん曰わく、神様に選ばれた女の子。<br />
いや、神様そのものだったかな?<br />
<br />
「えっと、涼宮さん1人かな?」<br />
「そうだけど、それがどうかした?」<br />
「もしよかったら、私も一緒にお昼ご飯を食べてもいいかい?」<br />
<br />
恥ずかしながら、人見知りするもので…<br />
誰かを介入しないと1人になっちゃうんだ。<br />
<br />
「勿論いいわよ!…でもほとんど席が埋まってるわね…」<br />
<br />
気がつけば食堂は多くの学生で溢れていた。<br />
ふむ、時間に余裕を持たないと駄目なようだね。<br />
<br />
「冷静に分析してる場合じゃないでしょ。ほら、あんたちょっとそっちに詰めな<br />
さい」<br />
「あ、大丈夫だよ。席が空いてないなら中庭で食べるから」<br />
「女の子が遠慮しちゃ駄目よ。さ、ここ座りなさい!」<br />
「それじゃ、お言葉に甘えて」<br />
<br />
涼宮さんはいつも食堂で?<br />
<br />
「そうよ。ここのカツ丼が美味しくて美味しくて。あ、一口いる?」<br />
「いや、遠慮しておくよ」<br />
「だから女の子が遠慮しちゃ駄目だって言ってるじゃない!ほら!」<br />
<br />
仕方がないなぁ。<br />
…ん。<br />
<br />
「…美味しい」<br />
「でしょ?やっぱりカツ丼のカツは卵とじよね!」<br />
<br />
相変わらず涼宮さんは元気だなぁ。<br />
<br />
「あれ?そういえば昼食は?食堂のご飯じゃないの?」<br />
「あぁ、私はお弁当を作ってきたんだ。と言っても大したものじゃないけどね」<br />
「そんなこと無いわよ!凄く美味しいじゃない!」<br />
<br />
あの…何で涼宮さんが私のお弁当を食べてるんだい?<br />
<br />
気がつけば、楽しそうにコロッケを口に運んでいる涼宮さん。<br />
<br />
「あ゛!ゴメン!つい癖で少し摘んじゃった…」<br />
「ま、カツ丼を少し食べさせてもらったしね。ところで、癖って?」<br />
「ん?あぁ、高校生の時よくやってたのよ。キョンのお弁当からこっそり摘んだりして」<br />
<br />
チクリ。<br />
<br />
「そっか、キョンと同じクラスだったんだよね」<br />
「キョンのお母さんの作る卵焼きがまた美味しいのよね!」<br />
<br />
グサリ<br />
<br />
なんだろう。<br />
この自分に何かが突き刺さる感覚は。<br />
<br />
「………」<br />
「…佐々木さん?」<br />
「あ、あぁ。少し考え事してたみたいだ。ゴメンよ」<br />
「ほら、ちゃんと食べてしっかりしなさい」<br />
「…だからそれは僕のお弁当だって」<br />
<br />
…いや、気のせいだろう。<br />
<br />
楽しそうな涼宮さんを見て、何となくため息をつく。<br />
新しい生活に少し疲れているのかもしれないな。<br />
<br />
「…ん、あれって」<br />
<br />
おもむろに彼女が食堂の端に顔を向ける。<br />
そこには、見慣れた男子学生がカツ丼の置かれたトレーを持って棒立ちしていた。<br />
<br />
私と同じ様に場所に溢れたのだろうか。<br />
<br />
周りの席は一向に空く気配がない。<br />
<br />
「あー、困ってるみたいだし、呼んでもいいかしら?」<br />
「あぁ、構わないよ」<br />
<br />
僕としても久しぶりに彼と話をしてみたかったしね。<br />
<br />
「じゃあ決まりね、おーい!」<br />
<br />
涼宮さんが大きく手を振る。<br />
澄んでいて、よく響く声。<br />
<br />
食堂の端にいた彼にもその声はすぐ届いたのだろう。<br />
こっちを見て、軽く苦笑いしていた。<br />
<br />
「ほら国木田、ボケーっとしてないであんたもこっちに来なさい!」<br />
<br />
中学時代の同級生、久しぶりに見た彼はあの時と変わっていなくて。<br />
なんというか、相変わらず童顔だなぁ。<br />
<br />
「えっと、ここに座って良いのかな?」<br />
<br />
…声変わりはしたみたいだ。<br />
だけどやっぱり幼さが残る。<br />
<br />
「…で、さっきから佐々木さんは冷静に何を分析しているのかな?」<br />
「いや、久しぶりだなと思ってさ」<br />
「あれ?あんた達って顔見知りなの?」<br />
「おや、言ってなかったかな?僕達は同じ中学校出身なんだよ」<br />
<br />
初耳とでも言いたそうな目だね。<br />
<br />
「ま、ね。あんまし国木田のこと知らないし」<br />
「…一応三年間同じクラスだったんだけどね」<br />
「ずっとキョンと谷口とつるんでたことくらいかしら、知ってるのは」<br />
「谷口?」<br />
「あぁ、高校からの友人さ。ちょっと変わってるけど良い奴だよ」<br />
<br />
ほう、一度会ってみたいものだなその谷口くんとやらに。<br />
<br />
「止めた方が良いわよー」<br />
<br />
遠い目をして呟く涼宮さん。<br />
気がつけば彼女は自分の分のカツ丼を食べ終えて、国木田くんのものまでつまみ始めていた。<br />
<br />
「毎回思うんだけど、涼宮さんは谷口と何かあったのかい?」<br />
「別にー。そういや、谷口もキョンと同じ大学だったっけ。国木田は一人なの?」<br />
「知り合いがいるようならあんなところで棒立ちなんかしてないよ」<br />
<br />
困った様に苦笑い。<br />
まぁ、お互いまた仲良くしようじゃないか。<br />
<br />
「うん、よろしくね」<br />
「そういえば、今日はもうこれで帰宅できるけど、二人とも用事はあるのかしら?」<br />
「僕は無いよ」<br />
<br />
うん、私も暇だね。<br />
<br />
「じゃ、決まりね!」<br />
「…何がだい?」<br />
「何って、遊ぶに決まってるじゃない!折角また会えたんだから、パーッと騒ぎましょ!」<br />
<br />
◇◆◇◆◇<br />
<br />
「で、三人そろって俺の家に乱入したというわけか」<br />
「何よ!文句あるって言うの!?」<br />
<br />
…ここがキョンの住んでるアパートかぁ。<br />
<br />
「佐々木、恥ずかしいからあまり散策するな」<br />
「へっ?あ、あぁ、すまない」<br />
<br />
…そんなにじろじろ見てたつもりは無いんだがなぁ。<br />
<br />
「あれ、谷口は一緒じゃないんだね?」<br />
「あぁ、あいつならほら、高校の時みたくランク付けとかやってるぞ」<br />
「相変わらず馬鹿なのね」<br />
<br />
えーと、これがキョンが座っている座布団かな?<br />
<br />
「…おーい」<br />
「冗談だ。そろそろ止めにするよ」<br />
「そういえば、キョンと佐々木さんって、会うのは一年ぶりかしら?」<br />
「あぁ、最後にあったのは…あれだ、正月前後で…」<br />
「確か、有希を保護してくれたのよね」<br />
「…何があったんだい?」<br />
<br />
そうか、国木田くんは分からないよな。<br />
<br />
「ま、色々合ったんだよ」<br />
<br />
三人でアハハ、と笑う。<br />
こんな日常があの時は沢山あふれていて。<br />
<br />
でも、今は楽しくないのかと言ったら、そういうわけでもなくて。<br />
ただ、少し寂しいときがあるだけで。<br />
<br />
何なんだろうか。<br />
この気持ちは。<br />
<br />
だけど、この瞬間はとても幸せで。<br />
<br />
暫く正月の時の話をしていると、玄関のチャイムが鳴り響く。<br />
<br />
「ん、誰か来たのか?」<br />
「噂をすれば、来たみたいね!」<br />
<br />
あ、長門さんに古泉くん。<br />
<br />
「あれ?みくるちゃんは?」<br />
「どうやら先約が入っていたようです」<br />
「あ、谷口からメールだ…」<br />
「あいつ、何だって?」<br />
「えっと、『全敗だ。一緒に飲もうぜ』…だって。どうする?キョン」<br />
「放置しとけ」<br />
「りょーかい」<br />
<br />
で、長門さんは何故さっきから私のことを見ているんだい?<br />
<br />
「…貴方には一生の恩がある」<br />
「あの時の有希は色々と危なかったからねぇ」<br />
「…感謝してもし足りない。ありがとう」<br />
「うん、どういたしまして」<br />
「…それに比べて古泉ときたら」<br />
「…そこで僕に話をふりますか…」<br />
「ねぇ、さっきから本当に話が見えないんだけど…」<br />
「ま、暇な時にでも教えてやるさ。なぁ、そろそろ飯にしないか?」<br />
「…空腹」<br />
「…貴女はいつも空腹じゃないですか?」<br />
<br />
で、何を食べるのかな?<br />
食べに行くのなら、僕はそんなに地理に詳しい方じゃないが。<br />
<br />
「あぁ、近くに美味いカツ丼の店があるんだ。そこに行こうぜ」<br />
「…僕と涼宮さん、お昼ご飯もカツ丼だったんだけど」<br />
「ま、いいじゃない!で、どんな店なの?」<br />
「垂れカツ丼の店なんだ。こっちの地方じゃ珍しいが…どうした?」<br />
<br />
怪訝そうな顔でキョンが涼宮さんを見る。<br />
…あからさまに不満そうな顔をしているなぁ。<br />
<br />
「垂れカツですって!?信じられない!カツは卵で閉じてこそ至高だと言えるのに!」<br />
<br />
似たような話を昼にも聞いたような気がするなぁ。<br />
<br />
「国木田もそう思うわよね!?」<br />
「え?あ、あぁ…そうかな」<br />
「佐々木さんは!?」<br />
「あー、僕はカツはカツでそのまま食べるのが好きだなぁ」<br />
「もうっ!なってないわね!古泉くんは!?」<br />
「味噌カツ派です」<br />
「何故ニヤケる」<br />
「いえ、癖みたいなものですよ」<br />
「有希は…いや、聞かなくて良いわ」<br />
「…カツカレー」<br />
「ま、そこは予想通りだな」<br />
<br />
はぁ、と涼宮さんがため息をつく。<br />
<br />
「…何か前回見たような展開なんだが…」<br />
「と、言うわけで、第二回SOS団トンカツ談義!まずはキョンの言う垂れカツから食べてやろうじゃない!」<br />
「…垂れカツ…とても興味深い」<br />
「僕、SOS団じゃないんだけど、行ってもいいのかな?」<br />
「勿論よ!仮団員みたいなものなんだから。ほら、映画に出させてあげたりしたでしょ?」<br />
<br />
何が起こるか分からないから、僕と涼宮さんはこんなに楽しい世界を、気付かずに選んだんだ。<br />
だからきっと、この先何が起こっても。<br />
<br />
「ほら、佐々木。ボーっとしてると置いて行くぞ?」<br />
「ん、あぁ、すまないね」<br />
「そうよ!折角キョンの奢りなんだから!」<br />
「…誰が奢ると言ったんだ」<br />
<br />
神様になれる資格を持っていたことなんて、惜しいだなんて思わないだろう。<br />
<br />
この時は、そう思っていたんだ。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
「ちぇ、国木田の奴、シカトしやがって…お、またまた可愛い子発見!」<br />
「…む、何かいやーな視線がするのです…」<br />
「───……?」<br />
<br />
つづく</p>
<ul><li><a title="ひまわりの咲かせかた (5m)" href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5482.html">もくじ</a></li>
</ul><p style="list-style-type:none;"><br />
これはこれは、珍しい所で珍しい人にあったものだ。<br />
<br />
「涼宮さんもこの大学に入学していたのかい?」<br />
「えぇ、久しぶりね」<br />
<br />
高二の春、初めて会った時に見せた険しいものではなく、晴れやかな笑顔で答える涼宮さん。<br />
橘さん曰わく、神様に選ばれた女の子。<br />
いや、神様そのものだったかな?<br />
<br />
「えっと、涼宮さん1人かな?」<br />
「そうだけど、それがどうかした?」<br />
「もしよかったら、私も一緒にお昼ご飯を食べてもいいかい?」<br />
<br />
恥ずかしながら、人見知りするもので…<br />
誰かを介入しないと1人になっちゃうんだ。<br />
<br />
「勿論いいわよ!…でもほとんど席が埋まってるわね…」<br />
<br />
気がつけば食堂は多くの学生で溢れていた。<br />
ふむ、時間に余裕を持たないと駄目なようだね。<br />
<br />
「冷静に分析してる場合じゃないでしょ。ほら、あんたちょっとそっちに詰めな<br />
さい」<br />
「あ、大丈夫だよ。席が空いてないなら中庭で食べるから」<br />
「女の子が遠慮しちゃ駄目よ。さ、ここ座りなさい!」<br />
「それじゃ、お言葉に甘えて」<br />
<br />
涼宮さんはいつも食堂で?<br />
<br />
「そうよ。ここのカツ丼が美味しくて美味しくて。あ、一口いる?」<br />
「いや、遠慮しておくよ」<br />
「だから女の子が遠慮しちゃ駄目だって言ってるじゃない!ほら!」<br />
<br />
仕方がないなぁ。<br />
…ん。<br />
<br />
「…美味しい」<br />
「でしょ?やっぱりカツ丼のカツは卵とじよね!」<br />
<br />
相変わらず涼宮さんは元気だなぁ。<br />
<br />
「あれ?そういえば昼食は?食堂のご飯じゃないの?」<br />
「あぁ、私はお弁当を作ってきたんだ。と言っても大したものじゃないけどね」<br />
「そんなこと無いわよ!凄く美味しいじゃない!」<br />
<br />
あの…何で涼宮さんが私のお弁当を食べてるんだい?<br />
<br />
気がつけば、楽しそうにコロッケを口に運んでいる涼宮さん。<br />
<br />
「あ゛!ゴメン!つい癖で少し摘んじゃった…」<br />
「ま、カツ丼を少し食べさせてもらったしね。ところで、癖って?」<br />
「ん?あぁ、高校生の時よくやってたのよ。キョンのお弁当からこっそり摘んだりして」<br />
<br />
チクリ。<br />
<br />
「そっか、キョンと同じクラスだったんだよね」<br />
「キョンのお母さんの作る卵焼きがまた美味しいのよね!」<br />
<br />
グサリ<br />
<br />
なんだろう。<br />
この自分に何かが突き刺さる感覚は。<br />
<br />
「………」<br />
「…佐々木さん?」<br />
「あ、あぁ。少し考え事してたみたいだ。ゴメンよ」<br />
「ほら、ちゃんと食べてしっかりしなさい」<br />
「…だからそれは僕のお弁当だって」<br />
<br />
…いや、気のせいだろう。<br />
<br />
楽しそうな涼宮さんを見て、何となくため息をつく。<br />
新しい生活に少し疲れているのかもしれないな。<br />
<br />
「…ん、あれって」<br />
<br />
おもむろに彼女が食堂の端に顔を向ける。<br />
そこには、見慣れた男子学生がカツ丼の置かれたトレーを持って棒立ちしていた。<br />
<br />
私と同じ様に場所に溢れたのだろうか。<br />
<br />
周りの席は一向に空く気配がない。<br />
<br />
「あー、困ってるみたいだし、呼んでもいいかしら?」<br />
「あぁ、構わないよ」<br />
<br />
僕としても久しぶりに彼と話をしてみたかったしね。<br />
<br />
「じゃあ決まりね、おーい!」<br />
<br />
涼宮さんが大きく手を振る。<br />
澄んでいて、よく響く声。<br />
<br />
食堂の端にいた彼にもその声はすぐ届いたのだろう。<br />
こっちを見て、軽く苦笑いしていた。<br />
<br />
「ほら国木田、ボケーっとしてないであんたもこっちに来なさい!」<br />
<br />
中学時代の同級生、久しぶりに見た彼はあの時と変わっていなくて。<br />
なんというか、相変わらず童顔だなぁ。<br />
<br />
「えっと、ここに座って良いのかな?」<br />
<br />
…声変わりはしたみたいだ。<br />
だけどやっぱり幼さが残る。<br />
<br />
「…で、さっきから佐々木さんは冷静に何を分析しているのかな?」<br />
「いや、久しぶりだなと思ってさ」<br />
「あれ?あんた達って顔見知りなの?」<br />
「おや、言ってなかったかな?僕達は同じ中学校出身なんだよ」<br />
<br />
初耳とでも言いたそうな目だね。<br />
<br />
「ま、ね。あんまし国木田のこと知らないし」<br />
「…一応三年間同じクラスだったんだけどね」<br />
「ずっとキョンと谷口とつるんでたことくらいかしら、知ってるのは」<br />
「谷口?」<br />
「あぁ、高校からの友人さ。ちょっと変わってるけど良い奴だよ」<br />
<br />
ほう、一度会ってみたいものだなその谷口くんとやらに。<br />
<br />
「止めた方が良いわよー」<br />
<br />
遠い目をして呟く涼宮さん。<br />
気がつけば彼女は自分の分のカツ丼を食べ終えて、国木田くんのものまでつまみ始めていた。<br />
<br />
「毎回思うんだけど、涼宮さんは谷口と何かあったのかい?」<br />
「別にー。そういや、谷口もキョンと同じ大学だったっけ。国木田は一人なの?」<br />
「知り合いがいるようならあんなところで棒立ちなんかしてないよ」<br />
<br />
困った様に苦笑い。<br />
まぁ、お互いまた仲良くしようじゃないか。<br />
<br />
「うん、よろしくね」<br />
「そういえば、今日はもうこれで帰宅できるけど、二人とも用事はあるのかしら?」<br />
「僕は無いよ」<br />
<br />
うん、私も暇だね。<br />
<br />
「じゃ、決まりね!」<br />
「…何がだい?」<br />
「何って、遊ぶに決まってるじゃない!折角また会えたんだから、パーッと騒ぎましょ!」<br />
<br />
◇◆◇◆◇<br />
<br />
「で、三人そろって俺の家に乱入したというわけか」<br />
「何よ!文句あるって言うの!?」<br />
<br />
…ここがキョンの住んでるアパートかぁ。<br />
<br />
「佐々木、恥ずかしいからあまり散策するな」<br />
「へっ?あ、あぁ、すまない」<br />
<br />
…そんなにじろじろ見てたつもりは無いんだがなぁ。<br />
<br />
「あれ、谷口は一緒じゃないんだね?」<br />
「あぁ、あいつならほら、高校の時みたくランク付けとかやってるぞ」<br />
「相変わらず馬鹿なのね」<br />
<br />
えーと、これがキョンが座っている座布団かな?<br />
<br />
「…おーい」<br />
「冗談だ。そろそろ止めにするよ」<br />
「そういえば、キョンと佐々木さんって、会うのは一年ぶりかしら?」<br />
「あぁ、最後にあったのは…あれだ、正月前後で…」<br />
「確か、有希を保護してくれたのよね」<br />
「…何があったんだい?」<br />
<br />
そうか、国木田くんは分からないよな。<br />
<br />
「ま、色々合ったんだよ」<br />
<br />
三人でアハハ、と笑う。<br />
こんな日常があの時は沢山あふれていて。<br />
<br />
でも、今は楽しくないのかと言ったら、そういうわけでもなくて。<br />
ただ、少し寂しいときがあるだけで。<br />
<br />
何なんだろうか。<br />
この気持ちは。<br />
<br />
だけど、この瞬間はとても幸せで。<br />
<br />
暫く正月の時の話をしていると、玄関のチャイムが鳴り響く。<br />
<br />
「ん、誰か来たのか?」<br />
「噂をすれば、来たみたいね!」<br />
<br />
あ、長門さんに古泉くん。<br />
<br />
「あれ?みくるちゃんは?」<br />
「どうやら先約が入っていたようです」<br />
「あ、谷口からメールだ…」<br />
「あいつ、何だって?」<br />
「えっと、『全敗だ。一緒に飲もうぜ』…だって。どうする?キョン」<br />
「放置しとけ」<br />
「りょーかい」<br />
<br />
で、長門さんは何故さっきから私のことを見ているんだい?<br />
<br />
「…貴方には一生の恩がある」<br />
「あの時の有希は色々と危なかったからねぇ」<br />
「…感謝してもし足りない。ありがとう」<br />
「うん、どういたしまして」<br />
「…それに比べて古泉ときたら」<br />
「…そこで僕に話をふりますか…」<br />
「ねぇ、さっきから本当に話が見えないんだけど…」<br />
「ま、暇な時にでも教えてやるさ。なぁ、そろそろ飯にしないか?」<br />
「…空腹」<br />
「…貴女はいつも空腹じゃないですか?」<br />
<br />
で、何を食べるのかな?<br />
食べに行くのなら、僕はそんなに地理に詳しい方じゃないが。<br />
<br />
「あぁ、近くに美味いカツ丼の店があるんだ。そこに行こうぜ」<br />
「…僕と涼宮さん、お昼ご飯もカツ丼だったんだけど」<br />
「ま、いいじゃない!で、どんな店なの?」<br />
「垂れカツ丼の店なんだ。こっちの地方じゃ珍しいが…どうした?」<br />
<br />
怪訝そうな顔でキョンが涼宮さんを見る。<br />
…あからさまに不満そうな顔をしているなぁ。<br />
<br />
「垂れカツですって!?信じられない!カツは卵で閉じてこそ至高だと言えるのに!」<br />
<br />
似たような話を昼にも聞いたような気がするなぁ。<br />
<br />
「国木田もそう思うわよね!?」<br />
「え?あ、あぁ…そうかな」<br />
「佐々木さんは!?」<br />
「あー、僕はカツはカツでそのまま食べるのが好きだなぁ」<br />
「もうっ!なってないわね!古泉くんは!?」<br />
「味噌カツ派です」<br />
「何故ニヤケる」<br />
「いえ、癖みたいなものですよ」<br />
「有希は…いや、聞かなくて良いわ」<br />
「…カツカレー」<br />
「ま、そこは予想通りだな」<br />
<br />
はぁ、と涼宮さんがため息をつく。<br />
<br />
「…何か前回見たような展開なんだが…」<br />
「と、言うわけで、第二回SOS団トンカツ談義!まずはキョンの言う垂れカツから食べてやろうじゃない!」<br />
「…垂れカツ…とても興味深い」<br />
「僕、SOS団じゃないんだけど、行ってもいいのかな?」<br />
「勿論よ!仮団員みたいなものなんだから。ほら、映画に出させてあげたりしたでしょ?」<br />
<br />
何が起こるか分からないから、僕と涼宮さんはこんなに楽しい世界を、気付かずに選んだんだ。<br />
だからきっと、この先何が起こっても。<br />
<br />
「ほら、佐々木。ボーっとしてると置いて行くぞ?」<br />
「ん、あぁ、すまないね」<br />
「そうよ!折角キョンの奢りなんだから!」<br />
「…誰が奢ると言ったんだ」<br />
<br />
神様になれる資格を持っていたことなんて、惜しいだなんて思わないだろう。<br />
<br />
この時は、そう思っていたんだ。<br />
<br />
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<br />
「ちぇ、国木田の奴、シカトしやがって…お、またまた可愛い子発見!」<br />
「…む、何かいやーな視線がするのです…」<br />
「───……?」<br />
<br />
つづく</p>