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<p><span style="font-size:10.5pt;font-family:'MS Pゴシック';">
<font color="#000000" size="3">…</font><span lang="en-us" xml:lang="en-us"><br /><font color="#000000" size="3">……<br />
………<br /><br />
「ホント、あの時は大変だったな、色々と……」<br />
未だ晴れ間の見えない、灰色単一色の空を三度見上げて言葉を漏らした。<br /><br />
橘が消えてしまったかと思って異次元に飛んでみれば、また別の橘が現れて実は元に戻しましたなどと言う。<br />
佐々木は滞在時間が長かったあの世界が大層気に入って、戻りたくないなんて言い出す始末。<br />
結果論ではあるが、次元断層に飛び込んでいった橘をそのまま放っておけば、異次元の番人さんが『忘れ物ですよー』と言って届けてくれたのだろうし、佐々木と朝倉の誘惑合戦も開始される事無く幕を閉じたんじゃないかと思う。<br />
はっきり言って、あの次元断層のワープは俺が経験した中でも三本の指に入るくらい無意味なイベントだったと思う。<br />
でも、それは俺にとって、だ。<br />
佐々木はあちらの橘と深い信頼関係を得られたし、こちらの橘に関してもやや寛大になってきたんだと思う。<br />
九曜は人間的思考が芽生え始めてきたせいか、あれ以来橘とつるんでは遊ぶようになった。<br />
橘は……まあ、あまり変わってはないが(ずっとこちらの世界にいたから当たり前と言えば当たり前なのだが)、佐々木の愛情みたいなものは気付き始めたんじゃないかと思う。<br />
あの時の不思議な光景は、こちらの橘にも届いていたと思う。事実、こちらの橘も閉鎖空間で佐々木さんと楽しく遊んだ夢を見た、等といってたしな。<br />
あの世界の橘と、この世界の橘。双方が通じ合った瞬間なのかもしれない。<br /><br />
……ま、だからこそ、自由気ままに行動しすぎた橘に佐々木は鉄槌を下ろうとしてたのかもな。<br />
その良い例が、あの橘増殖事件だ。<br />
色々複雑な事情が絡み合って発生した事件ではあるが、根本は異世界の橘とこの世界の橘のギャップを感じ、愛想を尽かしてしまったんだと思う。<br />
もしかしたら佐々木は、橘を本当に入れ替えるつもりだったのかもしれないな。<br /><br /><br /><br />
もうすぐセンター試験が始まって、その後私立試験、そして国立の二次試験が始まる。<br />
自分の事で手一杯な俺はそれまで橘を矯正させるのは厳しいかもしれないが、試験が終わり、晴れて大学生になったら橘の矯正活動に参加してやるさ。佐々木や森さんと一緒にな。<br />
よし、想い出話は終わりだ。<br />
今から一分一秒でも多く試験勉強をして、ハルヒや佐々木を唸らせる結果を出してやる。<br /><br />
ピンポーン<br />
「あけましておめでとうございまーす。年賀状でーす」<br /><br />
……おや、年賀状か。俺以外の家族はみんな初詣にでかけているから俺が出るしかないな。<br />
机の上にシャーウペンシルを置いて、スウェット姿のまま玄関に向かった。<br />
なに、年賀状を受け取るだけだ。この格好でも構わないだろ?<br /><br /><br />
しかし、この後俺はとんでもなく後悔する羽目になる。<br />
年賀状を配りに来るのは年始の恒例行事であろうし、それ故何の警戒もなく扉を開いてしまうのは仕方ない事であろう。<br />
だがしかし。災難は平時をうまく偽装してやってくるものである。<br />
宅配業者を名乗って強盗に押し入るのはよく聞く話だ。皆も注意しような。<br />
そうでないと、俺みたいな被害を被ってしまうのである。<br /><br /><br />
何の疑いもなく玄関の扉を開けて、「ごくろうさまです」と声をかけた瞬間、<br />
「あけましておめでとうございますぅ! 今年もよろしくお願いするのです!!」<br />
うわ出たな橘と九曜の極彩色コンビめ!! 新年早々厄を振り撒きに来たのか!!<br />
「ちょっと! それはいくらなんでもひどすぎやしませんか!!」<br />
お前の空気の読めなさっぷりに比べればアイスに黄粉と黒蜜かけるくらい甘いわ!<br />
「……美味しそうですね、それ」<br />
……やっぱりこいつ空気読めないでやんの……<br />
「それはともかく、今から初詣に行きますよ! 合格できるか怪しいんだから、神様に願掛けしないとただでさえ少ない合格率がゼロになっちゃいますよ!」<br />
お前の胸よりはよっぽど多いわ。<br />
「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁん!! 九曜さーん! キョンくんがいぢめるぅ~!!」<br />
「――――おー、……よしよし――――」<br />
いつもの黒い物体は、橘の頭を撫でて――って。<br />
「お前ら、振袖なんか着てどうしたんだ?」<br />
「今更気付くなんて正真正銘の鈍さですね……」<br />
「……ねー――――」<br />
うるさい。<br />
「正月だから良いじゃないですか。なんならキョンくんも振袖に着替えますか?」<br />
嫌だ。というか第一振袖は女性のものだろうが。俺が着る必要性はない。<br />
「大丈夫ですよ。そう言うと思って……」<br />
橘はガサゴソと、何処かで見たことのあるボストンバッグをまさぐり……おい、まさかそれ……<br />
嫌な予感が蘇った。<br /><br /><br />
「じゃじゃーん! メイクセットとウィッグ、振袖用アップスタイルバージョン(かんざし付)ですー!!」<br /><br /><br />
い……<br /><br /><br />
「いやぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」<br /><br /><br /><br />
この後、初詣に強制連行された事は言うまでも無い。<br />
なお、この後の初詣でもひと悶着あったのだが、それは別の機会にお話しようと思う。<br /><br /><br /><br />
とりあえず終わらせろ。</font><br /><br /></span></span></p>
<p><span style="font-size:10.5pt;font-family:'MS Pゴシック';"><font color="#000000" size="3">…</font><br />
<span lang="en-us" xml:lang="en-us"><font color="#000000" size="3">……<br />
………<br />
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「ホント、あの時は大変だったな、色々と……」<br />
未だ晴れ間の見えない、灰色単一色の空を三度見上げて言葉を漏らした。<br />
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橘が消えてしまったかと思って異次元に飛んでみれば、また別の橘が現れて実は元に戻しましたなどと言う。<br />
佐々木は滞在時間が長かったあの世界が大層気に入って、戻りたくないなんて言い出す始末。<br />
結果論ではあるが、次元断層に飛び込んでいった橘をそのまま放っておけば、異次元の番人さんが『忘れ物ですよー』と言って届けてくれたのだろうし、佐々木と朝倉の誘惑合戦も開始される事無く幕を閉じたんじゃないかと思う。<br />
はっきり言って、あの次元断層のワープは俺が経験した中でも三本の指に入るくらい無意味なイベントだったと思う。<br />
でも、それは俺にとって、だ。<br />
佐々木はあちらの橘と深い信頼関係を得られたし、こちらの橘に関してもやや寛大になってきたんだと思う。<br />
九曜は人間的思考が芽生え始めてきたせいか、あれ以来橘とつるんでは遊ぶようになった。<br />
橘は……まあ、あまり変わってはないが(ずっとこちらの世界にいたから当たり前と言えば当たり前なのだが)、佐々木の愛情みたいなものは気付き始めたんじゃないかと思う。<br />
あの時の不思議な光景は、こちらの橘にも届いていたと思う。事実、こちらの橘も閉鎖空間で佐々木さんと楽しく遊んだ夢を見た、等といってたしな。<br />
あの世界の橘と、この世界の橘。双方が通じ合った瞬間なのかもしれない。<br />
<br />
……ま、だからこそ、自由気ままに行動しすぎた橘に佐々木は鉄槌を下ろうとしてたのかもな。<br />
その良い例が、あの橘増殖事件だ。<br />
色々複雑な事情が絡み合って発生した事件ではあるが、根本は異世界の橘とこの世界の橘のギャップを感じ、愛想を尽かしてしまったんだと思う。<br />
もしかしたら佐々木は、橘を本当に入れ替えるつもりだったのかもしれないな。<br />
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もうすぐセンター試験が始まって、その後私立試験、そして国立の二次試験が始まる。<br />
自分の事で手一杯な俺はそれまで橘を矯正させるのは厳しいかもしれないが、試験が終わり、晴れて大学生になったら橘の矯正活動に参加してやるさ。佐々木や森さんと一緒にな。<br />
よし、想い出話は終わりだ。<br />
今から一分一秒でも多く試験勉強をして、ハルヒや佐々木を唸らせる結果を出してやる。<br />
<br />
ピンポーン<br />
「あけましておめでとうございまーす。年賀状でーす」<br />
<br />
……おや、年賀状か。俺以外の家族はみんな初詣にでかけているから俺が出るしかないな。<br />
机の上にシャーウペンシルを置いて、スウェット姿のまま玄関に向かった。<br />
なに、年賀状を受け取るだけだ。この格好でも構わないだろ?<br />
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<br />
しかし、この後俺はとんでもなく後悔する羽目になる。<br />
年賀状を配りに来るのは年始の恒例行事であろうし、それ故何の警戒もなく扉を開いてしまうのは仕方ない事であろう。<br />
だがしかし。災難は平時をうまく偽装してやってくるものである。<br />
宅配業者を名乗って強盗に押し入るのはよく聞く話だ。皆も注意しような。<br />
そうでないと、俺みたいな被害を被ってしまうのである。<br />
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何の疑いもなく玄関の扉を開けて、「ごくろうさまです」と声をかけた瞬間、<br />
「あけましておめでとうございますぅ! 今年もよろしくお願いするのです!!」<br />
うわ出たな橘と九曜の極彩色コンビめ!! 新年早々厄を振り撒きに来たのか!!<br />
「ちょっと! それはいくらなんでもひどすぎやしませんか!!」<br />
お前の空気の読めなさっぷりに比べればアイスに黄粉と黒蜜かけるくらい甘いわ!<br />
「……美味しそうですね、それ」<br />
……やっぱりこいつ空気読めないでやんの……<br />
「それはともかく、今から初詣に行きますよ! 合格できるか怪しいんだから、神様に願掛けしないとただでさえ少ない合格率がゼロになっちゃいますよ!」<br />
お前の胸よりはよっぽど多いわ。<br />
「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁん!! 九曜さーん! キョンくんがいぢめるぅ~!!」<br />
「――――おー、……よしよし――――」<br />
いつもの黒い物体は、橘の頭を撫でて――って。<br />
「お前ら、振袖なんか着てどうしたんだ?」<br />
「今更気付くなんて正真正銘の鈍さですね……」<br />
「……ねー――――」<br />
うるさい。<br />
「正月だから良いじゃないですか。なんならキョンくんも振袖に着替えますか?」<br />
嫌だ。というか第一振袖は女性のものだろうが。俺が着る必要性はない。<br />
「大丈夫ですよ。そう言うと思って……」<br />
橘はガサゴソと、何処かで見たことのあるボストンバッグをまさぐり……おい、まさかそれ……<br />
嫌な予感が蘇った。<br />
<br />
<br />
「じゃじゃーん! メイクセットとウィッグ、振袖用アップスタイルバージョン(かんざし付)ですー!!」<br />
<br />
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い……<br />
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「いやぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」<br />
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この後、初詣に強制連行された事は言うまでも無い。<br />
なお、この後の初詣でもひと悶着あったのだが、それは別の機会にお話しようと思う。<br />
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とりあえず終わらせろ。</font></span></span><br />
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