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お題「バレンタイン前夜祭」」(2009/02/13 (金) 15:50:40) の最新版変更点

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<p>「ハルにょーん!みくるいるかいっ!?…ってのわ!」<br />  <br /> 部室の扉を開いた瞬間、目の前を小さな何かが通り過ぎる。<br /> …速い。残像しか残ってなかったさ。<br />  <br /> その影を必死に追いかけるもう一つの影。<br />  <br /> 「こらー!有希!あんたまたチョコつまみ食いしたでしょー!」<br /> 「…証拠もないのに決めつけるべきではない。ただ、もう少し牛乳を足すと苦味が際立つ」<br />  <br /> ハルにゃんである。<br /> どうやら幾度もつまみ食いした有希っこに対し、それなりに憤慨しているようで。<br />  <br /> 「味がわかるってことは食べたんじゃないのー!」<br /> 「…知らない。私は何も知らない」<br />  <br /> 目が回るんじゃないかってくらいグルグルと、机を中心に追いかけっこをしている。<br /> ふむ、しかしハルにゃんから逃げながらも二個三個と有希っこがチョコをつまみ食いしているのは私の目の錯覚なのかねぇ。<br />  <br /> 「す、涼宮さんに長門さん!チョコがこぼれちゃいますから止めてくださいー!」<br />  <br /> そんな二人に対し可愛らしくあうあうとパニクっているのは同級生のみくるである。<br /> いやー、相変わらず拙い仕草が可愛いね!みくるは!<br />  <br /> 「つ、鶴屋さんも笑ってないで止めて下さいよー…」<br /> 「あはは!ゴメンゴメン!」<br />  <br /> 勘の良い人はお気づきの通り、今日は2月13日、乙女の決戦前夜祭なのさ!<br /> バレンタインに渡す為、女の子達はこぞってチョコを制作するのだよ。<br />  <br /> 「それなのに有希ったら、つまみ食いしかしないのよ!?」<br /> 「…こんな誘惑には勝てる気がしない」<br /> 「…盛大に開き直りましたね」<br />  <br /> まーま、楽しくやるのも良いことさね。<br /> ところでみくる。<br />  <br /> 「何ですかぁ?」<br /> 「そこに転がってるボロ雑巾は何かい?」<br /> 「あ、えと…これは…」<br />  <br /> 言いかけてからみくるがどもる。<br /> はて。食べ物を扱ってる最中で雑巾を放置しておくのはいかがなものかと思うけれど…<br />  <br /> そんな私の微かな疑問など知ったこっちゃないという風に、ハルにゃんが淡々とみくるの代弁をする。<br />  <br /> 「それ、キョンよ」<br /> 「あぁ、このボロ雑巾はキョンくんだったのか………えぇぇぇえぇぇぇ!??」<br />  <br /> ちょっと!キョンくん大丈夫かいっ!?<br />  <br /> …駄目さね。完全に意識がないっさ。<br />  <br /> 「…約30分前、私がチョコをダミーとすり替えた際に彼が部室の扉を開けた」<br /> 「ほら、なんかバレンタインの準備って気恥ずかしいじゃない。だからつい、ね。回し蹴りをね」<br />  <br /> 回し蹴り、ねぇ。<br /> どう贔屓目に見ても、キョンくんの身体は数十の殴られた跡がある。<br /> ま、乙女の秘密は見てはいけないってことで。合掌。<br />  <br /> 「あ、あの…チョコがカレールーにすり替わってるんですが…」<br /> 「…それはとても素晴らしいこと」<br />  <br /> っていうか、古泉くんも知らずに部室に入って来ちゃうんじゃないかい?<br /> キョンくんの二の舞になってはなってはならないとお姉さんは思うんだけど。<br />  <br /> 「でも、古泉くんって気が回りますから大丈夫だと思うんです」<br /> 「うーん…一応、念には念をってことで、警告でもしておきましょうか」<br />  <br /> 警告?<br /> 立て看板でもしとくのかい?<br />  <br /> 「部室の前にキョンを吊し上げて置くのよ」<br /> 「…なんか…怖いっさ」<br />  <br /> 有希っこがどこからか引っ提げてきた十字架型のオブジェに括り付けられたキョンくんを見て、率直な感想を述べてみる。<br /> みくるに至っては今にも泣き出しそうさね。<br />  <br /> 「よし!これで完成ね!有希、部室の前に晒しだしておきなさい!」<br /> 「…了解した」<br /> 「それじゃ、チョコ制作の続きを始めましょうか。涼宮さん、長門さんがすり替えてしまったカレールーはどうしましょうか?」<br /> 「あー…キョンのチョコにでも入れておきましょう」<br /> 「了解です!…そういえば、鶴屋さんは何をしに来たんですかぁ?」<br />  <br /> 私かい?<br />  <br /> 「ふふふ…ちょろんとチョコをつまみ食いにね!」<br />  <br /> 言うが早いかみくるが手にしていたチョコを霞めとる。<br /> うん!ほんのりミルクの味がして美味しいっさ!<br />  <br /> 「…私の分も」<br /> 「有希は散々つまみ食いしたじゃない!」<br /> 「彼女だけというのは不公平。許可を」<br /> 「な、なんの許可ですかぁ…」<br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br /> 「…なぁ、古泉」<br />  <br /> ボロ雑巾のようになった俺を見て、驚愕している古泉に話しかける。<br />  <br /> 「…なんでしょうか?」<br /> 「…こんなオチでいいのか?」<br /> 「何のことか存じませんが…たまにはいいんじゃないでしょうか」<br />  <br /> たまには、ね。<br /> その言葉を聞き、俺はある魔法の言葉を唱える。<br />  <br /> 「…よし…やっちまえ…」<br />  <br /> その瞬間。<br />  <br /> 『あ゛ー!有希!そのチョコはとっておきのやつだから食べちゃだめー!!』<br /> 『…許可が下りた。今の私の能力に枷はない』<br />  <br /> 再び部室の中でハルヒと長門の追いかけっこが始まったようだ。<br /> …ざまーみろハルヒ…<br />  <br /> 「折角物音に心配して駆けつけたってのに…いきなりこの様だ」<br /> 「兎にも角にも、今日は部室に入らないのが得策でしょう」<br />  <br /> …というかだな、また下手したら去年のように山につれてかれたりするのか?<br /> 俺のクエスチョンマークを汲み取るように、古泉が微笑む。<br />  <br /> …やれやれ。<br /> ハルヒ一緒にいると毎回こういうことが起こるのな。<br />  <br /> まぁ、なんだ。<br />  <br /> 「…ハッピーバレンタイン」<br /> 「とりあえずその縄を解いたらどうなんですか」<br /> 「…解けたら苦労しねぇよ」<br />  <br /> おわり<br />  <br />  </p>
<ul><li><a title="目次 (2h)" href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5160.html">目次</a></li> </ul><p> </p> <hr /><p> 「ハルにょーん!みくるいるかいっ!?…ってのわ!」<br />  <br /> 部室の扉を開いた瞬間、目の前を小さな何かが通り過ぎる。<br /> …速い。残像しか残ってなかったさ。<br />  <br /> その影を必死に追いかけるもう一つの影。<br />  <br /> 「こらー!有希!あんたまたチョコつまみ食いしたでしょー!」<br /> 「…証拠もないのに決めつけるべきではない。ただ、もう少し牛乳を足すと苦味が際立つ」<br />  <br /> ハルにゃんである。<br /> どうやら幾度もつまみ食いした有希っこに対し、それなりに憤慨しているようで。<br />  <br /> 「味がわかるってことは食べたんじゃないのー!」<br /> 「…知らない。私は何も知らない」<br />  <br /> 目が回るんじゃないかってくらいグルグルと、机を中心に追いかけっこをしている。<br /> ふむ、しかしハルにゃんから逃げながらも二個三個と有希っこがチョコをつまみ食いしているのは私の目の錯覚なのかねぇ。<br />  <br /> 「す、涼宮さんに長門さん!チョコがこぼれちゃいますから止めてくださいー!」<br />  <br /> そんな二人に対し可愛らしくあうあうとパニクっているのは同級生のみくるである。<br /> いやー、相変わらず拙い仕草が可愛いね!みくるは!<br />  <br /> 「つ、鶴屋さんも笑ってないで止めて下さいよー…」<br /> 「あはは!ゴメンゴメン!」<br />  <br /> 勘の良い人はお気づきの通り、今日は2月13日、乙女の決戦前夜祭なのさ!<br /> バレンタインに渡す為、女の子達はこぞってチョコを制作するのだよ。<br />  <br /> 「それなのに有希ったら、つまみ食いしかしないのよ!?」<br /> 「…こんな誘惑には勝てる気がしない」<br /> 「…盛大に開き直りましたね」<br />  <br /> まーま、楽しくやるのも良いことさね。<br /> ところでみくる。<br />  <br /> 「何ですかぁ?」<br /> 「そこに転がってるボロ雑巾は何かい?」<br /> 「あ、えと…これは…」<br />  <br /> 言いかけてからみくるがどもる。<br /> はて。食べ物を扱ってる最中で雑巾を放置しておくのはいかがなものかと思うけれど…<br />  <br /> そんな私の微かな疑問など知ったこっちゃないという風に、ハルにゃんが淡々とみくるの代弁をする。<br />  <br /> 「それ、キョンよ」<br /> 「あぁ、このボロ雑巾はキョンくんだったのか………えぇぇぇえぇぇぇ!??」<br />  <br /> ちょっと!キョンくん大丈夫かいっ!?<br />  <br /> …駄目さね。完全に意識がないっさ。<br />  <br /> 「…約30分前、私がチョコをダミーとすり替えた際に彼が部室の扉を開けた」<br /> 「ほら、なんかバレンタインの準備って気恥ずかしいじゃない。だからつい、ね。回し蹴りをね」<br />  <br /> 回し蹴り、ねぇ。<br /> どう贔屓目に見ても、キョンくんの身体は数十の殴られた跡がある。<br /> ま、乙女の秘密は見てはいけないってことで。合掌。<br />  <br /> 「あ、あの…チョコがカレールーにすり替わってるんですが…」<br /> 「…それはとても素晴らしいこと」<br />  <br /> っていうか、古泉くんも知らずに部室に入って来ちゃうんじゃないかい?<br /> キョンくんの二の舞になってはなってはならないとお姉さんは思うんだけど。<br />  <br /> 「でも、古泉くんって気が回りますから大丈夫だと思うんです」<br /> 「うーん…一応、念には念をってことで、警告でもしておきましょうか」<br />  <br /> 警告?<br /> 立て看板でもしとくのかい?<br />  <br /> 「部室の前にキョンを吊し上げて置くのよ」<br /> 「…なんか…怖いっさ」<br />  <br /> 有希っこがどこからか引っ提げてきた十字架型のオブジェに括り付けられたキョンくんを見て、率直な感想を述べてみる。<br /> みくるに至っては今にも泣き出しそうさね。<br />  <br /> 「よし!これで完成ね!有希、部室の前に晒しだしておきなさい!」<br /> 「…了解した」<br /> 「それじゃ、チョコ制作の続きを始めましょうか。涼宮さん、長門さんがすり替えてしまったカレールーはどうしましょうか?」<br /> 「あー…キョンのチョコにでも入れておきましょう」<br /> 「了解です!…そういえば、鶴屋さんは何をしに来たんですかぁ?」<br />  <br /> 私かい?<br />  <br /> 「ふふふ…ちょろんとチョコをつまみ食いにね!」<br />  <br /> 言うが早いかみくるが手にしていたチョコを霞めとる。<br /> うん!ほんのりミルクの味がして美味しいっさ!<br />  <br /> 「…私の分も」<br /> 「有希は散々つまみ食いしたじゃない!」<br /> 「彼女だけというのは不公平。許可を」<br /> 「な、なんの許可ですかぁ…」<br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br /> 「…なぁ、古泉」<br />  <br /> ボロ雑巾のようになった俺を見て、驚愕している古泉に話しかける。<br />  <br /> 「…なんでしょうか?」<br /> 「…こんなオチでいいのか?」<br /> 「何のことか存じませんが…たまにはいいんじゃないでしょうか」<br />  <br /> たまには、ね。<br /> その言葉を聞き、俺はある魔法の言葉を唱える。<br />  <br /> 「…よし…やっちまえ…」<br />  <br /> その瞬間。<br />  <br /> 『あ゛ー!有希!そのチョコはとっておきのやつだから食べちゃだめー!!』<br /> 『…許可が下りた。今の私の能力に枷はない』<br />  <br /> 再び部室の中でハルヒと長門の追いかけっこが始まったようだ。<br /> …ざまーみろハルヒ…<br />  <br /> 「折角物音に心配して駆けつけたってのに…いきなりこの様だ」<br /> 「兎にも角にも、今日は部室に入らないのが得策でしょう」<br />  <br /> …というかだな、また下手したら去年のように山につれてかれたりするのか?<br /> 俺のクエスチョンマークを汲み取るように、古泉が微笑む。<br />  <br /> …やれやれ。<br /> ハルヒ一緒にいると毎回こういうことが起こるのな。<br />  <br /> まぁ、なんだ。<br />  <br /> 「…ハッピーバレンタイン」<br /> 「とりあえずその縄を解いたらどうなんですか」<br /> 「…解けたら苦労しねぇよ」<br />  <br /> おわり<br />  <br />  </p>

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