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「殺し屋 キョン」(2020/07/18 (土) 13:22:30) の最新版変更点
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<p>文字サイズ小で上手く表示されると思います</p>
<hr /><p> </p>
<p><br />
その男は、普段は温厚な青年にしか見えなかった。<br />
人当たりもよく、基本的に従順。<br />
波風立てるような行為に興味を持つ事も無く、平凡な人生を歩む事を好んでいる様に思える。<br />
……だからこそ、彼の本性に気づく者は少ない。<br />
そして、不幸にもその事実に気づいてしまった者は生き延びる事はできないのだろう。<br />
今の、自分の様に。</p>
<p><br />
殺し屋 キョン</p>
<p><br />
彼の中に羅刹が住むことに私が気づいたのは、彼がその行為に及んだ後だった。<br />
結果として、私が今もこうして生き延びていられるのは運がよかっただけの事としか思えない。<br />
悪夢としか思えないあの日以来、私はあの男を常に避け続けてきた。<br />
だが、それももうすぐ限界を迎えるだろう。<br />
何故なら、彼の目にあの日と同じ「決して目的を達成するまでは行為を止めないであろう決意」を<br />
見てしまったのだ。<br />
このままではいけない。<br />
何とかして目前に迫った脅威を知らせようと奔走するものの、私の言葉に誰も耳を貸そうとはしな<br />
かった。<br />
それどころか、私の身を進んであの男へと差し出そうとする。<br />
あの男は怖くないと言って。<br />
愚鈍な、何故気づかないのだ?<br />
奴はあの退屈そうな顔で世を儚んでいる様な男ではない、その本性は自らの目的の為であれば周囲<br />
にどんな被害が及ぼうとも気にもかけない悪魔なのだぞ?<br />
私は生き延びなければならない。<br />
なんとしても生き延びて、第二第三の被害を防ぐ為にもこの事実を広く世に伝えなければならない<br />
のだ。<br />
良き理解者であったはずの友の元からも逃げ出し、私は身を隠す場所を探していた。<br />
あの男によって外へ逃げる道は全て塞がれてしまった今となっては、この家の中に安全と言える場<br />
所は存在していない。<br />
物音を立てない様に周囲を見回していた私の目に……あの男が、あの日と同じ凶器を持って部屋に<br />
入ってくるのが見えた。<br />
最早一刻の猶予も無い。<br />
身を低くして、あの男の視界に入らないように全力で走り出す。<br />
間一髪、あの男に気づかれないまま廊下へと飛び出す事に成功した……しかし、どこへ逃げればい<br />
いと言うのだ?<br />
部屋の中から、あの男が私を呼ぶ声がする。<br />
その声には何の危険も無い様に感じられるが……そう、あの日の私はあの声に騙されたのだ。同じ<br />
間違いをするつもりなどない。<br />
私はそのまま2階へと逃げ出し……ふと思いつき、あの男の部屋に忍び込んだ。<br />
――主が不在のその部屋の中は暗いが、私はそのままでベットの下に隠れる事にした。<br />
下の階からは、あの男が私を探している声がまだ聞こえている。<br />
私はその声が聞こえないようにと、耳を伏せる。<br />
このまま、ここで夜が明けるのを待とう……朝が来れば、きっと希望もあるはずだ。<br />
明けない夜などないのだから。<br />
私がそう信じ込もうとしていた時、無常にも部屋の照明に電気が伝わった。</p>
<p><br />
ベットの下に居る私には、あの男の両足だけが見えていた。<br />
その足がゆっくりとベットに近づいてくる。<br />
私がいつでも逃げ出せるようにと体を強張らせていると、彼の足がベットの上に消え、木材が軋む<br />
音が頭上から聞こえてきた。<br />
このまま眠るのだろうか?<br />
「……ふぅ」<br />
小さく息をつく声、まだ油断はできない。<br />
じっと息を殺してベットの隙間から部屋の様子を伺っていると、あの男の顔が逆さの状態で突然現<br />
れた。驚く私が逃げる間もなく、今度は左右から腕が伸びてきて私の体を掴む。<br />
やめろっ! 離してくれっ! 見逃してくれ?<br />
必死に足掻く私をあざ笑うかの様に、あの男はゆっくりと私の体をベットから引きずり出していく。<br />
抵抗も虚しく、私の体はベットの外へと連れ出されてしまう……それだけではない、絶望する私に<br />
追い討ちをかけるような出来事が待っていた。<br />
部屋に居たのはあの男だけではない。<br />
良き理解者だと思っていた人間もまた、部屋の入口であの男と同じ笑顔を浮かべて私を見ていた。<br />
……この事実を知った者よ、どうか伝えて欲しい。<br />
この男は、殺し屋なのだと。<br />
抵抗する事を諦めた私を、あの男は例の場所へと連れて行く。<br />
階段を降り、洗面所の向かいにあるあの部屋へ。<br />
あの男がその部屋の扉を開けると、やけに暖かい湿度の高い空気が私の「髭」を濡らした。<br />
壁に立てかけられた熱湯が噴出す拷問器具、いくつも並んだ蛍光色の容器。<br />
その全てが私に恐怖を与え、希望を奪う……。<br />
生き延びよう、何としても。<br />
これから起きるであろう出来事に覚悟を決めた私を、あの男はそっと洗面器の中に沈め――</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> チャポン</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> にゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ<br />
ああああああああああああああああああああああ!!!!「逃げるなシャミセン!」にゃああああああ<br />
ああああああああああ「シャミにね? ノミが居るんだよ~」あああああああああああああああああああ<br />
ああああああああああああああああああああ!!</p>
<p> </p>
<p><br />
殺し屋 キョン ~終わり~</p>
<p> </p>
<p> <a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5245.html">その他の作品</a></p>
<p>文字サイズ小で上手く表示されると思います</p>
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その男は、普段は温厚な青年にしか見えなかった。<br />
人当たりもよく、基本的に従順。<br />
波風立てるような行為に興味を持つ事も無く、平凡な人生を歩む事を好んでいる様に思える。<br />
……だからこそ、彼の本性に気づく者は少ない。<br />
そして、不幸にもその事実に気づいてしまった者は生き延びる事はできないのだろう。<br />
今の、自分の様に。</p>
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殺し屋 キョン</p>
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彼の中に羅刹が住むことに私が気づいたのは、彼がその行為に及んだ後だった。<br />
結果として、私が今もこうして生き延びていられるのは運がよかっただけの事としか思えない。<br />
悪夢としか思えないあの日以来、私はあの男を常に避け続けてきた。<br />
だが、それももうすぐ限界を迎えるだろう。<br />
何故なら、彼の目にあの日と同じ「決して目的を達成するまでは行為を止めないであろう決意」を<br />
見てしまったのだ。<br />
このままではいけない。<br />
何とかして目前に迫った脅威を知らせようと奔走するものの、私の言葉に誰も耳を貸そうとはしな<br />
かった。<br />
それどころか、私の身を進んであの男へと差し出そうとする。<br />
あの男は怖くないと言って。<br />
愚鈍な、何故気づかないのだ?<br />
奴はあの退屈そうな顔で世を儚んでいる様な男ではない、その本性は自らの目的の為であれば周囲<br />
にどんな被害が及ぼうとも気にもかけない悪魔なのだぞ?<br />
私は生き延びなければならない。<br />
なんとしても生き延びて、第二第三の被害を防ぐ為にもこの事実を広く世に伝えなければならない<br />
のだ。<br />
良き理解者であったはずの友の元からも逃げ出し、私は身を隠す場所を探していた。<br />
あの男によって外へ逃げる道は全て塞がれてしまった今となっては、この家の中に安全と言える場<br />
所は存在していない。<br />
物音を立てない様に周囲を見回していた私の目に……あの男が、あの日と同じ凶器を持って部屋に<br />
入ってくるのが見えた。<br />
最早一刻の猶予も無い。<br />
身を低くして、あの男の視界に入らないように全力で走り出す。<br />
間一髪、あの男に気づかれないまま廊下へと飛び出す事に成功した……しかし、どこへ逃げればい<br />
いと言うのだ?<br />
部屋の中から、あの男が私を呼ぶ声がする。<br />
その声には何の危険も無い様に感じられるが……そう、あの日の私はあの声に騙されたのだ。同じ<br />
間違いをするつもりなどない。<br />
私はそのまま2階へと逃げ出し……ふと思いつき、あの男の部屋に忍び込んだ。<br />
――主が不在のその部屋の中は暗いが、私はそのままでベットの下に隠れる事にした。<br />
下の階からは、あの男が私を探している声がまだ聞こえている。<br />
私はその声が聞こえないようにと、耳を伏せる。<br />
このまま、ここで夜が明けるのを待とう……朝が来れば、きっと希望もあるはずだ。<br />
明けない夜などないのだから。<br />
私がそう信じ込もうとしていた時、無常にも部屋の照明に電気が伝わった。</p>
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ベットの下に居る私には、あの男の両足だけが見えていた。<br />
その足がゆっくりとベットに近づいてくる。<br />
私がいつでも逃げ出せるようにと体を強張らせていると、彼の足がベットの上に消え、木材が軋む<br />
音が頭上から聞こえてきた。<br />
このまま眠るのだろうか?<br />
「……ふぅ」<br />
小さく息をつく声、まだ油断はできない。<br />
じっと息を殺してベットの隙間から部屋の様子を伺っていると、あの男の顔が逆さの状態で突然現<br />
れた。驚く私が逃げる間もなく、今度は左右から腕が伸びてきて私の体を掴む。<br />
やめろっ! 離してくれっ! 見逃してくれ?<br />
必死に足掻く私をあざ笑うかの様に、あの男はゆっくりと私の体をベットから引きずり出していく。<br />
抵抗も虚しく、私の体はベットの外へと連れ出されてしまう……それだけではない、絶望する私に<br />
追い討ちをかけるような出来事が待っていた。<br />
部屋に居たのはあの男だけではない。<br />
良き理解者だと思っていた人間もまた、部屋の入口であの男と同じ笑顔を浮かべて私を見ていた。<br />
……この事実を知った者よ、どうか伝えて欲しい。<br />
この男は、殺し屋なのだと。<br />
抵抗する事を諦めた私を、あの男は例の場所へと連れて行く。<br />
階段を降り、洗面所の向かいにあるあの部屋へ。<br />
あの男がその部屋の扉を開けると、やけに暖かい湿度の高い空気が私の「髭」を濡らした。<br />
壁に立てかけられた熱湯が噴出す拷問器具、いくつも並んだ蛍光色の容器。<br />
その全てが私に恐怖を与え、希望を奪う……。<br />
生き延びよう、何としても。<br />
これから起きるであろう出来事に覚悟を決めた私を、あの男はそっと洗面器の中に沈め――</p>
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<p> チャポン</p>
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<p> にゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ<br />
ああああああああああああああああああああああ!!!!「逃げるなシャミセン!」にゃああああああ<br />
ああああああああああ「シャミにね? ノミが居るんだよ~」あああああああああああああああああああ<br />
ああああああああああああああああああああ!!</p>
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殺し屋 キョン ~終わり~</p>
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