「セイブザ・クイーン ~第六章 水曜日~」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>「古泉、今日もバイトか?」<br />
「ええ、申し訳ないです。」<br />
今日は書類仕事です。人物Aについての資料をひとつひとつ洗いなおす作業です。<br />
同じ資料でも見る人が違うと違う見方が出てくるため僕も作業に入ることになったのです。<br />
個人的にも興味ありますからね。<br /><br />
……無茶苦茶退屈な作業でした。住民票、戸籍、学校の卒業アルバムくらいはわかるんですが<br />
今見ている運動会のビデオに何の意味があるんでしょうか?<br />
というよりどこにあったんですかこれ!?<br /><br />
ぼー、と玉入れの映像を見ながら今までの自分を振り返ります。<br /><br />
突然能力が生まれた日から、僕の人生は大きく変わることになりました。<br />
最初は気が狂ったかと思い、状況がわかってくると『神人』を倒す日々。<br />
普通の中学生として送るはずの、まだ馬鹿なお子様な遊びに夢中になる時期を<br />
僕は無理矢理引き離されました。<br />
そんな状況を造った人物、涼宮ハルヒは僕にとって最初は憎悪の対象でした。<br />
そして彼女の精神世界に触れることによってやがて憐みに変わり、<br />
だんだんと同情から親愛へ、そして恋する存在になっていきました。<br />
使命ゆえ、他の同年代の女子とは無縁だったこともありますが。<br />
中学時代の涼宮さんが閉鎖空間を発生させるたびに<br />
内心では嬉々として彼女の世界に飛び込んでいきました。<br />
しかし現実世界では彼女に近づくことはできません。<br />
一度、僕が彼女の学校に転校する案を出しましたが却下されました。<br />
どんな影響があるかわからない、ということでした。<br />
もし僕が拒絶された場合、閉鎖空間に入れなくなり戦力がダウンする可能性があることを<br />
機関は心配していたようです。僕も彼女の世界に入れなくなること恐れて転校はあきらめました。<br />
涼宮さんがとっかえひっかえ男子と付き合って、そして振っていった時期は本当に拷問でしたね。<br />
嫉妬に狂う日々、あの時は僕も荒れて機関にも迷惑をかけてしまいました。<br /><br />
高校進学も別の学校となり、中学時代と同じような3年間が始まるはずでした。<br />
状況が動いたのは5月の連休直後。<br />
涼宮さんの心を動かす人物が現れ、その後涼宮さんに興味を持つ大きな存在の末端が<br />
彼女の元に集まりだすという急展開です。<br />
大急ぎで僕は北校へ転校し、その日のうちに接触することになりました。<br />
いいえ、接触というか捕獲されたと言うべきですかね。<br />
未来人、宇宙人とも的確にピックアップしていたとはさすが涼宮さんです。<br /><br />
涼宮ハルヒを動かした人物、皆から本名ではなく『キョン』の愛称で呼ばれる彼を<br />
最初は疑っていたのは確かです。まあ、好感の持てる人物で助かりました。<br />
文句は言いますが、結局彼女のために動いてくれる人です。<br />
色々とイベントがあるたびにお世話になりました。皮肉でも何でもありません。<br />
なんのバックボーンのない彼の努力で世界は救われました。<br />
嫉妬はありますが彼なら涼宮さんと結ばれても納得がいきます。<br /><br />
やっと僕が涼宮さんへの想いを落ち着かせることができた所に現れた異質な存在である人物A。<br />
僕としては涼宮さんを渡すわけにはいきません。<br /><br />
「古泉!」<br />
「あ、はい森さん。」<br />
「ちゃんと見てなかったでしょう?」<br />
「いえ、そんなことはないです。」<br />
「嘘おっしゃい! さっきの人物Aの50m走の順位は!」<br />
「え、えと、出てました?」<br />
「……いいでしょう。」<br />
危ないところでした。森さんならやりそうな引っ掛けに賭けて、見事当りを引いたようです。<br />
「じゃあ次は6年の運動会よ。」<br />
いつ終わるんでしょうか……。<br />
「それと古泉。50m走って競技はありませんでした。」<br />
ぬかった!</p>