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「君のいない部室」(2007/01/12 (金) 17:39:01) の最新版変更点
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長門は最近様子がおかしい。気がつくと俺の方を見ていたり、ぼーっとしていることも多いのだ。……俺が何かしたか?<br>
「何もしていない。ただ気になる」<br>
気になるというのも婉曲的な物言いだ。よくわからないが、別にいやじゃないぜ。<br>
「そう」<br>
一体何なんだ。<br></div>
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目が覚めると、長門と二人きりだった。確か部室に来て、それから……ハルヒも朝比奈さんも、古泉――は別にいいけど――も、とにかく長門以外が全員来れないと連絡をうけて、パソコンやって……寝たんだ。<br>
起きたら夜八時だった。もう帰らなきゃいけない。<br>
「長門、俺もう帰るわ。じゃあな」<br>
立ち上がりかけた刹那、長門は俺のワイシャツの袖をつかんだ。<br>
「……?」<br>
「……待って」<br>
「……何だ?」<br>
「……私は――」<br>
「私情は挟んだらダメだよねー」<br></div>
<br>
<div>朝倉が立っていた。何でここに――<br>
「再構成されたの」<br>
「……何のためにだ? まさかまた俺を――」<br>
「長門有希を消すため」<br>
長門を消すだって……?何のために?<br>
「あら、知らないの? キミ、鈍感だね」<br>
「何がだ?」<br>
「長門有希はあなたに好意を抱いている。それも、彼女自身が気づかぬうちに」<br>
長門が俺に好意を……つまり好きってことか?<br>
「そういうことにな――」<br></div>
<br>
<div>
長門はいつの間にか、朝倉の喉元に指を突きつけていた。<br>
「さっすが、素早いわね」<br>
「残念だけどあなたに私は殺せない」<br>
「どっかで聞いた台詞ね」<br>
音がした。目の前が真っ白になった。また音がした。そして長門が――倒れていた。<br>
</div>
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<div>「やっぱりこの『体』、使えるわね」<br>
「……っ」<br>
「さて、用事は済んだわ。キョン君……だったわね。そばにいてあげたら?」<br>
パリッという乾いた音とともに、朝倉は姿を消していた。<br>
「長門!!」<br>
「……へい……き」<br>
「平気なわけないだろ……!」<br>
「……もう私は長くない」<br>
なっ…何言ってるんだ?<br>
「……あなたが……気になっていた……」<br>
「長門! もういい!」<br>
俺は長門を強く抱いた。華奢な体。宇宙人。消滅――<br>
いろいろな言葉が頭に浮かんでは消えた。悲しかった。悲しかった。<br>
「あなたが気になる……この感情……」<br>
「それは……」<br>
愛しい。長門が愛しくて仕方なかった。今更気づいた俺を誰かしかってくれ。<br>
</div>
<br>
<div>俺は長門が好きだ。<br>
「これが『愛しい』……」<br>
長門は俺の胸に抱かれながらそう呟いた。<br>
「『愛しい』『切ない』……おかしい、さっきから涙が止まらない」<br>
「おかしくなんか……ないさ……」<br>
おかしくなんかない。だって俺も泣いてんだ。<br>
長門の体はだんだんと軽くなっていっているようだった。それは、長門の消滅を意味していたのだ。<br>
「消えてしまう前に言いたい。私はあなたが……好き」<br>
「……俺もだ長門……」<br>
長門は今まで見せたことのない笑顔を俺に向けた。可愛くて、愛しくて、涙はあふれた。<br>
「それはよかった」<br>
「待てよ長門……これからもっと沢山……二人でさぁ……」<br>
「……ごめんなさい……」<br>
長門と小さなキスをした。涙は止まらなかった。<br>
「もうそろそろ」<br>
「まてよ! なあ……!」<br>
「……」<br>
また笑顔。<br>
「長門おおおっ!!!」<br>
長門は砂になって――消えた。「さようなら」そう言われなかったのが唯一の救いだった。<br>
</div>
<br>
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<div>
長門のいない部室。風の声。紙とインクの匂い。ページをめくる音。<br>
長門のいない、文芸部の部室。<br></div>
</div>
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