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Live a life」(2008/04/30 (水) 21:17:58) の最新版変更点

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<p>水晶球。</p> <p><br /> 統合思念体、アクセス。</p> <p><br /> 許可申請。</p> <p><br /> 許可。</p> <p> </p> <p><br /> 「あなたは、五分十五秒後にソフトクリームを買って、五分二十八秒後にそれを足に落とし、七分六秒後に看板に頭をぶつけ、その再彼女と交錯して転倒。彼女のバッグから所持品を散乱し……」</p> <p> </p> <p><br /> うらない。</p> <p>ウラナイ。</p> <p>占。</p> <p> </p> <p>前もって彼と練習したけれど、果たしてこれで良いのだろうか。<br /> 彼は<br /> 「いいんじゃないか? 長門らしくて」<br /> と言ってくれた。だから、これで良いのだと思う。<br /> わたしらしいという言葉の意味は、わからないけれど。</p> <p>「気が向いたら、俺も長門のクラスの出し物見にいくよ」<br /> その言葉に淡い期待を持っているわたし。</p> <p>うらない。</p> <p>彼の姿を目視で確認。<br /> わたしの心拍数の上昇を確認。<br /> 来てくれたのだ、という「歓喜」と。<br /> どうしよう、という「困惑」。<br /> ……、エラーを確認。<br /> しかしそれらの発露に、有機生命体が「喜」と呼ぶ感覚がわたしを包んだ。<br /> 彼が教えてくれた事。それは「喜び」だと。<br /> だから、わたしはいま「嬉しい」のだろう。<br /> でも、どうして「困惑」しているの?<br /> 「嬉しい」はずなのに、どうして「困惑」しているの?<br /> これは「喜」ではないの?</p> <p>エラーを確認。</p> <p>でも、今日はそれが心地良かった。<br /> 「嬉しい」と「困惑」は同じにやってくる。<br /> いつも、そう。</p> <p><br /> 「よお、長門。順調か?」<br /> 首肯。<br /> 「よし、じゃあ俺も占ってくれよ」</p> <p><br /> 彼。SOS団団員その一。鍵、たいせつなひと。</p> <p> </p> <p>目の前の水晶に手を翳す。</p> <p>統合思念体、アクセス。</p> <p>許可申請。</p> <p>許諾サレズ。</p> <p>「……」<br /> どうしよう。<br /> 「……」<br /> 「長門?」<br /> 「……、わからない」<br /> 「ははっ、それなら仕方ないな」<br /> 「……すまない」<br /> 「いいっていいって、もう何回も占ってもらってるしな。それじゃ俺、古泉のクラスいってくる。後頑張れよ」<br /> 「……」<br /> なにもいえなかった。<br /> せっかく、練習に付き合ってもらえたのに。<br /> せっかく、せっかく。<br /> せっかく、わたしの所に来てくれたのに。<br /> 彼との親睦を深められる好機なのに。<br /> 「悲しい」という感覚がやってきた。<br /> わかる、この感覚は。<br /> 何回も私を襲ってきた感覚。<br /> こんなとき彼の事を考えるとやってくる感覚。</p> <p> </p> <p>「有希、ちょっと力を貸して欲しいんだけど」<br /> 涼宮ハルヒ。SOS団団長。自律進化の可能性、バニーガール。</p> <p> </p> <p>◇ ◇ ◇ ◇</p> <p> </p> <p>休憩時間、本を読もうとカバンに手をかけた。<br /> 名前を呼ばれる。知っているひとと、知らないひと。<br /> 「ごめんね、休み時間に」<br /> 財前さん、ベースのひと、あかるいひと。<br /> 「あのね。この前のお礼を言いに来たの」<br /> 「ありがとうね、長門さん」<br /> 榎本さん、中西さん。<br /> わたしはコクリと頷いて指をさした、むこう。<br /> 「本当にありがとうね、長門さん」<br /> 岡島さん。ドラムのひと。いいひと。<br /> わたしの持っていないものを持っているひとたち。<br /> なんだか「羨ましい」<br /> 「羨ましい」ということ。<br /> よくわからないけれど。<br /> なにが「羨ましい」の?<br /> ……、よくわからない。<br /> わたしは、わたし。<br /> 彼女らは、彼女ら。<br /> 同じでは、ない。<br /> なにが「うらやましい」の?<br /> わからない。<br /> でも「うらやましい」と思う。</p> <p> </p> <p>◇ ◇ ◇ ◇<br />  <br /> 「よお」<br /> 昼休み。<br /> 「なによ」<br /> いつも通りに文芸部室へと向かう。<br /> 「時間無くて、簡単なアレンジに変えちゃったからね。ホンモノが聞きたいのは当然でしょ」<br /> 何も変わらない部室内。<br /> 「MD希望者の話か」<br /> どこか違って見えるのは、どうして?<br /> 「そ」<br /> わたしが変わったから?<br /> 「でも、ぶっつけにしてはなかなかの演奏だったな。良い宣伝にはなったんじゃないか?」<br /> それとも。<br /> 「あと一日あったら、しっかりした準備ができたのにね。あんなので良かったのかな、って少しは思うけど。なんていうの? 今自分が何かをやってるって感じがした」<br /> 何が、変わったの?<br /> 「はあー。なんか落ち着かないのよね。なんでかしら?」<br /> わからない。<br /> 「俺が知るわけないだろ?」<br /> 気持ち、感情。まだよくわからない。<br /> 「なによ? なんか言いたい事があんの? なら言いなさいよ! どうせロクな事じゃないんでしょうけど、黙ってため込むのは精神に悪いわよ」<br /> でも。胸が痛いのは、どうして?<br /> 「別に、なんも」<br /> わからない。<br /> 「も、もう~」<br /> ただ、本を読みたくてきたはずなのに。<br /> 「へへっ」<br /> でも。<br /> 「あ、ねぇ。あんたなんか楽器できる?」<br /> いまは、そんな気分じゃない。<br /> 「できん」<br /> 気分。<br /> 「練習次第でどうにでもなるわ、なんたってあと一年も時間があるんだからね」<br /> 気分って、なに。<br /> 「おいおい」<br /> 中庭の二人の声が聞こえたのは、偶然?<br /> 「来年の文化祭、わたしたちもバンドで参加しましょうよ。わたしがボーカル、有希がギターで、みくるちゃんはタンバリンでも持たせてステージの飾りになってくれればいいわよ」<br /> 窓越しに見える。嬉しそうに笑う、涼宮ハルヒ。<br /> 「いやいやいや」<br /> 窓越しに見える。嬉しそうに笑う、彼。<br /> 「もちろん。映画の第二弾もあるしね。来年は忙しくなるわよ、やっぱ目標数値は常に前年対比を上回らないといけないのよ」<br /> 「嬉しい」という感情は、知っている。<br /> 「待て待て」<br /> では、わたしを今支配する「感情」は? 「嬉しい」? 違う。では「困惑」? 違う。では「悲しい」?<br /> 「さ、行くわよ? キョン」<br /> 統合思念体。<br /> 「へ? どこに?」<br /> アクセス。<br /> 「機材を貰いによ」<br /> エラーの処理を申請。<br /> 「軽音楽部の部室に、行けばなんか余ってるのが落ちてるわ。それに中西さんたちに作曲方とか聞いとかないと。安心しなさい、作詞作曲プロデュースはわたしがやってあげるから、もちろん振り付けもね」<br /> 手を繋いで歩きだす二人。<br /> 「いまからやらなくていいだろ」<br /> エラーの増幅を確認。<br /> 「何言ってるの? 一年なんてあっという間よ?」<br /> 笑顔、わたしにはわからないもの。<br /> 「ところで振り付けってなんだ? バンドやるんじゃないのか?」<br /> 二人は、笑っている。<br /> 「いるの!」<br /> では。いまわたしは、笑っているの?</p> <p> </p> <p> </p> <p>どんなとき、ひとは笑うの?</p> <p>この頬を伝うものは、なに。</p> <p>「感情」?</p> <p>わからない。</p> <p> </p> <p> </p> <p>財前さん。<br /> 中西さん。<br /> 榎本さん。<br /> 岡島さん。</p> <p> </p> <p>わたしとは違うひと。</p> <p>わたしの持っていないものを、持っているひと。<br /> わたしの持っていないものって、なに。<br /> わたしと、どこがちがうの?<br /> どうして、違うの?<br /> わからない。<br /> わからない。<br /> でも、同じではない。</p> <p> </p> <p> </p> <p>わたしは「困惑」している。<br /> 「嬉しい」と「困惑」はいつも、同時にやってくるのに。<br /> いまは「困惑」と「もう一つ別のなにか」がわたしを支配している。<br /> 「悲しい」とは、違う「なにか」が。<br /> これは、なに。<br /> 教えて。<br /> だれか、おしえて。</p>
<p>水晶球。</p> <p><br /> 統合思念体、アクセス。</p> <p><br /> 許可申請。</p> <p><br /> 許可。</p> <p> </p> <p><br /> 「あなたは、五分十五秒後にソフトクリームを買って、五分二十八秒後にそれを足に落とし、七分六秒後に看板に頭をぶつけ、その再彼女と交錯して転倒。彼女のバッグから所持品を散乱し……」</p> <p> </p> <p><br /> うらない。</p> <p> </p> <p>ウラナイ。</p> <p> </p> <p>占。</p> <p> </p> <p> </p> <p>前もって彼と練習したけれど、果たしてこれで良いのだろうか。<br /> 彼は<br /> 「いいんじゃないか? 長門らしくて」<br /> と言ってくれた。だから、これで良いのだと思う。<br /> わたしらしいという言葉の意味は、わからないけれど。</p> <p>「気が向いたら、俺も長門のクラスの出し物見にいくよ」<br /> その言葉に淡い期待を持っているわたし。</p> <p> </p> <p>うらない。</p> <p> </p> <p>彼の姿を目視で確認。<br /> わたしの心拍数の上昇を確認。<br /> 来てくれたのだ、という「歓喜」と。<br /> どうしよう、という「困惑」。<br /> ……、エラーを確認。<br /> しかしそれらの発露に、有機生命体が「喜」と呼ぶ感覚がわたしを包んだ。<br /> 彼が教えてくれた事。それは「喜び」だと。<br /> だから、わたしはいま「嬉しい」のだろう。<br /> でも、どうして「困惑」しているの?<br /> 「嬉しい」はずなのに、どうして「困惑」しているの?<br /> これは「喜」ではないの?</p> <p>エラーを確認。</p> <p>でも、今日はそれが心地良かった。<br /> 「嬉しい」と「困惑」は同じにやってくる。<br /> いつも、そう。</p> <p><br /> 「よお、長門。順調か?」<br /> 首肯。<br /> 「よし、じゃあ俺も占ってくれよ」</p> <p> </p> <p><br /> 彼。SOS団団員その一。鍵、たいせつなひと。</p> <p> </p> <p> </p> <p>目の前の水晶に手を翳す。</p> <p>統合思念体、アクセス。</p> <p>許可申請。</p> <p>許諾サレズ。</p> <p>「……」<br /> どうしよう。<br /> 「……」<br /> 「長門?」<br /> 「……、わからない」<br /> 「ははっ、それなら仕方ないな」<br /> 「……すまない」<br /> 「いいっていいって、もう何回も占ってもらってるしな。それじゃ俺、古泉のクラスいってくる。後頑張れよ」<br /> 「……」<br /> なにもいえなかった。<br /> せっかく、練習に付き合ってもらえたのに。<br /> せっかく、せっかく。<br /> せっかく、わたしの所に来てくれたのに。<br /> 彼との親睦を深められる好機なのに。<br /> 「悲しい」という感覚がやってきた。<br /> わかる、この感覚は。<br /> 何回も私を襲ってきた感覚。<br /> こんなとき彼の事を考えるとやってくる感覚。</p> <p> </p> <p>「有希、ちょっと力を貸して欲しいんだけど」<br /> 涼宮ハルヒ。SOS団団長。自律進化の可能性、バニーガール。</p> <p> </p> <p>◇ ◇ ◇ ◇</p> <p> </p> <p>休憩時間、本を読もうとカバンに手をかけた。<br /> 名前を呼ばれる。知っているひとと、知らないひと。<br /> 「ごめんね、休み時間に」<br /> 財前さん、ベースのひと、あかるいひと。<br /> 「あのね。この前のお礼を言いに来たの」<br /> 「ありがとうね、長門さん」<br /> 榎本さん、中西さん。<br /> わたしはコクリと頷いて指をさした、むこう。<br /> 「本当にありがとうね、長門さん」<br /> 岡島さん。ドラムのひと。いいひと。<br /> わたしの持っていないものを持っているひとたち。<br /> なんだか「羨ましい」<br /> 「羨ましい」ということ。<br /> よくわからないけれど。<br /> なにが「羨ましい」の?<br /> ……、よくわからない。<br /> わたしは、わたし。<br /> 彼女らは、彼女ら。<br /> 同じでは、ない。<br /> なにが「うらやましい」の?<br /> わからない。<br /> でも「うらやましい」と思う。</p> <p> </p> <p>◇ ◇ ◇ ◇<br />  <br /> 「よお」<br /> 昼休み。<br /> 「なによ」<br /> いつも通りに文芸部室へと向かう。<br /> 「時間無くて、簡単なアレンジに変えちゃったからね。ホンモノが聞きたいのは当然でしょ」<br /> 何も変わらない部室内。<br /> 「MD希望者の話か」<br /> どこか違って見えるのは、どうして?<br /> 「そ」<br /> わたしが変わったから?<br /> 「でも、ぶっつけにしてはなかなかの演奏だったな。良い宣伝にはなったんじゃないか?」<br /> それとも。<br /> 「あと一日あったら、しっかりした準備ができたのにね。あんなので良かったのかな、って少しは思うけど。なんていうの? 今自分が何かをやってるって感じがした」<br /> 何が、変わったの?<br /> 「はあー。なんか落ち着かないのよね。なんでかしら?」<br /> わからない。<br /> 「俺が知るわけないだろ?」<br /> 気持ち、感情。まだよくわからない。<br /> 「なによ? なんか言いたい事があんの? なら言いなさいよ! どうせロクな事じゃないんでしょうけど、黙ってため込むのは精神に悪いわよ」<br /> でも。胸が痛いのは、どうして?<br /> 「別に、なんも」<br /> わからない。<br /> 「も、もう~」<br /> ただ、本を読みたくてきたはずなのに。<br /> 「へへっ」<br /> でも。<br /> 「あ、ねぇ。あんたなんか楽器できる?」<br /> いまは、そんな気分じゃない。<br /> 「できん」<br /> 気分。<br /> 「練習次第でどうにでもなるわ、なんたってあと一年も時間があるんだからね」<br /> 気分って、なに。<br /> 「おいおい」<br /> 中庭の二人の声が聞こえたのは、偶然?<br /> 「来年の文化祭、わたしたちもバンドで参加しましょうよ。わたしがボーカル、有希がギターで、みくるちゃんはタンバリンでも持たせてステージの飾りになってくれればいいわよ」<br /> 窓越しに見える。嬉しそうに笑う、涼宮ハルヒ。<br /> 「いやいやいや」<br /> 窓越しに見える。嬉しそうに笑う、彼。<br /> 「もちろん。映画の第二弾もあるしね。来年は忙しくなるわよ、やっぱ目標数値は常に前年対比を上回らないといけないのよ」<br /> 「嬉しい」という感情は、知っている。<br /> 「待て待て」<br /> では、わたしを今支配する「感情」は? 「嬉しい」? 違う。では「困惑」? 違う。では「悲しい」?<br /> 「さ、行くわよ? キョン」<br /> 統合思念体。<br /> 「へ? どこに?」<br /> アクセス。<br /> 「機材を貰いによ」<br /> エラーの処理を申請。<br /> 「軽音楽部の部室に、行けばなんか余ってるのが落ちてるわ。それに中西さんたちに作曲方とか聞いとかないと。安心しなさい、作詞作曲プロデュースはわたしがやってあげるから、もちろん振り付けもね」<br /> 手を繋いで歩きだす二人。<br /> 「いまからやらなくていいだろ」<br /> エラーの増幅を確認。<br /> 「何言ってるの? 一年なんてあっという間よ?」<br /> 笑顔、わたしにはわからないもの。<br /> 「ところで振り付けってなんだ? バンドやるんじゃないのか?」<br /> 二人は、笑っている。<br /> 「いるの!」<br /> では。いまわたしは、笑っているの?</p> <p> </p> <p> </p> <p>どんなとき、ひとは笑うの?</p> <p>この頬を伝うものは、なに。</p> <p>「感情」?</p> <p>わからない。</p> <p> </p> <p> </p> <p>財前さん。<br /> 中西さん。<br /> 榎本さん。<br /> 岡島さん。</p> <p> </p> <p> </p> <p>わたしとは違うひと。</p> <p>わたしの持っていないものを、持っているひと。<br /> わたしの持っていないものって、なに。<br /> わたしと、どこがちがうの?<br /> どうして、違うの?<br /> わからない。<br /> わからない。<br /> でも、同じではない。</p> <p> </p> <p> </p> <p>わたしは「困惑」している。<br /> 「嬉しい」と「困惑」はいつも、同時にやってくるのに。<br /> いまは「困惑」と「もう一つ別のなにか」がわたしを支配している。<br /> 「悲しい」とは、違う「なにか」が。</p> <p><br /> これは、なに。</p> <p><br /> 教えて。</p> <p><br /> だれか、おしえて。</p>

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