「涼宮ハルヒのエアロスミスーッ! 第一章」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>我がSOS団が部室において全員で一つの事に集中するということはめったにない。<br />
何かしらの時事イベントや突発的な敵とのエンカウント、または団長の思い付きがない限りは、<br />
こうして一人一人が思い思いの事をして過ごすのがしきたりになっている。<br />
いつも通り朝比奈さんのお茶を頂き、長門がページをめくる音を聞きつつ<br />
<br />
-余談だが、あいつが読むような分厚い本が立てるその音には何だか心臓を擽られるような感覚を覚える-<br />
<br />
古泉とレトロなゲームに興じる。この雰囲気が心地よくなったのはいつからだろうか。<br />
<br />
ところで、我らが団長はまだ部室に姿を現していない。<br />
先程から専属メイドさんがそわそわとしているが、俺にはその理由が解ると断言できる。<br />
<br />
ハルヒがSOS団日常的ポジションである団長席に座り、通常業務のネットサーフィンを始めるまでは<br />
何を思い付くか想像もつかないからだ。特に思い付きの直接的被害を受けがちな彼女の不安たるや…<br />
<br />
俺はもう慣れちまったけどな。<br />
<br />
とはいえこの時間までハルヒが来ないということは、<br />
何処かで迷惑極まりないイベントのビラをゲットしているとかだろうか。<br />
とにかくあいつが部室に来るのが遅いほど不安要素が貯まっていくわけで、<br />
俺は『早く来てくれ、できれば来ないでくれ』などと考えながらチェス盤のビショップを…<br />
<br />
動かそうとした時、静かな音がやたらと耳に響いた。<br />
<br />
おかしな表現だと思うか?<br />
<br />
だが、涼宮ハルヒがドアを普通にガチャッと開けて何の宣言もなしに歩いて部室に入ってくるなんて…<br />
<br />
絶句するしかないだろう?<br />
<br />
朝比奈さんは不思議そうな目でハルヒの動きを追い、<br />
『どうしたんでしょう?』とでも言いたげな視線を俺に向ける。<br />
中継のショートからサードに送球するように、古泉に目で問う。笑顔で首を傾げやがる。<br />
長門は変わらず活字を消化し続けているし、やはり俺の役目なんだろうな。<br />
ため息の一つくらいは許してくれ。<br />
<br />
どうした。お前でも悩みを抱える事があるのか?<br />
<br />
長門に鍛えられた俺の表情読解力は、ハルヒは不機嫌というより考え込んでいるようだという結論を出した。<br />
<br />
「音楽っていいわよね」<br />
何を意図する発言か掴めないので、無言で二の句を促す。<br />
「人間が生み出した文化的営みで一番すばらしいものだと思うのよ」<br />
<br />
…どこかで似たようなニュアンスの台詞を聞いたことがあるぞ。<br />
<br />
俺は何故かそうしなければならないような気がして、古泉に視線を向ける。<br />
すぐに逸らしたが。<br />
<br />
「あたしね、昨日このCDを聴いてある一曲が凄く気に入ったのよ」<br />
どれどれ…エアロスミスのアルティメットヒッツ…どの曲だ?<br />
俺はあの映画のやつしか知らん。<br />
<br />
「エアロスミスですか。涼宮さんの事ですから、クラシックかと」<br />
<br />
何でも知っているんじゃないかと思わせる口調で口を挟んでくる。<br />
<br />
「クラシックも聴くけど、こういうオールドスクールなロックンロールも好きなのよ。古泉君はどういう音楽が好き?」<br />
<br />
ここから唐突に、ハルヒによる団員の音楽嗜好調査が始まった。<br />
古泉はAC/DCなるロックバンドが好きらしい。<br />
<br />
後で知ったのだがAC/DCには『両刀使い』という意味があるとのことだ。<br />
<br />
やけにリアルで気持ち悪いぜ…。<br />
<br />
朝比奈さんは氷川きよしが好きだとか。<br />
「おばちゃんじゃないんだから」などとハルヒに突っ込まれている。<br />
長門はと言えば…えっと何だっけ、リキッドテンションエクスペリメント<br />
という長い名前のプログレ?バンドが好きと言っていた。<br />
<br />
「ドリームシアターのマイク・ポートノイとジョン・ペトルーシに、最高のベーシストトニー・レヴィンと後にドリームシアターに参加するキーボーディストのジョーダン・ルーデスが…」<br />
<br />
スマン、長門。全くわからん。<br />
<br />
俺か?俺は流行りの曲しか知らん。特に好きなミュージシャンがいるわけでもないな。<br />
<br />
「ホントあんたって駄目ね。無趣味な人生なんて最低中の最低よ!」<br />
<br />
失礼な事を言いやがる。<br />
無趣味ではないぞ。例えば…<br />
<br />
「すぐに思い付かない時点でダメよ。0点。あんたはもっと芸術を解する繊細な心を持ったほうがいいわ!」<br />
一秒の猶予も与えずにハルヒがまくし立てる。こうなると反撃せずにいられないのが俺だ。<br />
<br />
お前に繊細さを求められるとはな。<br />
「何か言った?そうだ!今からアホキョンの教育の為にこのCDかけてあげる!それで気に入った曲を選んで発表するの。いいわね」<br />
<br />
お前が気に入ったっていう曲はどれなんだ。<br />
<br />
「あたしと同じ曲を言って媚びを売ろうったって無駄よ。いいから聴きなさい!真っさらな気持ちでね。みんなも!」<br />
<br />
何の為にだどうせお前は俺を批判したいだけであって…<br />
などと思ったが、ハルヒがまともに返答するとは思えなかったし<br />
何よりすでにハルヒは俺の話など聞く耳持たんとばかりにCDラジカセのセッティングに入っていたので諦める。<br />
<br />
そういえば団結成当初からあるCDラジカセが使用される時がやっと来たのか。<br />
いやぁめでたい。実にめでたい。<br />
<br />
…やれやれ。</p>
<p>我がSOS団が部室において全員で一つの事に集中するということはめったにない。<br />
何かしらの時事イベントや突発的な敵とのエンカウント、または団長の思い付きがない限りは、<br />
こうして一人一人が思い思いの事をして過ごすのがしきたりになっている。<br />
いつも通り朝比奈さんのお茶を頂き、長門がページをめくる音を聞きつつ<br />
<br />
-余談だが、あいつが読むような分厚い本が立てるその音には何だか心臓を擽られるような感覚を覚える-<br />
<br />
古泉とレトロなゲームに興じる。この雰囲気が心地よくなったのはいつからだろうか。<br />
<br />
ところで、我らが団長はまだ部室に姿を現していない。<br />
先程から専属メイドさんがそわそわとしているが、俺にはその理由が解ると断言できる。<br />
<br />
ハルヒがSOS団日常的ポジションである団長席に座り、通常業務のネットサーフィンを始めるまでは<br />
何を思い付くか想像もつかないからだ。特に思い付きの直接的被害を受けがちな彼女の不安たるや…<br />
<br />
俺はもう慣れちまったけどな。<br />
<br />
とはいえこの時間までハルヒが来ないということは、<br />
何処かで迷惑極まりないイベントのビラをゲットしているとかだろうか。<br />
とにかくあいつが部室に来るのが遅いほど不安要素が貯まっていくわけで、<br />
俺は『早く来てくれ、できれば来ないでくれ』などと考えながらチェス盤のビショップを…<br />
<br />
動かそうとした時、静かな音がやたらと耳に響いた。<br />
<br />
おかしな表現だと思うか?<br />
<br />
だが、涼宮ハルヒがドアを普通にガチャッと開けて何の宣言もなしに歩いて部室に入ってくるなんて…<br />
<br />
絶句するしかないだろう?<br />
<br />
朝比奈さんは不思議そうな目でハルヒの動きを追い、<br />
『どうしたんでしょう?』とでも言いたげな視線を俺に向ける。<br />
中継のショートからサードに送球するように、古泉に目で問う。笑顔で首を傾げやがる。<br />
長門は変わらず活字を消化し続けているし、やはり俺の役目なんだろうな。<br />
ため息の一つくらいは許してくれ。<br />
<br />
どうした。お前でも悩みを抱える事があるのか?<br />
<br />
長門に鍛えられた俺の表情読解力は、ハルヒは不機嫌というより考え込んでいるようだという結論を出した。<br />
<br />
「音楽っていいわよね」<br />
何を意図する発言か掴めないので、無言で二の句を促す。<br />
「人間が生み出した文化的営みで一番すばらしいものだと思うのよ」<br />
<br />
…どこかで似たようなニュアンスの台詞を聞いたことがあるぞ。<br />
<br />
俺は何故かそうしなければならないような気がして、古泉に視線を向ける。<br />
すぐに逸らしたが。<br />
<br />
「あたしね、昨日このCDを聴いてある一曲が凄く気に入ったのよ」<br />
どれどれ…エアロスミスのアルティメットヒッツ…どの曲だ?<br />
俺はあの映画のやつしか知らん。<br />
<br />
「エアロスミスですか。涼宮さんの事ですから、クラシックかと」<br />
<br />
何でも知っているんじゃないかと思わせる口調で口を挟んでくる。<br />
<br />
「クラシックも聴くけど、こういうオールドスクールなロックンロールも好きなのよ。古泉君はどういう音楽が好き?」<br />
<br />
ここから唐突に、ハルヒによる団員の音楽嗜好調査が始まった。<br />
古泉はAC/DCなるロックバンドが好きらしい。<br />
<br />
後で知ったのだがAC/DCには『両刀使い』という意味があるとのことだ。<br />
<br />
やけにリアルで気持ち悪いぜ…。<br />
<br />
朝比奈さんは氷川きよしが好きだとか。<br />
「おばちゃんじゃないんだから」などとハルヒに突っ込まれている。<br />
長門はと言えば…えっと何だっけ、リキッドテンションエクスペリメント<br />
という長い名前のプログレ?バンドが好きと言っていた。<br />
<br />
「ドリームシアターのマイク・ポートノイとジョン・ペトルーシに、最高のベーシストトニー・レヴィンと後にドリームシアターに参加するキーボーディストのジョーダン・ルーデスが…」<br />
<br />
スマン、長門。全くわからん。<br />
<br />
俺か?俺は流行りの曲しか知らん。特に好きなミュージシャンがいるわけでもないな。<br />
<br />
「ホントあんたって駄目ね。無趣味な人生なんて最低中の最低よ!」<br />
<br />
失礼な事を言いやがる。<br />
無趣味ではないぞ。例えば…<br />
<br />
「すぐに思い付かない時点でダメよ。0点。あんたはもっと芸術を解する繊細な心を持ったほうがいいわ!」<br />
一秒の猶予も与えずにハルヒがまくし立てる。こうなると反撃せずにいられないのが俺だ。<br />
<br />
お前に繊細さを求められるとはな。<br />
「何か言った?そうだ!今からアホキョンの教育の為にこのCDかけてあげる!それで気に入った曲を選んで発表するの。いいわね」<br />
<br />
お前が気に入ったっていう曲はどれなんだ。<br />
<br />
「あたしと同じ曲を言って媚びを売ろうったって無駄よ。いいから聴きなさい!真っさらな気持ちでね。みんなも!」<br />
<br />
何の為にだどうせお前は俺を批判したいだけであって…<br />
などと思ったが、ハルヒがまともに返答するとは思えなかったし<br />
何よりすでにハルヒは俺の話など聞く耳持たんとばかりにCDラジカセのセッティングに入っていたので諦める。<br />
<br />
そういえば団結成当初からあるCDラジカセが使用される時がやっと来たのか。<br />
いやぁめでたい。実にめでたい。<br />
<br />
…やれやれ。</p>
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