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「最終楽譜『The Live』」(2008/03/23 (日) 16:57:10) の最新版変更点
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<p>○俺とENOZのZとのラブソング <br />
最終楽譜『The Live』<br />
<br />
<br />
運命の日は雨で幕を開けた<br />
この雨じゃ昨日まで咲き誇っていた桜も散ってしまうな<br />
雨の日は心が憂鬱になるが今日はいつもの倍だ<br />
<br />
<br />
教室に着くとハルヒは自分の席で寝ていた<br />
それから目を覚ますことなく全ての授業を寝て過ごしていた<br />
これから全校生徒の前で一曲演奏するのに何とも肝っ玉のでかい奴だとこの時は思っていたが<br />
後でこいつがこんなに寝ていた理由を知ることになる<br />
<br />
<br />
ハルヒは2時限目が終ると何も言わずに教室から飛び出していった<br />
俺もそろそろ生徒会室に行くとするかな<br />
<br />
生徒会室に向かう途中に何度か逃げようかなと考えたが心を奮い立たせて、何とか生徒会室の前へ到着した<br />
ノックをして入ると中には喜緑さんだけだった<br />
俺と喜緑さんは少し世間話をしてから体育館へと移動した<br />
部屋を出るときに喜緑さんから「期待しているわ」と言われた<br />
<br />
<br />
体育館に着くと喜緑さんから今回の段取りを教わった<br />
予定ではライブ対決が一番最後のトリに行われるそうだ<br />
そこで司会進行をする生徒から審査員として俺が紹介されるのでそこで俺は登場する<br />
2組のライブ終了後に判定を行ってグランドフィナーレだそうだ<br />
妙にショー的な要素が強いのは機関の趣向なのかと思った<br />
<br />
司会進行役はSOS団名誉顧問の鶴屋さんでアシスタントは喜緑さんだそうだ<br />
まー鶴屋さんなら朝比奈さんと財前さんの友達だから偏った贔屓はしないなと思った<br />
しかし古泉の野郎もそんなことにまで気を使ってくれるとは涙が出てくるよ<br />
一番手の野球部の紹介が始まった頃はあれ程に逃げ出したかった俺の心境も明鏡止水のように穏やかになっていった<br />
ここまできたら、深く考えずに俺が良かったと思った方を選ぼう<br />
<br />
<br />
演劇部のエチュードも終わり、残すは軽音楽部とSOS団のみとなった<br />
喜緑「部活紹介も早いもので残すは後2組となりました」<br />
鶴屋「新入生のみんな悲しいけどそろそろ終りにょろよ」<br />
喜緑「最後はライブ対決という形式で行います」<br />
鶴屋「はいっさ、ENOZとSOS団の対決だよ」<br />
喜緑「新入生の為に説明致します、ENOZは軽音楽部の榎本さん・根岸さん・岡島さん・財前さんの4人で結成されたバンドグループです、そしてSOS団とは涼宮さんを団長として生徒社会を応援する世界造りのための奉仕団体で現在は生徒会へ申請中の同好会です」<br />
鶴屋「この2組のバンドが演奏で対決するっさ!」<br />
喜緑「ではライブ対決の審査員を紹介します」<br />
鶴屋「審査員はSOS団雑用その一のキョン君だよ」<br />
はい、後輩達へ俺は雑用係のキョンと認識された<br />
本当に誰も本名で呼ばなくなったな…<br />
紹介された俺は全校生徒の前で小さくお辞儀をして審査員席へと座った<br />
全校生徒の前で座るだけでも緊張するのにあいつ等はここで演奏をするのか<br />
<br />
<br />
喜緑「では先行はENOZからお願いします」<br />
鶴屋「財前ちゃん頑張るさっよ!」<br />
<br />
袖からENOZの面々が登場した、ドラムの岡島さん、新メンバーの根岸さんはベース<br />
そして榎本さんと舞さんのツインボーカルとツインギターの構成となっている<br />
<br />
新生ENOZの記念するファーストソングは以前に文化祭で聴いた【God knows...】だった<br />
俺は聞いた瞬間にオマージュした、文化祭やその後のライブで聴いた【God knows...】を遥かに凌駕している<br />
生で聞いたのはこれで3回目だがこんなにも進化することが可能なのだろうか<br />
ツインボーカルとツインギターの演奏になんともいえない立体感を表現している<br />
それにつられて観客のボルテージも最高潮へと上がり<br />
舞さんの喉がかすれるようとした寸前で曲は締め括られた<br />
<br />
<br />
終った瞬間に観客から割れんばかりの拍手と歓声が体育館中を響かせた<br />
舞さんは俺を見つめて、全てを出し尽くした顔で微笑んでいる<br />
ギターを降ろすと俺がプレゼントしたネックレスを握り締めた<br />
<br />
ENOZは一旦袖に下がって審判の時を待つ<br />
喜緑「以上ENOZでした、では続いてSOS団お願いします」<br />
鶴屋「みくるにハルにゃんファイトにょろよ!」<br />
<br />
袖からまずは古泉が登場してドラムの前へ腰掛けた、続いてはベースを担いだ長門が現れた<br />
その次は朝比奈さんが登場した、手にはタンバリンを持ちマイクに立ったのでステージの飾りではなくてコーラス担当かな<br />
そしてどんじりはバニー姿のわれらの団長が登場した<br />
俺はハルヒのバニー姿よりも左肩に巻かれた痛々しい包帯とサポーターに目が留まっていた<br />
後日古泉から聞いた話によるこの負傷の件は3日前に遡る<br />
<br />
<br />
その日、SOS団の面々は3日後に迫まった本番に対して今日の練習で十分なクオリティにまでなったので満足気に帰宅していたそうだ<br />
事件が起こったのはハイキングコースを下っている最中に起こった<br />
そこでベビーカーに乗った赤ちゃんと母親に遭遇した<br />
面々が赤ちゃんの方に目をやると固定具が緩んでいたのか赤ちゃんは半分落ちかけていた<br />
しかも運が悪く母親は目を離している<br />
各自が危ないと声を上げる前に赤ちゃんはベビーカーから落下してしまった<br />
地面に衝突する寸前でハルヒが赤ちゃんをダイビングキャッチをして大惨事は免れたがその代償でハルヒは左肩を強打して痛めたそうだ<br />
これが古泉の言っていたアクシデントとハルヒがこの2日間寝ていた理由だ<br />
腕は大いに腫れ上がっており、痛み止めの薬で紛らわしているそうだが本当なら動かすのもきつい状態だったらしい<br />
<br />
ハルヒの合図で演奏は始まったその曲は【God knows...】だった<br />
まさかENOZと曲が被っているなんて不幸過ぎるぞ<br />
<br />
演奏は以前にも聞いたハルヒの月まで届きそうな澄み切った声で始まった<br />
長門はやはりベースも超絶テクで演奏を行い、古泉のドラム捌きも素人ながら奮闘していた<br />
朝比奈さんのコーラスとタンバリンは…大変愛くるしかった<br />
<br />
相手がENOZでなければ、かなりの善戦に思えたがアクシデントの傷は甘くなく<br />
初めは無難にギターを弾いていたハルヒだがやがて痛みからか演奏が乱れるようになった<br />
その影響で長門以外の二人の演奏にも影響を及ぼした<br />
ハルヒは歌声を上げるのも辛そうでいつ演奏が止まってもおかしくない状況だ<br />
俺はそんな満身創痍なハルヒの演奏をすぐにでも止めてやりたかった<br />
俺が見るのも辛くなり、目を逸らした時に信じられない出来事が始まった<br />
<br />
いつ倒れてもおかしくないハルヒが急に超絶技巧なギターテクをかき鳴らした<br />
そして、歌声はこの憂鬱な雨雲を吹く飛ばすかのような澄み渡った声を体育館中に響かせた<br />
俺は急に覚醒したハルヒの演奏を訳が分からずに唖然として聴いていた<br />
俺の勝手な解釈だが俺を取られたくない気持ちが引き起こしたハルヒの力なのだろう<br />
<br />
このハルヒの演奏に朝比奈さんや古泉はついていけなかった、あの長門でさえついていくのに必死なようだ<br />
他の3人がついていけずにハルヒの独奏のような感じに思えるが<br />
3人もこの曲のエッセンスとして混ざり合って、なんともいえない絶妙な四重奏を奏でている<br />
この演奏に対する感想を一言でいうならば奇跡としか言いようがない<br />
<br />
ハルヒの演奏が終ったときに分厚い雨雲がかき消されて、体育館に光が差し込んだ<br />
このミラクルな演奏にふさわしいフィナーレとなった<br />
<br />
<br />
俺も含めたこの場にいる全ての者がこの演奏を理解できずにしばらく反応できずにいたが<br />
しばらくすると何処からともなく拍手が起こり、それが全校生徒へと広がり歓声とともに爆発した<br />
ハルヒ自身も自分の行動を理解していないのか呆然と左肩を押えながらその場にへたり込んでいる<br />
<br />
皆が唖然としている中、喜緑さんは冷静に司会を進行させた<br />
喜緑「SOS団の皆さんでした、それではENOZの皆さん出てきてください」<br />
袖に引っ込んでいたENOZが再び舞台に上がった、同時にハルヒも朝比奈さんと古泉に抱えられるように立ち上がった<br />
舞さんはハルヒの演奏を聴いて落胆していているようだったが、手のネックレスを握り締めて諦めない眼差しで顔を上げた<br />
<br />
喜緑「では審査に移ります」<br />
鶴屋「じゃ、キョン君お願い…あれ、どうしたの」<br />
鶴屋さんの言葉で気がついたのだが俺は涙を流しているらしい<br />
俺はSOS団とENOZの演奏に猛烈に感動して涙を零していた<br />
泣き顔を全校生徒に見せる訳にはいかないので涙を止めようとしたが溢れ出る涙は止まらない<br />
俺が涙を流していることにハルヒも舞さんも心配そうにこちらを見ている<br />
とりあえず涙は脇に置いて、判定を下さないといけないのだが判定を出すのが難しい<br />
文句なしにハルヒの演奏は奇跡としか言えない演奏だったが舞さんのENOZもそれに負けないぐらい俺の心を打った<br />
どっちを選べばいいんだと苦悩しているとある記憶が蘇ってきた<br />
<br />
朝比奈さん(大)に言われた『その時は自分の心に正直な気持ちで決めてください』という言葉だ<br />
<br />
俺は演奏だけでなく全てを含めてもう一度振り返ってみた<br />
舞さんとの一ヶ月余りの出来事<br />
SOS団との一年間の思い出<br />
両方とも俺には楽しすぎて忘れることなんてできないだろう<br />
そのどちらかを失うことはできるのだろうか<br />
いや、そんなことはできない<br />
欲張りな願望かもしれないがこれからも両方と付き合っていきたい<br />
どちらを一番愛しているかなんて今の俺には正直いって決められん<br />
まだハルヒと舞さんと色々語り合いたい<br />
たくさん話して<br />
たくさん笑いたい<br />
それからどちらかを選びたい<br />
それならばこの演奏についての答えは決まったはずだ<br />
自分に正直な気持ちでみんなに伝えよう<br />
<br />
俺は止まらない涙を流しながら判定を下した<br />
キョン「…俺は演奏を聴いてこんなに感動したことは初めてです…2組の演奏を聴いて優劣は決めるのは俺には無理です…申し訳ないのですがこの対決は引き分け…いえ、両者の勝利にしたいと思います」<br />
<br />
俺の判定が言い終わると全校生徒からの暖かい拍手が鳴り響いた<br />
そこで今年の部活紹介は幕を閉じた<br />
ハルヒも舞さんもホッとした顔で互いの健闘を称えて抱擁を交わした<br />
他のSOS団はというと朝比奈さんは俺と同じで大粒な涙を零している、古泉は安堵の表情、長門はいつも通りの無表情だが少しだけホッとした顔をしているんじゃないかな<br />
<br />
こうしてSOS団とENOZとのライブ対決と俺の短い恋愛は終わりを告げた…<br />
<br />
<br />
エピローグへ続く<br />
</p>
<p>○俺とENOZのZとのラブソング <br />
最終楽譜『The Live』<br />
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運命の日は雨で幕を開けた<br />
この雨じゃ昨日まで咲き誇っていた桜も散ってしまうな<br />
雨の日は心が憂鬱になるが今日はいつもの倍だ<br />
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教室に着くとハルヒは自分の席で寝ていた<br />
それから目を覚ますことなく全ての授業を寝て過ごしていた<br />
これから全校生徒の前で一曲演奏するのに何とも肝っ玉のでかい奴だとこの時は思っていたが<br />
後でこいつがこんなに寝ていた理由を知ることになる<br />
<br />
<br />
ハルヒは2時限目が終ると何も言わずに教室から飛び出していった<br />
俺もそろそろ生徒会室に行くとするかな<br />
<br />
生徒会室に向かう途中に何度か逃げようかなと考えたが心を奮い立たせて、何とか生徒会室の前へ到着した<br />
ノックをして入ると中には喜緑さんだけだった<br />
俺と喜緑さんは少し世間話をしてから体育館へと移動した<br />
部屋を出るときに喜緑さんから「期待しているわ」と言われた<br />
<br />
<br />
体育館に着くと喜緑さんから今回の段取りを教わった<br />
予定ではライブ対決が一番最後のトリに行われるそうだ<br />
そこで司会進行をする生徒から審査員として俺が紹介されるのでそこで俺は登場する<br />
2組のライブ終了後に判定を行ってグランドフィナーレだそうだ<br />
妙にショー的な要素が強いのは機関の趣向なのかと思った<br />
<br />
司会進行役はSOS団名誉顧問の鶴屋さんでアシスタントは喜緑さんだそうだ<br />
まー鶴屋さんなら朝比奈さんと財前さんの友達だから偏った贔屓はしないなと思った<br />
しかし古泉の野郎もそんなことにまで気を使ってくれるとは涙が出てくるよ<br />
一番手の野球部の紹介が始まった頃はあれ程に逃げ出したかった俺の心境も明鏡止水のように穏やかになっていった<br />
ここまできたら、深く考えずに俺が良かったと思った方を選ぼう<br />
<br />
<br />
演劇部のエチュードも終わり、残すは軽音楽部とSOS団のみとなった<br />
喜緑「部活紹介も早いもので残すは後2組となりました」<br />
鶴屋「新入生のみんな悲しいけどそろそろ終りにょろよ」<br />
喜緑「最後はライブ対決という形式で行います」<br />
鶴屋「はいっさ、ENOZとSOS団の対決だよ」<br />
喜緑「新入生の為に説明致します、ENOZは軽音楽部の榎本さん・根岸さん・岡島さん・財前さんの4人で結成されたバンドグループです、そしてSOS団とは涼宮さんを団長として生徒社会を応援する世界造りのための奉仕団体で現在は生徒会へ申請中の同好会です」<br />
鶴屋「この2組のバンドが演奏で対決するっさ!」<br />
喜緑「ではライブ対決の審査員を紹介します」<br />
鶴屋「審査員はSOS団雑用その一のキョン君だよ」<br />
はい、後輩達へ俺は雑用係のキョンと認識された<br />
本当に誰も本名で呼ばなくなったな…<br />
紹介された俺は全校生徒の前で小さくお辞儀をして審査員席へと座った<br />
全校生徒の前で座るだけでも緊張するのにあいつ等はここで演奏をするのか<br />
<br />
<br />
喜緑「では先行はENOZからお願いします」<br />
鶴屋「財前ちゃん頑張るさっよ!」<br />
<br />
袖からENOZの面々が登場した、ドラムの岡島さん、新メンバーの根岸さんはベース<br />
そして榎本さんと舞さんのツインボーカルとツインギターの構成となっている<br />
<br />
新生ENOZの記念するファーストソングは以前に文化祭で聴いた【God knows...】だった<br />
俺は聞いた瞬間にオマージュした、文化祭やその後のライブで聴いた【God knows...】を遥かに凌駕している<br />
生で聞いたのはこれで3回目だがこんなにも進化することが可能なのだろうか<br />
ツインボーカルとツインギターの演奏になんともいえない立体感を表現している<br />
それにつられて観客のボルテージも最高潮へと上がり<br />
舞さんの喉がかすれるようとした寸前で曲は締め括られた<br />
<br />
<br />
終った瞬間に観客から割れんばかりの拍手と歓声が体育館中を響かせた<br />
舞さんは俺を見つめて、全てを出し尽くした顔で微笑んでいる<br />
ギターを降ろすと俺がプレゼントしたネックレスを握り締めた<br />
<br />
ENOZは一旦袖に下がって審判の時を待つ<br />
喜緑「以上ENOZでした、では続いてSOS団お願いします」<br />
鶴屋「みくるにハルにゃんファイトにょろよ!」<br />
<br />
袖からまずは古泉が登場してドラムの前へ腰掛けた、続いてはベースを担いだ長門が現れた<br />
その次は朝比奈さんが登場した、手にはタンバリンを持ちマイクに立ったのでステージの飾りではなくてコーラス担当かな<br />
そしてどんじりはバニー姿のわれらの団長が登場した<br />
俺はハルヒのバニー姿よりも左肩に巻かれた痛々しい包帯とサポーターに目が留まっていた<br />
後日古泉から聞いた話によるこの負傷の件は3日前に遡る<br />
<br />
<br />
その日、SOS団の面々は3日後に迫まった本番に対して今日の練習で十分なクオリティにまでなったので満足気に帰宅していたそうだ<br />
事件が起こったのはハイキングコースを下っている最中に起こった<br />
そこでベビーカーに乗った赤ちゃんと母親に遭遇した<br />
面々が赤ちゃんの方に目をやると固定具が緩んでいたのか赤ちゃんは半分落ちかけていた<br />
しかも運が悪く母親は目を離している<br />
各自が危ないと声を上げる前に赤ちゃんはベビーカーから落下してしまった<br />
地面に衝突する寸前でハルヒが赤ちゃんをダイビングキャッチをして大惨事は免れたがその代償でハルヒは左肩を強打して痛めたそうだ<br />
これが古泉の言っていたアクシデントとハルヒがこの2日間寝ていた理由だ<br />
腕は大いに腫れ上がっており、痛み止めの薬で紛らわしているそうだが本当なら動かすのもきつい状態だったらしい<br />
<br />
ハルヒの合図で演奏は始まったその曲は【God knows...】だった<br />
まさかENOZと曲が被っているなんて不幸過ぎるぞ<br />
<br />
演奏は以前にも聞いたハルヒの月まで届きそうな澄み切った声で始まった<br />
長門はやはりベースも超絶テクで演奏を行い、古泉のドラム捌きも素人ながら奮闘していた<br />
朝比奈さんのコーラスとタンバリンは…大変愛くるしかった<br />
<br />
相手がENOZでなければ、かなりの善戦に思えたがアクシデントの傷は甘くなく<br />
初めは無難にギターを弾いていたハルヒだがやがて痛みからか演奏が乱れるようになった<br />
その影響で長門以外の二人の演奏にも影響を及ぼした<br />
ハルヒは歌声を上げるのも辛そうでいつ演奏が止まってもおかしくない状況だ<br />
俺はそんな満身創痍なハルヒの演奏をすぐにでも止めてやりたかった<br />
俺が見るのも辛くなり、目を逸らした時に信じられない出来事が始まった<br />
<br />
いつ倒れてもおかしくないハルヒが急に超絶技巧なギターテクをかき鳴らした<br />
そして、歌声はこの憂鬱な雨雲を吹く飛ばすかのような澄み渡った声を体育館中に響かせた<br />
俺は急に覚醒したハルヒの演奏を訳が分からずに唖然として聴いていた<br />
俺の勝手な解釈だが俺を取られたくない気持ちが引き起こしたハルヒの力なのだろう<br />
<br />
このハルヒの演奏に朝比奈さんや古泉はついていけなかった、あの長門でさえついていくのに必死なようだ<br />
他の3人がついていけずにハルヒの独奏のような感じに思えるが<br />
3人もこの曲のエッセンスとして混ざり合って、なんともいえない絶妙な四重奏を奏でている<br />
この演奏に対する感想を一言でいうならば奇跡としか言いようがない<br />
<br />
ハルヒの演奏が終ったときに分厚い雨雲がかき消されて、体育館に光が差し込んだ<br />
このミラクルな演奏にふさわしいフィナーレとなった<br />
<br />
<br />
俺も含めたこの場にいる全ての者がこの演奏を理解できずにしばらく反応できずにいたが<br />
しばらくすると何処からともなく拍手が起こり、それが全校生徒へと広がり歓声とともに爆発した<br />
ハルヒ自身も自分の行動を理解していないのか呆然と左肩を押えながらその場にへたり込んでいる<br />
<br />
皆が唖然としている中、喜緑さんは冷静に司会を進行させた<br />
喜緑「SOS団の皆さんでした、それではENOZの皆さん出てきてください」<br />
袖に引っ込んでいたENOZが再び舞台に上がった、同時にハルヒも朝比奈さんと古泉に抱えられるように立ち上がった<br />
舞さんはハルヒの演奏を聴いて落胆していているようだったが、手のネックレスを握り締めて諦めない眼差しで顔を上げた<br />
<br />
喜緑「では審査に移ります」<br />
鶴屋「じゃ、キョン君お願い…あれ、どうしたの」<br />
鶴屋さんの言葉で気がついたのだが俺は涙を流しているらしい<br />
俺はSOS団とENOZの演奏に猛烈に感動して涙を零していた<br />
泣き顔を全校生徒に見せる訳にはいかないので涙を止めようとしたが溢れ出る涙は止まらない<br />
俺が涙を流していることにハルヒも舞さんも心配そうにこちらを見ている<br />
とりあえず涙は脇に置いて、判定を下さないといけないのだが判定を出すのが難しい<br />
文句なしにハルヒの演奏は奇跡としか言えない演奏だったが舞さんのENOZもそれに負けないぐらい俺の心を打った<br />
どっちを選べばいいんだと苦悩しているとある記憶が蘇ってきた<br />
<br />
朝比奈さん(大)に言われた『その時は自分の心に正直な気持ちで決めてください』という言葉だ<br />
<br />
俺は演奏だけでなく全てを含めてもう一度振り返ってみた<br />
舞さんとの一ヶ月余りの出来事<br />
SOS団との一年間の思い出<br />
両方とも俺には楽しすぎて忘れることなんてできないだろう<br />
そのどちらかを失うことはできるのだろうか<br />
いや、そんなことはできない<br />
欲張りな願望かもしれないがこれからも両方と付き合っていきたい<br />
どちらを一番愛しているかなんて今の俺には正直いって決められん<br />
まだハルヒと舞さんと色々語り合いたい<br />
たくさん話して<br />
たくさん笑いたい<br />
それからどちらかを選びたい<br />
それならばこの演奏についての答えは決まったはずだ<br />
自分に正直な気持ちでみんなに伝えよう<br />
<br />
俺は止まらない涙を流しながら判定を下した<br />
キョン「…俺は演奏を聴いてこんなに感動したことは初めてです…2組の演奏を聴いて優劣は決めるのは俺には無理です…申し訳ないのですがこの対決は引き分け…いえ、両者の勝利にしたいと思います」<br />
<br />
俺の判定が言い終わると全校生徒からの暖かい拍手が鳴り響いた<br />
そこで今年の部活紹介は幕を閉じた<br />
ハルヒも舞さんもホッとした顔で互いの健闘を称えて抱擁を交わした<br />
他のSOS団はというと朝比奈さんは俺と同じで大粒な涙を零している、古泉は安堵の表情、長門はいつも通りの無表情だが少しだけホッとした顔をしているんじゃないかな<br />
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こうしてSOS団とENOZとのライブ対決と俺の短い恋愛は終わりを告げた…<br />
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<br /><a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4496.html">エピローグ</a>へ続く<br />
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