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涼宮ハルヒの再会(1)」(2021/10/12 (火) 22:09:51) の最新版変更点

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<p>・・俺はただあいつに、笑っていてほしかっただけなのかもしれない。</p> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong><span style= "font-size: 14pt">涼宮ハルヒの再会</span></strong></div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">(1)</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">  いろいろありすぎた一年を越え、俺の初々しく繊細だった精神は、図太くとてもタフなものになっていた。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 今の俺ならば、隣の席に座っている女の子が、突然『私、実はこの世界とは違う世界からやって来ているんです』などと言いだしたとしても、決して驚かないだろう。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 愛すべき未来人の先輩や無口で万能な宇宙人、そして限定的な爽やか超能力者たちとともにハルヒに振り回されて過ごしたこの一年間は、俺があと何十年生きようとも、生涯で最も濃密な一年になるはずだ。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> と言うより、そうなってくれないと困るな。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> これ以上のことは、さすがの俺も御免こうむりたい。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> いくらなんでも毎年毎年、クラスメイトに殺されかけるような事態は起こらないはず・・・と、思いたいな、うん。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> 北高に入学してから丸一年がたち、SOS団の団長及び団員はみな、無事進級した。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> まぁ、“無事”などという表現が必要なのはどうやら俺だけだったようだが。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> もっとも、万が一俺が留年し、一年生をやり直すなどという事態になれば、ハルヒの雷が落ちるのは間違いなかったわけで、そうなれば古泉の機関も黙ってはいなかったであろう。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 来年、俺が留年しそうになったら頼むぜ、古泉。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> 「申し訳ありませんが、あなたの学業のことに関しては、機関はノータッチを貫かせていただきますよ。」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 冗談だ。俺もお前や、お前の機関にできるだけ借りなんて作りたくないからな。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「それは結構。では、とりあえず今度の中間テストの結果を楽しみにしておきますよ。」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> ふん、誰がお前にテストの成績なぞ教えてやるものか。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> 「いえいえ、あなたの口から直接伺えるとは僕も思ってはいませんよ。あなたもご存知の通り、この学校には僕や生徒会長の彼以外にも、機関の息のかかった者はおりますので、ご心配なく。」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt">いやいや、逆に心配になるんだが。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 一体お前の機関にどこまで俺のことを調べられているのやら。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> 「おや、興味がおありですか。では少しお話ししましょうか、あれはたしかあなたが中学2年生の6月・・・」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「おい、こらちょっと待て、誰が話せと言った。」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> それは、この約3年間の月日をかけて、ようやく記憶の片隅に追いやった、二度と思い出したくないエピソードだ。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt">勝手に引っ張り出してくるな。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> 「そうですか、それは残念ですね。やはり記録として活字で上がってくるものを確認するのと、本人のリアクションを見ながら確認するのでは、だいぶ違いがあるのではと思ったのですが。」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">「いいか、その話は二度とするな。特にハルヒの前では絶対にだ。」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> 「それはもちろん分かっていますよ。僕のほうとしましても、いたずらに涼宮さんの心をかき乱すようなまねは避けたいですしね。」</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> ハルヒだけではない、この場に朝比奈さんがいなくて本当によかった。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> あんな恥ずかしい話を朝比奈さんに聞かれた日には・・・</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> ああ、いや、これ以上考えるのはやめにしよう。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 軽く思い出すだけで、激しい自己嫌悪に襲われる。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> とにかく、あの二人に聞かれなかっただけ良しとしよう。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 俺が部室に着いた時にはもう、いつも通りのポジションで本を広げていた長門には、話の触りを聞かれてしまったが、あいつのことだ、とっくに承知のことなのだろうし、仮に知らなかったとしても何ともないだろう。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> 先ほど、古泉の野郎があの話をしそうになったときに、長門がこちらをジトっとした目で見ていたのはなにかの間違いだろう、うん、そうに違いない。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt; text-indent: 10.5pt"> その後、いつもより少し遅れてやってきた朝比奈さんのいれてくれたお茶を飲みながら古泉とゲームをし(当然俺の全勝だったのだが)、同じく遅れてきたハルヒによって朝比奈さんがおもちゃと化すのをなんとか止め、長門が本を閉じるのを合図に帰宅する、というこの一年の間にすっかり定着したこの日常を、俺はいたく気に入っていた。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> だってそうだろ。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">  未来人や宇宙人、自分の望み通りのことをおこせるトンデモ少女(古泉の機関に言わせると“神”か)なんていう、ありえない肩書きをもっているとは言え、学校でもトップクラスの美少女たちに囲まれて、毎日の暇な放課後に色を加えることができるのだ。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">  まぁ、リーダーである団長様がアレなので、今の俺のポジションを羨む野郎なんてのは、つい一月ほど前に入学してきたばかりの新一年生にしかいないだろうが、人って生き物は慣れてさえしまえば、あとはなんとでもなるものである。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">  最初にも言ったが、俺はハルヒ絡みのことではちょっとやそっとじゃ驚けない体質になってしまっている。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt">  宇宙人、未来人、超能力者が揃い踏みのこの空間で普通に過ごしている俺にとってみれば、身の危険さえ迫らねば、あとのことはたいてい黙って見過ごすことができるだろう。</div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div> <div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> そう、それがハルヒ絡みのことであれば、だ。</div>
<p>・・俺はただあいつに、笑っていてほしかっただけなのかもしれない。</p> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"><strong><span style="font-size:14pt;">涼宮ハルヒの再会</span></strong></div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">(1)</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">  いろいろありすぎた一年を越え、俺の初々しく繊細だった精神は、図太くとてもタフなものになっていた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 今の俺ならば、隣の席に座っている女の子が、突然『私、実はこの世界とは違う世界からやって来ているんです』などと言いだしたとしても、決して驚かないだろう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 愛すべき未来人の先輩や無口で万能な宇宙人、そして限定的な爽やか超能力者たちとともにハルヒに振り回されて過ごしたこの一年間は、俺があと何十年生きようとも、生涯で最も濃密な一年になるはずだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;">と言うより、そうなってくれないと困るな。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> これ以上のことは、さすがの俺も御免こうむりたい。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> いくらなんでも毎年毎年、クラスメイトに殺されかけるような事態は起こらないはず・・・と、思いたいな、うん。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 北高に入学してから丸一年がたち、SOS団の団長及び団員はみな、無事進級した。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> まぁ、“無事”などという表現が必要なのはどうやら俺だけだったようだが。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> もっとも、万が一俺が留年し、一年生をやり直すなどという事態になれば、ハルヒの雷が落ちるのは間違いなかったわけで、そうなれば古泉の機関も黙ってはいなかったであろう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 来年、俺が留年しそうになったら頼むぜ、古泉。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「申し訳ありませんが、あなたの学業のことに関しては、機関はノータッチを貫かせていただきますよ。」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 冗談だ。俺もお前や、お前の機関にできるだけ借りなんて作りたくないからな。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「それは結構。では、とりあえず今度の中間テストの結果を楽しみにしておきますよ。」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> ふん、誰がお前にテストの成績なぞ教えてやるものか。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「いえいえ、あなたの口から直接伺えるとは僕も思ってはいませんよ。あなたもご存知の通り、この学校には僕や生徒会長の彼以外にも、機関の息のかかった者はおりますので、ご心配なく。」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;">いやいや、逆に心配になるんだが。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 一体お前の機関にどこまで俺のことを調べられているのやら。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「おや、興味がおありですか。では少しお話ししましょうか、あれはたしかあなたが中学2年生の6月・・・」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「おい、こらちょっと待て、誰が話せと言った。」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> それは、この約3年間の月日をかけて、ようやく記憶の片隅に追いやった、二度と思い出したくないエピソードだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;">勝手に引っ張り出してくるな。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「そうですか、それは残念ですね。やはり記録として活字で上がってくるものを確認するのと、本人のリアクションを見ながら確認するのでは、だいぶ違いがあるのではと思ったのですが。」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「いいか、その話は二度とするな。特にハルヒの前では絶対にだ。」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> 「それはもちろん分かっていますよ。僕のほうとしましても、いたずらに涼宮さんの心をかき乱すようなまねは避けたいですしね。」</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> ハルヒだけではない、この場に朝比奈さんがいなくて本当によかった。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> あんな恥ずかしい話を朝比奈さんに聞かれた日には・・・</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> ああ、いや、これ以上考えるのはやめにしよう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 軽く思い出すだけで、激しい自己嫌悪に襲われる。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> とにかく、あの二人に聞かれなかっただけ良しとしよう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 俺が部室に着いた時にはもう、いつも通りのポジションで本を広げていた長門には、話の触りを聞かれてしまったが、あいつのことだ、とっくに承知のことなのだろうし、仮に知らなかったとしても何ともないだろう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> 先ほど、古泉の野郎があの話をしそうになったときに、長門がこちらをジトっとした目で見ていたのはなにかの間違いだろう、うん、そうに違いない。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;text-indent:10.5pt;"> その後、いつもより少し遅れてやってきた朝比奈さんのいれてくれたお茶を飲みながら古泉とゲームをし(当然俺の全勝だったのだが)、同じく遅れてきたハルヒによって朝比奈さんがおもちゃと化すのをなんとか止め、長門が本を閉じるのを合図に帰宅する、というこの一年の間にすっかり定着したこの日常を、俺はいたく気に入っていた。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> だってそうだろ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">  未来人や宇宙人、自分の望み通りのことをおこせるトンデモ少女(古泉の機関に言わせると“神”か)なんていう、ありえない肩書きをもっているとは言え、学校でもトップクラスの美少女たちに囲まれて、毎日の暇な放課後に色を加えることができるのだ。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">  まぁ、リーダーである団長様がアレなので、今の俺のポジションを羨む野郎なんてのは、つい一月ほど前に入学してきたばかりの新一年生にしかいないだろうが、人って生き物は慣れてさえしまえば、あとはなんとでもなるものである。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">  最初にも言ったが、俺はハルヒ絡みのことではちょっとやそっとじゃ驚けない体質になってしまっている。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;">  宇宙人、未来人、超能力者が揃い踏みのこの空間で普通に過ごしている俺にとってみれば、身の危険さえ迫らねば、あとのことはたいてい黙って見過ごすことができるだろう。</div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div> <div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> そう、それがハルヒ絡みのことであれば、だ。</div>

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